2005年10月20日 (木)

村上ファンドと阪神電鉄株式(その2)

巷では、どちらかといいますと「楽天とTBS」のほうに話題が集中しているようですが、村上世彰さんが40%の株式を保有する阪神電鉄について、すこしばかり話を戻したいと思います。10月4日付けで、私は村上ファンドと阪神電鉄株式というエントリーをアップいたしました。ほとんど内容に乏しいエントリーですが、いろいろな方にコメントやトラックバックを頂戴いたしました。阪神淡路大震災で被害に遭い、福知山線事故のショックが残る阪神地域において、この公共交通機関の経営においてはどうしても避けて通れない問題は耐震対策と安全対策です。村上世彰さんが、株式取得に関する報道よりも以前、まず真っ先に国土交通省に行かれて、担当職員と阪神電鉄の交通安全面での設備状況の確認をとっていた、と後から報道されましたが、これは当然のことだと思いますし、(村上さんという方は)自分の足で歩いて「当たり前のことを当たり前にやる」人だという印象を受けました。

昨日あたりから、阪神電鉄の経営面に関する協議が阪神電鉄経営陣と村上氏側との間で始まったということですが、10月19日の「読売新聞関西版夕刊」で気になるニュースを発見しました。列車の緊急停止装置について、読売新聞が鉄道37社について調査したところの結果が公表されていました。運転士が運転中に意識を失ったり、居眠りをしたときに列車を自動的に止める緊急装置「緊急停止装置(EB装置)」と「デッドマン(DB装置)」の設置状況についてですが、その整備率は100%から0%まで、様々であることが判明したようです。(なお、現在のところ国土交通省は、この緊急停止装置の設置は各鉄道会社の任意ということだそうですが、現在国土交通省より諮問を受けている「鉄道に関する技術基準検討会」では中間とりまとめが25日ころにも出され、そのなかでも検討されているようです)

以下の表は、私が読売新聞調査の結果から、任意の範囲で適宜抜粋したものです。

         hanshin20051019

ご覧のとおり、阪神電鉄につきましては、ライバル私鉄である阪急、山陽電鉄、神戸電鉄がほぼ100%の設置率であるのに対し、関西では唯一0%の設置率となっています。(安全面で問題がいろいろと議論されているJR西日本ですら59%の設置率です)なお、この結果に対しては、阪神電鉄は「高機能のATSを採用しているため」と述べておられますが、しかしながら阪急や山陽電鉄はDB装置100%の設置率のうえに、さらに阪神と同じATSを採用していますので、あまり説得力のある理由にはなりえていません。阪急、山陽電鉄、神戸電鉄の対応は、まさに阪神淡路震災による住民の心理的不安を除去する真摯な取り組みからだと推測されます。(ちなみに、関西の方以外はわからないと思いますが、山陽電鉄は阪急、阪神と相互乗り入れをしています)また、JR福知山線の脱線事故については、この装置が設置されていれば防げた可能性があるとのことで(読売新聞一面での報道、ということはJR西日本では、この区間では採用されていなかった、ということでしょうね)阪神においては早急な対応が必要ではないでしょうか。

私は前のエントリーのとおり、村上さんが経営しようと現経営陣が経営を継続しようと、あまりこだわりはありませんが、阪神タイガースの上場ばかりが報道ソースとして話題に上ってしまっていて、どうも企業の社会的責任というものがないがしろにされているようで、少しばかり不安を抱いております。ひょっとすると、阪神電鉄全体の経営にとって、こういった安全対策というのは費用としては軽微な問題であって、大きな話題としては取り上げる価値がないのかもしれません。しかしながら、長期的な株主価値といった側面から検討するならば、こういった地域住民や電鉄利用者への広報活動は非常に有用なものであり、タイガースファンだけでなく、老若男女一般市民が「阪神電鉄の企業価値」を理解できる情報ではないか、と思うのです。どちらの口からも、今後の阪神電鉄の企業価値向上のための施策として、こういった問題が聞かれないとしたら、さすがに悲しい気分になってしまいます。

PS 

そういえば、MUFGと住友信託との独占交渉権違背による損害賠償請求事件の和解、どうなったんでしょうか?たしか予定では10月19日に第二回目の和解期日だったと思いますが。どこにも報道されていないということは、なくなったんでしょうか?

(追記 10月20日正午)

新聞報道によりますと、予定どおり10月19日には和解期日が開催され、けっきょくのところ和解決裂で弁論に戻るようですね。

話はまったく変わりますが、警察、検察、裁判所の三重ミスによって、少年法違反のまま19歳の男性が10日間拘置されていたそうですね、こんなことってあるんでしょうか。ビジネス法務とは関係ありませんが、ビックリのニュースです。信じられないようなミスですが、こういったことに接しますと、やはり刑事弁護人の被疑者公選制度(軽微事件も含む身柄拘束事件)の導入というのも、その必要性に説得力が出てしまいますね。

(追記おわり)

10月 20, 2005 村上ファンドと阪神電鉄株式(その2) | | コメント (2) | トラックバック (1)