2006年4月20日 (木)

続・職務執行の「効率性」確保のための体制とは?

会社法施行規則100条1項3号に定める「取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制」とはなんぞや??ということで、今週日曜日にエントリーをいたしましたが、これまた「この道に詳しい」先生方にいろんな意見を頂戴しておりましたところ、失礼ながらきちんとお返事もしないまま放置しておりました。(奥様に「早くお風呂に入りなさい」といわれつつ、自宅のパソコンに向かい、必死の思いでコメントを載せていただきましたME先生、おそらくご自宅での内部統制は奥様がすべてマネジメントされているものと推察いたしました・・・)いえ、放置していたことは事実なのですが、とりあえず皆様方のご意見を真剣に考えつつ、自説について再考しておりました。

そもそも、「効率性」といった言葉は日本語の一般常識的な意味合いでは「無駄がないこと」といったイメージがまず最初に浮かんできます。ただCOSO報告書の日本語訳などでは、内部統制の目的の一つとして「業務の有効性と効率性」といった言葉で「有効性」と並列的に用いられるところですから、「有効性」に近いイメージ、たとえば「効果的であること」といった意味合いで考えるほうが適切かもしれませんね。ところで、(会社法における体制整備構築とはまったくベツモノとは承知しつつ、あえて)金融庁企業会計審議会サイドで考えられているところの「内部統制報告実務」を参考にしたいのですが、財務報告の信頼性確保を目的とした「経営者における評価対象」としての内部統制システムに登場する「有効性と効率性」という概念は、非常に重要な位置づけがされているようです。つまり内部統制システムというのは、一連の「プロセス」を評価するわけですから、そこには「時間軸」があります。たとえば最終的には年度(もしくは四半期)決算における財務諸表の正確性が確保されるためのものではありますが、「決算期」といったある時点の数字が正しいのかどうか、その数字が出てくるプロセスを「試査」することによって実査したのと等しいものと評価するための「コツ」は、これまでも会計監査人の知恵によって監査の対象とされてきたわけでして、これはまさに財務諸表監査にともなう内部統制監査だったはずです。ただ、これはあるひとつの時点における数字完成までのプロセスを評価するものであって、一年間ずっと同じプロセスが、その企業に生き続けていたのかどうかは、まったくもってわからないところであります。それで、このたび「内部統制報告実務」で導入されるであろう内部統制システムの構築というのは、財務報告の正確性確保のための業務執行に携わる全ての従業員に(賛同するか批判するかは別として)ともかくトップの行動規範が浸透する体制が整っているかどうか(これを評価するためにCOSOフレームワークの5つもしくは6つの構成要素があるはずです)そして、決算期間の最初から最後まで、とりあえず同レベルのシステムが継続して機能しているかどうかということを経営者自らが評価して、報告することになります。

たとえて申し上げるならば、ガン検診におけるCTスキャンとPETの違いではないでしょうか。CTスキャンはデジタルカメラの世界です。そこに撮影される2次元の世界を解読して、ガンを発見します。しかし最新型のPETは体内に検査用に取り込んだ細菌の動きを観察してわずか数ミリのガンまで発見してしまいます。つまり時間軸を採り入れたデジタルビデオの世界です。時間空の世界を観察の範囲に取り込むことによって、いままで正確に見えなかった病根が見えてくるというものでして、まさに内部統制システムの構築というのは、情報の信頼性を高め、企業の管理体制の質を向上させるものだと考えられているわけです。そこで、「業務の有効性・効率性」に資するためにシステムが機能していたかどうかは、この時間軸のなかで「システムが一年間機能していたのかどうか」評価するためにとても大切な問題になってくるわけでして、(たとえば立派なITシステムを導入したとしましても、そのプロセスの一部が導入企業の担当者レベルにおいてはブラックボックス化していて、システム故障の際に機能不全に陥る可能性があったとすれば)システムの導入が「業務にとって効果的でない疑いがある」という評価を受け、おそらく1年にわたってずっと正確な財務情報を形成しつづけるようなものではなかろう、と判断されてしまう可能性が出てくるはずです。

