2007年12月20日 (木)

課徴金制度のあり方と内部統制整備の要点

Oomori001 いろいろと記者会見のことをとりあげたエントリーが続きましたが、次第に「外部第三者報告書」の件まで話題が広がってきましたので、一度「報告書」についても議論してみたいですね。TETUさんが指摘されているIHI社の件とか、不二家の再生委員会の件、また「あるある大事典」の関西テレビの件など、今年はたくさんの特徴ある外部委員報告書が作成されております。また、商事法務では東京の著名な弁護士の方が、外部報告書に関する論文も発表されています。事実の確定といいましても、何の目的で事実を確定するのか、そのあたりも報告書作成の段階では明確にしておく必要もありそうです。

ところで昨日はエントリーをスキップしましたが、忘年会疲れではなく、ブログを書くのも忘れるほどに、この本を夢中で読んでおりました。

金融システムを考える(ひとつの行政現場から) 大森泰人著 金融財政事情研究会 2,800円税別 

今朝(12月19日)の日経朝刊の一面でも広告が掲載されておりましたが、いやいや、最高におもしろい本です。金融ビッグバンから今年までの金融行政の歴史や、頭脳明晰な金融行政官の考え方に触れることができる貴重な一品です。行為規制、開示規制、銀証分離、証券化問題など、「一本の線」で結びつくことが実感できる本は、私にとりましては初めてでした。このブログで疑問に感じていたことなど、いろいろとナットクできたように思います。「ここまで書いてええんかいな」と思われる部分も散見され、思わず笑ってしまいますが、「そもそも内部統制報告制度なんて解説本など不要なんじゃないの?」とか「(総体としてみれば)会社法は弁護士よりも公認会計士のほうがよほど勉強しなければならないし、現に会計士のほうが学んでいると思います。」といったあたりのお話はたいへん共感するところであります。お勧めする一冊かどうかは判断しかねますが、おそらく「特捜検察・・・」同様、きっとこの本は今後話題になると思います。

さて、この本を読まれたら(おそらく)ご立腹されるであろう(?)方が部会長をされていらっしゃる金融審議会金融分科会第一部会より、本日「第一部会報告」がリリースされ、とりわけ課徴金制度のあり方につきましてWG報告書も同時にリリースされております。(先の本などを読んで、これまでの「歩み」などを頭に入れておきますと、こういった報告書も、非常にわかりやすく感じられます)なお、事前の報道のとおり、現行課徴金の金額水準が引き上げられ、相場操縦行為や開示義務違反などへの拡大適用がなされ、そして課徴金の加算・減算制度が導入される見込みとなりました。(詳しくは直接、報告書をご覧ください)ちなみに、この課徴金の加算・減算制度に関する報告内容のみを抜粋しますと、

違反行為を的確に抑止する観点からは、たとえば繰り返し違反行為を行う者について、課徴金の額を加算する枠組みを導入すべきである。また、企業による違反行為に対する課徴金について、違反行為を企業自身が自律的に防止・発見する体制の構築を促すとともに、将来に向けて再発を防止することが重要と考えられる。例えば、自社株売買等に係るインサイダー取引や発行開示書類・継続開示書類等の虚偽記載など、違反行為が繰り返される可能性のあるものについては、自ら早期に発見し、当局に申告した場合などに限定して、減算措置を導入すべきである。

「うっかりインサイダー」や「うっかり虚偽記載」など、悪質でない対象行為、というだけでは減算対象にはならないようですし、違反行為を企業自身が自律的に防止・発見する体制を整えていただけでも減算対象にはならないようです。つまり内部統制システムを整備して、その結果をともなった場合にだけ減算対象になる、ということなんでしょうか。そうしますと、軽微基準に該当するかどうか等細かな法令解釈問題は別としても、自社において法令遵守体制を整えて、(内部告発によって外部に公表されるよりも先に)内部通報制度や内部監査制度を実効性のあるものとしておくことが必要になりそうであります。「課徴金納付命令を受けること」それ自体が、そもそも「反社会的、反道義的」であるとは一般的にみなされないのであれば別ですが、現状では「なにやらルール違反の悪いことを会社ぐるみで行った」とするイメージがつきまとうことを認めざるをえないわけでして、そうであるならば、コンプライアンス体制の構築の一環として、この「加算・減算制度の導入」は無視できないところであります。

