2021年9月29日 (水)

機関投資家からみた「不祥事懸念企業」と「監査役等に期待する働き」

昨日(9月27日)はANAホテル(大阪)にて、監査役全国会議のシンポジウム 個別テーマⅢ「中堅・中小規模会社における監査役・監査等委員の職分」の収録が行われました(ご登壇者の皆様はこちらのHPからご覧になれます)。私が進行役を務めたのですが、ご登壇者は中堅上場会社の監査役、取締役(監査等委員)の方々と機関投資家の方ということで、たいへんおもしろい内容のシンポが開催できたのではないかと(ひそかに)思っております。

中堅・中小会社監査役向けの分科会行事とはいえ、いずれの会社も任意の指名・報酬委員会を設置していて、社外取締役・社内取締役の構成比が1:1と2:1ということで、大規模会社と全く引けを取らないガバナンス構成です。そのようなガバナンス構成の企業において、監査役員がどのようにアイデンティティを維持しながら「発見力」と「発信力」を高めているのか、その具体的な行動内容をご披露いただいているので、プライム市場に上場する企業の監査役員の皆様にも十分参考になる内容だと思います。

「これって、大規模上場会社でもなかなかできない行動ですよね?」「なのに、なぜ中堅規模の上場会社でこんな監査活動ができるのだろう」という(進行役の)素直な疑問(素朴な疑問)をおふたりの監査役、取締役監査等委員の方々にぶつけてみました。おそらく答えにくい質問も多々あったかたとは思いますが、個々の企業の歴史なども踏まえて語っていただきました。

そして「あくまでも個人の意見ですが」という前提付きではありますが、三井住友DSアセットマネジメントの上席参与の方が「一投資家として、不祥事を懸念する企業のパターン」として、懸念される企業の部類、なぜ懸念されるのか(その理由)、さらに特に懸念が大きいのはこういった企業」として、ご自身の見解をご披露いただきました。パッシブ投資が主流となる中で、こういった考え方が対話(エンゲージメント)及び議決権行使基準の判断のモノサシになるのかも・・・と思いますと、とても興味深い。

さらに「監査役等に期待する働き」として、平時と有事に分けて「機関投資家からみた監査役等のこのような行動こそ大切ではないか」といった行動パターンも整理していただきました。おそらく責任投資分野でのこれまでのご経験を踏まえた整理と思われますので、監査役全国会議に参加される方はぜひとも個別テーマⅢの収録動画をご覧いただければと思います(なお、全国会議へのご参加申し込みはすでに終了しております)

機関投資家からみて、まだまだ監査役等の活動状況の開示は不足しているそうです(監査役等の活動方針の開示内容から、どのような事実を推論するのか、その過程についてもご披露いただきました)。それぞれの監査役会、監査等委員会自身の言葉で活動状況を開示することが大切ですね。ちなみに、私自身は今回は調整役に徹しましたので!(^^)!、ご登壇者のおもしろいお話、監査役員に有益なお話をどこまで引き出すことができたか、ご視聴される皆様の評価にお任せしたいと存じます。私自身もたいへん勉強になりました。ご登壇いただいた方々、運営していただいた日本監査役協会関西支部の方々に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

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2021年4月19日 (月)

日産元会長逮捕劇の端緒は常勤監査役の覚悟にあった-日産クーデターの真相より

4月17日までの5日間の連載記事「日産クーデターの真相」(朝日新聞・経済プラス)は、先週のエントリーで述べた通り、監査役・監査等委員の皆様には本当に必読の内容でした。どこまでが裁判での証言で、どこからが記者独自取材の内容なのかはわかりませんが、日産元会長が逮捕されるまでの社内調査の経緯が克明に描かれていて、とても参考になりました。

お読みになった方はおわかりのとおり、日産の常勤監査役(当時)のI氏が悩みを専務執行役員のK氏に打ち明け(役員食堂での雑談)、その後K氏から紹介された弁護士(元検事)の勧めで司法取引を活用する環境を整備し、最後にS社長(当時)に調査の全容を説明したうえで引き継ぐ(その1か月後に元会長逮捕)。検察官と交渉した際、I常勤監査役が「もし情報が洩れるようなことがあったら、検察は手を引く」と断言されたこと、司法取引の当事者となる法務担当執行役員や秘書室長らが「司法取引」を行うことによって「自分もあぶないのではないか」と衝撃を受け、冷静さを失っていた状況も描かれていました。

ルノーとの統合に反対していたK専務執行役員と出会ったこと、正義感から元会長の行動を阻止したいと考えていた法務執行役員が存在していたこと、内部通報制度の活用だけでは壁を乗り越えられないと感じていたときに「日本版司法取引制度」の施行が開始されたこと、「裏報酬」に光をあてて検察庁が金融商品取引法違反による起訴を決断したこと等、クーデターが起きた要因は複合的だったことがわかります。ただ、I常勤監査役が「日産のものつくり」をこよなく愛していて、「このままでは日産の技術が失われてしまう」といった危機意識を持ち、元会長と対峙する勇気がなければ日産の事件は表面化しなかったと言えます。

