むむ!独立役員の研修(東証)!?♯なんぞある??
すいません、今日のタイトルは某ブロガーの方のパクリです(笑)←ディスクロージャーの読み方をいつも勉強させていただいております<m(__)m>
9月1日の日経新聞によりますと、東証は9月末に上場会社の独立役員を対象とした研修を実施するとのことであります。(東証さんのリリースはこちら)ということは、そのうち私も研修を受講しなければならないのかな?(大証ですが・・・)企業の役員、しかも大半は社外取締役または社外監査役の方々が受講対象となりますので、ずいぶんと思い切った研修制度ですよね。これまで届出のあった独立役員総勢約3600人のうち、予想では約1500名が対象とのことで、「物言う社外役員」さんが多いでしょうから、まじめに研修を受ければいろんな感想が聞かれるかもしれません。講演する側(独立役員制度の導入に携わった方々だそうですが)も結構たいへんかも(^^;
制度をよく理解されていない企業もしくは独立役員の方もいらっしゃるので、独立役員に期待される役割(一言でいえば、経営陣から独立した立場の役員が一人以上加わることで、一般株主の利益にも配慮した意思決定が行われているということを外観的にも担保する・・・)というものが受講内容になるものと思われます。ちなみに(大きなお世話と言われそうですが)今年3月31日付けで東証の上場制度整備懇談会さんより「独立役員に期待される役割」と題するA4で9頁ほどのガイドラインが公表されておりますので、受講されるにあたってはこちらを事前にお読みいただくのがよろしいかと。しかしこのようなペーパーが出されているにもかかわらず、さらに特別研修を施行する・・・というのも、なにか取引所サイドでの特別な意味がこめられているのでしょうか?
当ブログにおきましても、過去数回にわたり取引所ルールにおける「独立役員」についてとりあげましたが、常連の皆様によれば「とくに独立役員に就任したからといって、特別に法的な責任が重くなるわけではない」との意見が大半を占めておりましたし、また東証さんも同様の見解を示しておられるようですので※、独立役員への就任が、取締役や監査役の職務執行にあたって、高度な注意義務が課されるとか、善管注意義務の内容が別異に解釈される、という可能性は乏しいものと思われます(ちなみに、私はこのような法的解釈は最終的には裁判所が判断することでありますから、それほど安閑とはしていられないのでは・・・という少数説でありますが)。
※・・・最新・東証の場所制度整備の解説(商事法務)94頁Q12参照。なお、ここでは独立役員に選任されても、その職責は会社法の範囲内を超えるものではない、と書かれております。したがってとくに法的責任云々とまで突っ込んで書かれているものではございません。ちなみに、私は(以前、当ブログでも記載しましたが)会社法の立案担当者の方から、「先生、たいへんですね。弁護士でありながら監査役によく就任されましたね。こわくないですか?」と言われたショックがまだ尾を引いております。。。これも会社法の範囲内でのお話であります。
しかし、ここで素朴な疑問でありますが、独立役員に就任しても、それほど通常の社外役員としての善管注意義務(忠実義務)に影響がないのであれば、この研修を受講しなければ・・・といった社外役員の方々のインセンティブはどこから生まれてくるのでしょうか?取引所さんの思い描く独立役員の姿というのは、ほぼ上記3月末に公表されたガイドラインに記載されているものだと思いますし、もうすこし具体的な場面を想定しての独立役員としての行動規範のようなものが紹介されるのでしょうか?しかし、ここであまり具体的な行動規範を示すとなりますと、現在法務省で審議しております会社法制部会での独立社外取締役の概念だとか、監査役の権限強化、実効性確保のための施策あたりとの整合性なども問題となってくるでしょうし、経済団体のご意向とも関連するように思います。もし、内容が「おとなしい」ものであるならば、やはり「忙しい社外役員を研修に引っ張り出す」インセンティブにはなりえないように感じます。東証も大証も「企業行動規範」で定められた制度ではありますが、ここで示す「行動規範」とは各上場会社において独立役員を一人以上選任して、これを取引所に届け出ることを意味するものでありますから、「独立役員は、このように振舞いなさい」ということを行動規範として示すものではありません。
このあたりの素朴な疑問から、私はこの研修内容がどのようなものになるのか、とても興味を抱いてしまいます。そこで私の勝手なインセンティブプランでありますが、たとえば昨年末にせっかく5年ぶりに「上場会社コーポレート・ガバナンス原則」が改訂されたのですから、独立役員に選任された方は、このガバナンス原則でモデルとされているガバナンスと自社のガバナンスとの乖離している点を指摘して、なおかつ乖離していても、それが自社の一般株主にとって最良のガバナンスであることを説明する、というルールを策定してはいかがでしょうか。総会の招集通知に記載するだけでなく、総会でも質問があれば回答する、というご準備が必要となれば、独立役員の方々にすこしは緊張感も出てくるように思います。また、このような説明は各社固有のものでしょうから、説明内容は「監査報告書」のように一律なものではなく、株主の皆様も、当該独立役員の仕事ぶりを評価して、議決権行使結果の開示にも反映される、ということになるかもしれません。
こうやって文章にしますと誤解されるかもしれませんが、私はこの独立役員制度に期待をしております。ソフトロー先行型の典型的なガバナンス規制のひとつとして、この制度の実効性が十分に確保されることを願っております。そのための知恵がございましたら、当ブログのコメントでも結構ですし、メールでも結構ですのでどうかご教示くださいませ。また実際に参加された方のご感想などもございましたら、またお知らせいただけますと幸いです。
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