会社法施行規則公布前夜の疑問
葉玉検事さんのブログによりますと、いよいよ会社法施行規則が正式に公布されるようですね。(これで正式に会社法の施行日も決まるということになりますね。)社外監査役という立場から注目点を探してみますと、監査役監査の範囲、社外監査役の事業報告における開示内容簡略化などが法務省令案からの修正があるようです。また、取締役会としましては、業務の適正を確保するための体制整備に関する決議事項も、若干の修正を経てやっと内容が確定することになりそうです。(また、正式な規則が公表された時点で検討してみたいと思っています)
ところで、いままであまり意識してこなかったのですが、こういった「会社法施行規則」というのは、法務省が法(会社法)による委任のもとに発令する「命令」(行政法上の用語として)に該当するわけでありますが、この「命令(法規命令)」に違反する株式会社の行為に対してはどういった制裁(法的効果)が加えられるのでしょうかね?現行の商法規則といったものは、商法による委任に基づいているわけですが、規則の対象とされている細目が非常に明確になっておりますのであまり問題にはならなかったわけですが、このたびの会社法施行規則では、会社法全体に及んで300ほどの委任事項を統括しているものですから、なかには会社の権利義務の範囲を明確にしている規則や、法令の解釈指針となっている規則(行政規則の範囲?)法令の実施手順を定めた規則などが混在しているように思われまして、「果たしてこの条文って、ほんとに法令による委任の範囲内?」と疑問に思えるものが散見されるのではないでしょうか。第一、パブコメへの法務省の回答などを閲覧しておりますと、会社法施行規則(案)124条の「責任追及訴訟における訴え提起の方法」などは、そもそも法務省自らが「訓示規定」と認めている条項を取り入れていた(ただし修正される見込み)わけですから、その法的拘束力というものはないわけです。つまり、会社法規則のなかには、そもそも法的拘束力を有するものと、そうでない訓示規定、努力義務、精神規定といった「違反しても法的効果を伴わないもの」も含まれていると解釈してよいのでしょうか?また、たとえ一見すると法的拘束力を有するようにみえる規則であっても、会社法の解釈や、立法意思の推測などから、規則の内容が「法の委任の範囲外」といった施行規則も含まれている可能性があり、「この規則は会社法違反の規則だからしたがわない」といった対応も考えられるのではないでしょうか?たとえば、会計監査人設置会社において、事業報告書の監査を行うのは監査役のみでありますが、会社法が「社外役員」に独自の意味を持たせていることまでは理解できるものの、開示情報として、ここまで詳細に社外役員の活動報告を事業報告書に記載することは「法の委任の範囲外である」と解釈して、活動報告を簡略化した事業報告書を適法として監査報告することも可能なんでしょうか?あるいは「これは訓示規定だから今後努力はします」とだけ報告しても適法なんでしょうかね?
有価証券報告書における開示情報ということでしたら、上場廃止といったエンフォースメントが働くわけですが、会社法施行規則違反といった行動は、果たして法的拘束力によって強制されるものなのかどうか、あんまり考えたことがなかったもので、ちょっと疑問に感じました。(おそらく今回の規則の中身を見た人のなかで、私と同じような疑問をもった方もいらっしゃるんじゃなかろうか、と期待しておりますが・・・)
(追記)
さっそく7日朝から法務省のHPでリリースされていますね。雑誌や特集号で、開示情報のひな型とか、解説とか、いろいろと忙しくなるんでしょうね。
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