他社の監査役、監査等委員の皆様への教訓としては、常勤監査役I氏が法務担当執行役員に悩みを打ち明けるシーンでしょう。法務執行役員の方が「この人は本気でゴーン氏と対決するつもりだ」と驚き、その後、I氏に対して元会長の不正事実を克明に説明をしますが、やはり監査役、監査等委員が本気で監査権を行使する気概を示すことで、経営執行部側から情報が届く、ということだと思います。逆に言えば「監査役」「取締役監査等委員」とは名ばかりで、本気で社長と対決する覚悟のない監査役、監査等委員に対しては、経営者が関与する重大な不正情報は耳に届かない、ということです。

この連載記事は「日産事件は、ルノー統合を良しとしない日産幹部のでっちあげではない」(日産元社長のS氏が裏で動いていた、というものではない)と締めくくられています。ただ、ルノー統合の動きが加速していなければ、元会長は退任後に莫大な「裏報酬」をもらいながら、今もルノー・日産の統合会社のトップに君臨していたのではないでしょうか。そう考えますと、日産の技術畑を歩み、こよなく日産を愛しておられたI常勤監査役の調査権行使(社内調査の指揮・先導)と違法行為差止権限の行使(監査役自ら元会長と対面することを避けて、内部通報者に司法取引を勧めて、外部から元会長の動きを制止させること)は称賛に値するものと考えます。

もちろん「何が正義なのか」といった広い意味で本件をとらえるならば「元会長は日本の刑事司法制度の被害者である」「裁判を受けていれば無罪の可能性があり、クーデターは正当化されない」といった意見もありましょう。ただ、会社法上の監査役制度を前提とすれば、監査権の実効性を確保するために検察や金融庁との連携が必要な場面も当然に出てくるわけで(改正公益通報者保護法施行後は、監査役による公益通報という手段も出てきます)、このような常勤監査役の監査権の行使は善管注意義務、忠実義務の実践の「あるべき態様」ではないかと思うところです。

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2021年4月14日 (水)

監査役・取締役監査等委員の皆様にお勧め-日産クーデターの真相(朝日けいざい連載記事)

4月14日午前 追記あり

4月13日の朝日新聞朝刊「けいざい+(プラス)」で連載が始まった「日産クーデターの真相」ですが、なかなか興味深い内容です。グレッグケリー氏の裁判における証言や、新たな取材によって判明した「ゴーン氏逮捕までの経緯」を連載記事で再現する、というものです。第1回は「監査役は不審に思った」とサブタイトルで、日産の常勤監査役のI氏がゴーン氏の不正疑惑を抱くに至った経緯が記されています(当該経緯はまだ第2回にも続きます)。

I氏は実名、写真入りで登場です。I氏の実名は、当時日産元会長逮捕劇を扱った週刊文春2018年12月6日号でも掲載されていましたが、朝日の著名記者の方が新たにI氏に取材をされたようで、上記記事ではI氏が元会長の不正疑惑に迫る要因となった新事実が明らかにされています(第2回はI氏の違和感が不正疑念へと変わるきっかけとなる「社員食堂での後輩との会話」が掲載されるそうです)。

I氏は日産の副社長から監査役になった方ですから、積極的に社内の情報を収集できる立場にあったのかもしれませんが、カリスマ経営者に対峙する監査役(取締役監査等委員)の「職業的懐疑心」を理解するには貴重な題材ですね。監査役・監査等委員は職業的懐疑心をもって監査職務にあたることは善管注意義務、忠実義務を履行する者として「あたりまえ」のことですが、その「あたりまえ」のことが経営者の不正疑惑を前にするとできないことが多い。社長の違法行為を差し止める権限があるとしても、まずは「違法行為」「著しく不当な行為」である確証を得なければ権限行使の決断はできないでしょう。

3年前の文春記事では、たしか法務担当の執行役員(今回の記事にも登場します)らと意思を通じて、最終的には司法取引(刑事訴訟法上の協議・合意制度の活用)に至ったものと記憶しており、I氏が直接ゴーン氏と対峙した、ということではなかったと思います。たしかに監査役、監査等委員が司法取引の当事者となる場面というのは想定しにくいです。ただ、今後は(公益通報者保護法の改正によって)、一定の職務行為を行うことが前提となりますが、監査役も公益通報者となり、たとえば金融商品取引法違反事実の疑惑については証券取引等監視委員会や公認会計士・監査審査会等へ通報することが監査役としての正当な職務行為とされます(正確には監査役、取締役としての守秘義務が「正当理由」によって解除される、といったほうがよいかもしれません)。

つまり、監査役として経営者と強硬姿勢で対峙するだけの勇気がないとしても(※)、「強硬姿勢で対峙すること」と同視しうる程度の作為義務(経営者による違法行為の是正措置義務)は認められるようになると考えます。少なくとも、是正措置が必要かどうか、その判断の前提となる情報収集は必要だと思います(常勤監査役、監査等委員から情報を共有された社外監査役、監査等委員も同様の注意義務が発生するはずです)。もちろん、社長の不正疑惑を抱くきっかけとなる最初の「違和感」は、会社の業務全般に精通していなければ湧いてこないかもしれません。しかし、その「違和感」を監査役会(監査等委員会)を構成する他の監査役、監査等委員と共有することで、疑惑→確信に発展します。

※・・・監査役さんが裁判で敗訴した事例では、「見なかったことにしましょう」と他の監査役に勧めていた例、社長に違法行為の即時停止を求め、停止しなければ監査役を辞任する、と申し入れたものの、社長解任を提案する取締役会の招集をしなかった例、社長の行動に違和感を感じつつも、それ以上何もしなかった例など、もう少しの勇気があれば敗訴しなかったものと思われます。

