報告書形式による内部統制決議
一昨日の「帝人の内部統制システム整備決議」のエントリーには、たいへん多くのアクセスを頂戴しまして、どうもありがとうございました。m(_ _)m アリガトォ~★
一日のPV(ページビュー)5000超といいますのは「ホリエモン逮捕と罪刑法定主義」を超える当ブログの新記録でして、やはり世間の「内部統制実務」への関心の高さを物語るものとして、私もビックリしている次第です。ただ、過去に何度も申し上げておりますが、このブログは私個人の私的な見解を述べているだけでして、ときどき(これは無理があるなぁ・・)と感じているようなことでも、平気で垂れ流している見解もございますので、どうか内容の吟味につきましては、ご覧になっていらっしゃる皆様方の責任において斟酌いただきたいと思います。また、「これはおかしいぞ」と感じるところがございましたら、どうかご遠慮なくコメントを残していってください。よろしくお願いいたします。
ということで「帝人の・・・」が大ウケだったことに気をよくして、というわけではございませんが、感謝の意味を込めまして、もうひとつだけ続編で本日(4月26日)に東証適時開示で公表されておりました総合リース事業のセンチュリー・リーシング・システム株式会社(東証1部)の内部統制システム整備決議(内部統制システムの整備に関する基本方針について)を検討してみたいと思います。
これ、先日私がある企業から相談を受けた「体制整備事項決定決議」と非常によく似ております。なにが似ているかと申しますと、いわゆる「報告書形式」なんです。最初に経営理念などの基本方式を掲げておいて、細目(いわゆる会社法施行規則100条1項1号以下で整備事項として列記されているもの)については「うちはこんなことをしております」といった現状報告形式で記述するものです。自社において、コンプライアンス経営、リスク管理体制の整備のために必要と思われるものを決定すればよいのですから、自社の体制を確認したうえで現状として整備されていると考えれば、こういった「運用しております」「適宜実施しております」形式もありなんでしょうね。私が相談を受けた企業も、こういった報告書形式での整備事項決定決議であれば、将来的に株主様から「具体的な人的組織、物的組織を構築する、と開示しているが実際には構築されていないのではないか?」とつっこまれる心配がないということで、現状確認報告の方式を採用したいとのことでした。
たしかに、体制整備事項として、自社の理想を追求するあまり、「あれもこれも」と欲張って決議してしまいますと、後でなにか問題が発生した場合に取締役の善管注意義務違反の内容としての「内部統制構築義務違反」の根拠を株主様に提示してしまう結果になってしまうおそれもありそうですし、できればサラっと流しておいて、様子を見ながら後で追加決議をしよう、といった対応も賢いのかもしれません。ただ、私個人としましては、せっかく開示するのでしたら、これまでの経営管理システム構築の仕上がり具合と、自社のリスクを洗い出した結果としての問題点克服方法(体制整備の目標事項)を同時に示すような決議内容にすべきである、と考えます。なぜかと申しますと、おそらく2008年3月以降の事業年度から強制適用されるであろう「金融商品取引法」に基づく内部統制実務報告制度のための「トレーニング」を十分いまから積んでおいたほうがよさそうだ、と思うからです。
ご承知のとおり、財務報告の信頼性確保のための会計監査人による内部統制報告実務は(予定では)2008年以降に開始される事業年度より強制適用されますが、アメリカのSOX法実務と異なり(といいますが、アメリカでも見直しが進んでおりますが)、日本の内部統制監査はトップダウン方式のリスクアプローチがとられ、ダイレクトレポーティングが不採用、財務諸表監査との一体化の運用がなされます。またアメリカには存在しない「監査役の監査レベル」といったものも評価の対象となるわけです。こういった事情のなかで、経営者が作成する「内部統制評価報告書」の適正、不適正を判断するわけですから、評価する側である会計監査人は、どうしてもすでに動いている内部統制システムの構築レベル、運用レベルを参考とせざるをえないわけでして、当然のことながら会社法における体制整備決定事項を参考として、評価判断の材料とすることは十分予想されるところであります。もちろん会社法レベルでの「内部統制システム」は財務情報の信頼性確保のためだけではありませんが、おそらく取締役や従業員の職務の適正を確保するための体制整備事項の半分以上は、財務情報の信頼性確保と関連するのではないでしょうか。そうであるならば、いまのうちから会計監査人による評価報告書への監査体制に耐えうるだけの具体的な整備事項の洗い出しを検討しておいたほうがよい、というのが私の意見であります。(現状報告形式ですと、内部統制監査の際における「監査役の監査レベルの評価」が極めて困難になってしまうのではないでしょうか)
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