2007年4月20日 (金)

公開会社法への道しるべ(3)

(注:備忘録程度の内容です)

本日(4月20日)の日経朝刊によりますと、金融・資本市場改革案(政府の経済財政諮問会議による)の内容が明らかとなり、投資家保護に向け、上場企業にレベルの高い企業統治(ガバナンス)を義務付ける「公開会社法」の策定が提言されたそうです。(要旨は日経ニュースにも掲載されております)金融商品取引法、会社法と「公開会社法」との関係の詳細については、新聞の報道では明らかにされておりません。

やっぱり「公開会社法」(まだWGの中間報告ということらしいのですが)が登場してきましたね。ここで留意すべきは「企業の収益性、効率性向上のための」ガバナンス向上とは記述されておらず、「投資家保護のための」更なるガバナンス強化、と紹介されているところであります。不正取引の禁止や、不正防止のための役員間のけん制する仕組みなどを整えるとのこと。しかし、会社法上の内部統制システムの構築(体制の整備)問題と、公開会社法によるガバナンス強化の概念の関係とか、公開会社の機関設計の強行法規性とか、またいろんな論点が出てくるかもしれません。(紀尾井町さんのコメントと時間的にかぶってしまったようですが、お昼はエントリーの時間が割けないもので、備忘録程度にて失礼します)

4月 20, 2007 「公開会社法」への道しるべ | | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年4月17日 (火)

会社法改正待望論?(監査役の権限強化)

(監査法人の内部統制6新たな疑問編では、会計監査責任者の短期交代制を導入することで、その地位の独立性を確保できるのではないか・・・といった自論を書きましたが、なかなか短期交代制は現実的でないことについてcritical-accountingさんよりご意見をいただきました。ご興味のある方は、TBをご参照ください。どうも、ありがとうございます)

また会計監査人の独立性に関わる問題でありますが、昨日(4月16日)の日経スイッチ・オン・マンデー「法務インサイド」では、会計士法改正案の審議入りを前にして、早くも会社法見直しについて、金融審議会・公認会計士制度部会より、強い要望があることについての解説が掲載されておりました。監査法人の体制強化や監査法人に対する監督・責任の見直し、監査人の独立性保障問題などが公認会計士法改正案の制度改革のポイントになるわけでありますが、金融審議会側としましては、会計監査人の独立性確保のためには若干課題が残ってしまったようです。この審議会の協議内容をリアルタイムでフォローされていた方でしたらおわかりのとおり、会計監査人の独立性確保のためには、「連携協調」のパートナーである「監査役」の権限強化(ガバナンス)を図りたかったのでありますが、監査役の権限強化は金融庁というよりも会社法を所轄する法務省マターの問題であるために、独自に機関設計のあり方を定めることができず(金融庁サイドで金融商品取引法を改正しての修正は無理、との意見が多かったようです)、今後の法務省の「会社法改正」に向けた動きに期待せざるをえない、とのことであります。

今回の平成17年会社法改正におきましても、会計監査人の独立性確保のために、監査役(会)の権限としまして、会社提案の会計監査人の報酬決定につき同意権が付与されることになったのでありますが(会社法399条)、単に同意権では足りず、監査役(会)が独自で会計監査人の報酬額を決定できるように(つまり報酬決定権を監査役に付与するように)すべき、との意見が出されるようになりまして、これにより、会計監査人の監査の独立性を補強すべき、とのことのようであります。筑波大学の弥永教授(金融審委員)も、会社法制定以降に会計不祥事が続発していることから、監査役の権限強化の機運が高まっていることも考慮すべき、との意見を述べておられますし、先日ご紹介させていただきました中央大学の大杉教授の「監査役制度改造論」なども含め、多方面から監査役制度のあり方への議論が始まったところではないでしょうか。また、こんな物言いをしてしまうと、またツッコミが入ってしまうかもしれませんが、現実の監査役の姿といいますと、その権限を強化してみましても、果たして独立的立場で経営陣に向かって監視機能を行使できるかどうかきわめて疑問視せざるをえないことも現実であります。したがいまして、この金融審議会の期待(会社法改正待望論)につきましては、監査役制度のガバナンス面の改正とともに、まずもって監査役制度の現実が変わらなければ、本当に会計士の独立性を補強する基礎にはなりえないようにも思われます。(ただ、現実の監査役制度を前にした場合、その独立性確保のために、監査役(会)独自で法務コンサルタントを委託する、といったことも検討されるところでありますが、これはまた別の機会に)

