社外監査役の独立性と在任期間12年ルール
6月27日開催の定時株主総会において、会社でさえ「なぜ否決されたのかわからない」と驚いた総会ドラマがあったそうです(時節柄、議決権行使の賛否結果を話題にする当事者能力が私にあるかどうかはわかりませんが・・・ともかくコッソリご紹介します)。28日の夜に日経ニュースで知りましたが、計測機器等を手掛ける東証プライム上場会社において、これまで12年間社外監査役を務めてきた方(弁護士)の再任議案が否決され欠員が生じたため、9月に臨時取締役会を開催する、とのこと。会社側は否決の理由について「議決権行使の内容を精査中でありコメントは差し控える」そうですが、総会で諮った監査役選任議案への賛成比率は49.62%にとどまっていたことが明らかになっています。なお、会社側は当該社外監査役さんが勤める法律事務所に弁護士報酬などの支払いがあるようで、その旨定時株主総会の招集通知には記載しておられたようです。
社外監査役さんが60%程度の賛成比率で冷や汗をかいたというのは、主に(出身母体組織と当社との)利益相反のおそれがあるとの理由で反対票が増えたケースに見受けられますが、否決にまで至るケースは異例です。株主構成にもよりますが、おそらく今回の事例では利益相反問題よりも在任期間が12年を超えるために、「もはや独立性なし」として機関投資家の議決権行使基準に抵触するところが大きかったのではないでしょうか。
そういえば機関投資家の議決権行使基準の中に、社外監査役(社外取締役監査等委員)の独立性基準として、在任期間が12年を超える場合は反対票を投じるというものがポピュラーになってきましたね。この点を会社としても監査役さんとしても、開催前には少々楽観的に考えておられた可能性があるかもしれません(ふつうは事前の議決権行使結果によって、今年はアブないかも、とわかりますし、会社側としても賛成可決に向けて何らかのお手伝いをしますよね)。まさに青天の霹靂だったかも。
当社株主総会には30名程度の株主の方々がリアル出席されていたようですが、株主総会当日は「会社側からなにも説明がなかった」とヤフー掲示板では報告されています。株主総会終了時点では監査役選任議案が否決され、定員割れで再度総会を開ねばならない事態は、本当に予想していなかったのかもしれません。事前の議決権行使状況から「これは監査役選任が危ないのではないか」と気がつかなかった、ということが、全社的なリスクマネジメントとして大丈夫だったのか、一抹の不安を感じます。それにしても日本の上場会社において、社外監査役さんが選任議案上程時にすでに3期12年の任期を全うしておられる会社も結構あるのでは、と思うのは私だけでしょうか(日本監査役協会あたりは統計データをお持ちではないかと)。ちょっとコワいなあと感じた次第です。