2006年9月29日 (金)

続・Eメールと堀江氏の刑事裁判

夕方、私が副幹事長をしている弁護士団体の先輩副幹事長よりメールが届きました。「二回試験(司法修習生の卒業試験)で107人も落第者が出た!当会関係事務所でも誰か採用予定者に該当者がいないか確認して」とのこと。いやいや呆然、唖然・・・・・。落第者が107名・・・・・・ですか?(朝日ニュースはこちら)信じられませんです。私のころ(42期)は、不合格者はゼロですし、それが当たり前のような時代でしたので、いくら合格者が3倍程度(1500名)になったとしましても、最高裁は司法修習生に対して厳格になったとしか言いようがありません。とりあえず追試組の方、少しばかりバッチをつけて法廷に立つ日が遅れますが、どうか追試はここ一番、死ぬ気で頑張ってください。

半数程度の方が「刑事弁護」科目で及第点に達しなかったとのことですが、これも意外ですね。「知識」ということよりも「センス(結論の妥当性とか、弁護人としての基本的な訴訟活動のあり方)」に若干問題があった、ということでしょうか。私もあまり「センス」においては偉そうなことは言えない弁護士ですが、先日「Eメールと堀江氏の裁判」をエントリーいたしましたが、ここのところ宮内氏の証人尋問が続いておりまして、やはり前回エントリーでの予想どおり、宮内氏は検察側から事前に聞いていなかったような(堀江→宮内)メールを弁護側から証拠として提出され、どうもうまく証言ができないようであります。おまけにライブドアの不透明な利益の一部を宮内氏が流用していた事実まで認めてしまっており、弁護側としては最高のパフォーマンスを出しているのではないでしょうか。情報通の方の話では、すでに裁判長も、宮内氏の証言に対してはかなり懐疑的に受け止めているようでして、このままだと検察側も苦しいのではないか、と考えても不思議ではないような気がします。

ところで、前回のエントリーでは、「共謀」とは個々具体的な話し合いの内容や、話し合った日時場所の特定、犯行の分担など、詳細な事実認定が必要と書きましたが、もうすこし深く検討したほうがいいようにも思えてきました。「Aをどついたろか」と共謀した甲と乙のうち、乙がAだと思って殴った相手が実は別人であるBだったという場合、はたして謀議に参加した甲には、暴行罪の共謀共同正犯が成立するのでしょうか?甲と乙が「誰でもええから、あそこにいてる奴らの誰かをどつこ」といった謀議だった場合には、乙が誰かを殴って帰ってきた場合に暴行罪の共同正犯が成立することはまちがいないと思いますが、先の例と差異はあるでしょうか。もし差異があるとすれば、たとえ宮内証言がふらふらしていたとしても、検察有利は動かないような気がしますね。

本件は偽計取引とか、粉飾決算が問題となっているケースですから、どういった手法を用いるかということよりも、どんな手段であれ健全な株式市場の価格形成機能を歪めること自体が犯罪性が認められます。偽計という文言からは、その具体的な手法までは特定できませんし、また粉飾決算というのも、その粉飾にいたる方法については具体的に明示されておりません。したがいまして、ある保護法益を侵害することに向けられた共同謀議が認定されれば、その手法についてはそれほど個々具体的な内容まで意思の連絡が認められなくても共謀があった、と裁判所が認定する可能性が十分あるように考えます。これまでの弁護側の戦略はすばらしいと思いますし、100%の力を出し切っていることは当然だと思いますが、宮内氏が主導的な立場であって、堀江氏はスキームを十分理解していなかった、という図式が浮き彫ったとしましても、悲しいかな元来証券取引法上の刑罰規定はいずれも、その構成要件事実があいまいなものであります。したがいまして、市場の価格形成機能を歪める行為によって、ライブドアの利益を図ることが目的とされているのであれば、ある程度あいまいな謀議内容だとしましても、全体としてみると堀江氏にも法益侵害に関する謀議があったと認定されることになるかもしれません。(つまり、先にあげた例でいいますと、誰かあいつらのひとりを殴ろう、と謀議をして、実際にどうやって殴るか、誰を殴るかといったことをそのうちの一人が考えて、これを実行に移したような場合、謀議の内容は曖昧なものかもしれませんが、おそらく共謀共同正犯が成立する、という考え方)

もうすこし、宮内証言の続きを検討してみたいと思います。

9月 29, 2006 ライブドア | | コメント (3) | トラックバック (0)

2006年9月16日 (土)

Eメールと堀江氏の刑事裁判

堀江貴文被告人の刑事裁判に宮内氏が証言を行ったというニュースがあちこちで掲載されておりました。(たとえばライブドアニュース)投資事業組合が実体のあるものかどうか、といった論点につきましては、ちょっと弁護側に不利ではないか・・・とも考えているのですが、きょうの宮内氏の証言内容を報道内容だけから判断しますと、けっこう堀江氏にも勝算がありそうな気がしてきました。共謀を裏付けるためには、宮内氏と野口氏の詳細な証言が不可欠だと思いますが、野口氏から証言をとれない今、宮内氏から具体的な堀江氏との共謀の事実が証拠として認定できるかどうか、非常に大きな争点となっています。弁護側として、闘いやすい土俵に持ってきたような感じです。そもそもスキーム自体が偽計取引や粉飾決算の構成要件に該当するかどうか、という土俵で戦うとしたら、公認会計士の資格まで保有するような優秀な捜査検事、公判検事に互角に戦うのはちょっとキビシイと思っていたのですが、「共謀」で闘う(関与、指示)のであれば、これは刑事裁判の伝統的な闘い方でしのげますから、被告人が完全否認している以上、弁護人にとってはこれ以上有利な条件はないほど闘いやすい土俵といえるでしょう。

根拠1 宮内氏の供述があまりにも曖昧ではないか?

なんといいましても宮内氏がスキームを知りすぎているのがマズイですよね。もし堀江氏のほうが全体のスキームに詳しい人であれば、ある程度宮内氏側があいまいな供述であっても「やむをえない」でしょうが、そもそも財務会計的な知見を有している宮内氏は、詳細に堀江氏にスキームを説明して、堀江氏の理解度まで認識できる立場にあったわけですから、違法行為の共謀関係にあることまでを詳細に証言できる立場にあります。そのような宮内氏が「・・・と堀江氏が理解していると思った」とか「要望か指示か、といわれれば指示だった」などと、ちょっと刑事弁護人からすると異議を出しても不思議でないくらいに信じられないようなあいまいな供述に終始しているとすれば、検察側としてもヤバイですよねぇ。(冷汗・・・)もし野口さんが主導的立場にあって、全体のスキームを統率していた、という組み立てが可能であれば、宮内氏が「ボク、わかんなぁい・・」状態で堀江氏の公判に臨むということもできますから、曖昧供述でも「やむをえない」と考えられますが、野口さんの証言がとれない以上は、検察も宮内氏の公判を維持するためには「ボク、わかんなぁい」状態にもできませんし、堀江氏立件のためには、どうしても「宮内氏はスキームに詳しい人」という構図は維持せざるをえないわけですね。

2 Eメールは刑事裁判の証拠になるのか?

前から気になっていたのですが、メールというものが果たして共謀共同正犯における「共謀」を基礎付ける事実、もしくは規範的な実行行為と捉える際の構成要件事実を立証できる証拠として役にたつのでしょうか?民事事件であれば、裁判官の心証が51対49でもシロクロをつけるわけですから、おおいにメールの証明力を認めても問題ないわけですが、刑事事件では検察官はほぼ100%有罪の確からしさを証拠で固めないといけないわけでして、メールがどこまで共謀を基礎付ける事実を証明できるのかおおいに疑問が残ります。(無罪推定原則)とりあえず事前にどういった指示があったのか、違法行為をどこまで認識していたのか、短いメールのやりとりだけではどうにも立証できないのではないか、といった懸念があります。つまり「共謀」というのは、人と人とが相対していた状況、いつ、どこで、誰と誰が、何を話して、その後どういう行動に出て、その利益はどう分配したか、といったところが客観的に認定されて「確からしさ」が基礎付けられるわけでして、むしろメールというのは、逆にあまり人と人との接触がなかったという客観的事実を基礎付けることにもなりますし、また堀江氏側が、自分の発したメールはこういう意味だった、と有利に援用することも可能になるはずです。よく考えるとメールというのは刑事裁判にとっては「両刃の剣」ではないか・・・と思ったりしております。