さて、会社法・会社法施行規則における「取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制」(施行規則100条1項3号)を解釈する場合、上記のような考え方は応用できるのでしょうかね。ME先生がご指摘のとおり、監査役協会の出している本などでは、効率性を求めることと、コンプライアンスを求めることとはときに矛盾する可能性があるとされております。(これは以前、書面決議などについてエントリーしたときにも指摘させていただきました)もちろん業務の無駄をなくすこと自体、株主から経営を委託されている取締役にとりましてはたいへん重要な経営管理態勢だとは思いますが、そもそもそのような意味での「効率性」ですと、果たして監査役の監査の対象として意味がないんじゃないでしょうか。(現行商法施行規則193条6号によりますと、委員会等設置会社における監査委員会の職務の執行に必要なものとして、「執行役の職務の執行が効率的に行われるための体制に関する事項」も含まれておりますが、これなども同様の意味で、ほとんど意味をなさないように思われます)そこで、さきほどの金融庁サイドにおける内部統制報告実務と同様の考え方からしますと、コンプライアンス経営、リスク管理といった企業内部からの健全経営を確保するために整備された体制が「継続的に」機能しているかどうか、これを満足させるために取締役の職務執行の「効率性」が要求されるのではないか、と考えてみると結構おもしろいんじゃないでしょうか。このように考えますと、道具としては前のエントリーでも書きましたとおり「取締役による業務執行の決済規程」とか「取締役会上程基準」などと結びつきますし、またそういった規程に則った実務がなされているかどうかを評価する機関の制定や活動報告なども監査役の監査の対象となるわけでして、規定の意味がかなり深化することになろうかと思います。

いずれにしましても、これは私自身の試論にすぎませんので、またいろいろな方にご意見、ご批判頂戴できましたら幸いです。

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2006年4月16日 (日)

職務執行の「効率性」確保のための体制とは?

品田太市さん、辰のお年ごさん、そしてM.Eさんなどから、たいへん有益なコメントを頂戴しておりまして、もしご興味がありましたら、それぞれのエントリーのコメント欄をクリックしてみてください。私自身はコメントされている方のご身分を承知しているから申し上げるわけでもないのですが、それぞれ問題点の整理と申しますか、問題点をかなり的確に掘り下げていただいておりまして、(なるほど、と合点のいく部分も多いわけでして)ほとんど「私的ブログ」の領域を超えてしまった感があります。(すいません、すぐにでもお返事といいますか、私もコメントを残すべきでしょうが、コメントの内容がヘビーなだけに、もう少しだけお時間をください。)法曹の方々も会社法施行を目前にして、いろんなところで「会社法における内部統制」といったテーマで講演をされているんですね。ひところは「SOX法日本上陸!」といった感じで会計士の先生方やIT関連企業の方が講演をされることが多かったんですが、やはり5月の取締役会における決議問題や、株主総会における説明義務、そして(これは来年のことになりますが)事業報告書への記載要領のことなど、会社法からみでの「内部統制」といったもののへの関心の高まりによって、弁護士の登場回数も増えてきたのかもしれません。

ということで、5月(までの)取締役会決議で、いったい会社法が大会社に要求している「会社の体制整備事項としての決議事項」の実務指針指南書のようなものがいろいろと緊急出版されているようです。やはり企業の担当者や役員からしますと、施行規則100条で規定されている各項目から「いったい何を決めたらいいのか」、具体的なモデル案が欲しいですよね。私も自分が講演をする関係上、そういった指南書をチョロっとみたりしておりますが、どの指南書も「取締役の職務執行が効率的に行われることを確保するための体制」を整備するということは、いったい何を決めたらいいのか、(施行規則100条1項3号)頭を悩ませていらっしゃるようですし、決議事項の具体案もマチマチのようであります。そもそも、良質な企業統治を実現するためのものであって、その最良の選択は企業それぞれ異なるはずですから、モデル案も「どれが正解で、どれが誤り」といったものはないと思います。また職務執行の効率性などといった概念は、なかなか監査役の相当性判断にもあまりなじまないような項目でしょうから、それほど神経質にならなくてもいいんじゃないか、と思ったりしております。(多少おかしいかなぁとか感じたら、また6月以降の取締役会で修正決議をすればいいでしょうし)

