2006年9月29日 (金)

続・Eメールと堀江氏の刑事裁判

夕方、私が副幹事長をしている弁護士団体の先輩副幹事長よりメールが届きました。「二回試験(司法修習生の卒業試験)で107人も落第者が出た!当会関係事務所でも誰か採用予定者に該当者がいないか確認して」とのこと。いやいや呆然、唖然・・・・・。落第者が107名・・・・・・ですか?(朝日ニュースはこちら)信じられませんです。私のころ(42期)は、不合格者はゼロですし、それが当たり前のような時代でしたので、いくら合格者が3倍程度(1500名)になったとしましても、最高裁は司法修習生に対して厳格になったとしか言いようがありません。とりあえず追試組の方、少しばかりバッチをつけて法廷に立つ日が遅れますが、どうか追試はここ一番、死ぬ気で頑張ってください。

半数程度の方が「刑事弁護」科目で及第点に達しなかったとのことですが、これも意外ですね。「知識」ということよりも「センス(結論の妥当性とか、弁護人としての基本的な訴訟活動のあり方)」に若干問題があった、ということでしょうか。私もあまり「センス」においては偉そうなことは言えない弁護士ですが、先日「Eメールと堀江氏の裁判」をエントリーいたしましたが、ここのところ宮内氏の証人尋問が続いておりまして、やはり前回エントリーでの予想どおり、宮内氏は検察側から事前に聞いていなかったような(堀江→宮内)メールを弁護側から証拠として提出され、どうもうまく証言ができないようであります。おまけにライブドアの不透明な利益の一部を宮内氏が流用していた事実まで認めてしまっており、弁護側としては最高のパフォーマンスを出しているのではないでしょうか。情報通の方の話では、すでに裁判長も、宮内氏の証言に対してはかなり懐疑的に受け止めているようでして、このままだと検察側も苦しいのではないか、と考えても不思議ではないような気がします。

ところで、前回のエントリーでは、「共謀」とは個々具体的な話し合いの内容や、話し合った日時場所の特定、犯行の分担など、詳細な事実認定が必要と書きましたが、もうすこし深く検討したほうがいいようにも思えてきました。「Aをどついたろか」と共謀した甲と乙のうち、乙がAだと思って殴った相手が実は別人であるBだったという場合、はたして謀議に参加した甲には、暴行罪の共謀共同正犯が成立するのでしょうか?甲と乙が「誰でもええから、あそこにいてる奴らの誰かをどつこ」といった謀議だった場合には、乙が誰かを殴って帰ってきた場合に暴行罪の共同正犯が成立することはまちがいないと思いますが、先の例と差異はあるでしょうか。もし差異があるとすれば、たとえ宮内証言がふらふらしていたとしても、検察有利は動かないような気がしますね。

本件は偽計取引とか、粉飾決算が問題となっているケースですから、どういった手法を用いるかということよりも、どんな手段であれ健全な株式市場の価格形成機能を歪めること自体が犯罪性が認められます。偽計という文言からは、その具体的な手法までは特定できませんし、また粉飾決算というのも、その粉飾にいたる方法については具体的に明示されておりません。したがいまして、ある保護法益を侵害することに向けられた共同謀議が認定されれば、その手法についてはそれほど個々具体的な内容まで意思の連絡が認められなくても共謀があった、と裁判所が認定する可能性が十分あるように考えます。これまでの弁護側の戦略はすばらしいと思いますし、100%の力を出し切っていることは当然だと思いますが、宮内氏が主導的な立場であって、堀江氏はスキームを十分理解していなかった、という図式が浮き彫ったとしましても、悲しいかな元来証券取引法上の刑罰規定はいずれも、その構成要件事実があいまいなものであります。したがいまして、市場の価格形成機能を歪める行為によって、ライブドアの利益を図ることが目的とされているのであれば、ある程度あいまいな謀議内容だとしましても、全体としてみると堀江氏にも法益侵害に関する謀議があったと認定されることになるかもしれません。(つまり、先にあげた例でいいますと、誰かあいつらのひとりを殴ろう、と謀議をして、実際にどうやって殴るか、誰を殴るかといったことをそのうちの一人が考えて、これを実行に移したような場合、謀議の内容は曖昧なものかもしれませんが、おそらく共謀共同正犯が成立する、という考え方)

もうすこし、宮内証言の続きを検討してみたいと思います。

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2006年9月16日 (土)

Eメールと堀江氏の刑事裁判

堀江貴文被告人の刑事裁判に宮内氏が証言を行ったというニュースがあちこちで掲載されておりました。(たとえばライブドアニュース)投資事業組合が実体のあるものかどうか、といった論点につきましては、ちょっと弁護側に不利ではないか・・・とも考えているのですが、きょうの宮内氏の証言内容を報道内容だけから判断しますと、けっこう堀江氏にも勝算がありそうな気がしてきました。共謀を裏付けるためには、宮内氏と野口氏の詳細な証言が不可欠だと思いますが、野口氏から証言をとれない今、宮内氏から具体的な堀江氏との共謀の事実が証拠として認定できるかどうか、非常に大きな争点となっています。弁護側として、闘いやすい土俵に持ってきたような感じです。そもそもスキーム自体が偽計取引や粉飾決算の構成要件に該当するかどうか、という土俵で戦うとしたら、公認会計士の資格まで保有するような優秀な捜査検事、公判検事に互角に戦うのはちょっとキビシイと思っていたのですが、「共謀」で闘う(関与、指示)のであれば、これは刑事裁判の伝統的な闘い方でしのげますから、被告人が完全否認している以上、弁護人にとってはこれ以上有利な条件はないほど闘いやすい土俵といえるでしょう。

根拠1 宮内氏の供述があまりにも曖昧ではないか?