あくまでもニュース情報からの推測ですから、なんとも自信たっぷりには申し上げられませんが、この裁判、弁護人側としてはツッコミどころがけっこうあるんじゃないでしょうかね。

9月 16, 2006 ライブドア | | コメント (0) | トラックバック (2)

2006年9月 6日 (水)

堀江被告人の裁判と金融商品取引法

ライブドア前社長・堀江貴文被告人の公判が連日開廷され、検察側証人尋問が始まりましたが、なんとなく世間のムードでは「過去の人の刑事裁判」のような取り扱い方をしているような気がします。私も一般の事件とは異なり、公判前整理手続を経ている事件というものの争点整理がどこまでなされているのか、実務的によくわからないところもありますので、コメントがしずらい事件ですね。

宮内被告人ほか数名の事件が先行して、ほとんど争うこともないわけですから、風説の流布や偽計取引と評価されている全体のスキームの違法性や、投資事業組合などを利用した粉飾決算の実態について争うことは、堀江氏にとってはかなりしんどい闘いになりますね。新聞などで争点と指摘されているところとは少し異なるかもしれませんが、私は結局のところ、堀江氏の刑事公判に特有の争点、つまり「共謀」や「積極的関与」の有無が最大の弁護側の闘いどころではないかと思います。「共謀」というのは意外と立証するのは難しいです。他人のやったことを自分が実行したのと同じように評価して「正犯」として犯罪が成立するわけですから、自分と実行者との関係や最終目的に向けての認識、実行者との意思疎通の有無など、被告人が否認した場合にはけっこう立証すべき事実は多いはずです。実行行為に反復継続性があるような場合は容易に「共謀」を認定できるケースも多いのですが、本件の場合はそんなに反復継続性のある実行行為ではなかったように記憶しておりますが。(さて、どうでしたかね?)

企業法務に携わっていらっしゃる方々は、この裁判どう受け止めておられますでしょうか。「ホリエモンは有罪か無罪か」といったところに関心が向いてしまいますと、連日の報道をフォローする気持も少し萎えてきてしまうかもしれません。しかし少し視点を変えてみますと、ホリエモンの企業法務に及ぼす功績といったものもかなり大きいのではないか、と思えてきます。検察側と全面的に対決する事件であるがゆえに、これは企業法務にとって貴重な財産になりそうです。

まずひとつめは「メールと刑事裁判」の関係です。このたびの金融商品取引法における内部統制報告実務では、IT統制の評価基準としてメール等情報の保存管理に関する体制に焦点があてられるようです。今回のライブドア事件の捜査では、膨大な量のメールが証拠として押収されたり、(復元ソフトによって)復元されております。こういったメールによる意思疎通や犯行認識というものが、果たして刑事裁判ではどういった効果を及ぼすのか。検察はメールを用いてどのように立証計画を組み立てているのか、また裁判所はメールを証拠として、どういった犯罪事実を根拠付けるのか、それともメールは刑事裁判の証拠としては役に立たないのか、そのあたり、とりわけ「共謀」や「積極的な関与」が争点になっているだけに、おそらく判決では詳細に解説がなされることでしょう。したがいまして、検察官による立証計画におけるメールの用い方、弁護側によるメールの「証拠能力の乏しさ」(証明力の乏しさ?)に関する解説方法などを含めて、「メールと刑事裁判」の関係を研究することは、今後の内部統制報告実務の発展にかなり大きな役割を持つことはまちがいないと思います。

そしてもうひとつが不公正取引の処罰に関するところであります。「偽計取引」などというものは、定義すら語る人によってマチマチですが、意外によく検察が立件するときに利用する条文ですよね。今回の事件でもし堀江被告人が有罪とされる場合、裁判所はこのスキーム自体がどういった理由で「偽計取引」に該当するのか、おそらくこれも否認事件である以上は詳細に検討されることになると思われます。以前ホリエモン逮捕の折には、私のブログでは「罪刑法定主義」との関係でエントリーを立てておりましたが、どうも資本市場における不公正取引規制を実効性あるものとする要請からみますと、かなり罪刑法定主義が後退せざるをえない、というところが世間の一般常識のようでした。そうであるならば、相場操縦における「誘引目的」に関する判例同様、せめて裁判所における先例にこそ、今後の「偽計取引」の範囲を合理的に限定する機能を期待したいところであります。金融商品取引法には157条において立派な不公正取引取締のための包括禁止規定が存在するにもかかわらず、そちらは適用せずに158条の「風説の流布」「偽計取引」を用いて立件するといった手法は、今後も増えるものと思われます。つまり157条に代わって158条が一般法規としての有用性を持ちうるのであるならば、ぜひこのたびの裁判所の判断において今後の実務に参考となる判断基準を打ち立てていただきたいものであります。

9月 6, 2006 ライブドア | | コメント (2) | トラックバック (2)

2006年5月30日 (火)

「ライブドア監査人の告白」読後感

もともとcritical-accountingさんの「会計や監査の話などなど」ブログで近刊情報を知りまして、発売と同時に読みきってしまいました。著者である田中慎一氏に近い久野氏、小林氏が先日の第一回ライブドア刑事公判でいずれも公訴事実を全面的に否認している中での発刊ですので、法曹という立場からの詳細なコメントは差し控えたいと思いますが、まだライブドア強制捜査、堀江氏ら逮捕劇の記憶が新鮮なこの時期に、地検特捜部の動き出す場面から立件に至る経過を詳らかにした書物はたいへん貴重です。おそらく経済事件の刑事弁護を担当したことのある弁護士からみると、会計士さん方がお読みになる感想とは一味違った部分で興味をもたれるのではないでしょうか。今年1月下旬頃、私のブログでも連日ライブドア強制捜査に関するエントリーをアップしておりまして、そのときに「いったいライブドアの監査役の人たちは何をしていたんだろうか・・・・」とはがゆい気持をずっと抱いておりましたが、こうやって現場におられた会計監査人の方の告白を読み、いままでの(表舞台に登場しない監査役の方々へ抱いておりましたイメージも少しばかり変わり)モヤモヤがすーっと溶解してくるような感覚を持ちました。

以前ご紹介した企業会計審議会内部統制部会長の八田進二教授の著書「内部統制の考え方と実務」のなかに、「もしライブドアに対して内部統制監査があったとしたら、今回の事件は防げただろうか」といった問いかけがあります(74頁以下)。私は八田先生が「外部監査人による内部統制監査によって、ライブドアの事件は防ぐことができた」とする結論に対しては非常に懐疑的な印象を持ちまして、堀江氏、宮内氏による経理操作はCOSOモデルによる「内部統制の限界」であって、どんなに内部統制システムを構築したって不正を防止することはできないだろう、といった諦観を抱いておりました。しかしながら、この田中氏の「港陽監査法人による2004年9月期の審査」(ロイヤル信販、キューズ・ネットに対する売上取引の真相究明)に関する監査法人の対処経過を読み、たしかに、架空売上計上に関する証拠評価に限界がある場合、もし「財務情報の重要な部分に関する内部統制の重大な欠陥」といった切り口があったら、もっと会計監査人はライブドア経営陣に対して毅然とした態度で臨むことができたんだろうなぁ、というのが素直な感想であります。会社の商品価値を適正に一般投資家に伝えるための機能も大切かもしれませんが、会計監査人が自信をもって「ダメなものはダメ」と毅然とした態度でクライアントに臨むための武器としても、内部統制監査というものが機能することを知りました。

さて、この時期に、田中氏が告白本を著されたことや、田中氏の潔い対応への感想などにつきまして、会計専門家でない私がここで述べることはいたしません。おそらく田中氏は賞賛や非難を受けることは承知の上で、ともかく真実を語りたい、といった一心でこの本を世に送り出したものと思いますので、(株式分割や株式交換、そしてプーリング法、パーチェス法等に関して、一生懸命にわかりやすく説明しようと努力するその態度をみればよくわかります)その語りたかった真実(らしきもの)の部分を、もう少し時間をかけて、私なりに咀嚼してみたいと思っております。

しかし、新興企業の場合、証券会社やコンサルタント、会計監査人から監査役に至るまで、その経営陣との「最初の出会い」がどれほど大切で、一歩間違えるとどれほど恐ろしいものか、(自分の経験も含めて)あらためて痛感いたしました。

(追記)

critical-accountingさんも早速「告白」の感想をアップされてます。(TBからどうぞ)

5月 30, 2006 ライブドア | | コメント (0) | トラックバック (4)

2006年3月28日 (火)

