一太郎、知財高裁で逆転勝訴!
初めての東京高裁特別支部(知財高裁)大合議事件として話題を集めていた一太郎訴訟で、ジャストシステムが逆転勝利をおさめました。判決文(全文)はこちらです。
私は国際知財はしませんし、国内知財は不正競業法関連、著作権しか扱いませんので、いわゆる特許侵害訴訟について解説する能力はありませんが、知財高裁の存在を印象付ける判断となりましたね。いままでは、地裁の知的財産部こそ「判断の中枢」という印象を持っていましたが、事件によっては知財高裁で「ひっくりかえる」可能性も出てきたように、改めて認識いたしました。そもそも、知財高裁での判断というのは、具体的な事案の早期解決のほかに、同種事案の早期解決にも参考となることも目的のひとつですから、松下の知財戦略についても、今後かなりの見直しが必要になってくるかもしれません。
こうやって、知財高裁の判断をみると、前にもエントリーで書きましたが「無形資産の価値評価」というものは、ホントにムズカシイものですね。「自分の企業のこういった特許については、これくらいの資産価値がある」と資産評価をしなければならない時代になってきていることは理解できるのですが、「特許が無効」となれば無価値ですし、有効ならば無限の資産価値が生まれてくる。司法リスクや将来の有用性リスクなど、どのような基準で資産価値を把握できるのでしょうか。また、その把握された価値には合理的な保証が与えられるものなんでしょうか?私自身はかなり悲観的な意見の持ち主ですが。
それと、この判決文を読んで非常に強く感じたことは「あぁ、やっぱり知財事件は、専門弁護士にまかせないと危ないなぁ」との印象でした。実は、この事件でジャストシステムが勝訴する原因となった主張は、この裁判の最後のほうになって、やっと証拠が揃ったために、提出されたものでして、松下側からは、「これは時機に遅れた主張であって採用されるべきではない」と攻撃を受けています。知財高裁は、この松下側の主張を最終的には却下しているものの、なぜ「時機に遅れていないか」を詳細に判断したうえで却下しています。つまりは、この知財高裁ができたのは、スピーディな紛争の終結を目的としていますので、いちおう提訴から9ヶ月経過してから出された主張は知財裁判としては「遅い」のではないか、というニュアンスをもたせています。でも、16年も前に出願された特許の無効を主張するための資料を整えるためには、これくらいの時間がかかってもやむをえない、という判断が下されています。ひるがえって考えてみますと、これはジャストシステム側の弁護士、弁理士が相当に専門家としての知見によって探し当てた資料に基づく新たな主張といえ、もしこれが専門性に乏しい弁護士がついていたケースを考えると、同じ主張に辿り着けるとしても、もっと時間を要するのではないか、と推測されるのです。
これからは、もっともっと国際知財、国内知財とも専門家が増えていくと思いますが、まずはそういった専門性を持った弁護士とのパイプというのが、これからの知財管理にとっては不可欠の要素になっていくものと確信したような次第です。
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (1)