ただし「アバウトでもいいじゃん」と申しましても、6月の総会で株主様より説明を求められて、「取締役会における決議事項の概要」(決議したことの全てではありません、ここは訂正省令で訂正されているところですのでご注意を。訂正省令は事業報告書に関するものですが、株主総会における説明に関しても「概要」で足りるものと思われます)を説明できなくてはカッコ悪いので、いちおう筋の通った回答ができる範囲では決議をしておく必要はありそうです。そこで私だったら何を決議するか、ということですが、私は昨年11月29日に公表された法務省令案の「内部省令案」に立ち返って決議事項の検討をすべきではないか、と思っております。ご承知のとおり、会社法の省令は当初9本だったものが本年2月7日の時点で3本にまとめられたのですが、これによって内部統制省令の一部が削除されております。したがいまして、省令の整理のために削除されたところが大半でして、この削除された条文は内容が誤っていたとか、不適切だったということで削除されたものではないわけですから、今回の整備事項として何を決定すべきか、を考えるにあたっては、「業務の適正を確保する体制に関する法務省令案の概要」部分とともに、削除された条文の趣旨といったものも参考になるものと考えております。

そしてこの「法務省令案」の「概要説明」部分を読みますと、「取締役の職務執行の効率性」という問題はほかの4項目とは並列で記載されていないことがわかります。また法務省令では削除されてしまった「取締役の責務」(省令案の3条3号)では、「株式会社の業務および効率性の適正の確保に向けた株主または会社の機関相互の適切な役割分担と連携を促すものであること」と定められております。結局、規則100条の取締役会が決議すべき体制整備事項のうち4つはコンプライアンス・リスクマネジメントと密接に結びついているものでしょうが、この「効率性」確保といった項目はほかの4つとは異質なものでありまして、そもそも自民党の小委員会が法制審議会に提言していた政策的なニーズに合わせたもの、つまり国際競争力を高めるために大会社にスピード経営が可能となるような機関設計、自治権を与えて、そのかわり健全な経営が可能となるような自浄作用を促す、といったあたりと結びつく項目だと思われます。そこで、削除されております省令案の3条の規定ぶりからすると、この「取締役の職務執行の効率性確保」のために法務省が整備してほしい、と考えていたところは(公開大会社の場合には)機関相互の適切な役割分担と連携に関連する体制整備事項ではないか、と推測いたします。そこで、私としましては、もし「効率性」に関連する決定事項として掲げるのであれば、(機関相互、といった用語とは少しずれますが)常務会と取締役会の関係、取締役と執行役員の関係など重要案件の意思決定システムのあり方とか、取締役の職務分掌規程、取締役会上程事項に関する規程、(定款が変更されたことを前提として)書面決議、電話会議、テレビ会議等の利用基準の策定、特別取締役制度の利用基準、社外役員との情報共有のための決議などがお勧めかと思っております。(なお取締役と監査役との連携に関する事項につきましては、規則100条3項3号に規程されているところの問題かと思われますので、ここでは取り上げないものとしております)

体制整備に関する事項ですから、積極的に会社の管理体制に資するものであればいいわけですが、会社法に規程された問題である以上、株主への説明責任をまっとうできるものでないといけない、とも思われます。上記のような事項を決議しておけば、とりあえず筋の通った説明が株主様に対して行えるのではないか、と考えております。

※そういえば、会社法施行前の最後の訂正省令パブコメ回答(4月14日の法務省HP)におきまして、パブコメへの意見として法務省は「社外役員は、内部統制システム構築等にとって重要な役割を果たします」との意見を述べております。社外役員と内部統制システム構築の関係って、いままで議論されていましたっけね?社外役員を増やすことは、内部統制システムの向上に資する、ということなんでしょうか。

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2006年3月19日 (日)

会社法施行日決定

会社法の施行日が正式に政府で決定されたとのこと、予定どおり5月1日。(読売新聞ニュース)

政府は、敵対的買収対策などを盛り込んだ会社法を、5月1日に施行する方針を決めた。多くの企業が株主総会を開く6月ごろまでに、法整備を終えるためだ。24日の閣議で、施行日を定めた政令を決定する。

 会社法は、企業活動の多様化に対応するため、商法の一部や有限会社法など企業経営にかかわる法律を抜本的に見直し、一本化した法律で、昨年6月29日に成立した。企業設立に関する規制を緩和して1円の資本金でも企業が設立できるほか、敵対的買収を防ぐため、大量に株を購入した買収者の議決権を低下させる「ポイズン・ピル(毒薬条項)」の手法が使いやすくなる。