堀江氏の刑事裁判に公判前整理手続適用

ライブドアの前社長である堀江氏の刑事公判におきまして、東京地裁は他の被告人とは分離したうえで「公判前整理手続」を適用することを決めたそうです。朝日ネット記事はこちらです

どんな行為が「風説の流布」「偽計取引」に該当するのか、誰が実行行為を行い、誰が共謀したのか、また共謀というのはどんな行動を捉えて「謀議」があったと評価できるのかなど、事実の有無、証拠価値の程度、法律適用の可否など、争点が多岐にわたるものと思われますので、実質的に第一回公判までに争点が整理される、ということは訴訟の迅速な進行のためにはたいへん好ましいことではないでしょうか。とりわけ、私はライブドアマーケティングが関与しているほうの「風説の流布」「偽計取引」といった構成要件該当性につきまして、いったいどのように裁判所が判断を下すのか非常に注目しているところです。おそらく今後さらに証券犯罪の厳罰化が進むものと思われますが、包括規定を利用してどんどん摘発が進むのか、それとも市民法ルールである罪刑法定主義が証券犯罪でも厳格に適用され、その構成要件該当性の可否を詳細に検討されるような裁判となるのか、興味はつきません。

ちなみに、かけだし裁判官nonさんのブログで、詳細に公判前整理手続の概要が解説されております。よくよく考えてみますと、一般手続ではなく公判前整理手続を採用する事件などですと、刑事弁護人を務める弁護士にも、相当証券取引法や市場取引に詳しいことが要求されそうですね。そうでないとせっかくの証拠開示手続や、証拠の評価さえ十分にできないことになって、公判前整理手続を弁護人側が有効に利用できない可能性が出てきてしまいます。

3月 28, 2006 ライブドア | | コメント (2) | トラックバック (0)

2006年3月17日 (金)

保釈請求・・悲喜こもごも・・・

(3月17日午後 訂正あります)

ライブドア事件によって逮捕勾留されたまま、起訴されている方は合計5名ですが、そのうち岡本氏(LDM元代表者 保釈金1000万)、中村氏(LDF元代表者 同2000万)、宮内氏(LD元取締役 同5000万)の3名が保釈を許可され、堀江氏と熊谷氏は保釈申請却下、そして中村氏と宮内氏は検察庁から準抗告が出されて釈放はされなかったため、結局16日に釈放されたのは岡本氏のみという結果となりました。準抗告というのも、私も経験はありますが、たいへん弁護人にとってもつらいものであります。(読売ニュースはこちらです

さて、こういった状況から何が読み取れるでしょうか?粉飾を一部認める供述を始めたものの、これまでの堀江氏の態度からして、とりあえず現状での保釈申請却下はやむをえないところかもしれませんが、熊谷氏が却下されたのは堀江氏の貸し株管理や本体の経理操作に深く関与しており、釈放してしまうと証拠隠滅のおそれが大きいと判断されたのかもしれません。(たしか、まだ証券取引等監視委員会の担当者が利益還流の解明のためにケイマン諸島などに調査に行っているはずですよね。そのあたりの裏づけを熊谷氏からとりたいのではないでしょうか)

天国から地獄へ落ちた気分を味わっているであろう中村氏と宮内氏については、なぜ検察庁は準抗告までして保釈を阻んだんでしょうか?考えられるところは、①この2名については、いまでこそ事実を認めたものの、取調べ当初は否認をしたために、第一回公判において供述を変遷させて無罪を主張するおそれがあると考えたこと、(つまりは、第一回公判において被告人らが事実を認めるまでは釈放されるべきではない、との検察庁の強い抗議)②まだ本体の粉飾決算の可能性があり、追起訴を予定しているため、③まだ本体の粉飾決算関連の事件については、逮捕を予定している者がおり、その予定者との接触によって証拠隠滅のおそれが認められること、といったところでしょうか。このうち、②につきましては、新聞報道ではすでに立件はほぼ終了とありましたので、可能性は薄いでしょうし、①につきましても、準抗告までして保釈を阻止する動機にはなりえないように思います。したがいまして、検察庁はいまだこの事件での「逮捕予定者」、つまりは宮内氏、熊谷氏、中村氏らと共謀して、ライブドア本体への利益操作を画策していた者が他にもいる、ということを考えているのかもしれません。来週あたり、検察庁の準抗告が却下されて、宮内氏、中村氏も釈放されるかもしれませんが、そのときは保釈の条件として、弁護人を通す場合以外は、○○氏と接触してはならない、といった条件が付されているのかもしれませんね。

なお、このエントリーの内容はあくまでも私ひとりの勝手な推測に基づくものでありまして、特定個人を中傷したり、名誉を毀損する意図はまったくございません。また、弁護士の立場からみた「正しい保釈制度のありかた」に関する私個人の意見表明もなく、ただ現実の保釈制度の運用からの推測にすぎないことを申述べておきます。(保釈制度に関する弁護士の意見を表明するのであれば、おそらくエントリーが5つくらい必要です)

(追記)宮内、中村両氏は18日、準抗告が棄却されたため、釈放される模様です。

3月 17, 2006 ライブドア | | コメント (5) | トラックバック (0)

2006年1月30日 (月)

ライブドアショック・中間総括として

昨日のライブドアマーケティングの取締役会決議の効力問題について、たくさんのコメントをいただき、ありがとうございました。かなり問題点がマニアックなところだったので、会社法の勉強のつもりでエントリーさせていただきました。何名かの方がご指摘のとおり、実際には取締役会の翌日には辞任届けが取締役らの手元に届いていた、ということですから、大騒動にはならなかったわけですが、こういった事態は中小企業ではよくあることでして、私なども在監の警察署へ辞任届けをもらいにいったり、担当取締役といっしょに説得に行ったりしたことがございました。また、コメントは私自身、もうすこし詰めて考えたうえお返事させていただこうか、と思っています。

さて2週間ほど、ライブドア関連の記事をアップしてきましたが、事態の関心はライブドア本体の刑事告訴(法人起訴)と粉飾決算といったところに移ってきたようです。今後も事態の進展にしたがって、このライブドア関連のエントリーを残していきたいと思っていますが、とりあえず今後の私のブログで取り上げる内容は、①ライブドアショックが現実化した今、あのライブドア・ニッポン放送の裁判を「企業価値論」を中心に振り返る、②企業会計ルールと倫理(法と会計の狭間)に絞ってみたいと思います。①につきましては、今後の敵対的買収に関わる司法判断において、このたびのライブドアの問題が影響を与えるのかどうか、といった問題でありまして、②につきましては監査役と会計監査人の連携問題とか、会計士法24条問題(コンサルと監査の微妙な関係)とか、すでに長銀問題でエントリーを続けております公正なる会計慣行の再考などが中心の問題であります。(なお、優柔不断ではありますが、ぶらっくふぃーるずさんが焦点をあてていらっしゃる「フジテレビの動向」についても、ちょっと私も気になりますので、そっちもなんかまた書いてしまうかもしれません。。。)

そろそろ会社法の正式な法務省令も発表される時期ですし、また2月には私自身、内部統制監査にも参加させていただくこととなり、新日本監査法人の方々とも勉強させていただく機会もありまして、そういったビジネス法務に直結する話題も取り上げる必要がございますので(ライブドア関連も)不定期にならざるをえないと思われますが、上記のような内容に興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら、今後ともおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

1月 30, 2006 ライブドア | | コメント (0) | トラックバック (1)

2006年1月28日 (土)

ライブドアMの取締役会決議の効力

ライブドア逮捕劇の直後、取締役6名のうち3名が逮捕されてしまったライブドアマーケティングが、残った3名の取締役による取締役会で穂谷野氏を代表取締役とする決議を行ったことについて、「これは無効ではないか」といったことが報道されました。(朝日ニュースはこちらです)事実関係をもうすこし補足するニュース(日経)によると、この1月24日午前3時の取締役会では、岡本代表取締役のほかに、追加して代表者を選任した、とのことであります。この朝日ニュースを読む限りでは、過半数の定足数を満たさなかったLDMの代表者選任決議は手続上の瑕疵があって無効になるのではないか、多くの法曹関係者もそう考えているのではないか、こういった無効決議を「問題なし」と回答したLDMの弁護士は「アホ」ではないか、といった印象を受けたのは私だけでしょうか。でも、少し考えてみますとこの報道は真実に合致していないようにも思えます。

