課徴金制度のあり方と内部統制整備の要点
いろいろと記者会見のことをとりあげたエントリーが続きましたが、次第に「外部第三者報告書」の件まで話題が広がってきましたので、一度「報告書」についても議論してみたいですね。TETUさんが指摘されているIHI社の件とか、不二家の再生委員会の件、また「あるある大事典」の関西テレビの件など、今年はたくさんの特徴ある外部委員報告書が作成されております。また、商事法務では東京の著名な弁護士の方が、外部報告書に関する論文も発表されています。事実の確定といいましても、何の目的で事実を確定するのか、そのあたりも報告書作成の段階では明確にしておく必要もありそうです。
ところで昨日はエントリーをスキップしましたが、忘年会疲れではなく、ブログを書くのも忘れるほどに、この本を夢中で読んでおりました。
金融システムを考える(ひとつの行政現場から) 大森泰人著 金融財政事情研究会 2,800円税別
今朝(12月19日)の日経朝刊の一面でも広告が掲載されておりましたが、いやいや、最高におもしろい本です。金融ビッグバンから今年までの金融行政の歴史や、頭脳明晰な金融行政官の考え方に触れることができる貴重な一品です。行為規制、開示規制、銀証分離、証券化問題など、「一本の線」で結びつくことが実感できる本は、私にとりましては初めてでした。このブログで疑問に感じていたことなど、いろいろとナットクできたように思います。「ここまで書いてええんかいな」と思われる部分も散見され、思わず笑ってしまいますが、「そもそも内部統制報告制度なんて解説本など不要なんじゃないの?」とか「(総体としてみれば)会社法は弁護士よりも公認会計士のほうがよほど勉強しなければならないし、現に会計士のほうが学んでいると思います。」といったあたりのお話はたいへん共感するところであります。お勧めする一冊かどうかは判断しかねますが、おそらく「特捜検察・・・」同様、きっとこの本は今後話題になると思います。
さて、この本を読まれたら(おそらく)ご立腹されるであろう(?)方が部会長をされていらっしゃる金融審議会金融分科会第一部会より、本日「第一部会報告」がリリースされ、とりわけ課徴金制度のあり方につきましてWG報告書も同時にリリースされております。(先の本などを読んで、これまでの「歩み」などを頭に入れておきますと、こういった報告書も、非常にわかりやすく感じられます)なお、事前の報道のとおり、現行課徴金の金額水準が引き上げられ、相場操縦行為や開示義務違反などへの拡大適用がなされ、そして課徴金の加算・減算制度が導入される見込みとなりました。(詳しくは直接、報告書をご覧ください)ちなみに、この課徴金の加算・減算制度に関する報告内容のみを抜粋しますと、
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「うっかりインサイダー」や「うっかり虚偽記載」など、悪質でない対象行為、というだけでは減算対象にはならないようですし、違反行為を企業自身が自律的に防止・発見する体制を整えていただけでも減算対象にはならないようです。つまり内部統制システムを整備して、その結果をともなった場合にだけ減算対象になる、ということなんでしょうか。そうしますと、軽微基準に該当するかどうか等細かな法令解釈問題は別としても、自社において法令遵守体制を整えて、(内部告発によって外部に公表されるよりも先に)内部通報制度や内部監査制度を実効性のあるものとしておくことが必要になりそうであります。「課徴金納付命令を受けること」それ自体が、そもそも「反社会的、反道義的」であるとは一般的にみなされないのであれば別ですが、現状では「なにやらルール違反の悪いことを会社ぐるみで行った」とするイメージがつきまとうことを認めざるをえないわけでして、そうであるならば、コンプライアンス体制の構築の一環として、この「加算・減算制度の導入」は無視できないところであります。
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