ところで今回の上記「会社法改正待望論」に関する記事を読んでの感想でありますが、「法務省に監査役制度の改正が期待されている」とありますので、会計監査人の独立性の問題は、いわゆる会社法上の会計監査人と監査役との関係に絞った話でありますよね。しかしながら一般投資家保護、といった観点からみますと、監査の独立性確保を目的とした監査法人制度改革を考えるのであれば会社法監査とともに、証取法監査における会計士、監査法人の独立性確保についても検討する必要があるのではないでしょうか。そもそも会社法が今回規定している会計監査人の報酬同意権については、会社法監査についてのお話でありますから、証取法監査における監査人報酬については、監査役の同意権はなんら規定されていないわけであります。(会社法施行規則126条各項が、非監査業務を含めた監査法人の報酬開示ルールを規定しているくらいではないでしょうか)この点、どんなに法務省のほうへボールが投げられてしまっても、そこで改正されたものは、やはり会計監査人に関する規定ということになりますので、証取法監査についての監査報酬は経営陣と監査法人とで定められることに依然として変わりはないはずです。つまり、監査役制度を変容させてみても、それが「監査の独立」に機能するところはごく一部に限定されてしまうのではないか、との素朴な疑問がまたまた出てくるわけであります。このあたりはどのように考えればいいのでしょうかね?それこそ「公開会社法」を定めて、そのなかで企業が監査法人に支払うべきすべての報酬について、監査役が提案権を有する、とすべきなのかもしれません。金融庁と法務省が足並みを揃えて、監査制度のあり方を検討していかねば、監査役と会計士との連携協調がうまく機能しないのではないかと思いますが、どうなんでしょうか。

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2007年2月20日 (火)

公開会社法への道標(その2)

きょうは、意見ではなく、情報のご提供のみで失礼いたします。

(その1)は、昨年5月12日に「公開会社法への道しるべ」といったエントリーをアップしておりましたので、約9ヶ月ぶりの続編アップということです。(そんなエントリーあったのかな?と 笑)(その1)の内容は、いわゆる上場企業におきましては、市場資本主義の興隆とともに「会計士さんの時代」がやってきまして、そのうち会社法と証券取引法が逆転してしまうんではないか、上場企業に法の支配は貫かれるのだろうか・・・といった趣旨のエントリーです。ちょうど、私が大阪弁護士会におきまして会社法研修講座の講演準備をしているときに感じたことをツラツラと書いたものです。そしてひさしぶりに(その2)をアップしようと思いましたのは、会計士さん向け雑誌の3月号に、著名な商法学者の方々の興味深いご意見が掲載されていたからであります。

「会計・監査ジャーナル」3月号の緊急企画「監査不信に立ち向かう公認会計士業界シリーズ第六回 識者に聞く 資本市場における公認会計士の役割とその責任」では、藤沼会長さんと上村教授の対談が実現しているわけでありますが、早稲田大学法学部長の上村先生は上場企業における証券取引法の会社法に対する優越性を強調され、さらに(資本市場をとりまくルールとしては)自主規制のほうが法律よりも重要である、有価証券報告書よりも適時開示のほうが重要である、会計基準はまさにトップクラスの重みがあり、資本市場の中心に公認会計士が存在する時代になる、だからこそその責任も重いのだ、といったお話をされております。現在、上村先生は、日本取締役協会の「公開会社法要綱案」の制定に向けてご尽力されていらっしゃるそうですが、この対談におけるご見解は、おそらくこれまでの上村先生のものとまったくブレがないものと拝察いたします。

いっぽうたいへん気になりましたのが、神田教授の「企業会計」3月号「論壇」における最後のまとめの部分であります。実は、これは立ち読みしかしておらず、前後の文脈まで精読していないのですが、この「まとめ」の部分におきまして、神田先生は上村先生とほぼ同じ趣旨のことをおっしゃってます。(と、私には理解できました。いや、それほど強く、というわけではないと思いますが)公開会社においては、会社法は企業会計基準の前では後退せざるをえない、(法律でいうなら)証券取引法の優越を認めざるを得ない、といった趣旨のことを申されて締めくくっておられます。(もしお手元に企業会計3月号がございましたらご確認ください。)