1 本当に弁護士が「法的に問題なし」と判断したのか

弁護士資格をもった方が「取締役が逮捕された場合は、取締役が死亡した場合に準ずる」との解釈に「それは法的に正しい」と保証するでしょうか?ご承知のとおり、取締役の死亡は委任契約に関する民法653条に規定により当然の終任事由ですが、48時間で戻ってくる可能性のある取締役が死亡の場合と同様に当然に終任しなければならないと考えるのは解釈上で到底無理があります。相談を受けた法律専門家が、当然熟知しているか、もしくはすこし調査すれば容易に判明する内容について、軽々に「法律上問題なし」と回答するということは、おそらくありえないのではないか、といった疑問。

また、念のためにLDMのリリースを読みました(代表取締役社長および取締役異動に関するお知らせ  取締役辞任に関するお知らせ  一部報道につきまして)が、LDMとしては、(朝日ニュースと異なり)1月23日夜半に開催した3名による取締役会決議を有効として公表しており、ここに弁護士とも相談したうえ、問題ないとの判断のもとで行ったと記されています。24日に再度取締役会を開催した、といった事実も公表されておらず、また1月25日の時点であらためて「23日の取締役会決議には問題ない」との趣旨を記していること。

こういったことからみると、朝日の報道はひょっとして、会社関係者が「逮捕も死亡に準ずると思った」との発言をとらえて、①弁護士もこの条件での有効性を「法的に問題なし」と推測した②この条件(逮捕も取締役死亡に準ずる)で定足数を満たすかどうか、といった質問で法曹関係者の意見を聞いた、といった前提があったのかもしれません。

2 LDMの取締役会決議は無効なのか?

私も、この「会社の一大事!」の深夜に、残った取締役から「このままでは会社が機能しなくなってしまう!いまから取締役会を開催して、○○を代表者にしてもかまいませんか?」と相談されたら、「うーーーん、違法かもしれませんが、決議そのものは有効かも・・」と回答するかもしれません。

LDMの取締役は登記簿上6名で、代表者を含む3名の取締役が逮捕されたわけです。このままでは、たしかに過半数の取締役が取締役会に出席できず、法定の定足数を満たさないためにLDMの臨時取締役会を開催できそうにもありません。仮の取締役選任を裁判所に求める時間もありません。しかしながら、逮捕された3名のうち、1名でも適法に定足数から除外させる方法があるかもしれません。たとえば、残った3名のうち、ひとりの取締役が、岡本代表取締役の解任(代表権の解職)を求めたら、その議題に関しては岡本代表取締役は議題に関して「特別の利害関係」を有する取締役になりそうです。(最高裁判例昭和44年3月28日判例 ただし学説では反対説が多いところです)こうして、定足数から岡本取締役を適法に排除すれば5名中3名が出席した取締役会は定足数を満たすことになります。(商法260条の2、第2項)しかしながら、本件では、3人の取締役は別の代表者を選任する決議を行っています。議案ごとに特別利害関係人の有無を判断する必要がありそうですから、このケースではどうがんばっても定足数の問題をクリアすることはできないように思います。(すでに代表権を有している取締役が、他の取締役に代表権を付与する議案において、特別利害関係人に該当する、とは言えないでしょうね)おそらく定足数に関する規定は、厳しくする方向では定款の定めによって変更できますが、緩和する方向では強行法規として許されないものでしょうから、この決議は違法な手続きによってなされた疑いが強いのではないでしょうか。

さらに問題点は、逮捕された3名に対して、臨時取締役会の招集通知が発送されていない点ですが、たしかにこれも(強行法規としての)手続き上の瑕疵にあたり「違法」であることは間違いないようです。ただ、この点につきましては、昭和44年12月2日の最高裁判例がありまして、このような瑕疵があった場合、その通知されなかった役員たちが会議に出席していたとしても、結論に影響がなかったような特別の事情がある場合には、そのような手続き上の瑕疵ある取締役会決議も有効、とされています。そこで、先の定足数の問題につきましても、この判例の法理を適用して、こういった「違法ではあるが、瑕疵が治癒されて決議はさかのぼって有効」と解釈することも考えられそうです。おそらく、翌日である1月24日そして25日に、この3名の辞任届を、次々と受け取りにいったのは、この「特別の事情」があることが立証可能な証拠を念のために採取する目的だったのではないか、と推測いたします。(24日に辞任届を受理した後にも、報道のとおり取締役会を開催したのかもしれませんが、それだったらLDMの25日のリリースは事実と相違することになってしまいますね)

取締役会への各取締役の「出席の意義」といったものは、意見を自由に発言すること自体を重視するか、決議そのものを重視するかによって結論は異なりますでしょうし、社外取締役の意義、会社の意思決定の迅速化などを考慮して、一定の条件のもとで(会社法370条)、「持ち回り決議」が認められる新しい会社法のもとにおける取締役会の考え方なども学者の方々によって異なるかもしれません。ただ、とりあえず上記のLDMの火事場での実務家の意見としては、「ぎりぎりセーフ」といったことを言い切れるかどうか、思案のしどころだったのではないか、と思います。

といったあたりの理由から、私は「法的には問題があるものの」LDMが相談をした弁護士の方の指導は適切だったのかもしれない、と思いますし、(ただし私はライブドア自身を擁護する立場にもありませんし、むしろ今後の監査役、会計監査人の責任問題については強い興味を抱いております)朝日に意見を述べた法曹関係者の方々も、「もしこういった条件なら」といった留保つきの意見を述べたのではないか、と推測をしております。いずれにしましても、こういった問題が私の近辺で発生しないことを願っております。また、基本的なところで私の誤りがございましたら、ご指摘いただければ幸いです。(すぐに訂正いたしますので・・・・・)

1月 28, 2006 ライブドア | | コメント (11) | トラックバック (1)

2006年1月27日 (金)

フジテレビの思惑はどこに

昨夜は集中審理の後遺症のために、ヘロヘロになってしまって、エントリーをスキップしてしまいました。いろいろとこの1週間ほどライブドアショック関連のエントリーに終始しておりましたが、その周辺問題に目を向けてみますと、今後の企業買収関連の裁判などに役立ちそうな「企業価値ネタ」が山積しているようです。こういった刑事事件が発生しますと、どうしても「ホリエモン」個人とか「ライブドア」本体にばかり目を奪われがちになりますが、こういった非常事態の勃発をどうやって切り抜けようとするか、その周辺領域の人たち(法人たち)の動向のほうが、むしろ今後の対応策立案のための勉強になることが多いようです。利害関係者の今後の対処と、その結果を丁寧に集積、分析することによって、たとえば、私のような社外監査役の立場からしますと、株主代表訴訟とか、買収防衛に関する要件該当性の問題とか、少数株主権行使時における役員の対処方法などに、ひろく応用できるかもしれません。

きょう、フジテレビの会長とライブドアの新社長が、今後の両者の関係や、ライブドアの今後の営業方針などの協議のために面談をすることが報じられています。1月20日前後の報道では「断固、提携を解消し、損害賠償請求する」と(フジテレビの意向が)報じられていたものが、昨日あたりから「ライブドア支援も選択肢のひとつ」といった論調に変更されていますが、これはいったい、どういう理由からなのでしょうか。①純粋に12%を保有している自社のライブドア株式の株価維持向上のために大株主としての責任をまっとうする②いまの株価は検察庁による強制捜査を反映して作り出されたものであり、真のライブドアの時価を表しているものではない、ライブドア傘下の関連企業の有効利用や、ライブドアのオフバランスとして保有する無形資産の価値は、けっこう大きいものがある③日本を代表する専門家集団が1ヶ月もかけて「デューデリジェンス(資産調査)」を行ったにもかかわらず、単に「だまされた!」とだけ言い放っていては、逆にフジテレビの株主からデューデリの不始末を問われかねず、役員だけでなく、専門家集団にまで迷惑をかけてしまう。

考えられるのは、うえの3つのどれかでしょうか?まさか、天下のフジテレビにかぎって「切り売りするな」と要望し、支援すると表明して株価を維持しておいて、(個人株主などの損害賠償請求を回避しておいて)後で自社に有利に切り売りするとかいった手法はないですよね・・・・・まあ、東証が上場廃止の決定を出してしまうかもしれませんが・・・(ほかにも可能性がございましたら、お教えくださいませ)それにしても、マスコミはよく「暴かれた虚業集団」という書き方をされていますが、「虚業」とはいったい何を指しているのでしょうかね。ライブドア本体がHD的立場の会社であれば、HDはすべて虚業なのか、という問題にもなってしまいそうですし、財務諸表の数字だけを真偽の対象とするのであれば、グループ一体としての企業価値や、ソフト会社特有の人の保有する無形資産などは全く時価評価には関係ない、といったことでいいのでしょうか?もちろん「粉飾決算」かどうか、といったレベルでの話しとは別に、いまの110円という株価が本当のライブドアの時価を表現しているかといえば、どうもそうではないようにも思えるのですが。検察が介入したこと=企業の継続性の原則廃止、といったことであれば理解できますが。ともかく、倫理の問題を離れて、現時点で「虚業集団」とまで言い切ってしまうことには、若干の違和感を覚えます。(いずれにしましても、これは私個人のただの疑問ですから、マネーゲームは自己責任の範囲内でお願いいたします)