なんといいましても宮内氏がスキームを知りすぎているのがマズイですよね。もし堀江氏のほうが全体のスキームに詳しい人であれば、ある程度宮内氏側があいまいな供述であっても「やむをえない」でしょうが、そもそも財務会計的な知見を有している宮内氏は、詳細に堀江氏にスキームを説明して、堀江氏の理解度まで認識できる立場にあったわけですから、違法行為の共謀関係にあることまでを詳細に証言できる立場にあります。そのような宮内氏が「・・・と堀江氏が理解していると思った」とか「要望か指示か、といわれれば指示だった」などと、ちょっと刑事弁護人からすると異議を出しても不思議でないくらいに信じられないようなあいまいな供述に終始しているとすれば、検察側としてもヤバイですよねぇ。(冷汗・・・)もし野口さんが主導的立場にあって、全体のスキームを統率していた、という組み立てが可能であれば、宮内氏が「ボク、わかんなぁい・・」状態で堀江氏の公判に臨むということもできますから、曖昧供述でも「やむをえない」と考えられますが、野口さんの証言がとれない以上は、検察も宮内氏の公判を維持するためには「ボク、わかんなぁい」状態にもできませんし、堀江氏立件のためには、どうしても「宮内氏はスキームに詳しい人」という構図は維持せざるをえないわけですね。

2 Eメールは刑事裁判の証拠になるのか?

前から気になっていたのですが、メールというものが果たして共謀共同正犯における「共謀」を基礎付ける事実、もしくは規範的な実行行為と捉える際の構成要件事実を立証できる証拠として役にたつのでしょうか?民事事件であれば、裁判官の心証が51対49でもシロクロをつけるわけですから、おおいにメールの証明力を認めても問題ないわけですが、刑事事件では検察官はほぼ100%有罪の確からしさを証拠で固めないといけないわけでして、メールがどこまで共謀を基礎付ける事実を証明できるのかおおいに疑問が残ります。(無罪推定原則)とりあえず事前にどういった指示があったのか、違法行為をどこまで認識していたのか、短いメールのやりとりだけではどうにも立証できないのではないか、といった懸念があります。つまり「共謀」というのは、人と人とが相対していた状況、いつ、どこで、誰と誰が、何を話して、その後どういう行動に出て、その利益はどう分配したか、といったところが客観的に認定されて「確からしさ」が基礎付けられるわけでして、むしろメールというのは、逆にあまり人と人との接触がなかったという客観的事実を基礎付けることにもなりますし、また堀江氏側が、自分の発したメールはこういう意味だった、と有利に援用することも可能になるはずです。よく考えるとメールというのは刑事裁判にとっては「両刃の剣」ではないか・・・と思ったりしております。

あくまでもニュース情報からの推測ですから、なんとも自信たっぷりには申し上げられませんが、この裁判、弁護人側としてはツッコミどころがけっこうあるんじゃないでしょうかね。

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2006年9月 6日 (水)

堀江被告人の裁判と金融商品取引法

ライブドア前社長・堀江貴文被告人の公判が連日開廷され、検察側証人尋問が始まりましたが、なんとなく世間のムードでは「過去の人の刑事裁判」のような取り扱い方をしているような気がします。私も一般の事件とは異なり、公判前整理手続を経ている事件というものの争点整理がどこまでなされているのか、実務的によくわからないところもありますので、コメントがしずらい事件ですね。

宮内被告人ほか数名の事件が先行して、ほとんど争うこともないわけですから、風説の流布や偽計取引と評価されている全体のスキームの違法性や、投資事業組合などを利用した粉飾決算の実態について争うことは、堀江氏にとってはかなりしんどい闘いになりますね。新聞などで争点と指摘されているところとは少し異なるかもしれませんが、私は結局のところ、堀江氏の刑事公判に特有の争点、つまり「共謀」や「積極的関与」の有無が最大の弁護側の闘いどころではないかと思います。「共謀」というのは意外と立証するのは難しいです。他人のやったことを自分が実行したのと同じように評価して「正犯」として犯罪が成立するわけですから、自分と実行者との関係や最終目的に向けての認識、実行者との意思疎通の有無など、被告人が否認した場合にはけっこう立証すべき事実は多いはずです。実行行為に反復継続性があるような場合は容易に「共謀」を認定できるケースも多いのですが、本件の場合はそんなに反復継続性のある実行行為ではなかったように記憶しておりますが。(さて、どうでしたかね?)

