公正な買収防衛策・論点公開への疑問1
まだ、きちんと読めていないため、備忘録程度に疑問点を記しておきます。
今回の論点公開は、①買収防衛策の開示のあり方と②証券取引所における買収防衛策の取扱いに関するものであって、まだ検討は今後も続くということです(たとえばTOBなどの買収ルールの見直し)
そこで証券取引所における買収防衛策のルール作りの指針を提示する、ということが課題だったわけですが、具体的な提言をみると、ライツプランにしても、拒否権付種類株式や複数議決権株式にしても、どういったときに上場が認められ、どういった場合は認められないのか、きわめてアイマイですね。はたして、これで上場基準というものが作れるんでしょうか?
提言の一番最後のところで「不適切な買収防衛策に対する証券取引所における取扱に関するルールの実効性確保のあり方について」と小題がついていて、合理的でない買収防衛策については、その導入企業を上場廃止とすることも含め、その実効性確保も重要であると締めくくっています。しかし、このような「なにが合理的な防衛策」であるかきわめて不明瞭な指針によって証券取引所がルールを作ってしまったら、取引所の判断に広く裁量が認められますよね。もし、裁量判断を取引所が誤った場合はいったい誰が投資家の損失を補填するんでしょうか?昨年4月のメディアリンクスによる(大阪証券取引所に対する)上場廃止決定の停止仮処分申請事件については、おそらく誰がみても、廃止決定は合理性があると判断できるほど規則違反は明確だったわけですが、「あなたの会社の導入した買収防衛策は不合理であり、○○証券所規則○条の『公益もしくは投資家保護に違反したこと』に該当するので上場を廃止します」と言われて、すぐに改善命令に応じたり、廃止を承諾できるでしょうか?市場において「株主共同利益を毀損するものであって、不合理」と評価され、株価が下がるのであれば納得もしますが、取引所の裁量によって「不合理」と判断された場合には、メディアリンクスではないですが、上場廃止停止の仮処分を申し立てることも考えられるんじゃないでしょうか。代表訴訟のおそれがあれば、なおさらだと思います。そうしますと、証券取引所としても、ルールを決めても「要件にあいまいさが残る」場合には謙抑的にしか廃止基準を用いることができないため、実効性は期待できないものと予想されますが、いかがでしょうか。
こういった取引所における買収防衛策の取扱を論じるのであれば、取引所の規則として、あいまいさを残すべきではなく、もっと明確な提言がないと実効性は確保できないと思います。たとえば「黄金株」はダメかオッケーか。オッケーの複数議決権株式の発行方法を詳細に決めるとか。たしかニューヨーク証券取引所の規則などでも、公開時の複数議決権株式は一切禁止とか、利害関係人への何パーセント以上の第三者割当による新株発行は禁止とか、明確に規定されていますよね。
それとも、この提言は各取引所が「規則」の運用指針のなかで、それぞれ明確な買収防衛策基準を策定することを奨励しているのでしょうか?それはそれで傾聴に値するものですが、外国のように長年の判例法による形成の存在しないところでは、規則自体の無効確認を求めることで司法判断にのっかったり、規則を運用した取引所に損害賠償を求めることも検討できるわけであって、さまざまな弊害を生む可能性をもっているように思います。取引所のルールを企業が遵守することは、そのルールが取引所の裁量の余地がないほど明確な要件が規定されている場合を除き、それぞれの投資家の評価に期待するべきであって、廃止基準と結びつけることにはすこしばかり違和感を覚えています。
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