1月 27, 2006 ライブドア | | コメント (9) | トラックバック (2)

2006年1月25日 (水)

ライブドア捜査と罪刑法定主義(2)

昨日も、たくさんのコメント、TBを頂戴いたしまして、ありがとうございました。ラジオ大阪のニュース番組に出演させていただきましたが、やはり15分という時間のなかで、「偽計取引」「風説の流布」「有価証券報告書不実記載」といった内容や、刑罰の内容、堀江氏、ライブドア本体の今後など、ちょっとわかりやすく説明させていただくのは難しかったような気もします。来週月曜日は30分にわたって、解説をさせていただきますので、もうすこし一般の方にもご理解いただけるように工夫してみたいと思います。(なお、コメントいただいた方には、明日にでもまたお返事させていただきます。アエラの記事にも一応目を通しておきました)

さて、夜遅くまで弁護士会のお付き合いなどもありまして、少々疲れ気味ですが、ぴてさんneon98さんが問題視されていらっしゃる「偽計取引」とは何か?といった点につきまして、すこしだけ自論(推論ですが)を、以前よりも敷衍して述べたいと思います。私も証券取引法158条の適用場面についてはかなり問題点が多いものと認識しておりまして、「ひとつ間違えると」どこの企業でもやっているような資金調達手段すら、「これって偽計取引じゃないの?」と財務担当者が不安を抱くことになるかもしれません。あらためて申し上げますが、規制を厳しくすることと、規制をゆるやかに適用することとは大きく異なります。このたびのような事態が発生して、法律による規制を厳しくすることは、立法政策の是非はともかくとして、国民が選択した判断であるがゆえに、それはひとつの解決方法であります。しかしながら現行規制をゆるやかに解釈して、広く刑罰の対象行為とすることは、その法律によって規制される範囲が、一般企業にとって明確にならないために、本来自由な資金調達の手段まで、抑制するおそれがあり、国民経済の発展にとって非常に危険な状況に陥ります。(罪刑法定主義)そこで、ぴてさんやneon98さんが懸念されているような問題が生じてくるわけです。

ここからは私の推論でありますが、今回堀江氏らの逮捕事実となったライブドアマーケティング(LDM)の偽計取引とはいったい何か?どこが違法なのか?といった分析について、再度確認しておきたいと思います。前にも申し上げましたとおり、158条における「偽計取引」にあたるためには、行為者には特別の目的(たとえば相場変動目的、利得の目的など)は必要ではないと思われます。(その理由も以前のエントリーで申し上げたとおりであります)要は、「当該取引について、何が公正な取引」であって、その公正な取引から、どれだけ逸脱しているのか、といった評価が必要な概念であると認識しています。そもそも証券取引法に規定されている刑罰法規によって保護されようとしている法益は、一般投資家の保護とともに、国民経済の運営という国家的法益も含みます。もうすこしわかりやすく申し上げると「国家が形成しようとするルールそのものが保護される法益」ということだと思われます。ということになりますと、誰かを騙して利得を得る目的は不可欠ではなく、面白半分でトリックを使うこと自体が、ルール違反として許されない行為だとも言えるわけです。

そこで、そもそも本件逮捕事実のなかで、相対取引の対象となるマネーライフ社の株式売買については、なにが公正な取引かといいますと、LDM社がマネーライフ社の本来株主との間において、第三者の評価機関を通じて未公開株式の価格評価を行うことであり、その価格にしたがって株式交換比率を決定して株式交換により買収する、それが公開企業であるLDM社によって重要な取引事実であるならば、真実を開示する、ということまでが「公正な取引」であるはずです。しかしながら、LDM社は、取引にとって不必要な投資事業組合を介入させて、現金取引によってあらかじめ取得したにもかかわらず、これを隠匿し、第三者機関を通じることなく当事者が評価したにもかかわらず、これを第三者機関を経由して評価したかのように見せかけ、投資事業組合とLDMとの間で1対1という交換比率で株式交換を行ったものと公表したわけであって、「LDMは正しい評価によって、今後の企業価値を高めるための優良企業を購入した」といった誤信をもたらす行為に及んだ、ということですから、先のルールに則った公正な取引との比較において、大きく逸脱しているのであれば「偽計取引」の構成要件に該当することになろうか、と思われます。相対取引の相手方を錯誤に陥らせるような行動に出た場合にも偽計取引にあたるわけですから、「公表」することは不可欠の要素ではなく、本件でのルール違反の程度を評価する一要素にすぎないわけです。

さて、それではこういった評価を伴う規範を用いて、一般企業の資金調達の自由な範囲を明確化できるかといいますと、今後の投資サービス法における立法作業に期待するところが大きいところでして、現行法を前提とするかぎりは(残念ながら)自信がありません。常識的な解釈論としましては、構成要件の該当性の判断、そして可罰的違法性の判断といった二重の基準によって、一般企業の経済活動を保護していかざるをえないものと思いますし、また刑事弁護人らによる検察と世論への挑戦意欲といったものも必要になってくるのではないでしょうか。

このような「ややこしい」解釈を必要とする規定など、そもそも罪刑法定主義に違反するものだ、という意見もあろうかと思います。しかしながら、先日neon98さんよりご指摘のあった最高裁判決のような立場を前提としますと、ある程度解釈の幅をもたせるような規定といったものも、不正手段の複雑性といったことを考えるとやむをえないものであるかもしれませんし、この線引きは非常に難しい思考を要するところだと思います。判決のなかでは「偽計取引にあたることは明らかである」とされてしまう可能性もありますが、「偽計取引」にあたるかどうかの評価の問題をていねいに公判で論じることが、今後の証券取引における不正行為の範囲を明確にするための「いまできる」最良の手段ではないでしょうか。(まあ、こういった論点を回避するために、関係者個人およびライブドア本体について、量刑の等しい有価証券報告書不実記載だけで起訴、ということも考えられますが・・・・。フジテレビや関係各企業にとって、今後の民事賠償責任の追及のためには、ライブドア本体の起訴は不可欠でしょうから)

1月 25, 2006 ライブドア | | コメント (6) | トラックバック (5)

2006年1月24日 (火)

なぜ堀江氏は逮捕されたのか?

事務所で不動産関連事件の訴状を起案しておりましたら、ある新聞社の方よりお電話をいただき、堀江氏が逮捕されたことを知りました。すでに任意で事情聴取が始まっていたことは知っておりましたし、関係者全員が地検に集められている状況でしたので、「ひょっとしてそのまま逮捕かも」と考えておりましたが、やはり驚きました。

ご承知のとおり、私は「堀江氏にXデーは来るのか?」のエントリーのなかで、堀江氏に逮捕はない、と予想しておりましたので、早々と予想がはずれたわけでして、「敗軍の将、兵を語る」の部類になってしまいますが、逮捕容疑が子会社社長による「偽計取引」ということでしたので、もっとも令状がとりやすい事件に焦点をあてたものとして、検察の捜査方針に関しましては概ね想定の範囲内であったと思います。(ただ、果たしてこの「偽装取引」「風説の流布」が今後も公訴事実として維持されるかどうかは不透明であります。当然、身柄はいったん確保するが4名中、事実を真摯に供述し、かつ関与が薄いと認められる者については不起訴(起訴猶予)、といった事態も想定されますので。ただし、私的には今後の同種事件の参考のためにも、ぜひ逮捕事実に関して、そのまま公訴を維持してほしい、と願っているわけですが。)

逮捕事実に限って考えますと、子会社代表者が一連の偽計取引の実行者ということで、ライブドア役員3名は「主犯に近い共謀者」という位置づけではないか、と思われます。(情報が乏しいために報道内容からの推測ですが)

