2014年3月19日 (水)

上場子会社の独立社外取締役に就任しての感想

本日、株式会社ニッセンホールディングスの第44回定時株主総会におきまして、取締役に選任されました(2期目)。役員の体制は社内取締役6名、社外取締役5名(うち、独立役員届出は3名)です。なお、総会ではなく会社説明会のほうでしたが、「女性の活用状況」に関する質問が出たのはダイバーシティの認知度が高まったことからでしょうね。

ご承知の方もいらっしゃるかとは思いますが、今年1月、ニッセンはセブン&アイホールディングスグループの子会社(50.7%)となり、このたびの総会では、セブングループからは副社長(社内)と社外取締役2名が選任されました。セブングループ出身の社外取締役のお二人は、日本のネット流通(オムニチャネル戦略構想)のカギを握る有名な方々なので、これからも良い刺激を受けたいと思います。

ただ(これは一般論として、ですが)、親会社が存在する上場子会社の独立社外取締役というのは、かなり難しい立ち位置ですよね。49.3%の一般株主の利益の代弁者という地位を忘れず、かといって今後は大株主の経営を自社に活かしながら、株主総体としての利益向上を考えなければならないということになります。

もちろん業績が良ければ親会社の経営方針との軋轢は少ないものと思います(親会社と潜在的な利益相反にある一般株主の利益を不当に親会社が吸収するような行動について意見を述べることは当然ですが)。しかし業績が芳しくない場合には、微妙に社外取締役の立場と親会社の経営判断との間に意見の食い違いが生じる可能性が高くなります。東証のコーポレートガバナンス報告書で開示しなければならない「支配株主との取引に関する少数株主保護の指針の履行状況」ではちょっとわからないような、微妙な問題も含まれることになるのでしょう。理屈の上では、いつも仲良くさせてもらっている会社の顧問弁護士の方に相談できない状況・・・ということもあるのかもしれませんね。

会社法改正論議の中で、社外取締役の役割、機能というものが話題になっていますが、現実の世界では各社それぞれに社外取締役の役割、機能は異なるものだと確信しています。親会社を含め、会社側が求めるものを理解しつつも、社内で実務を積んで、社外取締役としての立ち位置を考えること、この制度を「お飾り」や「投資家へのアリバイ」にしないためには、どちらの立場からも「社外取締役の活かし方」を真剣に考えることが求められていると思います。

自社の状況について、ここで具体的に書くことはできませんが、ここ2,3カ月、長年築き上げられた企業文化の中に、他の企業文化が導入されることの驚きを目の当たりにしています。「外の風」がどのように社内の暗黙知に風穴を開けるのか、これをきちんと洞察することこそ、今の自分に課せられた社外取締役としての役割だと認識するところです。

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2014年1月29日 (水)

社外取締役が不祥事防止に機能するには条件がある

昨日、一昨日と、企業不祥事(企業の危機対応)についていろいろと書き連ねましたが、企業が有事に至ったときに社外取締役は機能するのだろうか・・・ということは、よく議論されるところです。一昨年のオリンパス事件の際、3名の社外取締役の方々が、不祥事防止には機能しなかったと言われています。日頃は社長と懇意にしていることから、有事になってもモノが言えない、ということでは社外取締役としての役割は果たせないことは間違いありません。

しかし、社外取締役が有事にモノが言える方がいらっしゃるとしても、そもそも「有事意識」を他の取締役さんと共有できなければモノが言いたくても言えません。私が仕事でいろいろな取締役会をみていて感じるのは、「取締役会で議論すべき事項が、本当に取締役会に上程されているのだろうか」という点です。私はどんなに素晴らしいコーポレートガバナンスを構築している企業であったとしても、この役員会への上程事項に問題があればガバナンスは機能しないと思っています。これは不祥事防止という意味でも、また企業価値向上という意味でも、社外取締役や社外監査役が有事意識を共有して議論しなければならないことが、本当は上程されていないのではないか、社外役員や監査役会に「つつかれそうな事項」は、執行役員会議や常務会等で議論されているのではないか、という問題です。

企業不祥事を世間に公表すべきかどうか・・・という問題など、まさに社内の取締役にとっては利益相反行為です。その公表の是非を社外役員を含めて論議すべきであるにもかかわらず、社内調査の結果が別の会議体で報告され、社長決裁で済まされるということは十分にありうるところです。したがって、本来は①独立取締役が参加するに至った時点において、きちんと取締役会上程基準が見直されているか、②誰がどのような責任において上程基準の判断を決しているのか、③その判断についてはPDCAによって検証される機会が確保されているのか、という点はとても重要だと考えます。こういった取締役会上程基準が健全に運用してこそ、社外取締役は有事意識を共有することが可能となるために、不祥事防止や企業価値向上のための経営判断において有効に機能するものと思います。

