「公正なる会計慣行」と古田最高裁判事の補足意見
本日は、頭出し程度のエントリーにすぎませんが、先日大阪弁護士会と日本公認会計士協会近畿会共催によるシンポ「公正なる会計慣行を考える」を開催したことをお伝えしました。弥永教授や松本教授も交えて、非常に活発な意見交換がなされたもので、終了後には数名の方からご意見を頂戴し、私自身も勉強させていただきました。
このシンポの準備会は合計7回に及んだのでありますが、実は長銀事件、日債銀事件の最高裁判決を関係者で検討する際、とても興味深い出来事がありました。それは、
「最高裁判事のなかで、本当に会計のことがわかっているのは補足意見を書いておられる古田さんくらいではないか?」
とのご意見が、数名の会計士、会計学者の方から出たことであります。
私はとても意外でした。私の理解では、もっと単純に
「古田裁判官は検察出身だから、自分の出身母体に恥をかかせないように(検察のプライドを守るために)リップサービスで補足意見を出したのではないか」
というものでした(古田裁判官には、たいへん失礼な物言いでありますが、正直、そのような印象だったのです)。
しかし、感覚的とはいえ、会計の専門家の方が、真剣に最高裁判決を読んだ結論として、上記のような意見が出た、というのは、少し検討する必要があると思い、いろいろと思い悩んでおります。また、さきのエントリーに藤野先生(公認会計士)がおっしゃっているご意見なども拝見しておりますと、「公正なる会計慣行」の中身をどのように考えるのか、そこには法律家と会計専門家との間で大きなミゾがあるのではないか、と考えるようになりました。投資家に対してその判断に必要な範囲で有益な意見を出す(保証行為を行う)会計専門家の考え方と、社会秩序を維持するために、具体的な紛争の解決を図ることを目的とする法律家の考え方の違いが大きくでるのが「公正なる会計慣行」の中身の理解である、ということが、ほんの少しばかり見えてきたように思います。
そこで、古田最高裁判事の長銀事件判決および日債銀事件判決における補足意見を検討しながら、続きのエントリーでこの差を検証していきたいと思います。続き、と申しましても、いまは公認会計士の方々の繁忙期ですので、本ブログを読んでいただけそうな、もう少し先になりますが。。。
基本的には、ザックリと会計監査人設置会社(もしくは有価証券報告書提出会社)とそうでない会社について、理路整然と「公正なる会計慣行」の意味を捉えることを重視するか、そのような分け方を意識せずに、個々の企業の規模、業界、業績、事業モデル等を斟酌して、会計基準の選択と、その適用方法まで含めて「公正なる会計慣行」として捉えるのか、というアプローチの違いから出発しているように思われます。そのあたりを整理してみたいところです。
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