「会計参与」はなぜ普及したのか?
きょう(6月21日)の日経夕刊の一面に「会社法新制度、中小が活用」といった見出しとともに、会計参与を起用した企業数が1000社を超えたようだ・・・との記事が掲載されておりました。就任された会計参与の方々の保有資格では、8:2=税理士:会計士とのことでして、まずは税理士(税理士法人)さん方のご尽力が会計参与制度の普及に大きな役割を果たしていることは否めないところではないかと思われます。しかしあれだけ新会社法施行前後におきまして、ある意味「利用されるのかどうか、不安視」されていた会計参与制度が、なぜ1年でこれほどまでに普及したのでしょうか?(そういえば、磯崎さんの「お笑い会計参与」のエントリーを想い出します。私はこの時分には、大変失礼ながら、まさか1年でこんなに会計参与が利用されるとは思っておりませんでした。)
そもそも「会計参与」といった制度が、税理士法人や税理士さんにとって魅力的なものなのかどうか、施行当初は疑問があったと思います。記帳代行や決算書作成業務と比較して、それに付加される報酬と比較すると、会計参与については第三者責任など負担すべきリスクが大きすぎるのではないか・・・といった感想を聞きました。しかしながら、この5月にも改訂されました「会計参与の行動指針」によりまして、ずいぶんと責任の範囲の明確化とか、業務手順の画一化とか、(このブログでも一時話題となりました)取締役との計算書類の共同作成作業がうまくいかなかったときの対処法とか、そういった指針の制定によって責任負担リスクがかなり低減されてきたことが、普及につながったのではないかと思われます。それと、もうひとつ、税理士さん方の業務内容がずいぶんと様変わりしてきたことも原因のひとつではないでしょうか。昔ながらの記帳代行、計算書類作成といった業務だけでなく、顧客企業さんの経営計画までコンサルティングされる方が増えたように思います。そうなりますと、顧問税理士といった立場をさらに進めて、その企業の役員として経営に参画する、といったことにも関心を寄せる方が増えてきてもおかしくないと思われます。たしかに、20年ほど前に商法改正の議論のなかでも、「会計調査人」とか「会計指導人」といった、会計監査人制度に類似した商法上の機関制定が議論され、そこでは税理士さん方が監査や会計の世界に登場する機会が検討されていたわけでありますが、やはり現代ほど顧客と税理士事務所とのIT革命が進んでいない時代でしたので、記帳代行業務を飛び越えて、コンサルティング業務への意欲といったものも今ほどではなかったのではないでしょうか。
いずれにしましても、金融機関さんと中小企業さんとのおつきあいのなかで、会社に会計専門家がいらっしゃるということが、その関係を円滑にする役割は重要だと思いますし、直接金融(株主、一般投資家)→会計監査人、間接金融(銀行)→会計参与といった図式を基準として、企業の開示制度の信頼性が高まることになりますと、棲み分けもスムーズに維持されることになりますので、今後もますます「会計参与」制度の有効活用は進むのではないか、と思っております。ただし上場企業でさえ、これだけいろんな会計不正事件が発覚する世の中ですから、現実の問題としまして、いくら責任限定契約を締結されていらっしゃるとしても、就任時までのおつきあいのなかで、信頼関係を結ぶに足る企業かどうかを見極めていかないと、トラブルに巻き込まれるリスクも増えていくんじゃないかと思います。私の身近なところにはいらっしゃらない「会計参与」に関するエントリーですんで、私の推測による根拠を示しただけでありますので、また実務上からの有益なご意見、ご経験をお持ちの方がいらっしゃいましたら、いろいろとご教示ください。
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