2005年10月27日 (木)

TBSは楽天を「濫用的買収者」とみなすのか?(2)

楽天がTBSの株式を19%超(19,09%)まで買い増して、これまでに総額1130億円もの取得費用をつぎこんでいる、との報道がなされています。いよいよ、楽天が「濫用的買収者」に該当するかどうか、つまり防衛策発動要件の有無を判断する時期に来ているのかどうかという問題の決着時期が現実化してきたようです。そもそも楽天が19%のところで立ち止まって、TBSの対応を迫っていること自体、防衛策を導入した意義(話し合いのための時間稼ぎ)はあったというべきでしょうから、このままの状態では防衛策発動というところまで踏み込むべきではない、というのが一般的には「理想的な模範解答」だと思われます。

ただ、どうも今週あたりの三木谷社長の周辺事情に関する報道から推察いたしますと、かなり楽天側に切迫した状態がうかがわれるようですね。(三井住友銀行の融資問題、ゴールドマンサックスの融資の限界問題など)そうしますと、資金支援先さえ確保できれば、このまま20%を超える株式取得へ踏み切る、ということもふつうに予想されるのではないでしょうか。(ところで、こういったタイミングで、SBIの北尾CEOが「楽天の意図をくじく『良い案』を私は持っている」などと公言するのは、どういった意味があるのでしょうか。なにか、楽天の引き際を演出するためのフリのようにも思えるのですが。真意がよくわかりません)

ところで、三木谷社長や村上世彰氏は「TBSの買収防衛策はそもそも株主総会の承認を得ていない。したがって、そのような防衛策発動は株主代表訴訟の対象になる」と公言されています。こんなふうに言われてしまいますと、さすがにビビっちゃいますが、さて本当にTBSの取締役は、もしこのまま防衛策を発動した場合、会社に対して善管注意義務違反を問われることになるんでしょうかね。やっぱり、この問題について、ちょっと真剣に考えてみたほうがよさそうです。

まず問題となりそうな点ですが、取締役のどういった行為を特定したうえで、注意義務違反の行為だと指摘するんでしょうか。防衛策を取締役会で決定して、6月にNPIへ新株予約権を発行した点でしょうか、それとも今回の防衛策発動の点でしょうか。それとも、それ以外の行為についてでしょうか。なんか、このあたりがこれまでに、きっちり議論されていなかったように思いますが、株主の損害ということであれば、やはりこのたびの防衛策発動の場面ではないでしょうかね。そうなると、株主総会の承認を得ていない事前警告型の防衛策がとられていることを承知で、株式を買った人たちがたくさんいて、そのうえで株価が上がったわけですから、いまごろになって「あれは総会の承認を得ていない」ということが「代表訴訟」と関係してくるのでしょうか。不公正発行に対する差止請求の問題とのカラミならわかりますが。

それから、「企業価値評価特別委員会」と取締役会との関係での論点がありますよね。おもに社外取締役や社外監査役で構成されている「評価特別委員会」の判断は最大限尊重する、ということですし、これまでの鹿子木判決でも「第三者機関」の要件判断が取締役会を拘束することこそ、防衛策の相当性判断に重要とされています。そうしますと、もし評価特別委員会で「発動が相当」との判断が出て、その判断にしたがった形で取締役会が防衛策発動を決定した場合、これが注意義務違反になるんでしょうかね。(この問題は、以前どなたかが私のブログでもご指摘いただいていたと思うんですが)もし注意義務違反になる、ということならば、取締役は評価特別委員会の判断に拘束されず、独自の判断で決定すべきである、ということになって、鹿子木判決の掲げる指針が、防衛策の指針たりえないことになってしまいます。でもこれって、代表訴訟で取締役の責任を追及するにあたって、ものすごくネックになってしまうんじゃないでしょうか。ただ、評価特別委員会の判断形成過程に、取締役の違法行為が関与していた、という構成は考えられるかもしれません。たとえば評価特別委員会の判断資料として、TBS側の資料におかしいところがあったとか、評価特別委員会のメンバーが直接、楽天から話を聞く機会を与えなかったとか、利害相反関係にあるメンバーを出席させたまま開催をした、などなど。今後の社外取締役の防衛策検討にあたってのスタンスなどを考えますと、こういった問題点が司法の場に出てくるのは私個人としては興味深いものがありますが。