冒頭の朝日新聞の連載は、おそらく「日本版司法取引」に至る経緯に最も関心が寄せられると予想します。ただ、監査役が経営者の不正を追及する決断に至る経緯については、あまり世間的に公表されることがありません。当該連載では、そのあたりが明らかになることを期待しております(本件とは関係ない話ですが、私が第三者委員会の委員長を務めた過去の報告書では、監査役の権限行使に至る経緯を詳細に開示しております。有事に直面する監査役、監査等委員の皆様への有益な参考例としての「公共財」として残したい、という気持ちからです)。

4月14日午前追記;今朝の連載2回目「危ない橋を渡る」もなかなかおもしろい!この続きがとても楽しみです。

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2021年4月 5日 (月)

企業統治改革が進む中で、「社長レース」に敗れた方の処遇はどうなるのか?

先週金曜日のエントリー「監査機関の一元的統合に関する課題にどう答えるか?」にはコメントやメールを多数いただきまして、どうもありがとうございました(リモートでフォローアップ会議を公聴されている方もおられるのですね)。監査役制度や内部監査の在り方など、様々なご意見をお持ちの方が多いことをあらためて知りました。

ところで、週末に、当ブログのエントリーをお読みになった某経営コンサルタント会社の社長さんや人材開発会社の社長さんとお話しする機会がありまして、たいへんおもしろいお話を拝聴いたしました。監査役制度を廃止して監査等委員会や監査委員会に統合することはマズい、そもそも統合は無理ではないか・・・といった意見をお持ちでした。

「監査役は社長レースに敗れた人たちの最適なポジションである」「山口先生のブログで『監査役制度の統合』が検討されていたが、実務的にはナンセンス」「有望な人材による社長レースが繰り広げられ、最終的に敗れた役員は常勤監査役として待遇面で厚遇しつつ、議決権を持たない立場であれば最も波風が立たない」「敗れたほうの候補者を支援してきた優秀な幹部候補が会社を辞めずに済むことにもつながる」「プロ経営者の市場があれば別だが、日本企業の場合には監査役制度が緩衝材として活用されるのはやむをえない」とのこと。

「監査役の任期4年には意味がある、任期途中で退任してもらう、といった考え方は問題だ」「取締役会改革が進む中で、監査役は妥当性監査も当然に行うべきであり、監査報告を活用すべきである」といった意見を私が述べますと、上記のような答えが次々と返ってきました。うむむむ、なるほど。。。

上記経営コンサルタントの方のお話では「最近は資源の最適配分ということで、グループ会社の統合、切り出し等も推奨されているようだが、グループ会社のトップについても監査役制度と同じ役割を担っている」「優秀な人材に競わせて、最終的にトップになれなかった人を厚遇して『会社の敵を作らない』ためには『グループ全体の業績にそれほど影響を及ぼさないグループ会社』の存在は必要。人材流出を防ぎ、社内外における人的ネットワークを失わず、社内融和を図ることはまさに守りのガバナンスとして必須」「おそらく経営者OBの独立社外取締役が指名委員会の委員であれば、そのあたりの組織力学はよくわきまえているだろう」とのことでした。

上記経営コンサルタントの方は、大きな会社のガバナンス構築に長年関わっておられるので、そのような意見をお持ちなのかもしれません。ただ、たしかにサクセッションプランが策定されたり、指名委員会・報酬委員会が設置されることが増えるとなると、早い時期から次期社長候補者を選定することになります。その際、敗れた候補者に対しては、会社はどのような待遇で臨むのでしょうか。これまで会長、相談役といった方に事実上の社長指名権限が残っていた時代であれば上記経営コンサルタントの方のような考え方も妥当していたと思うのですが、ぜひガバナンス改革に熱心な企業、とりわけ社外取締役さん方が社長の選解任の中心的役割を果たしておられる会社の対応方針については知っておきたいところです。

なお(上記のお話とも関連しますが)「守りのガバナンス」という意味では、社長と意見が対立した社外取締役として、「辞任」という選択肢をとることに躊躇しない人もいらっしゃいますが、「攻めのガバナンス」という意味では、社長と意見を対立させる勇気のある社外取締役っていらっしゃるのでしょうか?とくに社外取締役が2名以下の場合であれば、「とりあえず反対意見を述べておく」で済むかもしれませんが、今後は3分の1とか3名以上の社外取締役が役員会の構成員になるわけで、そうなりますと社外取締役の意思決定が会社の業務執行を決定する可能性が高まるわけですよね。

6月に施行されるガバナンス・コード2021を実施するためには、まだ1000人ほどの社外取締役が不足していると報じられていますが、「攻めのガバナンス」つまり健全なリスクテイクを決断する場面で、(報酬1000万円をもらえる地位を捨てる覚悟で)本気で社長と異なる意見を述べることができる人って、どのくらいいるのか・・・。あまりそのあたりって、議論されていないような気がいたします。

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2021年4月 2日 (金)

監査機関の一元的統合に関する課題にどう答えるか?

