2007年6月19日 (火)

会計帳簿閲覧謄写請求の仮処分

楽天によるTBSの会計帳簿等閲覧謄写請求の仮処分が、東京地裁で却下され、本日即時抗告をされたようであります。仮処分決定全文は読んでおらず、報道ニュースからの情報だけしかわかりませんので、推測の域を超えておりませんが、楽天側は閲覧請求の目的物についての閲覧謄写権があること、TBS側に閲覧謄写を拒絶する正当理由が認められないことについては裁判所が認めたものの(つまり被保全権利は認めるというもの)、仮処分によってまで認めなければならないほどの株主としての著しい権利救済の必要性は認められない(つまり保全の必要性は認められない)といった理由だったそうであります。そもそも会計帳簿の閲覧請求の仮処分といいましても、いったん閲覧を認めてしまいますと、本訴訟で勝訴したこととまったく同様の利益を楽天側が取得してしまうことになりますので(いわゆる満足的仮処分)、仮処分を利用する側にとりましては、かなり厳格な要件該当性が必要となってくるものと思われますので、TBS側が拒絶事由をまったく主張しない場合とか、株主総会による議論をまっていたのでは、回復しがたい個人としての株主権侵害を主張する場合、株主総会による多数派決議によって、少数派株主が一方的に不利益を受ける場合など、この時期に閲覧謄写を認める高度な必要性がないかぎり、なかなか仮処分による楽天側の満足は得られないものと思われます。

それでも楽天側が「即時抗告」によって、緊急に会計帳簿閲覧謄写にこだわる理由は、買収防衛策の一貫としての大株主との株式の持合依頼が、会社法の禁止する「利益供与による株主権行使依頼」に該当するのでは・・・との疑念に対する調査や、総会で議決権を行使する株主が自由意志によるものかどうか、といった点を調査する必要性が高いとの判断からのようであります。しかしながら、これらの調査結果は、後日司法判断を仰ぐ際に(たとえば代表訴訟提起の前提とか、敵対的買収防衛策導入や発動の是非を争う裁判の前提とか)利用すれば、閲覧謄写権を少数株主権として認めた趣旨はまっとうされるのであって、総会における議論の前提としてまで利用されることは妥当ではない、といった裁判所の判断があるのかもしれません。したがいまして、即時抗告審では、司法判断ではなく、総会における株主の判断の前提として会計帳簿を調査しなければ、株主権が回復困難なほどに侵害されてしまうことを説得的に立証しなければならないと思われます。

ところで裁判所は何を考えながら保全の必要性なし(株主にそのまま本訴訟での救済をはかっていては回復困難な権利侵害が発生する、とまではいえない)といった手法で却下したのでしょうか?先に述べたように、純粋に会計帳簿閲覧権の法的性質(経営管理のための株主の権限ではあるが、それは後日の訴訟資料収集の機会を株主に付与したもの)からなのでしょうか?それとも別の意味がこめられているのでしょうか?たとえば、敵対的買収防衛策の是非といったものは、総会で承認されることはあまり大きな意味はなく、防衛策導入の経緯やその仕組みなどについて、導入後や発動後に司法判断で検討すれば足りる、したがって、総会での承認を排除しなければ反対株主の権利救済が困難になるというわけではない、といった意味はないのでしょうか?・・・・・いろいろと疑問点が浮かぶわけでありますが、ともかく決定文の内容が判明しておりませんので、あくまでも推測ということで。

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2005年10月14日 (金)

TBSの買収防衛策発動の要件

今日(10月14日)の日経夕刊の一面では「TBS 統合の妥当性、協議へ~楽天の提案受け第三者機関と」の見出しで、TBSは買収防衛策発動の是非を判断する第三者機関「企業価値評価特別委員会」委員と協議する方針を固めた、という記事が掲載されました。

TBSは14日、楽天による株大量保有と共同持ち株会社方式での経営統合の提案を受け、近く買収防衛策の発動の是非を判断する第三者機関「企業価値評価特別委員会」委員と協議する方針を固めた。楽天の株保有比率は15%強で買収防衛策の発動基準の20%には満たないが、楽天の株保有と提案が妥当かどうか助言を仰ぎ、同社との交渉に応じるかの判断に役立てる方針だ。