企業法務に携わっていらっしゃる方々は、この裁判どう受け止めておられますでしょうか。「ホリエモンは有罪か無罪か」といったところに関心が向いてしまいますと、連日の報道をフォローする気持も少し萎えてきてしまうかもしれません。しかし少し視点を変えてみますと、ホリエモンの企業法務に及ぼす功績といったものもかなり大きいのではないか、と思えてきます。検察側と全面的に対決する事件であるがゆえに、これは企業法務にとって貴重な財産になりそうです。

まずひとつめは「メールと刑事裁判」の関係です。このたびの金融商品取引法における内部統制報告実務では、IT統制の評価基準としてメール等情報の保存管理に関する体制に焦点があてられるようです。今回のライブドア事件の捜査では、膨大な量のメールが証拠として押収されたり、(復元ソフトによって)復元されております。こういったメールによる意思疎通や犯行認識というものが、果たして刑事裁判ではどういった効果を及ぼすのか。検察はメールを用いてどのように立証計画を組み立てているのか、また裁判所はメールを証拠として、どういった犯罪事実を根拠付けるのか、それともメールは刑事裁判の証拠としては役に立たないのか、そのあたり、とりわけ「共謀」や「積極的な関与」が争点になっているだけに、おそらく判決では詳細に解説がなされることでしょう。したがいまして、検察官による立証計画におけるメールの用い方、弁護側によるメールの「証拠能力の乏しさ」(証明力の乏しさ?)に関する解説方法などを含めて、「メールと刑事裁判」の関係を研究することは、今後の内部統制報告実務の発展にかなり大きな役割を持つことはまちがいないと思います。

そしてもうひとつが不公正取引の処罰に関するところであります。「偽計取引」などというものは、定義すら語る人によってマチマチですが、意外によく検察が立件するときに利用する条文ですよね。今回の事件でもし堀江被告人が有罪とされる場合、裁判所はこのスキーム自体がどういった理由で「偽計取引」に該当するのか、おそらくこれも否認事件である以上は詳細に検討されることになると思われます。以前ホリエモン逮捕の折には、私のブログでは「罪刑法定主義」との関係でエントリーを立てておりましたが、どうも資本市場における不公正取引規制を実効性あるものとする要請からみますと、かなり罪刑法定主義が後退せざるをえない、というところが世間の一般常識のようでした。そうであるならば、相場操縦における「誘引目的」に関する判例同様、せめて裁判所における先例にこそ、今後の「偽計取引」の範囲を合理的に限定する機能を期待したいところであります。金融商品取引法には157条において立派な不公正取引取締のための包括禁止規定が存在するにもかかわらず、そちらは適用せずに158条の「風説の流布」「偽計取引」を用いて立件するといった手法は、今後も増えるものと思われます。つまり157条に代わって158条が一般法規としての有用性を持ちうるのであるならば、ぜひこのたびの裁判所の判断において今後の実務に参考となる判断基準を打ち立てていただきたいものであります。

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2006年5月30日 (火)

「ライブドア監査人の告白」読後感

もともとcritical-accountingさんの「会計や監査の話などなど」ブログで近刊情報を知りまして、発売と同時に読みきってしまいました。著者である田中慎一氏に近い久野氏、小林氏が先日の第一回ライブドア刑事公判でいずれも公訴事実を全面的に否認している中での発刊ですので、法曹という立場からの詳細なコメントは差し控えたいと思いますが、まだライブドア強制捜査、堀江氏ら逮捕劇の記憶が新鮮なこの時期に、地検特捜部の動き出す場面から立件に至る経過を詳らかにした書物はたいへん貴重です。おそらく経済事件の刑事弁護を担当したことのある弁護士からみると、会計士さん方がお読みになる感想とは一味違った部分で興味をもたれるのではないでしょうか。今年1月下旬頃、私のブログでも連日ライブドア強制捜査に関するエントリーをアップしておりまして、そのときに「いったいライブドアの監査役の人たちは何をしていたんだろうか・・・・」とはがゆい気持をずっと抱いておりましたが、こうやって現場におられた会計監査人の方の告白を読み、いままでの(表舞台に登場しない監査役の方々へ抱いておりましたイメージも少しばかり変わり)モヤモヤがすーっと溶解してくるような感覚を持ちました。

以前ご紹介した企業会計審議会内部統制部会長の八田進二教授の著書「内部統制の考え方と実務」のなかに、「もしライブドアに対して内部統制監査があったとしたら、今回の事件は防げただろうか」といった問いかけがあります(74頁以下)。私は八田先生が「外部監査人による内部統制監査によって、ライブドアの事件は防ぐことができた」とする結論に対しては非常に懐疑的な印象を持ちまして、堀江氏、宮内氏による経理操作はCOSOモデルによる「内部統制の限界」であって、どんなに内部統制システムを構築したって不正を防止することはできないだろう、といった諦観を抱いておりました。しかしながら、この田中氏の「港陽監査法人による2004年9月期の審査」(ロイヤル信販、キューズ・ネットに対する売上取引の真相究明)に関する監査法人の対処経過を読み、たしかに、架空売上計上に関する証拠評価に限界がある場合、もし「財務情報の重要な部分に関する内部統制の重大な欠陥」といった切り口があったら、もっと会計監査人はライブドア経営陣に対して毅然とした態度で臨むことができたんだろうなぁ、というのが素直な感想であります。会社の商品価値を適正に一般投資家に伝えるための機能も大切かもしれませんが、会計監査人が自信をもって「ダメなものはダメ」と毅然とした態度でクライアントに臨むための武器としても、内部統制監査というものが機能することを知りました。