昨日(3月31日)、金融庁のHPにて、3年ぶりの改訂となるコーポレートガバナンス・コード改訂(案)が公表されました。日経や読売の事前報道でほぼ全容を知っておりましたので、内容は予想どおりでした。

ただ、よく存じ上げている方からメールでいただいた意見(感想)として「フォローアップ会議では3つの統治機構を一元化するべしとの意見が何人かの意見から出ました。方向としては委員会設置に向かうと思いますが・・・」といったコメントが気になりました(私は審議経過について、あまり知りませんでした)。監査役制度に関するフォローアップ会議での議論がかなり薄かったことは理解しておりますが、監査役制度はもはや不要(会社法上の機関形態を指名委員会等設置会社に一本化して監査委員会制度に移行すべき)、という方向性なのでしょうか。

もし機関投資家からみて「監査役制度」に魅力がないのであれば、広い意味で(会社法の理屈は抜きにして)監査役も取締役会の監督機能を担う一環として捉えて、取締役会の多様性の構成要素として説明する工夫をしてみてはいかがでしょうか。月刊監査役4月号では、MHM法律事務所のM先生が「監査役とスキル・マトリックス」なる論稿で、監査役も(新たなガバナンス・コードで開示が要請されている)スキル・マトリックスの対象とすべきか、といった問題提起をされていますが、ぜひガバナンス・コードへの対応として、常勤、社外を問わず監査役の特性(属性)についても積極的に開示すべきと考えます。

また改訂ガバナンス・コードでは、取締役や監査役の情報入手の重要性との関係で「内部監査部門の充実」に光が当たっていますが、なぜ監査役専属スタッフの活用については記載がないのでしょうか。キャリアパスの一環として監査役室に専属勤務するスタッフの存在は、監査役制度の実効性を高めます。たとえば私が社外監査役を務める会社では、現在4名の監査役会専属スタッフが在籍していますが、そこから見える監査役の役割は明らかに(内部監査部門と連携する監査役の役割とは)異なります。そのようなガバナンスの状況が開示されないことは、投資家にとってはとても「もったいない」と思います。

社外取締役に経営者の監督機能を果たしてもらうことでエージェンシーコストをできるだけ少なくしたい、会計監査人や内部監査人が別に存在するのだから、それ以外の監査コストはできるだけ低減したい、という機関投資家の気持ちからすれば、「監査は取締役・監査委員の会合で代替できるのではないか」「情報収集は優秀な内部監査部門と連携すればよいのではないか」といった素朴な疑問が湧いてきても不思議ではないでしょう。といいますか、最近のガバナンス改革の流れからすれば、そういった意見が今後も強くなるような気がします。

しかし内部監査部門に優秀な人が集まれば集まるほど、人事評価の対象は「指導機能」であり、「保証機能(不正を探すこと)」から離れることになります(優秀な社員が集まる経営管理部が不正を全く見抜けなかったことは、東芝事件の第三者委員会報告書でも記載されていました)。監査役へのダブルレポートと言われますが、そもそも監査役が欲しい情報とCEOが欲しい情報とは当然異なるわけですから、監査役専属スタッフの収集する情報とは明らかに異なるわけです。

社外取締役が期待された役割を果たしているか、対話の際に説明する会社の業績情報に信用性があるといえるか、そういった市場に参加する競争条件に問題がないガバナンスであることを担保できるシステムとしては、年に数回開催される米国のような監査委員会ではなく、年16回程度開催される監査役会のほうが適切ではないか。そして監査役会制度のあり方は(もちろん実効性が評価されなければならないわけですが)最終的には投資家のエージェンシーコストを下げることにつながるものと考えます。

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2021年2月 9日 (火)

会計士協会・監査役協会共同声明-3月期決算への対応はむずかしい(と思う)

2月4日、日本公認会計士協会と日本監査役協会の連名で「2021年3月期決算への対応について」と題する共同声明が出されました(たとえば日本監査役協会HPより)。①新型コロナウイルス感染症拡大が企業業績に及ぼす影響から「監査リスク」を適切に把握すること、②在宅勤務が推奨されるご時世、直接訪問や対面による監査手続きに代わる手法を検討すること等が強く要望されています。

以前から申し上げているとおり、コロナ禍における監査手続き(とりわけ会計監査)が十分に実践できない状況はやむを得ないものなので、まちがいなく上場会社(およびそのグループ会社)における会計不正事件は増えているはずです(ただし顕在化するのは3年~5年後)。そのような会計不正の兆候を早期に把握するためにも、この時期に監査責任者の団体が共同声明を出されることについてはまことにタイムリーなものと考えます。

ただ、リアルな監査手続きの代替手法であるリモート監査や電子化書類の閲覧が、往査手続きと比較して監査リスクを低減させるに十分な手法であるかといえば、かなり厳しい見方をせざるをえないでしょう。その理由を以下3つ述べたいと思います。

まずひとつが五感で認識できる往査と画面越しで言葉、視覚、聴覚で認識できるリモート監査は不正の兆候を把握するには格段の差があるという点です。たとえばアイ・エックス・アイ事件(架空循環取引)の際、同社の監査役が「どうもおかしいなあ」と感じたのは、同社の開発したソフト(無形資産)が記録されていたCDが「廊下や倉庫のあちこちに転がっていた」という現状を往査で認識したことによるものでした(同社監査役の法廷証言より)。ホントに完成前の成果物であれば、もっと機密保護のための対策がなされているはずなのに・・・という素朴な監査役の疑問から、これは真剣に監査しなければとの思いが浮かんだのです。リモート監査では、このような状況は期待できません。

