2006年3月14日 (火)

ライブドアと社外取締役

証券取引等監視委員会は、ライブドア法人(東証マザース)を有価証券報告書虚偽記載罪の容疑で東京地検に告発をしたようです。資本剰余金として計上すべき自社株売却益を、売上に不正計上したことが直接の容疑となっている、とのこと。ライブドアの平松社長は、記者会見で、現在の3名の取締役は6月の総会で退任し、社外取締役2名を含む5名の取締役が新たに選任されるであろう、との発表を行いました。

いよいよ、ライブドア騒動も、ここからは第2クールに突入することになりそうですが、(ちょっと現実から離れて考えてみたいのですが)果たして堀江色、宮内色の強かったライブドアに関して、いったいどんなコーポレートガバナンスが機能していれば、この2004年11月前後の企業不祥事は防止できたのでしょうか。あるいは、こういったオーナー色の強い企業においては、どのようなガバナンスを採用していても、不祥事防止は困難だったのでしょうか。まず、今回の状況(新聞などによる報道内容)からみて、監査役、会計監査人は(粉飾スキームを考案することに積極的に加担していたようでして)全く不祥事防止には機能しえなかったようです。そもそもオーナーとの長いお付き合いの中で、コンサルタントが役員に就任した経緯があるわけですから、これらの役職の方に独立した役職としての立場を期待するほうが無理かもしれません。つぎに取締役会につきましても、6名の取締役はそれぞれ中途採用のエリート社員がそのうちにライブドア関連企業の取締役を兼務していたような状況でありまして、これもトップの暴走を抑止することは全く期待できなかったのではないでしょうか。残るガバナンスとしては企業情報(財務諸表)の開示と社外取締役制度の導入ですが、ライブドアの有価証券報告書あたりは、かなり以前から「おかしな経営ではないか」と疑う投資家もいらっしゃったわけですから、ある程度は機能していたようにも思います。

これまでライブドアには社外取締役がいなかったわけですが、もし社外取締役が存在したら、どうなっていたのでしょうか?企業不祥事は防止できたのでしょうか?十分な独立性が確保されたような社外取締役がいたとすれば、おそらく堀江氏は社外取締役に重要な情報を開示しなかったかもしれませんね。ただ、取締役会におけるリスク管理や情報の共有に関する内部統制システムをきちんと構築したうえで、社外取締役を導入した場合には、社外取締役としましては、仕事の範囲が明確となり、また一般株主へ説明すべき事項も特定されてくるでしょうから、ひょっとすると違法行為を未然に阻止することができたかもしれません。もちろん、そんな「やっかいなこと」になるくらいなら、最初から堀江氏としては社外取締役制度を導入しないわけでして、上記は単なる空想にすぎないことになってしまいますが、ただ、こういった不祥事を経験するなかで、社外取締役の独立性に関する情報開示や、取締役会が定款や法令を順守するための仕組みに関する情報開示が進むことによって、ガバナンスのあり方を投資家が上手に評価するようになるかもしれません。

3月1日、東京証券取引所では企業情報の開示に関する規則が改正されまして、「コーポレートガバナンス報告書」の開示が求められることとなりましたが、投資家の比較に資するように、社外取締役(社外監査役)と会社との関係について詳細な開示が求められると同時に、執行業務全般におよぶ内部統制システムの状況に関する開示も求められるようになりました。(旬刊経理情報3月20日号、東京証券取引所の木村調査役の解説記事が詳しいです)もちろん、社外取締役制度の実効性といったものは、ご承知のとおりまだまだ確定的に企業不祥事防止や、株主価値を高めることに寄与する、といった実証的な検証はなされていないかもしれません。しかしながら、今回のライブドア騒動を振り返った場合、株主の多くの被害を未然に防ぐことが可能だと思われるのは、企業情報としての財務情報の適正な開示であり、またこれに加えて社外取締役ではなかったかと思います。最近の野村証券のアンケート調査によりますと、投資家にとって「コーポレートガバナンスの状況」といった開示項目については、投資判断を形成するにあたって、それほど重要性を感じないといった回答が多かったようですが、このたびのライブドア騒動が発生した現時点で、このコーポレートガバナンス報告書の持つ意味というものは、すこしばかり以前とは異なるものとなるのではないか、とひそかに期待をしております。

3月 14, 2006 ライブドアと社外取締役 | | コメント (10) | トラックバック (0)