 今年の企業の株主総会では、買収防衛策の導入など会社法に適応した定款の変更が必要になると見られる。経済界は会社法を6月ごろまでに施行するよう要望していた。

ただ、会社法施行規則、会社計算規則につきましては、社外監査役の監査役会出席状況など、いくつかの変更点がパブコメに付されておりますので、施行日までには改訂されるようです。

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2006年2月 8日 (水)

監査役からみた会社法施行規則(1)

私のブログをお読みになっていらっしゃる方々は既にご承知のことと存じますが、2月7日、会社法施行規則(法務省令)が公布されました。よくコメントいただく方が、だいぶ前に「今度は3本になるよ」ってコメント頂戴していましたので、まぁ予想通りでした(・・・・しかし、どんな方が私のブログをご覧になっていらっしゃるのか、ホント怖いです)

総会担当者の方、経理の方、役員の方、中小企業の経営者の方、士業、証券会社の方などなど、それぞれ関心のある分野が異なるでしょうし、おそらくあっという間に「会社法規則解説号」が企業法務界を席巻するでしょうから、私など解説する能力も必要もございませんが、やはり自分の役職からみた会社法施行規則について一言。(おそらく「月間監査役」でもすぐに解説が掲載されると思いますが)

1 会社法施行規則の運用指針として、「法務省令案」の雑誌は残しておく

商事法務の臨時増刊号や、ビジネス法務の別冊付録として、「法務省令案」の冊子がございますが、これ、単に改正点の比較のためでなく、今後の施行規則の運用指針を探るためにも大切に利用したほうがよさそうですね。昨日のエントリーとも関係しますが、法務省令案には「訓示規定」や「努力義務」、そして「規則の目的」といったものがけっこうたくさん規定されていたわけですが、規則が3本にまとめられたことなどから、大きく省略されているところがあります。「その他、これに準ずる事項」などの例示列挙事由の該当性などを判断するためにも、法務省令案に掲載されていた指針を参考にしたほうがいい場面もありそうです。

2 「業務の適正を確保するための体制整備に関する決議事項」の監査

おそらく会社法施行後初の取締役会に向けて、今後どこの企業でも、「どうしたらいいの?」と話題になりそうな点がここではないでしょうか。施行規則が公布され、規則の施行日と会社法の施行日が同じ日に設定されているわけですから、これから開催される取締役会で会社法が施行される日に決議の効力が発生するように、将来効のある(停止条件付き)取締役会決議をあらかじめとっておくこともできそうです。なお、監査役の監査業務が適正に行われるような仕組み自体もこの体制に含まれるということですから、体制整備の監査というだけでなく、体制作りにも監査役は一部加わるということでしょうね。しかし、内部統制構築の議論によく出てくる「業務執行の効率性」監査というものが、会社法上は「取締役の職務執行の効率性」だけに限られて、会社全般に及ぶ業務執行の効率性までは監査の対象とならないのか(それは内部監査担当者の業務なのか)、損失の危険の管理に関する規程その他の体制といったものの監査は、いわゆる狭義のリスクマネージメント基準の範囲でよいのか、それともクライシスマネージメントまでを含むものなのか、など、その監査範囲についても、企業によって判断の自由度がかなり高いのではないでしょうか。

3 事業報告に関する監査

敵対的買収防衛策の妥当性監査とか、監査役自らの一年間の活動状況の監査とか、会計監査人との連携(会社法施行規則では、監査役候補者は財務、会計などの識見が高いことを要求しているように読めますが、いかがでしょうか)など、どうやって事業報告書の適正であることを監査すればいいのか、現時点ではよく理解できません。おそらくこれから、いろんなところで議論されていくことでしょう。また、電話会議などを含む「監査役会のあり方」なども、社外監査役による出席状況、発言状況などが事業報告書に記載されるということであれば、今後早急に検討されるべき課題ではないでしょうか。会社債権者や株主へ情報を的確に開示することで「理想的なコーポレートガバナンスを構築する」ためには、監査役が善管注意義務を尽くすための「最低限度の業務」とは何か、を考えることも大切でしょうが、せっかく監査役の業務の自由度が増えるわけですから、IR活動にまで結びつくような積極的な企業価値向上策につなげていきたいものですね。(不定期にてつづく)