ふたつめが「会計監査人と監査役との協働」です。これはコミュニケーションという意味ですが、私はコロナ禍でも可能な限り、監査役と会計監査人とはリアルにコミュニケーションを図る時間を作るべきと考えます。たとえば昨年、私が第三者委員会の委員長を務めた事件(会計不正)では、同社の監査役と会計監査人との間で同じ不正を見つめながらも、その認識に齟齬が生じました。

1通の「取締役不正に関する提訴請求書」が監査役のもとに届くわけですが、その書面をみて、監査役3名は「某取締役の不正支出」(資金流出)の疑惑に関心を持ちました。その後のリモートによる会計監査人との協議会において、この提訴請求が話題に上りましたが、当該協議会では監査役の問題意識を共有しただけで終わってしまいました。もし、この協議会がリアルに開催されていれば、会計監査人は書面をみて「これは費用の項目に問題があり、計上すべきでない費用に計上されているために資産が不当に増えている(ソフト開発)、つまり虚偽記載が問題ではないか」との認識を早期に監査役と共有することができました(実際は会計監査人が指摘した事項が大問題でした)。監査担当者の問題意識の共有は、リモート会議ではむずかしいことを痛感しました。

そして三つめが電子化書類の閲覧の限界です。先日、こちらのエントリーで、ポーラオルビスHDの経営者が「株式譲渡契約書の有効性」を争う裁判(東京地裁)で敗訴したことを紹介しましたが、裁判所が「契約書は偽造」と判断する根拠となった証拠は、原告側(元社長側)が執念でつきとめた「作成日付けを遡らせた株価算定書」の存在が決め手のようです(ダイヤモンドオンライン記事転載のこちらの記事参照)。原告側は公認会計士らが使用した相続税申告書作成ソフトウェアを特定し、作成日付以降にしか当該ソフトは販売されていないので、物理的にバックデートでしか(当該株価算定書は)作りえないということを証明したそうです。

「ん?これってなんか変じゃない?」といった最初の疑惑は、用意された紙ベースの書類の綴じ方だったり、印刷の不自然さだったり、担当者の対応への違和感です。この違和感がなければ、上記のような執念の調査に及ぶインセンティブが生じません。あたかもチェックリストに丸を付けていくような定型的な監査手続きなら問題ありませんが、不正を発見するための監査には電子化書類のチェックでは限界があるのも当然かと思います。

もちろん、会計監査人によるAI監査の手法なども代替ツールとして考えられます。ただ、「おかしい」と声を上げるために必要な疑惑を抱けるところまでAI監査は進んでいるのでしょうか。もしそのような事例がありましたらご教示いただければありがたいです。

コロナ禍でも業績が回復してきた企業であれば誘因は少ないと思います。しかし、なかなか出口が見えない企業では、なんとしても業績を良くみせたい、と考えるのが経営陣の気持ちです。そのような状況で、たとえ不正が発見できなくても「おかしい」と声を上げるためには、ふだんよりも監査手続きが重要だという社内の共通認識が必要ではないでしょうか。つまり監査する側だけが熱心になるだけでなく、監査される側も歩み寄る姿勢がなければ会計不正事件の早期発見は到底困難、というのが私の意見であります。

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2020年12月29日 (火)

社外取締役だけでなく社外監査役にも光を当ててほしい(願望・・・)

本日(12月28日)の日経朝刊法務面に「都内でガバナンスサミット2020-社外取締役の役割を議論」という見出しにて、「企業統治関係者が一同に会した『ガバナンス・サミット2020』」におけるシンポジウムの様子が報じられていました。主に取締役会の在り方、機能、権限が議論されたそうで、関係者のお立場から有益な意見が多数披露されたそうです。

「攻めのガバナンス」として改革が進み、株主もこれを推奨しているわけですし、東証のプライム市場に上場する会社は取締役会構成員の3分の1以上を社外取締役が占めるようにソフトローで要請する、ということなので、社外取締役に光が当たるのは当然であります。その一方で(金融庁のコード検討会では今後議論されるのかもしれませんが)最近あまり監査役制度が話題に上らないのは少し寂しいところです。とくに上場会社の7割程度は監査役会設置会社であり、そこには2人以上の社外監査役さんがおられるわけですが、なんだか最近の話題から取り残されてしまった感があります。社外取締役が少ない時代には「独立社外役員」として、社外取締役とその機能においては同列に扱われていたと思いますが、各社に複数の社外取締役が就任する時代になった頃から、どうも社外取締役の「補完機能」的に扱われるようになったのではないでしょうか。

一般的には社外取締役よりも報酬額が低いにもかかわらず、会計不正事件等が発覚した際には、セイクレスト事件や(先日、最高裁判決が出た)エフオーアイ事件などのように社外監査役に「監査見逃し責任」が認められ、多額の損害賠償責任を負うことになります。平成20年に最高裁で確定したダスキン事件株主代表訴訟でも、社外監査役さんだけに損害賠償責任が認められています。不正に関する情報は「監査役会」で共有するのが通常ですから、「知らなかった」とは言えない立場にある以上、やむを得ないのかもしれません。ただ、今後は社外取締役さんも増えたので「不正リスク」については社外取締役さんとも共有していただき、社外役員全員で(セイクレスト事件のように)不正に関与した代表取締役の解任を求めるための取締役会の招集義務を尽くす必要があると思います。