さて、この時期に、田中氏が告白本を著されたことや、田中氏の潔い対応への感想などにつきまして、会計専門家でない私がここで述べることはいたしません。おそらく田中氏は賞賛や非難を受けることは承知の上で、ともかく真実を語りたい、といった一心でこの本を世に送り出したものと思いますので、(株式分割や株式交換、そしてプーリング法、パーチェス法等に関して、一生懸命にわかりやすく説明しようと努力するその態度をみればよくわかります)その語りたかった真実(らしきもの)の部分を、もう少し時間をかけて、私なりに咀嚼してみたいと思っております。

しかし、新興企業の場合、証券会社やコンサルタント、会計監査人から監査役に至るまで、その経営陣との「最初の出会い」がどれほど大切で、一歩間違えるとどれほど恐ろしいものか、(自分の経験も含めて)あらためて痛感いたしました。

(追記)

critical-accountingさんも早速「告白」の感想をアップされてます。(TBからどうぞ)

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2006年3月28日 (火)

堀江氏の刑事裁判に公判前整理手続適用

ライブドアの前社長である堀江氏の刑事公判におきまして、東京地裁は他の被告人とは分離したうえで「公判前整理手続」を適用することを決めたそうです。朝日ネット記事はこちらです

どんな行為が「風説の流布」「偽計取引」に該当するのか、誰が実行行為を行い、誰が共謀したのか、また共謀というのはどんな行動を捉えて「謀議」があったと評価できるのかなど、事実の有無、証拠価値の程度、法律適用の可否など、争点が多岐にわたるものと思われますので、実質的に第一回公判までに争点が整理される、ということは訴訟の迅速な進行のためにはたいへん好ましいことではないでしょうか。とりわけ、私はライブドアマーケティングが関与しているほうの「風説の流布」「偽計取引」といった構成要件該当性につきまして、いったいどのように裁判所が判断を下すのか非常に注目しているところです。おそらく今後さらに証券犯罪の厳罰化が進むものと思われますが、包括規定を利用してどんどん摘発が進むのか、それとも市民法ルールである罪刑法定主義が証券犯罪でも厳格に適用され、その構成要件該当性の可否を詳細に検討されるような裁判となるのか、興味はつきません。

ちなみに、かけだし裁判官nonさんのブログで、詳細に公判前整理手続の概要が解説されております。よくよく考えてみますと、一般手続ではなく公判前整理手続を採用する事件などですと、刑事弁護人を務める弁護士にも、相当証券取引法や市場取引に詳しいことが要求されそうですね。そうでないとせっかくの証拠開示手続や、証拠の評価さえ十分にできないことになって、公判前整理手続を弁護人側が有効に利用できない可能性が出てきてしまいます。

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2006年3月17日 (金)

保釈請求・・悲喜こもごも・・・

(3月17日午後 訂正あります)

ライブドア事件によって逮捕勾留されたまま、起訴されている方は合計5名ですが、そのうち岡本氏(LDM元代表者 保釈金1000万)、中村氏(LDF元代表者 同2000万)、宮内氏(LD元取締役 同5000万)の3名が保釈を許可され、堀江氏と熊谷氏は保釈申請却下、そして中村氏と宮内氏は検察庁から準抗告が出されて釈放はされなかったため、結局16日に釈放されたのは岡本氏のみという結果となりました。準抗告というのも、私も経験はありますが、たいへん弁護人にとってもつらいものであります。(読売ニュースはこちらです

さて、こういった状況から何が読み取れるでしょうか?粉飾を一部認める供述を始めたものの、これまでの堀江氏の態度からして、とりあえず現状での保釈申請却下はやむをえないところかもしれませんが、熊谷氏が却下されたのは堀江氏の貸し株管理や本体の経理操作に深く関与しており、釈放してしまうと証拠隠滅のおそれが大きいと判断されたのかもしれません。(たしか、まだ証券取引等監視委員会の担当者が利益還流の解明のためにケイマン諸島などに調査に行っているはずですよね。そのあたりの裏づけを熊谷氏からとりたいのではないでしょうか)