本来、取締役会にきちんと議題が上程されているかどうか、といったことは社外取締役自身が気をつけていなければならないことですが、ガバナンスの「見える化」という視点からすると、社外取締役が取締役会の充実に寄与するためには、常勤監査役の存在も大きいと思います。取締役会以外の重要会議に参加し、また社内で発生している問題にもアクセスしうる立場にあるので、取締役会への上程基準の運用に不審な点があれば、常勤監査役から問題提起がなされる可能性があります。会社法改正によって新設される監査等委員会設置会社では、常勤の監査委員たる社外取締役は任意設置となりますが、本当に利益相反行為に関する取締役会の判断が確実になされるためにも、私は常勤の監査委員の存在が不可欠だと思います。もちろん管理部門の取締役さんが信用できない、というわけではなく、そういった保障装置の存在は、外から見ても安心できるガバナンスだからです。

今回は取締役会への審議事項、報告事項の上程基準について述べましたが、同じような状況は親会社による子会社管理にも言えると思います。子会社管理といっても、実際に下から上がってこなければ管理できないと思います。今後、財務情報だけでなく、非財務情報についても企業価値創造との結びつきが開示される機会が増えてくるものと予想しています。監査役制度や内部監査制度などが、当社のビジネスモデルが抱えるリスク管理にどう役に立ち、それがなぜ企業の売上向上、原価管理、そして経費節減に役立つのか、報告責任が求められます。ガバナンスの「見える化」「言える化(説明できること)」が益々問われる時代になるものと理解しています。

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2013年12月19日 (木)

社外取締役制度と平田オリザさんの「演劇入門」

(12月19日午前 追記あります)

私も社外取締役に就任してもうすぐ1年(もう一社は半年)になるわけでして、ときどき「社外取締役としての経験談を聴かせてください」といったご質問も受けるようになりました。とくに会社法改正法案が来年の通常国会で成立する(たぶん)・・・といった状況になり、上場企業各社において「自民党による修正案」が話題になっているところなので、質問される方も真剣そのもの。

法律家的な関心(たとえば社外取締役を選任することが相当でない理由の説明に関する会社法条文への格上げ等)は、法律雑誌における著名な先生方の解説に譲るとして、社外取締役が本当に企業にとって有用な存在なのか、ということへの独断的な見解は、私自身も少々持ち合わせているところです。これは学者の先生方や経済団体の方々がおっしゃる理念的なものとは少し違います。「制度理念の実践とは少し違うかもしれないけれど、それでもこういった重要な側面はあるかなぁ」という類のお話でして、一社あたり月に2回ほど会社の重要議案の審議に対面する者として、結構まじめに考えているものです。

当ブログにトラックバック(もはや死語に近い?)していただいているのですが、あまり目に触れないかもしれないので、あえてご紹介しますが、このあたりのことを活字フェチ弁護士さんがブログで書かれており、私もいたく感じるところなので、(ご本人のご了解を得ずに)ご紹介する次第です。賛否はあると思いますが、ぜひご一読をお勧めいたします。なるほど「平田オリザ」ですか。。。これは読まねば。とくに法律専門職で社外取締役に就任する方には向いているかもしれません。

私自身、先日のセブン&アイHD社から受けたTOB、および同社への第三者割当、といった有事についての社外取締役の役割については(かなりしんどいですけど)割とやるべきことが明確なので、それほど悩むことはありません。では、そういった有事ではなく、平時の社外取締役のあり方ではどうでしょうか。

最近、社外取締役として思うところは「この会社にとって自分が存在して(それなりに)意味があるための『出口戦略』ってなんだろう」といったあたりのことです。出口(パフォーマンスの出し方)を模索して、自分なりに存在価値を考えて、そのための今日の自分のふるまいを考える。いまの自分のふるまいを起点として、「ベストプラクティス」をはめこんでしまうと、自分の中の常識らしきものを会社に押し付けてしまうことになってしまう気がします(社外役員の常識≠世間の常識・・・、うーん、これはたしかに活字フェチ弁護士さんのご指摘のとおりかも・・・と、最近私も懐疑的になっています)。

半年ほど取締役会や執行役員会議に出席していれば、その会社の「暗黙知」がなんとなくわかってきます。何がその組織を動かしているのか、この会社がこれまで大きく成長する要因となった「お約束事」があるわけで、それは素晴らしくもあり、また新参者には異様にも思える。「社外の常識」などといった抽象的な概念で比べることへの畏れを感じます。その「暗黙知」こそ、社外役員が匂い(臭い?)として感じなければならないわけで、その匂いから自分なりの出口戦略を模索するようになります。

その場の状況から「社外取締役のベストプラクティス」に忠実にふるまう・・・、それはそれで社外取締役制度の根幹からすると正しいのかもしれませんが、それで役員会に何らかの影響を及ぼせたとしても、ではこれから先、本当に経営企画的な問題を真剣に考える為の情報が入ってくるのでしょうか?投資家に対する「アリバイ工作」以上の意味をこの会社に残せるのかどうか、とても不安になります。

