TBSは楽天を「濫用的買収者」とみなすのか(その3)
本日のエントリーのタイトルから「おや?(その1)とか(その2)はあるの?」というお声が聞こえそうでありますが、(その2)のエントリーをアップしてから、すでに1年半が経過しております。今こうやって1年半前のエントリーを読み直しますと、かなり赤面モノでありますし、ずいぶんエラそうな書きぶりでして、何様かと思われそうです。しかしながら、このエントリーには中山龍太郎弁護士(当時47thさん)がコメントを付けておられますが、今読み返しても誠に的確であり、いまさらながら、「ふぉーりん・あとにーの憂鬱」の偉大さを感じる次第であります。(そういえば、あの頃はまだ「ビジネス法務の部屋」のアクセス数もそれほどでもなかったように記憶しておりますし、エントリーの気楽さ、というものが行間から滲み出ているように思えますねぇ。)
エントリー(その2)では、TBSの買収防衛策があまり適切ではない、といったことをエラそうに書いておりましたが、その結果だけは当たっていたのか、この平成19年2月に、防衛策の内容が手直しされています。本日(4月19日)、1年半の提携交渉が行き詰まった末に、楽天側がTBSの株式を保有割合で20%超となる買い増し宣言をされたようで、またにわかにTBSによる買収防衛策発動の可能性が話題になっているようであります。1年半前のエントリーを読み返しておりますと、なんだか目の前には「司法判断」への関心ばかりが感じられたのでありますが、昨今の防衛策を取り巻く状況などを鑑みますと、別の要素も浮かんでくるように思えます。
まずは「天下のTBS」の防衛策であること。本日、民放連は全員一致で関西テレビの除名処分を決定しましたが、このブログでも取り上げましたように、あの第三者特別委員会の調査報告書の内容からしますと、テレビ局(とりわけキー局)の公共性といったものは他の一般私企業とはわけがちがうようですね。どうも「株主価値の最大化」という慣用句は使いにくく、「視聴者を含めたステークホルダー全体の利益の最大化」とでも語っておかねばならないような存在です。ましてや、TBSは不二家報道における「朝ズバッ」謝罪事件の直後でもありますし、テレビ局が社会的責任をまっとうしつつ、株主の価値を向上させなければならない、といった事業計画の説明は事業の継続性のための必須条件でしょうし、そのぶん、他の一般私企業だと問題になりそうな敵対的買収防衛策であっても、放送局の公共性、表現の自由の担い手としての責任、といったところを考えますと防衛策を導入する側にはいくぶんかのアドバンテージがあるような気がいたします。放送局は、三角合併の荒波に飲まれてはいけない、といったような政策的配慮というものが、どこかに感じられる現在の社会情勢ではないでしょうか。
ふたつめに、この「アドバンテージ」でありますが、法廷闘争に発展したときのアドバンテージなのか、委任状獲得競争に至ったときのアドバンテージなのか、見極める必要が出てきたように思います。(たとえば取締役会にある程度の裁量権があったり、独立第三者委員会の構成メンバーの利益相反性、社外取締役の独立性といったあたりの要素が、法的に問題になるのか、株主から歓迎されないといったレベルなのか)いずれにしましても、楽天のリリースのなかで、興味深いのが防衛策導入に株主総会の特別決議を要求する定款変更議案の理由(株主提案権行使書)であります。楽天側が提案理由として掲げておられる7つの項目につきましては、これまで事前警告型の買収防衛策を導入した企業やコンサルタントの方々はたいへん注目されているのではないでしょうか。このまま司法判断に突入したり、委任状獲得競争に至った場合には、たいへんな影響が出るかもしれませんね。私はここに掲げられている理由は、どちらかといいますと委任状獲得競争に対しては楽天にアドバンテージがあるようにも思いますし、外国人投資家、機関投資家の持ち株比率が多い企業であれば面白いかなと考えますが、安定株主が6割ともなりますと、さて、どうなりますかね。いずれにしましても、この1年半でどういった話し合いがなされたのか、そのあたりを知りたいところです。また、もう少しお話が前に進んだときに、(その4)をアップしたいと思います。
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