それではなぜ堀江氏は逮捕されたのでしょうか?一連のスキームにおけるお金の流れ、「取引仕組み図」の発覚、指示メールの存在など、いろいろな証拠の存在が判明したわけでして、ライブドア本体が子会社による偽計取引に関わっていた事実は間違いなさそうですが、それでは宮内氏が(堀江氏の)関与を否定しているにもかかわらず、堀江氏の「共謀」を裏付ける証拠はどこにあったのか?ナゾです。もし、これまでの報道内容から、(偽計取引について)堀江氏の直接関与を裏付ける証拠が存在することが判明しておりましたら教えていただきたいと思います。堀江氏が違法性を認識しつつ、具体的な指示を出した、とされる証言がすでにあるのかもしれませんが、組織の流れからみて、伝聞(また聞き)によるものかもしれません。今後の取調べにおきましては、堀江氏が直接指示を出す、もしくは堀江氏に直接判断を仰ぐ立場にあった人達への厳しい追及がなされ、そこで直接の指示、了承の事実を固めていく、といったことが必要になるのではないか、と思います。

それにしても不気味なのは、このたびの一連の事件報道のなかで、ライブドア監査役、会計監査人への非難めいた感想がこれまでほとんど聞かれないところです。とりわけ監査役につきましては、6年もの間、弁護士資格を有する方がライブドアグループ会社を監査していたわけですから、普通に考えましたら、いろいろな関与が噂されてもいいように思いますが、そういった報道は一切なされておりません。そもそも監査役といったものが、コンプライアンス経営にとって、あまり期待されていない、といった社会風潮なのでしょうか。そうであるならば、同じように社外監査役としての立場にあります私としても、(社会から期待されていないことについて)すこしさびしい気もします。また捜査の舞台が「本体の粉飾決算」に移るのであれば、後日監査責任者の立場といったものがクローズアップされるのかもしれませんが、ともかく不気味であります。

24日以降、関西ローカルですが、何本かのラジオの報道番組に出演します。ブログで書いていることと、「公共性」の高い放送局を通してしゃべる内容が違うかもしれませんが、そこは「オトナの事情」ということでご容赦ください。。。

(追記1)

約1年前から内偵を進めていた、という報道があります(産経ニュース)この報道内容(上層部からゴーサインがでたのが1月16日だったこと)や、いくつかの株式分割、株式買収、売り抜けの事実の総合評価が「偽計取引」に該当するとみられていることなどから、考えると、「偽計取引に関する共謀(共同の謀議)」が「あったかなかったか」といった事実認定に関する争いとは別に、そういったシステム自体が「偽計取引」に「該当するかどうか」といった評価に関する争いにも発展するのではないでしょうか。ただ、もともと証券取引法157条1項の存在からも明らかなとおり、この分野の法は構成要件の網を広くかけていて、もともと「あいまいな」規定でも罪刑法定主義には反しない、といった考え方が浸透しているかもしれませんので、若干不明瞭(と思われる)な容疑事実でも、オッケーなのかもしれません。ただ、あくまでも「投資家保護のために市場の不正行為を追及する要請」と「企業が安心して市場で金融活動を行うことができる自由」とのバランスをどこでとるべきか、こういった視点はかならず必要ではないかと思うのですが・・・・。

1月 24, 2006 ライブドア | | コメント (7) | トラックバック (8)

2006年1月20日 (金)

ライブドアショック・検察の突破口を考える

(文中 追記あります 20日午後    追記2 20日夜)

19日の読売新聞や日経新聞の記事を読んでおりますと、ライブドア本体の粉飾決算の仕組みにつきましては、投資事業組合や子会社の預金口座を利用しつつも、詰めの段階では非常に稚拙な手口によって(親会社から子会社へ架空の請求書送付など)自社株取引益(資本取引)が、売上(利益増加)へ変遷していったような内容のものでして、報道内容が事実だとすれば、ちょっと私の予想に反して、ライブドアにとっては深刻な事態になるような気もしてまいりました。

ところで、やはり私にとって最も気になる点は(しつこいようですが)、このライブドアショックの引き金になったライブドアマーケティング(LDM)によるマネーライフ社株式交換と、それにまつわる株式分割のスキームです。ここに検察が絶対の自信をもって証券取引法158条(風説の流布、偽計取引)の有罪立証の確実性をいかにして確保して、裁判官を説得して令状をとったか、といったところです。

1 偽計取引

証券取引等監視委員会の活動状況(平成16年度版 大蔵財務協会発行)によりますと、平成4年度(事務年度、以下同じ)から平成15年度までの間におきまして、監視委員会が告発した事件として①クレスベール・インターナショナル・リミテッドによるプリンストン債販売事件、②ドリームテクノロジーズ株式のネット会員への売買推奨メール事件(ただし、風説の流布も併記)、③エムティーシーアイ株の公募増資事件あたりでして、非常に数が少ないですね。やはり予想されたところですが、偽計を弄する対象となる取引は、なにも市場を有する取引ばかりではありませんので、特別に「相場の変動を目的とする」ことは必要ではないわけです。(そもそも相場がないことが多いわけですから)このたびの新聞報道でも、虚偽を公表した、という点が強調されていたわけですが、別に立件するにあたって、「公表」することを強調する必要はないわけでして、要は証券取引法が保護しようとしている法益、つまり国民の有価証券の取引における安全性を害するような行為態様があれば、それは処罰の対象とされるわけですね。今回の事例にあてはめて考えてみますと、マネーライフ社の株式について、事実上はすでにライブドアの支配下にある投資事業組合が先に現金取得していたにもかかわらず、(事実に反して)LDM社があらたに株式交換という手法によって支配下に置く取引を行った、というものです。錯誤に陥れる相手方は税務署でも、取引相手方でも、一般投資家でもいいわけでして、有価証券取引が公正安全に行われるものと信じるについて保護に値する者に対して、その誤解を招く行為をすれば「偽計取引」に該当する、との判断があるのではないでしょうか。たまたま今回の取引は「公表」という形で露見したにすぎないと思います。めんどくさい「犯行目的」など立証する必要はないわけですから、これが最も確実に(おいしく)捜査令状をとれる部分ではなかったか、と思います。もちろん投資事業組合がライブドアの実質的な支配下にあるかどうか、といった点についても立証は必要ですが、こういった問題は賄賂罪における「事実上の支配力を有する者かどうか」とか、共謀共同正犯論における「実質的な首謀者」など、静的な証拠の積み上げによって立証は十分可能だと思われます。(追記 どうもマネーライフ社をLDMが買収する旨の発表文書を、ライブドア本体のファイナンス責任部門が作成して送付したことが判明したようです 追記おわり20日午後)

2 風説の流布

これは、「流布」といった言葉からおわかりのとおり、不特定多数の者が認識しうる状況で、虚偽の事実をひろく広報することであります。これもかならずしも相場の存在を必要とするものではありませんが、流布の相手が不特定多数の者ですから、おおよそ有価証券取引相場のある場面での適用が中心になろうかと思われます。私はこっちの「風説の流布」の立件のほうが検察庁にとっては「ややこしい」のではないか、と思います。今回の事案では、LDMが上場企業ですから、その株式市場における相場変動を目的とした行為があった、との評価が必要になってくるからです。さきほどの「事実上の支配関係」の立証でしたら、いくつかの事実を積み上げて「総合評価」すれば立証可能ということになりますが、こちらの「相場変動目的」の立証の場合には、必要となる事実それぞれの因果関係が要求され、その因果関係のひとつでも、(?)がつきますと全体としての立証が困難になってくるおそれがあります。したがいまして、どういう考え方になるかといいますと

①LDMによるマネーライフ社子会社化発表(2004年10月)→LDM株式分割発表(2004年11月8日)→LDM 四半期決算報告(2004年11月12日)→株式分割実行日(2005年1月)→投資事業組合によるLDM新株の売却、という時系列の流れ

②2004年10月から2005年1月までのLDM社の株価推移

③上記時系列と株価の対応および、ライブドアが反復継続して同種行為を繰り返している事実

以上の各問題点の整理などから、①にあげた各行為と、株価変動との因果関係が認められ、相場変動目的が立証されるものと推測いたします。また、いくつかのブログにおいて「不作為による風説の流布」といった構成が問題視されておりますが、(私自身がこの構成を理解していないからかもしれませんが)風説の流布は「故意犯」としてのみ規定されておりますので、不作為の故意と過失犯としての「注意義務違反」との区別を考えますと、検察側が果たして過失犯と区別して立件できるかどうか、かなり難しい問題が出てきます。そういった意味では、私は「不作為による風説流布、偽計」といった概念は実務としては立件してこないものと予想しています。どこか、基本的な考え方の誤りがあるかもしれませんが、こういったものが今後の議論の基礎になれば、と思い整理してみました。

