2005年10月28日 (金)

会社法の法務省令案

来年5月1日に施行予定(とされております)新会社法の「法務省令」案が、自民党の法務部会へ報告されたようです。本来はこの9月末あたりに出来上がる予定だったのですが、郵政民営化法案の紛糾によって、審議が遅延しており、今後パブコメを経て来年1月に公布予定だそうです。今回の新会社法は、現行商法に規定されている規定のかなりの部分が省令に委任されているために、まだまだ全体像がつかめないところがありますね。有名な商法の先生が必死で書き上げたと噂されている「リーガルマインド会社法」におきましても、省令が未だ判明していないために、「完全版」といえるのは次版だそうです。(あっでも、この本、体系書としてはすばらしいと思いますし、よく500ページを超える新会社法の基本書をこの時期に出版されたものだと、その学者魂には敬服いたします)

昨日の日経ニュースでは、以下のとおりの法務省令案に関する報道がされていました。

法務省は来年5月に施行予定の会社法に関する法務省令の概要をまとめた。企業がポイズンピル(毒薬条項)などの買収防衛策を導入する場合は、基本方針や具体的な防衛策などを株主総会の事業報告で開示するよう求める。企業自らが社内の法令順守を監視する「内部統制システム」の具体例や、社外取締役の「独立性」に関する情報の開示も求めている。省令案の概要は27日の自民党法務部会商法小委員会(塩崎恭久委員長)で報告する。

 企業に買収防衛策の情報開示を求めるのは、公正なM&A(企業の合併・買収)ルールを確立し、株主や投資家、買収者側が相手企業の取りうる防衛策を予想できるようにするため。具体的には(1)買収防衛の基本指針(2)防衛策の具体的内容(3)防衛策の合理性に対する経営陣の評価と意見――などを開示事項とする。

法務省は27日、自民党法務部会商法小委員会(塩崎恭久委員長)で会社法に基づく法務省令案を公表した。合併対価に外国株などが使えるようにする規定は、会社法本体より1年遅い2007年5月の施行予定であるため、今回の省令案には盛り込まず、改めて検討する方針を伝えた

重要な省令は、これ以外にも、会社の計算や監査方法、会計参与の会計処理方針など、たくさんあるわけですが、上記の自民党への報告事項というのは、この7月7日や10月13日に自民党から出されておりました「提言」に対する回答という意味があるようです。

自民党総合経済調査会、企業統治に関する委員会が今年7月7日に「公正なM&Aルールに関する提言」というのを出しておりまして、その中に「開示制度の改革」として「買収防衛策に関する会社法による開示制度の創設」という項目があります。その提言に合わせて法務省令案が策定されています。現在でも、買収防衛策を導入した企業は、適時開示しているところが多いと思いますが、そういった開示の基準というものが公布されるものと予想されます。ただ、M&Aの公正なルールということでは、法務省だけでなく、金融庁や経済産業省による証券取引法改正、防衛指針の策定などとも歩調を合わせる必要がありますし、また外国における日本企業の開示要件との均衡も考慮される点となります。

また、今月13日に自民党の三委員会合同で出されました「実行性ある内部統制システム等に関する提言」におきまして、内部統制システム構築の基本方針に関する「法務省令および証券取引法規則」における適切な開示が提言されています。その提言を受けて、内部統制システムの具体例を報告することになった模様です。ここでは、企業のトップがそれぞれの企業に適した内部統制システムを自主的に構築しなければならない、と提言されておりますから、今後監査役協会や取締役協会などから、いわゆる「報告書のひな型」のようなものが公表されるかもしれませんが、ひな型でどこでも同じ報告書、みたいな対処はかなりマズイんじゃないかな、と思っています。そもそも、上の「防衛策の報告」にせよ、「内部統制システム」の報告にせよ、一般投資家や買収希望者、株主からみた「企業価値」算定に直結するテーマですから、横並びの報告書では話にならないと思います。創意工夫を凝らした報告自体が、その企業の価値を表明するようなものではないでしょうか。おそらく、内部統制システム構築の具体例とすれば、取締役会における意思決定システムの記録方法、監査役による監視機能の強化方法、公認会計士の財務報告に関する充実した活用方法、監査役と会計監査人との連携方法、内部通報制度の設置運用状況などが中心になるものと思われますし、またコーポレートガバナンスと関連する内部統制システムとは別に、金融庁で検討がなされている「財務報告の信頼性を担保する内部統制システムの運営設置状況」についても、別途報告が必要になるものと思います。

さらに上の報道にもありますが、社外取締役、社外監査役の「社外性」の要件についても、その属性の開示などが「提言」されておりまして、これを法務省案に盛り込むことになるんですね。(ただし、提言のなかでは、こういった社外性の開示については、法務省令で規定すべきか、自主的ルールによって措置すべきか、さらなる検討が必要とされていましたが)この社外取締役の独立性に関する要件は、M&Aではもちろんのこと、内部統制システムの構築という面においても重要な問題点となりますが、あまり詳細な要件を盛り込んでしまうと、それこそ適任者を探すのが困難な状況になってしまいますから、おおまかで抽象的な要件にならざるをえないようにも考えられます。ただ、あまり不明瞭ですと、敵対的買収が発生した時点における社外取締役の役割などを考えますと、どうにも頼りない方が就任してしまうことも、困ったことになりかねませんので、かなりムズカシイところです。

とりあえず、会社法全体の理解に欠かせない「法務省令」ですので、一日も早く省令案が公開されてほしいですね。

10月 28, 2005 会社法の法務省令案 | | コメント (4) | トラックバック (1)