2006年1月14日 (土)

ロハスな新会社法学習法

先日は、ポケット六法とデイリー六法の参照条文を利用したセレブな会社法学習法といったものをご紹介いたしました(ほんのちょっぴりですが反響はございました)が、きょうはもうすこし先を行ったロハスな会社法学習法についてご提案させていただきます。私よりも一期先輩の公認コンプライアンスオフィサーでいらっしゃる司法書士ぐっぱるさんのエントリーを拝読させていただき、なるほど!と思ったところから、ちょっとマジメに考えてみました。

最近、私の周囲の弁護士の方達も、やれ合宿だ、やれ勉強会だと新会社法の習熟に勤しんでいらっしゃいますが、その勉強態度たるや、書店に並ぶ「これでバッチリ!新会社法」といった基本書の類を買い込んできて、条文と基本書をにらめっこしながら通読、輪読するといったパターンがほとんどであります。30分もすると睡魔に襲われ、そのうち飲み会のお誘いがあって、「きょうはおしまい」みたいなことが毎日繰り返されるわけでして、どうもはかどりません。ところで、私も最近薄々感じておりますのは、ぐっぱるさんと同様、「どうも、これは以前の会社法とはベツモノではないか・・・」というイメージです。ぐっぱるさんが、そのあたりをたいへんうまく表現されていらっしゃいますが、このたびの会社法の勉強法としては、資格試験を受験される方の方法と、企業経営者や担当者からの相談に対応する勉強法は明らかに違うんではないか、といった疑問です。現行商法のもとでは、「株式会社はこんなもの」といった基本形があるわけですが、新会社法にはそれがない。私のように過去に司法試験合格といった「成功体験」をもつ人間は、かえって過去の体験に固執してしまって、このたびの新会社法学習法についても、同様の方法で十分だと勝手に思い込んでいるところがありまして、そういった方法論で勉強していても、「なんだかおかしい・・・」で終わってしまうわけであります。「さあ、材料は買ってきたから、この材料でおいしいものを作ってちょうだいね」と言われてみたものの、いままで料理をしたことがないもんだから、何をどう、作っていいのかわからず呆然と立ち尽くす初老の夫、みたいな雰囲気が漂ってしまっている状況であります。

来るべき新会社法施行の5月まで不安と焦りにおののく気持を解放して、心と体の健全性を維持し、かつ楽しみながら続けられる会社法学習法、まさに「ロハスな」勉強法は、このあたりの発想の転換が必要ではないでしょうか。もちろん会社法なわけですから、解釈学の基本である関係当事者の利害調整といった論点も勉強することは有意義なわけですが、そういった部分は実務家として相談を受けた後でも対応できるわけでして、それよりも会社法を勉強する意義は、どの材料をどのように使って、それをどうモニタリングしていくか、ということのほうが大切なことのように思えます。いま、私の実践中の各論は以下のとおりであります。

1 定款を利用して、ともかく自分の作りたい会社をイメージしてみる。

  発起人の合意から登記手続きまで、定款の自由度を自分なりにイメージしてみる。定款で決めても無理と書いてある条文があるのか、ないのか。設立から機関設計、株式発行あたりの条文に留意する。(この部分は以前のエントリーでも書きましたので、ここでは繰り返しません)

2 間接金融の時代からプロジェクトファイナンスまでの歴史を学ぶ

  私は米国法律事務所東京支社パートナー弁護士でもありませんので、特別に深い知識など必要ありませんが、これは確かに有意義な勉強法ですね。DES、メザニン、ストラクチャードファイナンス、ノンリコース、ベンチャーキャピタルあたりの歴史は、このたびの種類株式、組織再編を理解するには不可欠ではないでしょうか。会社法に登場する「非公開会社」とか「中小会社」といったイメージについて、これまでは大阪の町工場のようなイメージを頭に思い浮かべておりましたが、(もちろんそれもございますが)やっと「分社化された事業」とか「ストラクチャードファンド」といったイメージが浮かぶようになり、それで初めて条文構造も納得できるようになりました。また機関設計につきましても、単に新会社法で規定されている機関設計の比較だけでなく、SPC、LLP、新信託法上の信託財産などとの比較において選択しなければいけないことも、なんとなく理解できるようになりました。また、知らない人たちが集まって仕事をする組織もあるわけですから、コーポレートガバナンスに関する長所短所にも配慮する必要があるわけです。

3 金融ビックバンの歴史を学ぶ 財務諸表を横に置いて考える

いま一番ハマっている学習法はこれです。もちろん計算関係の条文および計算規則の理解ではありますが、私にとって会社法上最もニガテな部分であります。ただ、よくよく勉強してみますと、この会社の計算といった部分は会計学と法学のクロスする醍醐味を味わえる大変貴重な場面ですよね。財務諸表論の歴史を100年ほど追いかけてみますと、貸借対照表と損益計算書のほかに、もうひとつの計算書が存在していた時代もあったわけでして(もちろん会計専門家の方にとってはあたりまえの話かもしれませんが)、なぜそういった計算書が存在して、消滅していったのか、といったことを考えたりしておりますと、このたびの計算規定の改正理由なども非常に興味深く理解できたりするわけであります。(といいましても基礎知識が乏しいためか、理解は遅いのですが)

あと、会社の訴訟関係とか、違法行為の効果とか、そういった規定につきましては、民事訴訟法などの素養が必要だと思われますので、法曹以外の方にとってはキツイところもあるかもしれませんね。ともかく、企業法務に携わる者にとりましては、理解度をアップさせるには、どうも会社法が利用される場面における経営学的、経済学的な背景といったものを併せて理解することが最も近道となるのではないか・・・・と思う次第であります。会社法の条文や基本書を読むにあたって「おお、なるほど、こう変わったのか!」と驚きながら読み進めるのと、ただツラツラと暗記できることを期待しつつ読み進めるのとでは、やはり楽しみ方は違うのであります。ただ、「学習法を考えてみました」などと言いつつ、私が勝手に実践している学習法を紹介したにすぎませんので、お試しされて「全然効果ないやんけ!!」とご立腹されませんよう、お願いいたします。(また、このお話はつづきます)

1月 14, 2006 ロハスな新会社法学習法 | | コメント (4) | トラックバック (0)