ニッポン放送事件の時間外取引(再考)
30日月曜日のお昼から、ラジオ大阪(フジサンケイグループ)の「NEWSワンダーランド」という番組にゲスト出演いたしました。「企業の錬金術に司法のメス」といった内容で、約30分ほど、このたびのライブドア事件に関連するお話をさせていただきました。
番組の打ち合わせのとき、パーソナリティの里見まさとさん(漫才ブームのころの「ザぼんち」が懐かしかった・・・・)に
「去年のニッポン放送の裁判のときに問題になってた、あの・・・・、時間外取引、いうんでっか?あの取引がグレーやっちゅうて、騒いでおましたわなぁ?あれ、ちょっと本番で説明してくれまへんやろか?」
「・・・・・・・・・・・・?え?そんなんラジオつけてるオバちゃんにもわかる話になりますか?」
気をとりなおして、とりあえずTOSTNET-1の本来の趣旨から、趣旨を逸脱した利用法、そして大量取得による証券取引法の特別関係者の立証問題などを説明しようとしたところ、「先生、やっぱよろしいわ。まあ、違法な取引の可能性が高い、くらいの説明にしといてください・・・・・」「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
番組の始まる前でしたので少し緊張しておりましたが、そういえば昨年の鹿子木判決のなかで、かなりあっさりと触れられていた「時間外取引」というのも、いまこうやってライブドア事件の渦中で考えてみますと、(現在はすでに証券取引法の改正によって規定自体が変わりましたが)「当時はあれ以上に踏み込むことはできなかったのかなぁ」と、少しばかり思い出されました。私も当時は、証券取引法は行為規範であって、刑罰の対象となる行為を規定してものであるから、(罪刑法定主義により)明文で禁止されていない行動は、たとえグレーゾーンであったとしても、それを違法(さらに私法上も無効)と考えることはできない、と比較的軽く考えていたようです。
しかし、このたびの堀江氏逮捕、ライブドア強制捜査の被疑事実とされている風説の流布とか、偽計取引といった「不正行為」の認定にあたっては、(まだはっきりとしたわけではありませんが)いくつかの不当な利益獲得へ向けた行動を実質的に判断して、違法であると判定しようとしているわけでして、多くの証拠を握ることができる刑事手続においてすら、こういった解釈手法が許容されるのであれば、民事事件においてはなおさら「不正行為」の認定を実質的に検討することも許されたのではないか、などと考えてしまいました。もちろん、証券取引法違反の行為があったからといって、取引自体が無効となるわけではありませんが、「グリーンメーラー」「企業価値を毀損する者」の認定など、敵対的買収における防衛策の発動要件を検討するにおいては、かなり重要な争点の判断で、こういった解釈手法の是非が結論を左右するような気もします。
もうひとつ(これも今だから言える話でして、まったく偉そうには言える立場にはありませんが)昨年のニッポン放送事件のときですら、ライブドアが3分の1以上の株式取得に用いた「時間外取引」は違法無効ではないか、と議論されていましたよね。もし、裁判によって時間外取引は無効であると認定されていれば、ライブドアの株価対策は大きく崩れることになっていたでしょうし、ライブドアの株価も急落していたに違いありません。株主の責任のもとに、あのようなアブナイ橋を渡っていったライブドアは、本当に株主価値の最大化を図る意思があったのかどうか、極めて疑問ですし、そういった橋を渡る行為自体を捉えて、事業提携時における企業価値(果たして事業をともにするパートナーとして、提携後の株主の価値最大化を本当に目指しているかどうか)というものを検討したり、主張する余地はなかったのだろうか、と少し疑問に思いました。
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