天国から地獄へ落ちた気分を味わっているであろう中村氏と宮内氏については、なぜ検察庁は準抗告までして保釈を阻んだんでしょうか?考えられるところは、①この2名については、いまでこそ事実を認めたものの、取調べ当初は否認をしたために、第一回公判において供述を変遷させて無罪を主張するおそれがあると考えたこと、(つまりは、第一回公判において被告人らが事実を認めるまでは釈放されるべきではない、との検察庁の強い抗議)②まだ本体の粉飾決算の可能性があり、追起訴を予定しているため、③まだ本体の粉飾決算関連の事件については、逮捕を予定している者がおり、その予定者との接触によって証拠隠滅のおそれが認められること、といったところでしょうか。このうち、②につきましては、新聞報道ではすでに立件はほぼ終了とありましたので、可能性は薄いでしょうし、①につきましても、準抗告までして保釈を阻止する動機にはなりえないように思います。したがいまして、検察庁はいまだこの事件での「逮捕予定者」、つまりは宮内氏、熊谷氏、中村氏らと共謀して、ライブドア本体への利益操作を画策していた者が他にもいる、ということを考えているのかもしれません。来週あたり、検察庁の準抗告が却下されて、宮内氏、中村氏も釈放されるかもしれませんが、そのときは保釈の条件として、弁護人を通す場合以外は、○○氏と接触してはならない、といった条件が付されているのかもしれませんね。

なお、このエントリーの内容はあくまでも私ひとりの勝手な推測に基づくものでありまして、特定個人を中傷したり、名誉を毀損する意図はまったくございません。また、弁護士の立場からみた「正しい保釈制度のありかた」に関する私個人の意見表明もなく、ただ現実の保釈制度の運用からの推測にすぎないことを申述べておきます。(保釈制度に関する弁護士の意見を表明するのであれば、おそらくエントリーが5つくらい必要です)

(追記)宮内、中村両氏は18日、準抗告が棄却されたため、釈放される模様です。

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2006年1月30日 (月)

ライブドアショック・中間総括として

昨日のライブドアマーケティングの取締役会決議の効力問題について、たくさんのコメントをいただき、ありがとうございました。かなり問題点がマニアックなところだったので、会社法の勉強のつもりでエントリーさせていただきました。何名かの方がご指摘のとおり、実際には取締役会の翌日には辞任届けが取締役らの手元に届いていた、ということですから、大騒動にはならなかったわけですが、こういった事態は中小企業ではよくあることでして、私なども在監の警察署へ辞任届けをもらいにいったり、担当取締役といっしょに説得に行ったりしたことがございました。また、コメントは私自身、もうすこし詰めて考えたうえお返事させていただこうか、と思っています。

さて2週間ほど、ライブドア関連の記事をアップしてきましたが、事態の関心はライブドア本体の刑事告訴(法人起訴)と粉飾決算といったところに移ってきたようです。今後も事態の進展にしたがって、このライブドア関連のエントリーを残していきたいと思っていますが、とりあえず今後の私のブログで取り上げる内容は、①ライブドアショックが現実化した今、あのライブドア・ニッポン放送の裁判を「企業価値論」を中心に振り返る、②企業会計ルールと倫理(法と会計の狭間)に絞ってみたいと思います。①につきましては、今後の敵対的買収に関わる司法判断において、このたびのライブドアの問題が影響を与えるのかどうか、といった問題でありまして、②につきましては監査役と会計監査人の連携問題とか、会計士法24条問題(コンサルと監査の微妙な関係)とか、すでに長銀問題でエントリーを続けております公正なる会計慣行の再考などが中心の問題であります。(なお、優柔不断ではありますが、ぶらっくふぃーるずさんが焦点をあてていらっしゃる「フジテレビの動向」についても、ちょっと私も気になりますので、そっちもなんかまた書いてしまうかもしれません。。。)

そろそろ会社法の正式な法務省令も発表される時期ですし、また2月には私自身、内部統制監査にも参加させていただくこととなり、新日本監査法人の方々とも勉強させていただく機会もありまして、そういったビジネス法務に直結する話題も取り上げる必要がございますので(ライブドア関連も)不定期にならざるをえないと思われますが、上記のような内容に興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら、今後ともおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

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2006年1月28日 (土)

ライブドアMの取締役会決議の効力

ライブドア逮捕劇の直後、取締役6名のうち3名が逮捕されてしまったライブドアマーケティングが、残った3名の取締役による取締役会で穂谷野氏を代表取締役とする決議を行ったことについて、「これは無効ではないか」といったことが報道されました。(朝日ニュースはこちらです)事実関係をもうすこし補足するニュース(日経)によると、この1月24日午前3時の取締役会では、岡本代表取締役のほかに、追加して代表者を選任した、とのことであります。この朝日ニュースを読む限りでは、過半数の定足数を満たさなかったLDMの代表者選任決議は手続上の瑕疵があって無効になるのではないか、多くの法曹関係者もそう考えているのではないか、こういった無効決議を「問題なし」と回答したLDMの弁護士は「アホ」ではないか、といった印象を受けたのは私だけでしょうか。でも、少し考えてみますとこの報道は真実に合致していないようにも思えます。