なお、別件逮捕(別件捜索)に関する問題点などが指摘されておりますが、さて検察は「別件逮捕」「別件による捜索」といったことを認めるでしょうか?「いやいや、私達はもともと風説、偽計はけしからんと思って捜査を始めたんだけど、たまたまおいしいものが出てきただけですよ」と言われて、これをひっくり返すことはできるでしょうか??もちろん、別件逮捕であることを立証する責任があるのは被告人側です。百戦錬磨の検察相手に、弁護人がその主観的意図を暴くことは(不可能とは申しませんが)非常に試練の道であると思われます。また、捜索差押令状については、かなり広範に被疑事実との関連性が認められているのが判例の立場であることを付言しておきます。

(追記2)

この「別件逮捕、別件捜査」に関する意見に対しまして、メールにて何名の方からか、ご批判を頂戴いたしました。(最近は、同業者の方もよく読んでいらっしゃるようで。。。)私はあくまでも「現実の弁護人としての対応」を基準に申し上げているだけでして、決して弁護士の理想としての対応方法を申し上げているわけではございません。もちろん、別件逮捕、別件捜査自体が違法性の高いものである、といった主張についてまで放棄しているわけではございませんので、念のため申し添えておきます。私自身は、どちらかといいますと、こういった「別件捜査の実効性」というものが回避できない場合が多いために、それであれば罪刑法定主義の基本を重視して、できるだけ検察の突破口となる部分への厳格な法規制を主張すべきではないか、といった考え方であります。証券取引法157条1項のような、「包括規定」すら憲法違反でない、といった最高裁判例が存在するとのことでありますし(neon98さんのご教示)、そうであるならば、このまま放置してしまうと、「別件逮捕、捜索差押令状の広範な適用」が当たり前になってしまわないか、といった危惧感を抱いておりますところ、ご理解いただければと思っております。(追記2 おわり)

個人的な意見で申し上げるならば、粉飾決算がらみだけでなく、相場操縦や内部者取引など、困難な立件を必要とする経済事犯を突破するための検察の手法として、この158条は今後多用されるのではないかと予想しておりまして、もしライブドア関連の刑事手続がありうるならば、有価証券虚偽記載の点だけでなく、この158条違反の点についても正式な起訴をしてほしい、と思います(今後の刑事弁護の進展のため・・・・・)

1月 20, 2006 ライブドア | | コメント (4) | トラックバック (2)

2006年1月19日 (木)

ライブドア捜査と罪刑法定主義

世間はどちらかといいますと、すでに「ライブドア粉飾決算」と「東証ショック」のほうへ興味が移っているようですが、私は場末の法律家の使命として、東京地検の強制捜査の根本である証券取引法158条(風説の流布と偽計)の適用範囲について、再考してみたいと思います。おそらく今後も、投資サービス法(仮称)制定後の不正取引行為(証取法157条1項、しかしこの条文が刑事事件で適用されることがあったら、それこそ憲法違反ではないでしょうか)への検察権力の介入にあたっては、常套手段として、この158条が適用されるものと予想されますので、ぜひ企業の財務担当者や証券会社、監査法人の方が「萎縮的効果」を覚えることのないよう、運用されることを願っています。

きょう、出版当時、東京地検特捜部の副部長であった永野義一さんが執筆された「企業犯罪と捜査」(警察時報社)のなかの「株価操作事犯の捜査」について一読しておりました。いわゆる検察庁側からみた「捜査端緒」→「強制捜査」→「有罪立証」のマニュアル本でありまして、いかにして株価操作事案における「捜査令状」要件をみたす内偵が重要であるか、が認識できました。この永野さんも明言されていらっしゃいますが、「株価操作事犯の場合は、強制捜査が(裁判官に)許容されるまでが勝負であって、その後どんな証拠隠滅をされようが、被疑者に黙秘されようが、確実に有罪に持っていけるだけの証拠を固める必要がある。もし強制捜査のあとで逃げられるようでは検察の恥である。」とされています。いや、このあたりは私も実務家としてはよく理解できます。不退転の決意をもって、大型経済犯罪の解明に乗り込む検察の意欲というものは、検事をしている友人からも聞く話であります。したがいまして、やはり今回のバリュークリックジャパン社(現ライブドアマーケティング社)に対する証券取引法158条(風説の流布、偽計)の適用は、おそらく考えぬいた末の「これなら逃げられない」との確信をもった検察の結論があったのではないか、と推測いたします。

そこで、この証券取引法158条の解釈問題ですが、ライブドアマーケティング社としては、自主的に開示すべき、と東証から指導されている開示情報に「風説の流布」と「偽計」といった文言に適用されています。(条文につきましては、ふたつ前のエントリーをご参照ください)

ところで証券取引法158条は、一般に目的犯と説明されていますが、本当にこれって主観的構成要件として要求される「目的犯」なのでしょうか?たしかに、158条の条文を読みますと、「相場のある有価証券」の取引につきましては、その相場変動目的による風説流布、偽計が予定されていますが、相場の存在しない有価証券取引の場合には、なにも書いてありません。「有価証券取引のため」と規定されてはおりますが、これは「取引による利得目的のため」という意味ではなく、「有価証券取引の際」と解釈すべきだと思います。その理由は、会社法施行日に合わせて新しく適用される刑罰規定(証券取引法197条)が、1項の加重犯として、158条の罪を犯す場合に「財産上の利得を得る目的」で158条の不正取引を行った場合には3000万円以下の罰金に処す、としており、この加重要件として「目的」が要件化されているからです。そうしますと、結局のところ158条の「風説の流布、偽計」といった行為は、相場変動目的に向けた一連の行為、といったものが「危険犯」として立件されればいいわけです。なお、この「目的」の立証ですが、そもそも個人でも法人でも、内心まで立証することは至難の業ですから、いくつかの行為の積み重ねによって立証することになりますが東京地裁判決平成14年11月8日(東天紅TOB事件)においては、時系列的に3つの発表行為を総合評価したうえで相場変動目的による風説の流布と評価したものがありまして、こういった前例から検察庁は「財産的利得目的」の立証不要と解釈をして158条を適用したのではないか、と思われます。

ただ、そうしますと法定開示情報ではない株式公開企業の四半期報告書に虚偽記載があった場合にも、すべて経済刑法に触れること(風説の流布)になるのか、といった疑問が呈されるところであり、こういったところに158条の適用は萎縮的効果がありそうです。ただ、私は単に四半期報告書に虚偽記載がなされただででは、この158条の構成要件には該当しないものと考えます。といいますのは、このたびのライブドアマーケティングの事例では、マネーライフ社との株式交換→自社株100分割発表→四半期報告といった流れが存在することと、(おそらく)同様手法を反復継続してきた経緯との総合判断から「相場変動の目的」を立証できるのであって、たんに信用維持目的(たとえその結果として株価安定といった効用があったとしても)での情報開示だけでは確信的な「相場変動目的」は立証できないと考えられるからであります。また、「有価証券取引のため」といったルートでたどってみましても、上記のとおりこれは「利得を得るため」といった目的犯としてではなく「有価証券取引の際に」と解釈すべきであると思われますので、そうであるならば予想される当事者は有価証券等売買取引者であって、単に純粋な第三者は除外されるのではないでしょうか。そうしますと、四半期報告を開示すべき株式公開会社は、「相場変動目的」を有するものでないかぎりは、この規定からははずれるのではないかと思います。(なお、「萎縮的効果」などという言葉を用いましたが、もちろん四半期報告であっても、虚偽情報が悪いことにはかわりません。ただ、ここでは証券取引法158条の適用範囲の明確化といった意味で、使っておりますこと、ご理解ください)

単なる私論ですし、経済刑法の専門家でもございませんので、またミスがあるかもしれませんが、ちょっとまじめに考えてみたい論点ではあります。(とりわけ、この証券取引法158条が改正された平成4年改正の趣旨など、ご存知のかたがいらっしゃいましたらご教示いただけますと幸いです)

1月 19, 2006 ライブドア | | コメント (5) | トラックバック (3)

2006年1月18日 (水)

偽計取引と風説の流布(ライブドア刑事問題)

(1月18日午前 追記あり)

「風説の流布」などという言葉はあまり世間で使われていないんじゃないでしょうか。(「風雪流れ旅」を連想するのは私だけでしょうか)いきなり流行語のように新聞に登場してきました。

きょうは監査役会で遅くまで役員方と一緒だったもんで、ほとんどニュースをチェックしておりませんでした。それで今、いろいろなブログを拝見しましたが、私のような楽観論はあまり見当たりませんでした。。。むしろ「風説」「偽計」で済むもんじゃない、とか。どうも楽観論は分が悪いようです。