(以前も書きましたが)ときどき海外の製薬会社の日本法人のお手伝いをするのですが、日本法人の社長である外国人経営者は(日本人の)監査役さんたちや内部監査部の方々のことをとてもリスペクトしているのです。「オオカミ少年ウェルカム」ですし「利益を生まない部署だから軽くみている」といったことは決してありません。

このままだと来年の株主総会では、さらに「監査等委員会設置会社」に移行する上場会社が増えて、監査役制度がさらにガバナンス改革の中で影が薄くなりそうで(私的には)やや不安であります。「こんな社外監査役さんがいるから不正が早期に発見できた」「二次不祥事を防止できた」といった事例はいくつか経験したのですが、私の職務上の守秘義務からお伝えできません。このあたりが「守りのガバナンス」の実効性を語るうえでむずかしいところですね。

最後にガバナンス改革との関係でひとことだけ個人的な意見を言わせてもらえば、KAM開示を含めた情報開示項目の急増やESG経営重視の傾向が強まる中で、社外監査役にはかならず(現行コードの「財務会計的知見」という甘いものではなく)「会計監査の経験を有する者」を選任するように改訂すべきです。平時において会計監査人のチェックをしたり、業績連動型の役員報酬の評価過程の合理性を判断したり、有事において会計監査人と意思疎通を図る場合には、本当にガバナンスの要として活躍するのは会計監査の実務を知っている監査役だと確信します。

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2020年8月 3日 (月)

東芝の定時株主総会を終えて-監査委員会に期待される「社外監査役」の役割

皆様ご承知のとおり、7月31日の東芝第181期定時株主総会におきまして、会社側上程議案がすべて可決され、株主提案についてはすべて否決されました。会社側の取締役候補者12名がすべて選任され、2名の株主側の候補者合計5名の取締役候補者は選任されませんでした。まだ議決権行使の結果(賛否の票数)については開示されていませんが、コロナ禍での株主総会について、まずは関係者の皆様の健康に支障が出ませんことを祈念しております(ご苦労様でした)。

本件について、私は完全な野次馬的な評論しかできませんが、これまでメディアや会社側リリースから伝えられる情報だけをみるかぎり、ほぼ予想された結論であります。ただ、取締役候補者の選任にあたり、議決権を行使する株主の皆様は、「監査」と「監督」の区別がどこまで理解されたうえで投票に至ったのだろうか・・・といった点について懸念を抱いております。

ご承知のとおり、東芝は「自他ともに認めるガバナンスの優等生」として、2003年に監査役会設置会社から指名委員会等設置会社(当時は「委員会設置会社」)に移行しました。そこには監査役(会)は不在であり、監査権限は取締役会から選定された取締役によって構成される「監査委員会」が組織的に行使することになります。つまり、監査委員会を構成する取締役の方々は、取締役会構成員としての「監督」機能と、監査委員会の構成員としての「監査」機能を果たすことになります。

では、東芝の「監査委員会」はどのように監査機能を果たすのでしょうか?米国のように監査委員会は年に数回開催されるだけで、内部監査機能をチェックする役割に徹するのか、それとも「監査役会」に類似した形で常勤監査委員が往査中心の監視・検証手続きに従事するのか、2015年の会計不祥事を踏まえて、今後どのように監査委員会の役割を果たそうとされるのか、会社側リリースを読んでもよくわかりませんでした。

会社側の社外取締役候補者の皆様も、当然のことながら見識のある方ばかりです。ただ、それは取締役会の構成員として監督機能を果たすうえでは申し分のない方々ですが、「監査」機能を果たすうえではどうなのでしょうか。それは東芝が(指名委員会等設置会社であるがゆえに)目指す監査の在り方が対外的に示されなければ判断できないように思うのです。

ここからは、野次馬の勝手な意見でありますが、私は2015年の会計不正事件(および事後の第三者委員会報告書の提言)、先日の循環取引への関与、そしてメディアで取締役会議長が「自分たちは9割やってきたつもりだが、世間からは信用されていない」(7月13日付け日経ニュース)と述べられたような「社会からの評価」を前提とするならば、今の東芝には「社外監査役」が必要ではないか、と考えています。たしかに社外取締役として選任される以上、経営を監督することも重要ですが、些細な兆候をもとに自ら業務執行を調査したり、その兆候を発見できないシステムがあればその不備を課題として問題提起するような監査役としての役割こそ、「監督機能」に活きるのではないでしょうか。

ちなみに7月31日にリリースされた経産省「社外取締役実務指針」でも、また、そこで参照されている平成31年9月28日改訂版「CGS研究会ガイドライン」でも、監査委員である社外取締役には、細かなコンプライアンス違反等の調査に関与することは、社外取締役の役割として「のぞましくない」とは書かれていません(CGSガイドラインには「本来、細かな業務執行に関わることはのぞましくないが、監査委員である社外取締役は除外する」とあります)。このたび東芝は、内部監査部門の増強を図るそうですが、そうであればぜひとも監査委員である社外取締役の方々には「社外監査役」に求められる役割を期待したいと思います。

そして社外監査役の役割を「守りのガバナンス」という言葉で表現する時代ではなくなりました。たとえば2015年の東芝の事件からの教訓は、①大型M&Aの意思決定過程の健全性、②社内におけるモニタリングのための情報共有、③ハラスメント(職場環境配慮)、④経理部門、監査部門への人事評価の在り方(指導機能と保証機能)、⑤不正の兆候発見能力(見て見ぬふりを容認する組織文化を含めて)等、守りと攻めの一体としての経営監督が必要、ということです。取締役の職務執行の監視・検証は、単なる「コンプライアンス」では済まないものであることを念頭に置いた監査活動が求められる時代であることを、十分に認識しておく必要があります。