1 本当に弁護士が「法的に問題なし」と判断したのか

弁護士資格をもった方が「取締役が逮捕された場合は、取締役が死亡した場合に準ずる」との解釈に「それは法的に正しい」と保証するでしょうか?ご承知のとおり、取締役の死亡は委任契約に関する民法653条に規定により当然の終任事由ですが、48時間で戻ってくる可能性のある取締役が死亡の場合と同様に当然に終任しなければならないと考えるのは解釈上で到底無理があります。相談を受けた法律専門家が、当然熟知しているか、もしくはすこし調査すれば容易に判明する内容について、軽々に「法律上問題なし」と回答するということは、おそらくありえないのではないか、といった疑問。

また、念のためにLDMのリリースを読みました(代表取締役社長および取締役異動に関するお知らせ  取締役辞任に関するお知らせ  一部報道につきまして)が、LDMとしては、(朝日ニュースと異なり)1月23日夜半に開催した3名による取締役会決議を有効として公表しており、ここに弁護士とも相談したうえ、問題ないとの判断のもとで行ったと記されています。24日に再度取締役会を開催した、といった事実も公表されておらず、また1月25日の時点であらためて「23日の取締役会決議には問題ない」との趣旨を記していること。

こういったことからみると、朝日の報道はひょっとして、会社関係者が「逮捕も死亡に準ずると思った」との発言をとらえて、①弁護士もこの条件での有効性を「法的に問題なし」と推測した②この条件(逮捕も取締役死亡に準ずる)で定足数を満たすかどうか、といった質問で法曹関係者の意見を聞いた、といった前提があったのかもしれません。

2 LDMの取締役会決議は無効なのか?

私も、この「会社の一大事!」の深夜に、残った取締役から「このままでは会社が機能しなくなってしまう!いまから取締役会を開催して、○○を代表者にしてもかまいませんか?」と相談されたら、「うーーーん、違法かもしれませんが、決議そのものは有効かも・・」と回答するかもしれません。

LDMの取締役は登記簿上6名で、代表者を含む3名の取締役が逮捕されたわけです。このままでは、たしかに過半数の取締役が取締役会に出席できず、法定の定足数を満たさないためにLDMの臨時取締役会を開催できそうにもありません。仮の取締役選任を裁判所に求める時間もありません。しかしながら、逮捕された3名のうち、1名でも適法に定足数から除外させる方法があるかもしれません。たとえば、残った3名のうち、ひとりの取締役が、岡本代表取締役の解任(代表権の解職)を求めたら、その議題に関しては岡本代表取締役は議題に関して「特別の利害関係」を有する取締役になりそうです。(最高裁判例昭和44年3月28日判例 ただし学説では反対説が多いところです)こうして、定足数から岡本取締役を適法に排除すれば5名中3名が出席した取締役会は定足数を満たすことになります。(商法260条の2、第2項)しかしながら、本件では、3人の取締役は別の代表者を選任する決議を行っています。議案ごとに特別利害関係人の有無を判断する必要がありそうですから、このケースではどうがんばっても定足数の問題をクリアすることはできないように思います。(すでに代表権を有している取締役が、他の取締役に代表権を付与する議案において、特別利害関係人に該当する、とは言えないでしょうね)おそらく定足数に関する規定は、厳しくする方向では定款の定めによって変更できますが、緩和する方向では強行法規として許されないものでしょうから、この決議は違法な手続きによってなされた疑いが強いのではないでしょうか。

さらに問題点は、逮捕された3名に対して、臨時取締役会の招集通知が発送されていない点ですが、たしかにこれも(強行法規としての)手続き上の瑕疵にあたり「違法」であることは間違いないようです。ただ、この点につきましては、昭和44年12月2日の最高裁判例がありまして、このような瑕疵があった場合、その通知されなかった役員たちが会議に出席していたとしても、結論に影響がなかったような特別の事情がある場合には、そのような手続き上の瑕疵ある取締役会決議も有効、とされています。そこで、先の定足数の問題につきましても、この判例の法理を適用して、こういった「違法ではあるが、瑕疵が治癒されて決議はさかのぼって有効」と解釈することも考えられそうです。おそらく、翌日である1月24日そして25日に、この3名の辞任届を、次々と受け取りにいったのは、この「特別の事情」があることが立証可能な証拠を念のために採取する目的だったのではないか、と推測いたします。(24日に辞任届を受理した後にも、報道のとおり取締役会を開催したのかもしれませんが、それだったらLDMの25日のリリースは事実と相違することになってしまいますね)

取締役会への各取締役の「出席の意義」といったものは、意見を自由に発言すること自体を重視するか、決議そのものを重視するかによって結論は異なりますでしょうし、社外取締役の意義、会社の意思決定の迅速化などを考慮して、一定の条件のもとで(会社法370条)、「持ち回り決議」が認められる新しい会社法のもとにおける取締役会の考え方なども学者の方々によって異なるかもしれません。ただ、とりあえず上記のLDMの火事場での実務家の意見としては、「ぎりぎりセーフ」といったことを言い切れるかどうか、思案のしどころだったのではないか、と思います。

