2005年10月 3日 (月)

内部統制と人材育成について

先週、公認コンプライアンス・オフィサーの二次試験の合格発表がありまして、運良く合格させていただきましたので、資格認定の申請書を認定機構のほうへ提出しているところでありあます。「資格」というものは、もうかれこれ16年ほど前に弁護士資格を取得して以来ということになります。企業倫理とコーポレートガバナンス、内部統制システム構築、コンプライアンス経営の基礎・企業法務、などが試験科目ということから、どんな内容の資格であるかはおおよそご推察のとおりであります。当然のことながら、この「資格」を取得したからといいましても、すぐに「独立してメシが食えるようになる」といったものではありません。実際にも、この資格取得を目指す方がたは、おおよそご自身の所属されておられる会社の企業法務に携わっておられる方で、会社内におけるご自身のスキルアップを図られるのが主たる目的ではないでしょうか。

私がこの資格を取得してみたい、と考えた時期は、そもそも内部統制システム構築のようなお仕事(お手伝い)をすこしばかり始めたときでした。「内部統制システム導入論」がおそらく日本の企業でも、今後飛躍的に注目されるのではないか、と考えていましたが、このシステム導入を進めていきますと、いわゆる「間接部門」の統合化、IT化が不可避のこととなりますから、企業の多方面で活躍されている社員の方が、法務、会計、財務、経理などの間接部門における横断的な知識経験をもつ人材が育たなくなるんではないか、という危惧感が次第に増してきました。社内の内部統制システム構築責任者や、コンプライアンス部門責任者などが、一生懸命、私のような外部の者と協力して「いいもの」を作ろうとしても、なかなか現経営陣に「イメージ」がわかないためか、その重要性を認識してもらえません。現在でもこのような惨憺たる状況であるにもかかわらず、内部統制システムや、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)などによって間接部門の統合化がこれまで以上に企業で進む場合には、「子会社やセグメントごとの経営」が薄らいでいくことになります。これはやむをえない現状として受け止めざるをえない、と認識はしておりますが、やはり企業を横断的に把握できる能力をもつ人材というのは、「お山の大将」的な社員が少なくなる以上は育ちにくい体質になっていくのではないでしょうかね。(そもそも優秀な経理マンを育てる人材養成システムというものはあっても、企業のなかで優秀なCFOを育成するシステムってあるんでしょうかね?私はこのふたつはまったく別の人材育成システムが必要だと考えておりますが)企業不祥事の防止といいましても、たしかに社員レベルでの問題については内部統制システムによる未然回避、という効果も得られるでしょうが、社会問題となっているような事例、つまり企業トップが関与しているケースでは、そもそも内部統制システム構築には限界があります。「企業倫理」などという抽象的な言葉を持ち出すのではなく、企業ぐるみで不正をはたらくこと、不正を隠蔽することの企業リスクなどをきちんと判断できる能力などは、どこかで養われる必要があるというのが私の考えです。

そんな企業環境のなかで、CFOやCIOなどの責任者の意見の重要性を認識し、経営者自身がリスクアプローチに基づく経営判断をなしうるように、せめて基本的なリーガルリスクの知識経験につきましても、経営者レベルで身につけていただきたく、そのようなお手伝いができたらいいなあ、というところから、この「公認コンプライアンス・オフィサー」資格というものに着目をしました。私自身も、社外監査役としての立場で、実際の経営においてこういった資格が役に立つものかどうか、実際に検証していきたいと思っています。本来はアドバイザー的立場の方向けの資格ではありますが、私の実際の気持ちとしましては、上場企業の経営者の方こそ、コンプライアンス経営の基本的な知識と方法論をお持ちいただかないと、会社機関化する会計監査人や独立取締役さんの企業価値向上のための提案等を真摯にご理解いただけないのではないか、と危惧するのであります。まだいままでの合格者が100名強程度ですし、普及化にあたっては、資格取得者と協会挙げての努力が相当に必要かと思われますが、企業横断的な継続研修なども含めて、広く関心を寄せていただける資格になってくれることを望んでおります。

10月 3, 2005 内部統制と人材育成について | | コメント (0) | トラックバック (0)