12月 20, 2007 課徴金納付制度と内部通報制度 | | コメント (3) | トラックバック (0)

2005年10月25日 (火)

課徴金納付命令と内部通報制度

昨夜のエントリーに対して、1ma24 さんからコメントをいただきました。

「課徴金の減免に係る報告及び資料の提出に関する規則」から、課徴金の減免に関する申告書には社長印を押印することになります。そうすると、担当者個人の申告では受理されないのではないかと思いますが、如何でしょうか。

なるほど、公正取引委員会のページに「課徴金の減免に係る報告および資料の提出に関する規則」がアップされています。(先週10月17日に公表されたものなんですね。)気がつきませんでした。(ご教示ありがとうございました。)この独占禁止法7条の2の運用に関する規則によりますと、課徴金減免対象企業になるための報告書様式やファックス番号まで指定されています。その申請書には代表者印を押捺しなければならないこととなっており(原本は追って提出すればいいようです)、客観的な証拠などについては、その後別の様式の報告書を提出することで補完されることになっているんですね。

課徴金の減免に係る報告及び資料の提出に関する規則

(調査開始日前の違反行為の概要についての報告)

第一条 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「法」という。)第七条の二第七項第一号又は第八項第一号若しくは第二号(法第八条の三において読み替えて準用する場合を含む。以下同じ。)の規定による報告及び資料の提出を行おうとする者は、様式第一号による報告書一通をファクシミリを利用して送信することにより公正取引委員会(以下「委員会」という。)に提出しなければならない。
 前項に規定する報告書の提出に関するファクシミリの番号は、〇三―三五八一―五五九九とする。
 ファクシミリを利用して第一項に規定する報告書が提出された場合は、委員会が受信した時に、当該報告書が委員会に提出されたものとみなす。
 第一項に規定する報告書の提出を行った者は、遅滞なく、当該報告書の原本を委員会に提出しなければならない。

こういった運用は、今後たとえば証券取引法違反行為に行政処分を付するような改正があった場合にも、同じ運用になることが予想されますから、実際にどのような運用がなされるのかリーディングケースになりそうです。

課徴金減免の効果を有する申請が「事業者」自身によるものでなければいけないことは、この規則でよくわかりましたが、やはり(公取委における調査開始までに)実際に反則行為(もしくは犯罪行為)に加担していた担当社員が公正取引委員会に自社の行為を申出ても、なんの効果もないんでしょうか。検察庁が「起訴はしない」という誓約をすることは考えられませんが、公正取引委員会側から、客観的な証拠資料を持参したうえで情報を提供した社員については事実上「告発」しないということは無理なんでしょうかね。

この問題で悩ましいのは、もし来年4月から施行される公益通報者保護法による内部通報によって企業に談合事実が申告された場合です。今回の道路公団の事件によって、もはや企業は担当者を助けてくれることはないはずですから、これからの自分の人生を守れるのは自分ひとりです。「ヤバイ」と思ったら、内部通報制度を利用して、自主申告を勧めることも十分考えられるところです。通報を受けた企業としても、対応をゆっくり検討しているわけにもいかないでしょうし、これまでのように「トップとしては知らなかった」とは言えないはずです。内部通報制度についても、統制手段のひとつですから、かならず手続きは文書化されるはずですし、(通報や受理の時期次第では)当該企業が告発免除や課徴金納付減免を受けられなかったとなると代表訴訟の対象にもなりますよね。たとえば、匿名通報で受けたケースなんかでも、ホットラインの窓口としては、「匿名だから受理しない」といった対応で済ますのは申告事案からみてマズイんじゃないでしょうか。匿名での申告であっても、客観的証拠の有無や、申告事実を知った経緯などについては再度質問したり、調査することも可能なはずです。

実際のところは「官製談合」と思われるカルテルが多いとは思うのですが、こういったケース、企業としてどういった対応をとるべきか、シミュレーションしておいたほうがいいような気がします。

10月 25, 2005 課徴金納付制度と内部通報制度 | | コメント (0) | トラックバック (0)