といったあたりの理由から、私は「法的には問題があるものの」LDMが相談をした弁護士の方の指導は適切だったのかもしれない、と思いますし、(ただし私はライブドア自身を擁護する立場にもありませんし、むしろ今後の監査役、会計監査人の責任問題については強い興味を抱いております)朝日に意見を述べた法曹関係者の方々も、「もしこういった条件なら」といった留保つきの意見を述べたのではないか、と推測をしております。いずれにしましても、こういった問題が私の近辺で発生しないことを願っております。また、基本的なところで私の誤りがございましたら、ご指摘いただければ幸いです。(すぐに訂正いたしますので・・・・・)

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2006年1月27日 (金)

フジテレビの思惑はどこに

昨夜は集中審理の後遺症のために、ヘロヘロになってしまって、エントリーをスキップしてしまいました。いろいろとこの1週間ほどライブドアショック関連のエントリーに終始しておりましたが、その周辺問題に目を向けてみますと、今後の企業買収関連の裁判などに役立ちそうな「企業価値ネタ」が山積しているようです。こういった刑事事件が発生しますと、どうしても「ホリエモン」個人とか「ライブドア」本体にばかり目を奪われがちになりますが、こういった非常事態の勃発をどうやって切り抜けようとするか、その周辺領域の人たち(法人たち)の動向のほうが、むしろ今後の対応策立案のための勉強になることが多いようです。利害関係者の今後の対処と、その結果を丁寧に集積、分析することによって、たとえば、私のような社外監査役の立場からしますと、株主代表訴訟とか、買収防衛に関する要件該当性の問題とか、少数株主権行使時における役員の対処方法などに、ひろく応用できるかもしれません。

きょう、フジテレビの会長とライブドアの新社長が、今後の両者の関係や、ライブドアの今後の営業方針などの協議のために面談をすることが報じられています。1月20日前後の報道では「断固、提携を解消し、損害賠償請求する」と(フジテレビの意向が)報じられていたものが、昨日あたりから「ライブドア支援も選択肢のひとつ」といった論調に変更されていますが、これはいったい、どういう理由からなのでしょうか。①純粋に12%を保有している自社のライブドア株式の株価維持向上のために大株主としての責任をまっとうする②いまの株価は検察庁による強制捜査を反映して作り出されたものであり、真のライブドアの時価を表しているものではない、ライブドア傘下の関連企業の有効利用や、ライブドアのオフバランスとして保有する無形資産の価値は、けっこう大きいものがある③日本を代表する専門家集団が1ヶ月もかけて「デューデリジェンス(資産調査)」を行ったにもかかわらず、単に「だまされた!」とだけ言い放っていては、逆にフジテレビの株主からデューデリの不始末を問われかねず、役員だけでなく、専門家集団にまで迷惑をかけてしまう。

考えられるのは、うえの3つのどれかでしょうか?まさか、天下のフジテレビにかぎって「切り売りするな」と要望し、支援すると表明して株価を維持しておいて、(個人株主などの損害賠償請求を回避しておいて)後で自社に有利に切り売りするとかいった手法はないですよね・・・・・まあ、東証が上場廃止の決定を出してしまうかもしれませんが・・・(ほかにも可能性がございましたら、お教えくださいませ)それにしても、マスコミはよく「暴かれた虚業集団」という書き方をされていますが、「虚業」とはいったい何を指しているのでしょうかね。ライブドア本体がHD的立場の会社であれば、HDはすべて虚業なのか、という問題にもなってしまいそうですし、財務諸表の数字だけを真偽の対象とするのであれば、グループ一体としての企業価値や、ソフト会社特有の人の保有する無形資産などは全く時価評価には関係ない、といったことでいいのでしょうか?もちろん「粉飾決算」かどうか、といったレベルでの話しとは別に、いまの110円という株価が本当のライブドアの時価を表現しているかといえば、どうもそうではないようにも思えるのですが。検察が介入したこと=企業の継続性の原則廃止、といったことであれば理解できますが。ともかく、倫理の問題を離れて、現時点で「虚業集団」とまで言い切ってしまうことには、若干の違和感を覚えます。(いずれにしましても、これは私個人のただの疑問ですから、マネーゲームは自己責任の範囲内でお願いいたします)

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2006年1月25日 (水)

ライブドア捜査と罪刑法定主義(2)

昨日も、たくさんのコメント、TBを頂戴いたしまして、ありがとうございました。ラジオ大阪のニュース番組に出演させていただきましたが、やはり15分という時間のなかで、「偽計取引」「風説の流布」「有価証券報告書不実記載」といった内容や、刑罰の内容、堀江氏、ライブドア本体の今後など、ちょっとわかりやすく説明させていただくのは難しかったような気もします。来週月曜日は30分にわたって、解説をさせていただきますので、もうすこし一般の方にもご理解いただけるように工夫してみたいと思います。(なお、コメントいただいた方には、明日にでもまたお返事させていただきます。アエラの記事にも一応目を通しておきました)