あとは、代表訴訟ではなく一般の損害賠償請求訴訟ということで、評価特別委員会のメンバーへの責任追及というのもありそうですが、これまでの判例をみますと、第三者というのが「株主」の場合、株価の下落自体を第三者による責任追及で補完する訴訟形態というのは、ほとんど救済に裁判所は消極的ですよね。おそらく明確な違法行為でもないかぎりは、無理があると思います。

しかしながら、この代表訴訟という点を除外して考えた場合、本来はやはりTBSの第三者割当による新株予約権付与という防衛策は株主総会の承認を得ておくべきものだと思います。TBS側は資金調達の具体的な計画によるもの、と説明しておりますが、おそらく資金調達の具体性は立証困難なものでしょうし、とってつけた理由にしかならないと思います。そうしますと、とりあえずは支配権維持目的ということが推定されるでしょうから、やはり防衛策自体の承認はあったほうが無難なような気はしますね。

この楽天とTBSの問題、いずれの側にもM&Aビジネスで将来的に収益をあげよう、と考えていらっしゃる大手の企業ががっちりガードしちゃったようなんで、もはや「情緒論」ではカタがつかなくなっちゃったかもしれませんが、私はもうすこしだけ、私のような素人にもわかる形で「情緒的」な議論が進んでほしいと思っています。楽天にしても、TBSにしてもどういった事業計画によって「将来の企業価値の向上」を図ろうとしているのでしょうか。「(世界一の)放送と通信の融合」とか「放送の公共性」といった抽象的な議論をされても、(素人の私でさえ)なんにも価値の比較とかできる話ではないでしょう。評価特別委員会のメンバーの方や、TBSの社外取締役の方が、TBS単独での事業計画や、統合後の楽天サイドの事業計画から、買収プレミアムを支払ってでも、統合後のシナジー効果が得られかどうか、その是非を考える根拠というものを、専門家以外にもわかるような内容で示すことが大前提だと思います。TBSの時価総額は、2004年度末で3200億円だそうでして、金融資産や不動産も豊富です。設立に関与した東京エレクトロンを含め、資産の3分の1を占める金融資産の取扱や、三井不動産に委託しているTBS所有の赤坂再開発地域の不動産の運営方法は今後どうするのか、本業の放送についてはどういったコンテンツを考えているのか、通信業界とはどういった計画を進めるのか、著作権の取扱については対応方法を検討しているのか、などなど、たとえ思考過程は情緒的であっても、かならず検討しなければならない項目がいくつかあるはずです。こういったところが、どんな解決に至ろうとも、明確に報道されたり、楽天やTBSを支援する専門家集団から公表されたりしなければ、いつまでたってもM&A対応策というものが社会的インフラにはなりえないんじゃないか、と私はいささか、懸念している次第です。

そういえば、「夢真と日本技術開発」の敵対的買収のあらすじを興味をもって、いろいろと検証しておりましたころから、どうもセンセーショナルな「司法判断」ばかりに社会や報道の興味が向かってしまい、肝心な「引き際」「おとしどころ」に関する議論への興味が薄れてしまっているんじゃなかろうか、と一抹の危惧を抱くようになりました。裁判で負けてしまっても、買収者に過半数を握られてしまった会社の社長さんは、有能な役員や従業員、取引先を引き連れて、新しい会社を作ることは可能なわけですから、(人的クラウンジュエルといいましょうか)当事者はどちらも最後は「友好的買収」にもっていくべきノウハウを培っていかないといけないと思うんです。いろんな方のブログなどを読ませていただいても、そう感じるようになりました。そういった司法判断以外における問題解決の智恵のような部分を、このたびの阪神、村上ファンドの件や、楽天TBSの件、そして未だ解決に至っていない夢真、日本技術開発などの件で、なんとか学べたらなあ・・・・と考えております。

PS いいところなく、終わってしまった日本シリーズでしたが、こんなことでめげる阪神ファンではありませんぞ。今年一年、選手のみなさん、お疲れさまでした。どうかゆっくりと体を休めてください。今年も甲子園でたくさんの家族の思い出を作りました。本当にありがとうね。(でも、来年の交流戦、絶対にロッテには負け越さないでね)それから、ロッテの選手のみなさん、日本一おめでとうございます。バレンタイン監督は吉本興業と契約したので、またシーズンオフには関西ローカルのテレビなんかにも出演するんでしょうねぇ。。。

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