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2020年7月 8日 (水)

KAM(監査上の主要な検討課題)導入は監査法人と監査役等だけで盛り上がってはいけない

当ブログも2005年から始まり、もう16年目に突入しておりますが、当ブログでこれまで一番盛り上がったネタといえば2006年から2009年ころにかけて、いわゆる「財務報告内部統制(J-SOX)」の準備期から施行初年度あたりでした。毎日のコメントが30通~50通ということで、私がコメントを一括してアップしていた時期もありました(金融庁批判のエゲツないコメントも含めて)。

そして2021年3月期の金商法監査において、またKAM(監査上の主要な検討課題)開示という新たな制度が強制導入されるわけですが(企業会計審議会、改訂監査基準 第四報告基準二2【2】)、「J-SOX狂騒曲」の最中に身を置いた者として、ぜひとも経営者の「やっつけ仕事」にならないように制度全体を盛り上げる必要性は高いものと考えております。

最近の「週刊経営財務」や「月刊監査役」などのKAMに関する特集記事等を読んでおりまして危惧しているのが「監査役や監査法人は盛り上がっているけど、主役にならないといけない経営者や投資家は盛り上がっているのか?」という温度差に関する懸念です。うーーーん、これって14、5年前のデジャヴ(既視感)ではないのかな・・・。

前にも一度ご紹介しましたが、週刊経営財務3396号(2019年2月18日号)の座談会記事「KAMをより意義あるものとするためには何が必要か」は、ここ数年の同誌の記事の中で最高傑作だと思っております。三菱商事代表取締役、日本電気監査役、そして日本公認会計士協会の常務理事3名のバトル(と申し上げてもまったく誇張ではないはず)は、立場の違いが「KAMへの想い」に如実に出ていて非常に勉強になりました(すいません、個人的には三菱商事の方にとてもシンパシーを感じました)。「投資家や株主といった監査報告書の利用者に監査の透明性の向上を図ることが一義的な目的」(日本監査役協会 Q&A集・統合版」5頁)とするのであれば、今期から強制適用されるKAMを、監査人や監査役等だけでなく、経営者や投資家の共有資産として活用しなければならないと思います。

しかし、その役割は誰が背負うのでしょうか。金融庁でしょうか、それとも東証でしょうか。J-SOXの時は金融庁や東証が積極的に広報して、(私も法曹代表として参加しましたが)「ラウンドテーブル」なども開催されました。それなりに効果はあったと思いますが、結局のところ内部統制報告書の中身は「金太郎飴化(またの名を「ボイラープレート化)」してしまいました。経営者にとっては、毎年の恒例行事となり、「やっつけ仕事」となり、不正が起きれば「内部統制はいったん有効としておいて、後から訂正すればよい」という実務慣行が定着してしまいました。これでは悲しい・・・。

ということで、監査役等(監査委員、監査等委員の取締役の方も含めて)の立場から言わせてもらえば、KAMの導入にあたり、監査役等は通訳(調整役)に徹するのが最も現実的な役割ではないでしょうか。たしかに制度上は監査人と並んで監査役等は主役です。しかし表舞台に経営者と投資家を引っ張り出してこなければならない。上記経営財務の座談会でも浮き彫りになりましたが、KAMへの期待ギャップを明らかにして、そのギャップを埋める役割を監査役等が担う必要があると思います。

「そんなことだったら有報の『事業上のリスク』の開示で足りるではないか」「そんなこと書いたら会社の不正が疑われるやないか。信用毀損も甚だしいではないか」「よくわからない監査過程を開示するくらいなら、もっと投資家に有益な情報を開示規制で増やせばいいではないか」といった意見に、監査役等が応える役割を担うべきです。

7月6日、某上場会社が「当社の無形固定資産の減損リスクに関する新潮社の記事はけしからん!訴えてやるぞ!」とご立腹のリリースを出しておられましたが、のれん等の無形固定資産の減損や引当金の合理性、繰延税金資産の評価、子会社株式評価、収益認識の基準等、「俺が会計基準だ」と自信満々の経営者はたくさんいらっしゃいます。KAM開示は「アラート開示」だと認識されている経営者もたくさんおられると思うのです。そのような現実を冷静に見つめて、監査人も経営者もお互いに譲歩して、最終的には投資家のための制度であることを理解したうえで制度を運用する必要があります(そういった譲歩をしたとしても、法的リスクの顕在化にはつながらないことの支援を法律家もすべきだと思います)。

すでに海外では「コロナ禍が事業に及ぼす影響を監査人がどうみているのか、KAMとして開示せよ」と当局が指導しているそうです。監査人と監査役等で盛り上がりたい気持ちもわかるのですが、KAM開示の制度を広く関係者の共有資産として、資本市場及び投資家の監査制度に関する信頼を向上させることができれば良いなぁと、ひそかに期待しております。そのためには関係者それぞれが「ほんのすこしずつ譲歩する勇気」が必要ではないでしょうか。

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2019年12月 4日 (水)