私はてっきり、いままで神田先生は、こういった考え方をお持ちでないものと勝手に思い込んでおりましたが、やっぱりそのようにお考えになっておられたのでしょうか?昨年のベストセラー「会社法入門」のなかで、神田先生は「会社法はどこへ行こうとしているのか」(第五章)と自問自答されて、コーポレート・ガバナンスに関しては、新会社法は公開会社が日本の資本市場において興隆していくための支援(いわゆる国策法としての会社法)を志向するであろう、といったお考えを開示されておられます。このたびの会社法につきまして、神田先生は、まさに中小企業、ベンチャー企業における株式会社の使い勝手の促進とともに、資本市場を活性化させたり、事業再編を容易化させることによる「公開会社のための会社法」というものを念頭に置かれていたのではないかと思いますので、やはり公開会社におきましても会社法の占める位置はたいへん重要ではないか、すくなくとも会社法>証券取引法とお考えになっているものとばかり理解しておりました。もちろん、証券取引法(金融商品取引法)と会社法との優先関係を議論することが、公開会社にとってどのような実益があるのか、といったことも検証しなければなりませんが、会社法ももうすぐ施行後1年となり、こういった構想も具体的に高名な学者の方々によって議論されるころになってきたのでしょうか。とりあえず、もし上記論稿などお読みの方がいらっしゃいましたら、私の認識の間違い等も含めて、ご感想などお寄せいただけますと幸いです。

2月 20, 2007 「公開会社法」への道しるべ | | コメント (7) | トラックバック (0)

2006年9月27日 (水)

塩崎官房長官と公開会社法制の行方

安部首相誕生と同時に、塩崎恭久氏が官房長官に就任されました。(たしかご子息は東京の大手法律事務所で弁護士をされていますよね)昨年、ある会合で一度だけ、塩崎センセイとお会いした(といいましても、1分くらいの立ち話ですが)ことがありますが、日銀ご出身のスマートさと共に、精力的で、朗らかで、「ひとりで4人分くらいの仕事しているんじゃないのかなぁ」と思わず驚嘆した記憶があります。おそらく世間の関心は、拉致問題担当のほうにあるのではないか、と思いますが、私も一昨年くらいから、ずっと塩崎氏の発言をフォローしてきました。(関連エントリーはこちらです。もう1年ほど前のエントリーですが)私は拉致問題担当というよりも、この方の会社法制、会計制度へのグローバルな考え方にたいへん興味を抱いておりまして、安部首相とも非常に近い関係にあり、かつ官房長官といった地位からしても、今後ますます日本の公開会社法制度が、この方の考え方に近い方向へ動き出すのではないかといった予感がいたします。そもそも、新会社法の要綱試案には「内部統制」といった言葉はどこにもなかったわけでして、この方が委員長を務めておられた委員会からの提言によって、ある時期の法制審議会で、ほぼ異論のないままにサクっと、「内部統制の会社法における規定化」が導入されてしまった経緯もあります。(これは旬刊商事法務で、江頭教授の論稿を読んで知りました)

政治が法律の世界に力を持つことの是非はともかく、この塩崎新官房長官のHPにおける政策提言(我が国の企業統治、企業会計制度のさらなる強化に向けて    リーダーシップを持つオープンな日本へ)などを読んで、今後の公開会社法制の行方をうらなってみると・・・・・・・・・・・

上場企業における「財務情報の信頼性確保のための内部統制報告実務」の充実が急務、ただし、最近は国際会計基準の統一(コンバージェンス)のほうが、もっと急務になってきたんじゃないでしょうか。

企業情報開示の重要性とりわけ不正会計を厳しく取り締まるため、監査法人改革、日本版SEC創設、刑罰の厳格化。証券取引所の自主規制機能の強化充実。

コーポレート・ガバナンス改革。とりわけ社外取締役、社外監査役の独立性強化、監査役、監査委員の財務会計知見の要件強化。

結局のところ、東京を国際的な資本市場として発展させるための諸策については、積極的に実現させる方向に動き出したようでありまして、今後も公開会社法制に関する制度改革が進むものと予想しております。このブログでも何度も自説を述べておりますが、これからは「会計の時代」、会計士の皆様からはよくご批判を受けるところでありますが、いわゆる会計監査人による不正発見の権利と義務、という問題も現実化してくるのではないでしょうか。(いえ、あくまで私ひとりの感想ではございますが・・・・・)