とりあえず、ライブドア問題につきましては、いくつかにテーマを絞って今後の検討課題にしたいと思います。

① ライブドアの上場廃止問題、関連企業の免許取消問題

② ライブドアもしくは関連企業の課徴金納付命令問題(行政処分)これは2004年9月の事件には適用されないのでしょうか。きちんと証券取引法、規則を読んでおりませんので、まだわかりませんが。

③ ライブドアの役員刑事責任(罪責や身柄拘束など。ホリエモンを含む)

④ 検察庁、証券取引等監視委員会の捜査目的

あたりでしょうか。

日経や読売あたりの新聞解説から、捜索差押令状に記載されているような被疑事実についてはなんとなく理解できました。いずれにせよ、目的犯の立件ですから、お金の流れと利益の最終確保者の解明、スキームの反復継続性の立証が初期捜査の不可欠の目標ですね。目的や故意といった構成要件の主観的要素を立証できなければ話になりません。直接関与者の容疑が固まった時点で、さてライブドア本体の役員関与まで状況証拠と取調調書でたどりつけるのかどうか、そのあたりが次の問題になろうかと思います。

このあたりまでの情報が整理された段階で、上記4つのテーマについて、次第に明らかになってくるように思います。

(1月18日午前 追記)

読売新聞の一面にはびっくりしました。ライブドア本体の「粉飾決算」疑惑だそうです。これを受けて東証はライブドアの売買取引一時停止(午前11時5分再開)ということになりました。そもそも「風説の流布」「偽計」ということでは上場廃止基準には抵触しないわけですが(違法性が強い場合には他の基準に該当するケースもありますが)、粉飾決算のおそれ、ということでしたら堂々と取引停止にできるわけですよね。(上記問題整理①)

ということで、今回の検察、監視委員会の本当の目的は「ライブドア本体の粉飾決算」にあるのかもしれませんね。もし粉飾決算というところに収斂するのであれば、むずかしい証券取引法上の犯罪に関する法律問題も回避したり、他社の財務部門もビクビクしているとされる「錬金術」そのものに対する萎縮効果も回避できますので、一般企業やマーケットへの影響も限定的になるでしょうし、もしそのあたりにオトシドコロを考えているとするならば、やはり検察庁は見事かな・・・とも思ったりしております。(上記問題整理④)ただ、私個人としましては、前回エントリーで記載しましたとおり、直接検察を動かしたものは「挑発」「挑戦」だという説にまだ固執しておりますが。

しかし、こうなるとまた監査法人が俄然、注目を集めることになるかもしれませんね。ライブドア幹部と監査法人との間で、会計基準の変更とか、監査基準の修正とか、そういった手法が異常かつ反復継続的に繰り広げられていたのかどうか、そのあたりを詰めていかないと、「刑事問題」の立件としては厳しいところがあるんじゃないか、と勝手に考えております。(上記問題整理③)

1月 18, 2006 ライブドア | | コメント (0) | トラックバック (2)

2006年1月17日 (火)

堀江氏に「Xデー」はあるのか?

号外版(ライブドア 強制捜査へ)ほか、たくさんのエントリーにたくさんの方からコメントを頂戴しておりますが、どれから手をつければいいのかわからなくなってしまいまして、まことに申し訳ありません。。。明日以降、順にお返事させていただきます。個人的には井上判事の再任拒否問題に触れたいのですが、たくさんの著名ブログで「ライブドア」問題を取り扱っていらっしゃいますので、やはりそちらの問題について、すこしだけ触れておこうかと思います。(ろじゃあさんがご指摘のとおり、17日は重要な耐震強度偽装問題の証人喚問もありますし、また宮崎勉の責任能力判断を含む最高裁判決がありますし、新聞の社会面はいったい何を取り上げるのか、皆目検討がつかない状況でありますが。)

また、すでに47thさん(ふぉーりん・あとにーの憂鬱)は「風説の流布」(証券取引法158条)の解釈問題にまで言及されておられるようで、「早っ!!」と驚いておりまして、実はまだ私はそこまで頭がついていきません。もうすこし、情報が整理された段階でコメントさせていただこうか、と思っております。

あまり弁護士らしくない「切り口」になってしまいますが、果たして今後堀江氏の「Xデー」は訪れるのかどうか、ちょっとだけ予想してみたいと思います。ズバリ、私は(堀江氏が言動を慎むのであれば)Xデーは来ないと思います。つまり罰金刑による略式命令(もしくは在宅のままで正式起訴)で済むのではないか、と。

特捜が動く場面を常識的に想定してみますと、社会に「悪が露見して」国民に検察待望論が渦巻くケースと、外交政策等、なんらかの行政パフォーマンスが要求されるケースと、検察権力に対して毅然と挑戦(挑発)するケースに分類することができます。

今回のライブドアの場合、「投資サービス法」制定直前における市場整備の一環、といった見方もあろうかと思われますが、それならもうすこし規模の小さなところを「みせしめ」的に処分するべきであって、いきなり「ライブドア」はないと思います。また、私の常識が正しいとするならば、いま社会に「ホリエモンは犯罪者のニオイがするから検察が動くべきだ」といった風潮が蔓延しているかといいますと、そんな雰囲気もあまり感じられないように思います。そこで私がちょっと注目したいのは、LIGAYAさんのブログで、まだ事件発覚前に書かれていた書評であります。国家としては「社会的影響力を有するライブドアの最高責任者のおふたり」が、こういった言動を世に公言される、ということは、(グレーな領域で取引を行った、と一般には認識されている方ガタですから)ちょっと国家権力に対する挑発と受け取られるの「おそれ」が高いのではないでしょうか。私は昔から、検察庁というところは、「挑発には受けて立つ」という気概が脈々と受け継がれているところだと思っておりますし、挑発行為が「そのへんのおっさん」であれば無視しますが、それなりに挑発によって検察の威信が揺らぐほどの社会的影響力ある人によるものであれば毅然とした対応をとる官庁だと認識しております。(たとえば日本で認められていないけれども、社会的に有用とされる医師の治療行為を、あえて日本で行う場合など)そういったところから、検察は証券取引等監視委員会と共同して、まずカタいところから押さえてみて、今後の堀江氏の事情聴取における対応をみたうえで、余罪捜査へ発展させるのではないかと予想しております。

夜、自宅に帰りまして、テレビで見たかぎりでは、六本木ヒルズに入っていく検察事務官らの人数は14,5名程度でした。その数の少なさにちょっと意外な気がいたしました。(報道陣が100名ということらしいですが)まずは捜索差押に踏み切り、今後は関係者の事情聴取をじっくりと時間をかけて行い、担当検事と堀江氏とのある意味「司法取引」のような状況が繰り広げられるのではないでしょうか。

またまた何の根拠もない「井戸端会議」的なヨミですので、当たるも八卦、当たらぬも八卦、私の想定の範囲内になるのか、想定外となるのか、ということでお許しください。事実関係がもうすこし明確になりましたら、もうすこしマトモなエントリーをアップしたいと思います。

(追記1)

日経平均は、急降下で始まったようです。やはり私の「楽観論」は今回も少数意見で終わるのかもしれません。

(追記2)

元検事の矢部先生が、本件でエントリーされています。私も今回の検察の情報管理はさすが・・・・と思います。証券取引等監視委員会も総勢60名ほどの民間出身者の職員がいらっしゃるにもかかわらず(また、このたび50名ほどが捜査に投入されたにもかかわらず)一切情報が漏れませんでした。(それとも報道陣との阿吽の呼吸とかあるのでしょうか?)

ところで日経平均はほとんど影響がないみたいですね。海外投資家が順調に買い進んでいるようで。それだけ日本の景気回復はホンモノということなんでしょうか。(前場)株価の動きはしかたないと思いますが、ニュースや新聞、ブログなどをみておりますと、それぞれ「自分の思惑」に合致しているところだけをつまみ食いしたり、希望的観測を奥に秘めながら情報を分析されているものが多いようですね。こういったときこそ、ご自身の人生経験とか常識とか、日本人の特性とか、そういったことを自分なりに頭で考えて今後の予測をたててみると意外と「報道されていない大きな穴」が見えてきたりするのではないでしょうか。(偉そうな言い方をしておりますが、私は何も浮かんでこないんです・・・)

(追記3)

やっぱり日経平均急落でしたね。。。今後の捜査が気になります。

1月 17, 2006 ライブドア | | コメント (6) | トラックバック (6)