特定の取締役・監査役を狙い撃ちした損害賠償請求は適切な内部統制を崩壊させる

公認会計士の資格を有する監査役(会計限定監査役)さんが、一審(平成31年2月21日千葉地裁-合議判決)で監査見逃し責任に問われて5700万円の損害賠償金の支払いを命じられました。訴えたのは、経理担当の社員に2億7000万円を横領された会社でして、当該会社の監査役(会計限定監査役)さんを会社自身が訴えた、という構図です(損害賠償請求訴訟)。ちなみに、経理担当社員は10年間にわたって120回ほど横領を続けていたのですが、横領が継続していた頃の取締役や他の監査役は提訴しておらず、この公認会計士の資格をもった監査役さんだけが提訴されています。

そして、金融・商事判例1579号(2019年12月1日号)によると、控訴審(令和元年8月21日東京高裁判決)では、この監査役さんが逆転勝訴(一審原告の請求棄却)で命拾いされました。まだ上告・上告受理申立てがなされていますので確定はしていませんが、当該監査役さんにとってはまさに「地獄から天国」、苦悩の半年間だったでしょうね。2017年6月に、こちらのエントリー「監査役もフィデューシャリー・デューティーの時代?(その2)」において、安愚楽牧場事件に関連して会計限定監査役さんが一審で敗訴、二審(大阪高裁)で逆転勝訴した事例を紹介しましたが、判決のトーンが良く似ているように思いました。

地裁判決も高裁判決も全文が掲載されていましたので両方読みましたが、会計限定監査役さんの事例とはいえ、一般の監査役さんにも参考となる教訓が(地裁レベルでも高裁レベルでも)豊富ですね。上記判例雑誌には(編集の段階で)重要な個所には下線が引かれているのですが、私は下線が引かれていない、以下の東京高裁の判決内容にとても感銘を受けました(以下引用)。

・・・(略)ところで、使用人の不正を防止すべき第一次的な責任を負うのは取締役及びその指揮命令を受ける管理職(上司)たる使用人であって、会計限定監査役ではない。また、正確な会計帳簿を作成すべき第一次的な義務を負うのも取締役及びその指揮命令を受ける管理職(上司)たる使用人であって(会社法432条1項)、会計限定監査役ではない。・・・(中略)・・そうすると、本件各横領行為の発生については、会計限定監査役たる第一審被告よりも、取締役たる第一審原告代表者及び〇〇の方が、はるかに容易に防止することができる立場にあったものであって、取締役の善管注意義務違反こそ検討されるべきである。・・・(中略)・・このように、一部の取締役又は監査役だけを恣意的、狙い打ち的に損害賠償請求の対象とすることは、業務の適正を確保するための体制(内部統制システム)の規定の趣旨に反する。・・・(中略)会社の現在の取締役が、歴代の又は現在の取締役及び監査役のうち、恣意的に一部の取締役又は監査役だけを対象として、理由なく狙い打ち的に損害賠償請求をすることは、現在及び将来の取締役又は監査役に、会社(取締役会、代表取締役)に対する信頼感や善管注意義務を履行しようとするモチベーションを喪失させ、ひいては取締役の職務執行又は監査役の監査の実効性、効率性を損ない、会社の業務の適正の確保を危うくするものである。

要は社長に好かれる人であれば、不正に目をつぶっていても任務懈怠責任を問われない・・・そういった風潮が組織に蔓延してしまうと内部統制システムは骨抜きになってしまう、ということでしょうか(上場会社であれば株主代表訴訟によるけん制機能がはたらくものと思いますが)。

ちなみに、この東京高裁判決は、第一審原告の当該請求は信義則違反であり、権利の濫用でもある、とまで言及しており、会社側に対してかなり厳しい姿勢を示しています。他にもっと損害賠償請求が認められやすい取締役や監査役がいるのに、なんで社外の監査役だけを狙い打ちするのか?まずは歴代の社長を提訴しないこと自体が、現役員の任務懈怠、善管注意義務違反ではないのか?といった裁判官の声が聞こえてきそうです。最近は不祥事が発生すると、代表訴訟よりも先に「自浄作用」として会社自身が会社役員を提訴するケースもありますが、そういった場面でも被告の選定には合理的な理由が必要といえそうです。

こうやって高裁判決から読んでみますと、「ではなぜ千葉地裁は監査役の任務懈怠を認めたのだろうか」と疑問に思うわけですが、千葉地裁が監査役の任務懈怠を認めた根拠として、「日本監査役協会の監査実施要領やマニュアルにはこう書いてあるから」とか「日本監査役協会の新任監査役向けガイドにはこう書いているから」とか「日本監査役協会の元理事である〇〇氏の著書にはこのような行為規範が示されているから」というのがたくさん判決文に出てきます。これに対して東京高裁判決では、「もちろんマニュアルに書いてあるような行動は望ましいものではあるが、監査役の善管注意義務とは別問題である」と概要説明されています。

10年以上、日本監査役協会で研修講師を務めている私に向けられた警告のように感じました(笑)。なるほど、日本監査役協会の監査基準やマニュアルが判断基準として活用されることがあるとしても、ベストプラクティスであり、注意義務の水準をそのまま測るものではない、ということを改めて認識した次第です(たしかに会計士さんである以上は一般の方よりも高度が注意義務が求められそうですが、年間36万円の監査役報酬で5700万円の損害賠償義務というのもなぁ・・・)。

 

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