2005年10月25日 (火)

社員は談合企業を救えるのか?

企業コンプライアンスを考えるうえで、「告発」や「申告」といった企業や社員の行動に期待をかける重要法令が来年から施行されます。ひとつは1月4日施行の改正独占禁止法であり、もうひとつは4月1日施行予定の公益通報者保護法です。それぞれ法律の趣旨はまったく異なるものですが、法律施行をまえに、全社的対応を要求されることについては間違いないと思われます。

これらの法律や施行規則の内容につきましては、私なんかより、このブログをお読みになっておられる法務部スタッフの方々のほうがよっぽど詳しいと思いますので、ここで紹介することなどはいたしませんが、ちょっと私が施行をまえに疑問に思っていることがあります。(でもひょっとするともう議論が出尽くしている問題かもしれません)といいますのは、改正独占禁止法の施行において、課徴金が減免されたり、一番目の申告者について公取委が検察庁に告発しない、といったリーニエンシーに関する疑問点です。

ご承知のとおり、談合という犯罪行為の発覚を容易にすることを目的として、改正法では先に犯罪行為についての申告をしてきた事業者については、行政処分としての課徴金を免除したり減額することになり、また刑事罰についても検察庁への告発を見送る、という措置をとることになっています。ここで予定されているのは、おそらく「事業者」が自己の談合行為を申告することでしょうが、もし事業者の担当社員が事業者とは無関係に公取委に犯行を申告したときには、いったいどうなるんでしょうか?この場合は事業者自身が犯行の申告を決定したものではないので、課徴金減免の対象となる「自己申告」には該当しないのでしょうか?これ、談合行為というと、法人とは別に個人についても刑罰の対象となりますから、事業者の個人社員が先走って犯行を自首するという事態は大いに考えられるところですよね。

この課徴金減免制度というのが運用されるのは、企業名を伏せた状態での事前相談制度や、先着の優劣を客観的に判断するためにファックスによる申告方法がとられるそうですが、たとえそのような申告の受付制度であったとしましても、企業の担当者が公取委に訪れたときに、「あなたの申告は会社の承諾を受けているか」と質問したうえで、わざわざ公取委の担当者が受付を受理しないといった運用はおそらくしないでしょう。もし、こういった正義感の強い、もしくは個人処罰を恐れる担当者が事業者に先立って犯罪行為を申告して、やむをえず発覚後に犯罪行為の捜査に協力した事業者にとっては、この社員のためにみすみすリーニエンシー制度による利益もしくは社会的信用回復の機会を奪われることになるわけでして、なにか不合理な気もします。この申告した社員については、おそらく公益通報者保護法によって、事業者内における法律上の不利益は受けないことになろうかと思いますが、それでも企業を救うつもりが、かえって企業の不利益になってしまうということだと、やはりその社員にとりましては、申告することに躊躇せざるをえない事態になってしまいそうです。社員の申告によって自社の犯行加担が発覚した事業者としても、もはやリーニエンシーの恩恵を受けられないとあっては、もはや公取委の調査に協力する気もなくなってしまいますよね。

もちろん実際の運用にあたっては、申告自体が犯罪行為の把握を容易にしなければなりませんから、ある程度の合理的な証拠を持参した事業者でないと、申告者たりえないのだと判断されますが、うえのような問題をなんとか解消できないものでしょうか。はじめは事業者とは無関係に犯罪行為を申告したんだが、その後事業者自身がその申告を知って、これを了承し、立ち入り検査前に全面的に公取委に協力する姿勢をみせた場合には、最初から事業者の申告があったとみなす、といったような「追認」制度のようなものも考えられるのではないかな・・・と思ったりもします。

おそらく公益通報者保護法の施行となりますと、コンプライアンスホットラインの広報だけでなく、そういった倫理行動を実質的に高揚させる手段を、どの企業も検討するでしょうから、従業員の告発利用度は飛躍的に高まるはずです。現実に昨年からホットラインの運営に携わっている私としましても、匿名通報でさえ、窓口側の応対次第では、客観的な証拠に基づく顕名通報に生まれ変わりますので、社内通報の対応のみならず、行政通報や第三者への通報がなされた場合の対応についても、詳細に対応マニュアルを検討しておくことが肝要だと思います。

先の疑問、もしすでに解決済であれば、またご教示ください。この改正独禁法の運用と公益通報者保護法制度の絡みでは、まだまだ実務上での疑問点がたくさんあるんです。。。

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