さて、夜遅くまで弁護士会のお付き合いなどもありまして、少々疲れ気味ですが、ぴてさんneon98さんが問題視されていらっしゃる「偽計取引」とは何か?といった点につきまして、すこしだけ自論(推論ですが)を、以前よりも敷衍して述べたいと思います。私も証券取引法158条の適用場面についてはかなり問題点が多いものと認識しておりまして、「ひとつ間違えると」どこの企業でもやっているような資金調達手段すら、「これって偽計取引じゃないの?」と財務担当者が不安を抱くことになるかもしれません。あらためて申し上げますが、規制を厳しくすることと、規制をゆるやかに適用することとは大きく異なります。このたびのような事態が発生して、法律による規制を厳しくすることは、立法政策の是非はともかくとして、国民が選択した判断であるがゆえに、それはひとつの解決方法であります。しかしながら現行規制をゆるやかに解釈して、広く刑罰の対象行為とすることは、その法律によって規制される範囲が、一般企業にとって明確にならないために、本来自由な資金調達の手段まで、抑制するおそれがあり、国民経済の発展にとって非常に危険な状況に陥ります。(罪刑法定主義)そこで、ぴてさんやneon98さんが懸念されているような問題が生じてくるわけです。

ここからは私の推論でありますが、今回堀江氏らの逮捕事実となったライブドアマーケティング(LDM)の偽計取引とはいったい何か?どこが違法なのか?といった分析について、再度確認しておきたいと思います。前にも申し上げましたとおり、158条における「偽計取引」にあたるためには、行為者には特別の目的(たとえば相場変動目的、利得の目的など)は必要ではないと思われます。(その理由も以前のエントリーで申し上げたとおりであります)要は、「当該取引について、何が公正な取引」であって、その公正な取引から、どれだけ逸脱しているのか、といった評価が必要な概念であると認識しています。そもそも証券取引法に規定されている刑罰法規によって保護されようとしている法益は、一般投資家の保護とともに、国民経済の運営という国家的法益も含みます。もうすこしわかりやすく申し上げると「国家が形成しようとするルールそのものが保護される法益」ということだと思われます。ということになりますと、誰かを騙して利得を得る目的は不可欠ではなく、面白半分でトリックを使うこと自体が、ルール違反として許されない行為だとも言えるわけです。

そこで、そもそも本件逮捕事実のなかで、相対取引の対象となるマネーライフ社の株式売買については、なにが公正な取引かといいますと、LDM社がマネーライフ社の本来株主との間において、第三者の評価機関を通じて未公開株式の価格評価を行うことであり、その価格にしたがって株式交換比率を決定して株式交換により買収する、それが公開企業であるLDM社によって重要な取引事実であるならば、真実を開示する、ということまでが「公正な取引」であるはずです。しかしながら、LDM社は、取引にとって不必要な投資事業組合を介入させて、現金取引によってあらかじめ取得したにもかかわらず、これを隠匿し、第三者機関を通じることなく当事者が評価したにもかかわらず、これを第三者機関を経由して評価したかのように見せかけ、投資事業組合とLDMとの間で1対1という交換比率で株式交換を行ったものと公表したわけであって、「LDMは正しい評価によって、今後の企業価値を高めるための優良企業を購入した」といった誤信をもたらす行為に及んだ、ということですから、先のルールに則った公正な取引との比較において、大きく逸脱しているのであれば「偽計取引」の構成要件に該当することになろうか、と思われます。相対取引の相手方を錯誤に陥らせるような行動に出た場合にも偽計取引にあたるわけですから、「公表」することは不可欠の要素ではなく、本件でのルール違反の程度を評価する一要素にすぎないわけです。

さて、それではこういった評価を伴う規範を用いて、一般企業の資金調達の自由な範囲を明確化できるかといいますと、今後の投資サービス法における立法作業に期待するところが大きいところでして、現行法を前提とするかぎりは(残念ながら)自信がありません。常識的な解釈論としましては、構成要件の該当性の判断、そして可罰的違法性の判断といった二重の基準によって、一般企業の経済活動を保護していかざるをえないものと思いますし、また刑事弁護人らによる検察と世論への挑戦意欲といったものも必要になってくるのではないでしょうか。

このような「ややこしい」解釈を必要とする規定など、そもそも罪刑法定主義に違反するものだ、という意見もあろうかと思います。しかしながら、先日neon98さんよりご指摘のあった最高裁判決のような立場を前提としますと、ある程度解釈の幅をもたせるような規定といったものも、不正手段の複雑性といったことを考えるとやむをえないものであるかもしれませんし、この線引きは非常に難しい思考を要するところだと思います。判決のなかでは「偽計取引にあたることは明らかである」とされてしまう可能性もありますが、「偽計取引」にあたるかどうかの評価の問題をていねいに公判で論じることが、今後の証券取引における不正行為の範囲を明確にするための「いまできる」最良の手段ではないでしょうか。(まあ、こういった論点を回避するために、関係者個人およびライブドア本体について、量刑の等しい有価証券報告書不実記載だけで起訴、ということも考えられますが・・・・。フジテレビや関係各企業にとって、今後の民事賠償責任の追及のためには、ライブドア本体の起訴は不可欠でしょうから)

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