2016年のニデック「不正会計疑惑」のアクティビストレポートに対するメディアの反応
当ブログの2026年3月16日付けのエントリー「ニデックの会計不正事案-誰か2016年の不正疑惑意見との『答え合わせ』はされたのか?」にて、私が問題提起をしておりました「答え合わせ」をされた方がいらっしゃったようで、6月6日のある団体の勉強会で、その方から「たしかに第三者委員会が認定した事実の相当部分が2016年時点で示されていましたね」とのご意見をいただきました。
興味深かったは、その方が、「なぜマスコミは、2016年のアクティビストレポートがリリースされた時点で、これを取り上げなかったのか」と、当時の経済部記者の方にお尋ねになったそうです。すると、あまりにもあっけない答えが返ってきて「そりゃ、監査法人が適正意見を出しているからですよ」とのこと。会計不正案件に仕事で関わっている私からすると、「不祥事が発覚してから内部統制報告書が訂正され、その訂正された報告書に監査法人が意見を述べるという実務慣行」からすれば、記者の方の回答は、まったく回答になっていないと思うのですが、たしかに世間はこの記者の方の回答のように、監査法人の意見はまさに「金科玉条」であって、100%の信用に値する社会インフラなのですね。
ということで、(少し前の記事ですが)4月12日付けの日経記事「なぜ弱い『守りのガバナンス』監査法人改革、金融庁と攻防戦再び」でも報じられている通り、自民党金融調査会が、さらなる監査法人改革の提言に乗り出すというのも、オルツ、ニデック、KDDI、エア・ウォーター等の「とんでも会計不正」が続発している中ではやむを得ないものかもしれません。
ただ、私が心配するのは、会計不正の防止策が強化されますと、その反動で「会計リテラシーが不足していた時期に、偶々関わってしまった不適切会計事案によって、ここまで会社を大きくしてきた創業者が辞任しないと(つまりガバナンスの見直しをしないと)、適正意見は出してもらえないのか」といった重い事案が増えることです。証券市場が育成していかなければならない経営者の方々が、監査法人の責任回避的な判断によって市場から退場を余儀なくされるケースは、これまでもありましたし、これからもますます増えるでしょう。
企業統治改革の進展の中で、不祥事に関わった経営者は、法的責任だけでなく、監査意見や議決権行使を通じた「経営責任」も厳しく問われるようになりました。民事上の法的責任であれば5年から7年程度の猶予期間がありますが、経営責任を問われるとなると猶予期間もなく、経営の舞台から即時退出することになります。どこまでの経営者の失敗は許容されるものであり、どこからは許されない(一発アウト)のでしょうか。「守りのガバナンスには、光と影がある」ということを当然に理解したうえで、その施策を実施することが必要です。