活字フェチ弁護士さんは事務局と社外取締役との関係で述べておられますが、実際に就任してみると、他の社外役員との関係でも、みなさん生きてきた道が違いますから「コンテクストのすり合わせ」の必要性を強く感じるところです。そういった「コンテクストのすりあわせ」を社外取締役や監査役さんとの間でもつけていきながら、その会社における立ち位置を見つける作業ができる人・・・・・、これがまず社外取締役に向いている人ではないかな、と。。。また結論的には同業者の方に叱られそうな雰囲気になってしまいましたかね(笑)

関西系の上場会社の社長さん方は、ときどきおもしろいことをおっしゃいます。

「社外取締役ってようわからんわ。先生の言うような役割を果たしてくれるんやったら、私より高い金払って社内取締役になってもらったらええやんか。ホンマにうちの会社のことを思って辛口のこと言ってくれはるんやったら、ナンボでも頭下げて来てもらいますわ。社外なんてもったいないですやん!」

これが社外取締役制度のホンネとタテマエの妙に対する鋭いツッコミかと(^^;;

あまりのタイミングにビックリですが、今朝(12月19日)の日経新聞33面「辛言直言」で平田オリザさんのインタビュー記事が掲載されています。「対話と会話は違う」・・・なるほど。

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2005年10月16日 (日)

独立取締役コード

いつも拝読させていただいているLaw Maniacのminoriさんのブログで、日本取締役協会の社外取締役委員会から10月13日付けで「独立取締役コード」が発表されたことを知りました。けっこう平易な文章で、読みやすい程度の分量で書かれておりますので、興味をお持ちの方はご一読ください。公開企業における独立取締役の「ミニマムスタンダード」を示したもの、とされています。「社外取締役」という言葉が、現商法や新会社法などで公式のものとして使われるようになり、その定義付けというのも明確化してきましたが、その社外取締役の要件だけでは不十分であるとして、コーポレートガバナンス理論との関連で、最近は「独立取締役」という言葉が区別して用いられるようになりました。

この「独立取締役コード」で示されたミニマムスタンダード、というものも、基本にはアメリカの社外取締役の「独立性」を模範として示されたものではないか、と思います。厚生年金基金連合会など、機関投資家からみて導入が好ましいとされております「企業価値の向上にとって有益であるとされる社外取締役の条件」などとも共通するところがあるようです。私個人の感想は下記のとおりです。

4-1 取締役会における独立取締役の員数は、独立取締役が取締役会において相応の影響力を及ぼすことができるようなものとすべきである

これは以前のエントリーでも書きましたが、そのとおりだと思います。ニッポン放送の19名中4名の社外取締役の影響力と、UFJ銀行の拮抗した人数の社外取締役とでは、その後の委員会(役員会)運営にとって、非常に異なる動きとなったことからみても、人数比率が取締役会に大きな影響を与えることは事実でしょうね。ただ、業績のよい公開企業が、ここまで大胆に踏み切ることができるかどうか、かなり現状では困難な気がします。

5-2 独立取締役のうち少なくとも1名は、最高経営責任者もしくはそれに準じる者、またはその経験者とすることが望ましい

この要件をみたとき「ああ、やっぱりお目付け役、のような立場の人を求めているんや」と感じましたが、実際に解説を読んでみますと、ちょっと観点が違いました。そもそも、独立取締役に就任する人は忙しい人が多いために、おそらく職務時間の確保や情報収集力の点で限界があるであろう、それならばなるべく問題発見能力に長けた人に就任してもらうのが効率的である、そういった問題発見能力というものはおそらくCEO経験者こそ備わっているだろう、ということが本質の理由のようです。うーーーん、本当にそうだろうか?と疑問を抱かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、解説でも「次善の策」として要件化した、とありますので、「なるべく探すようにつとめること」くらいに解釈しておいたほうがいいかもしれません。

経営者の親しい友人は最良の「社外取締役」か?

この要件は、社外取締役委員会のなかでも、いろいろと議論あったそうです。親しい友人は経営者からの独立性があるとはいえない、という立場と、真の友人ならば経営者の耳に痛いことでもいえるだろうから、独立取締役としては適任である、という立場。結局は、要件には含めなかったそうです。そもそも「親しい友人」とか「真の友人」というのが、どういった友人ならば該当するのか、ムズカシイですよね。(笑)経営者は「真の友人」と思っていたのに、実は社外取締役はそう思っていなかったりしたら、ちょっと悲しいですし、ぎゃくに「社外取締役」として役員になってから、経営者と「親しい友人」になる場合だってあるわけですから、かなりあいまいな要件になってしまいそうです。ハズして正解だったのではないでしょうか。

こういった独立取締役コードがリリースされたわけですから、各企業において、このコードへの印象などをアンケート調査していただけるとおもしろいと思います。ただ、次期経団連の会長さんなどは、「独立取締役」導入にはあまり積極的でない方ですから、証取法の改正や取引所規則の改正などでもないかぎり、企業が自主的にこういった独立取締役導入へ動くといった風潮が根付くかどうかは疑問です。このたびのTBSの企業価値評価特別委員会のメンバー(7名)のなかにも4名の社外役員さんがいらっしゃいますが、こういった重責を考えますと、就任には相当の覚悟も必要ではないか、とも思いますし。

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