※ちなみに、ぴてさん(ぴてのひとりごと)が、施行規則のうち、インターネット掲載に関するエントリーを、またぐっぱるさんが、業務の適正を確保するための体制整備に関するエントリーを、さっそくアップされています。こういった「会社法施行規則ネタ」がございましたら、TBしていただけますと、たいへん刺激になりますので、どうかお気軽にお願いいたします。

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2005年11月30日 (水)

会社法の施行規則・法務省令案(2)

うわさどおり、今週になりまして、会社法の規定に基づく「施行規則(案)」「法務省令(案)」が発表されました。(hardwaveさんのブログで知りました。)

以前のエントリー(会社法の法務省令案)でも述べましたとおり、このたびの新会社法は政令に委任している箇所が多いため、法務省令もたいへんな分量になっているようです。2週間後くらいには、商事法務の主催により、東京・大阪でこの「法務省令案」に関する講演が開かれる予定ですから、講師の先生方は準備に忙しいことと思います。会社法ですら、満足に理解できているかどうか心もとない私にとりましては、この「樹海」のような規則をどうやって整理していくべきか、非常に逡巡するところであります。

とりあえず、私の最も関心のある分野「株式会社の業務の適正を確保する体制に関する法務省令」の省令案とその概要だけでも、チェックしてみました。

もっとも目をひくのは、法務省令3条で株式会社の業務の適正を確保する体制に関する事項の決定については、株主の利益の最大化に資するものであること、と明確に規定されたことでしょうか。つまり、「企業価値」(この用語はいろいろな意味に用いられますが、ここでは株主価値という意味で)と「企業の内部統制システム構築(およびその情報開示)の必要性」が密接に関係することが示されたところではないでしょうかね。取締役の善管注意義務、忠実義務の履行形態のひとつであること、つまり構築義務違反が代表訴訟の対象となったり、第三者による損害賠償請求訴訟の対象となりうることは、この省令を待たずとも既に是認されていたところでありましたが、システムの構築状況とその開示状況自体が企業価値の評価基準となりうるところまで、言及されたものとみてよい、と私は解釈いたしております。(もちろん評価基準といいましても、「将来キャッシュフローを予測したり、価値算定の基準を選択するための前提となる企業継続性安定要因」程度かもしれませんが)

さて、それではどういった点を中心に開示されるべきか、といいますと①取締役(取締役会)の意思決定過程とその記録(保存)方法②従業員の法令遵守を確保するための体制③リスク管理のためのシステム④業務の有効性(取締役の意思決定がそのまま執行されるかどうか)と効率性を担保するシステム⑤監査役によるシステム評価のありかた⑥企業グループ全体における統合的なシステム、といったところが中心になるようです。しかも省令案は、個々の企業の独自性、個別性に準拠してシステムが構築されることを要求しておりますので、「ひな型的な情報開示」では賄いきれない内容になろうかと思われます。

とりわけ、業務の有効性、効率性まで「内部統制システムの開示」事項に入ってくるということでありましたら、情報伝達における文書化、IT利用による効率化といった「費用と時間を要する」問題も含むものでしょうから、今後の営業報告書(会社法上の事業報告)や適時開示情報を通じて、非常に有益な投資家情報が得られることが期待されるのではないでしょうか。

ただ、監査役による監査体制の開示事項として、取締役から独立した監査業務使用人の存在を求めているところがありますが、これはけっこうキビシイんじゃないでしょうか。大きな規模の企業であればこういった体制もすでに出来上がっているでしょうが、公開企業といいましても、規模が中堅程度の株式会社の場合、常勤の監査業務使用人の存在、そしてその意思決定機関からの完全独立性についてまで、クリアできるような従業員体制というものは、そう多くは導入されていないように思うのですが、実態はどうなんでしょうかね。

※  昨日のエントリーには、またたくさんのアクセスを頂戴いたしました。(2487/day)どうもありがとうございます。ただ、黄金株と司法判断(2)のエントリーに関しまして、私の浅学のためか、いろんな方からメールにて反対意見や補足意見を頂戴しており、そのなかには貴重なご意見も多く、私自身すこしばかり修正意見を考えております。11月29日の日経朝刊「一目均衡」では、まさにこういった「東証の存在意義」について焦点をあてた論稿なども出されておりまして、世間でもそろそろ注目されてきた論点ではないか、と思いますので、あらためてエントリーをさせていただきます。

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