小口債権に関する企業の対応
「企業秘密漏洩のリスクマネジメント」や、法務省令モノ(会社法施行規則関連)に、たくさんのコメントをいただき、ありがとうございます。どうもコメントを拝見しておりますと、貴重なご意見(熟読検討に値するご意見)が多いようで、私がコメントをさしはさみますと、10個しか並ばないココログのコメント欄からはずれてしまうのがもったいないので、もう少しだけ「放置」させていただきます。9日午後にでもコメントをお返しするか、関連エントリーをアップさせていただきたいと思います。
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破産管財人をしておりまして、破産財団が配当可能資産を保有するケースでは、最後に配当を行う必要があります。新破産法では、この配当がずいぶんとややこしくなっておりまして、とても気を使う作業になるわけですが、財団債権や優先債権のように、他の一般債権者に優先して支払う必要のある債権者が多く、かつ金融機関だけが何十億といった債権届けを出しており、リース債権者のように、一般企業が数十万円単位の破産債権の届出をしているようなケースですと、配当率がわずかの場合、「数百円」しか配当がないことも珍しくありません。
さて、振込料を支払ってしまうと配当金がなくなってしまうような場合、こちらから債権者ごとに連絡をして、対応方法を検討するわけですが、この企業の対応がいろいろと分かれておもしろいところです。(ただし、この取扱は旧破産法下による配当を念頭に置いたものであります。)
1 郵送料を差し引いた金額分の切手を送付してください、とする企業。これは裁判所の対応マニュアルにも合致しておりまして、こちらとしても面倒がなく、一番ポピュラーな対応方法です。たとえば配当金が200円の場合、120円分の切手を配当計算書とともに送付いたします。領収書はファックスで送信してもらうことにしています。
2 郵送料相手方負担で、納付書を送ってきて、これで郵便局で支払ってください、とする企業。比較的お堅い企業によくみられるパターンです。あくまでも、配当金額ピッタリの送金手続にこだわるところでありますが、こちらの手続が面倒なため、あまり歓迎したくはありません。
3 配当計算書を送付した段階で、配当金債権の放棄手続をとってくる企業。税務処理の関係で、破産手続が終結する前に、届出債権全額を放棄する旨の内容証明通知を発送してくる企業が多いのですが、比較的個人企業に近いところでは、こういった「めんどくさいことはかなわん」といった趣旨で放棄の意思表示をしてくるところもあります。
4 振込料を自社負担することを承知のうえで、100円の振込を要求する企業。外資系の金融機関などは、このパターンが多いですね。先の納付書と比べると、あまりこちらの事務手数料が増えませんので、助かります。財務報告の信頼性を確保するための「費用」と考えておられるのかもしれません。
5 振込料を下回る配当金とわかるや、「そちらまで職員が取りにうかがいます」と言って、日時をきちんと連絡してから現金を事務所に受け取りに来る企業。立派な領収書ももらえて、こちらとしては有難いのですが、電車賃を使って、職員が2時間かけて事務所まで100円を受け取りにくる、というのは、なんとも効率性が悪いのではないでしょうか。よくわかりませんが・・・・・
6 「そんなん電話で相談せんと、勝手に切手で送りつけてくれたらええのに・・・」とぼやく企業。これもけっこう多いです。一方的な行為であったら、そのまま処理できるのに、事前に相談を持ちかけられたとなると、その債務者の行為を容認したことになってしまい、担当者の責任になってしまうことを恐れていらっしゃるのでしょうか。なんとなく気持は理解できます。
大企業、中小企業といった分類ではなく、ホントに上記のような小口債権の取扱はマチマチであります。いろいろと企業における業務の効率性やコンプライアンスが話題になっておりますが、さてこういった取扱の差異をみておりますと、企業の内部統制システムといったものも、自社の何を重視すべきか、といったところで、いろいろな考え方があることがわかります。(なお、新破産法による配当処理につきましては、大阪地裁の場合は振込手数料を先に財団債権として処理いたしますので、こういった取扱の差異はなくなりました。東京地裁では、ちょっとわかりません。念のため・・・・)
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