 特別委はTBSが5月に新株予約権発行による買収防衛策の導入を決定した際に設置を決めた。社外の取締役、監査役、専門家の7人で構成し、防衛策発動の是非を判断する。TBSは委員に楽天による株取得の経緯や提案内容を説明する。

ところが、今夜のTBSのリリースでは、一部報道にあるような企業価値評価特別委員会でへ諮問するような事実はない、と明確に否定されております。私としましては、このTBSの素早い対応は当然のことと思います。

昨日も「TBSは楽天を「濫用的買収者」とみなすのか?」というエントリーの題名にしておりますが、報道はとりわけ楽天の持株比率が20%を超える場合には、すぐにでも買収防衛策が発動されるような書き方をされておりますが、いささか論点がずれていると思われる話でして、たとえ楽天が20%を超える保有株式を取得したとしましても、防衛プランに関するTBSのリリースによれば、まず楽天が「当社に対する買収者または買収提案者」に該当するかどうか、という前提問題があり、さらに買収提案者に該当すると判断されるとしても、「濫用的買収者」に該当するかどうかは、極めて厳しい要件を満たすものかどうか、チェックしなければならないこととなっています。

そこで、まずこれまでの一連の楽天の動きだけで、TBSにとっては「買収提案者」と決め付けていいものでしょうか?リリースをよく読みますと、まず買収提案者と決め付けないと、TBSは第三者機関たる「企業価値評価特別委員会」へ諮問することができないことになっているようです。つまり、TBSが楽天を「買収提案者」と決め付けることは、すなわち「敵対的」な相手方との交渉モードが高まることは間違いないわけでして(「濫用的買収者」かどうかを、いろいろな事前交渉によって検討する手続きが楽天との間で開始される)、この日経の報道が正しいとするならば、すでにTBSが楽天について「買収提案者」だと認定したことになってしまうのではないでしょうか。(少なくとも文面からはそのように受け取られますよね)現段階で、このように戦闘モードをTBS側から示す、というのは理解できないところです。(本日、TBSは「楽天は20%以上の株式を保有するつもりはない、と明言した」ともリリースしているわけですし)また、そもそも、この防衛プランでは「事前対応の開始、検討開始事由の充足および各プランの発動の有無」まで、すべて適時公開いたします、と宣言されているわけですから、この報道を否定しておかないと、いきなりTBSの「お約束違反」になってしまうことにもなります。

さらに、一番肝心なところですが、現時点で「濫用的買収者」の要件該当性を第三者機関の判断に委ねる、ということは、これから先の楽天や村上ファンドの動きというものを、その判断材料として使えないという失策につながってしまうように思います。防衛プラン発動の可否を検討するにあたっては、もうすこし先に発生する(発生が予想される)事態までを含めて「濫用的買収者か否か」を判断するほうがTBSにとっては得策でしょうし、その要件該当性が極めて厳しいこと、さらには該当性判断過程を公表しなければならないことを考えますと、いささか時期尚早ではないか、と考えられます。

こういったことから、TBSは素早い対応において日経夕刊の記事内容を否定したものと思われますが、さらに日興プリンシパル・インベストメンツ(NPI)に800億円分の新株予約権を発行する防衛策の効果がかなり限定的である、との記事は、私としましては、かなり説得性があるように思いました。(フジサンケイビジネスアイの本日記事です)

TBSが毒薬条項 「防衛策」発動に焦点 効果は限定的

この記事の分析が正しいとするならば、買収防衛プランというのは、買収策のスキームだけに拘泥するのではなく、株価予想などを含む実際の買収時を想定して、その効果予想までを正確に把握しておかねばならないことが認識できます。といいますか、こういった効果予想まで、敵対的買収者にしっかり戦略に組み込まれるところに「事前警告型」の防衛プランの弱点が垣間見えるようです。

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