2005年10月 8日 (土)

住友信託・UFJ 和解の行方(2)

先週、MUFGと住友信託の統合差止め・損害賠償請求訴訟の和解について、いろいろと予測いたしましたが、やはりMUFG側は裁判所による和解勧試に応じない方向にあることが日経で報じられています。地裁レベルではありますが、裁判所は50億円程度による解決金支払いによって、和解を勧告した模様です。当時、住友信託がUFJ信託銀行との統合の準備費用として実際に要したのは数億円程度、ということですから、この金額を超える和解というのは、どうもMUFG側としては株主代表訴訟に耐えられない、と判断したようです。なお、当事者間での現状の利害関係を図式化すると以下のようになるでしょうか。

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(ただし、平成17年10月8日現在)

MUFG側は数億円程度、住信側は100億円程度が和解による解決のラインだと考えておられるようなんで、50億円程度というのが、どういった経緯で裁判所から提案されたのかは不明ですが、ここへ到達するには双方の株主への説明責任を意識した判断理由が必要となります。ここで和解ができないと、地裁判断、そして高裁判断までは司法判断を仰ぐ形となり、そのうえで「勝負あった」ところでの決着となる可能性が高くなりそうです。ただし、上の図でも示しましたが、もし判決で住友信託側の損害賠償金額が極めて低額しか認められない場合には、住友信託もしくは住信側株主から、当時のUFJおよび三菱の取締役個人に対して、(独占交渉権を侵害したことで、住信側の株価が一気に低迷した、など)不法行為責任を追及する損害賠償請求訴訟が提起される可能性も出てきますので、相当長期に及ぶ紛争期間を覚悟しなければなりません。(ほかにも、UFJの株主側より、UFJ側に対して、住友信託との独占交渉権を安易に結んだために、損害賠償を払わねばならなくなったことへの責任追及訴訟、というものも考えられるかもしれません)

また、そもそもUFJ信託が、どういった事情で独占交渉権を破棄するに至ったのか、そのあたりは事実に争いがあるんでしょうかね。つまり、金融庁の検査によって、たとえUFJ信託部門をUFJ銀行が3000億円で売却しても8%ルールに満たないということが判明したために、あわてて一方的に破棄したのか、それとも東京三菱側と接触したうえで、やっぱり東京三菱とくっつくほうが得策と判断して破棄したのか、という点です。このあたりの判断によっては、後日の取締役責任追求の対象が変わってくる余地もあり、こういった点も裁判所で事実が認定されることで、明らかになってくる争点のように思われます。こういったことを考えておりますと、この50億円という和解解決金の中に、取締役等の責任追及の紛争解決問題まで含めて考えることは、取締役自身の責任回避にもつながりかねない問題ですから企業利益との利害相反が生じる可能性も出てきそうです。(会社と取締役との利害相反問題だけでなく、同じグループ企業でありながら、認定される事実によって、旧UFJの取締役だけが訴えられるのか、東京三菱側の担当者も訴えられるのか、結論が分かれることになりそうですね。MUFG側が、いままでどういった「独占交渉権破棄」に至った事情を主張してきたのか、実に微妙な問題であり、極めて興味を引くところです。)

こういった諸事情を考えますと、やはり企業コンプライアンス、という面を重視するならば、企業間の法的紛争については、その敗訴リスク(損害賠償の範囲は信頼利益に限られるか、それとも履行利益までを含むのか)を冒してでも、判決を出してもらって、その判断内容にしたがい、その後の取締役個人への責任問題については別途応訴する、と考えざるをえないように思われます。(いまから考えますと、あの交渉差止めの仮処分事件で、原審や地裁の判断が分かれた、という事実は、どちらの取締役にとっても、ラッキーな結果だったように思います。明らかに違法な行動に出た、とは第三者からみて言えないわけですから)

裁判所もしくは、どちらかの代理人から、こういった利害状況にある紛争を一気に解決できるような「ウルトラC」の提案が出ることも、少しばかり私は期待しておりますが。。。

10月 8, 2005 住友信託・UFJ和解の行方(2) | | コメント (0) | トラックバック (0)