9月 27, 2006 「公開会社法」への道しるべ | | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年5月12日 (金)

「公開会社法」への道しるべ

会社法の講演をさせていただいて幸運だったことは、講演のためのいろいろな調査研究をしているうちに(といいましても仕事を抱えながらですから、そんなにたいしたことはできませんでしたが)、会社法の条文や制度趣旨だけでなく、これからの「会社法のたどる道」に関して、あれこれと考えることができたことでしょうか。

ここのところの中央青山監査法人に対する金融庁の行政処分や、それに続く実務界の混乱ぶりをみておりますと、どうも自民党の政務調査会、金融調査会、法務部会の合同小委員会が提言した内容のとおりに、会社法制が動いているような気がします。気になる提言といいますのは、平成17年10月21日にだされました「わが国の企業統治、会計監査制度等のさらなる強化に向けて」と平成16年12月17日に出されました「最近の資本市場、コーポレートガバナンスの諸問題に関する中間論点整理」のふたつであります。(塩崎センセイのHPからの引用になっておりますが他意はございません。ただ、ほかのところから引用できなかっただけであります。塩崎センセイは大阪の若手経営者育成に尽力されておられまして、これからも竹島問題などでバンバン頑張っていただきたいと思っております。ただ当時の小委員会委員長という立場ですんで、自らのHPで提言内容を公開されていらっしゃるんだと思います)

これらの提言によって、実際に会社法の要綱試案にもなかった内部統制システム構築(取締役等の職務の執行の適正を確保するための体制整備事項の決定)に関する規程が会社法に盛り込まれたことは有名な話でありますが、それ以外にも会計監査人の独立性確保に関する公認会計士協会の自主規制や、有価証券報告書への虚偽記載の厳罰化(これは改正証券取引法)、監査の品質管理の重要性を第一に考えた「監査法人の内部統制の不備を理由とした」金融庁の業務停止処分、監査法人の内部統制状況の監査役への報告義務(会社計算規則)、そして社外監査役の属性、とりわけ「財政または会計に関する知見の有無」の事業報告書における開示など、数え上げるときりがないほどに、会社法の実務への運用方針に多大な影響を与えているのは間違いないと思います。さらに、まだ導入はされておりませんが、会計監査人に「不正発見義務」を負担させる旨の提言がなされており、その適用の前提としての監査法人自身への刑罰の適用問題と、このたびの厳罰化(行政処分という意味ではありますが)といった現実が、まさに「会計士さんたちの倫理の法制化」へと向かう道の途上にあることを物語っているように思えてなりません。もちろん、そういった誠実義務が課されるぶん、会計士監査の報酬の適正化も盛り込まれております。

そして、これらの提言内容をみて、一番驚くのは「会社法」から「公開会社法」を分離して、これまでの商法ではなく、証券取引法を根本とした法律の制定が最終目標のように提言されております。先日、商事法務のコラム「スクランブル」をこのブログでも取り上げまして、スクランブルの筆者の方は、証券取引法の改正によって、実はこれまでの会社法の基本方針として規程されていた諸制度が変容されていくのではないか、との危惧を抱いておられ、私も同じようなことを考えておりました。そうなってきますと、今後の会社情報の一般投資家への開示はさらに重要性を増してゆき、提言にあるとおり、監査役と会計監査人との連携、強調の必要性が増すために、提言どおり「監査役には財政、会計等の専門的知見を有するもののみ就任できる」といった結論に至るような気がいたします。

昨日の私の講演でも同業者の方々に申し上げましたが、果たしてこういった新会社法の目指す方向を、われわれ法曹がどう考えたらよいのか。株式を公開している会社の「法の支配」はいったいどのように考えるべきなのか。どこで法の支配を貫けばよいのか。日々の業務に追われて、会社法の解釈ばかりに目を向けておりますと、まだまだ会社法そのものがどこかへ動き出していく、その胎動を見過ごしてしまわないものか、講演の準備などをしておりまして、懸念するところが大きくなってきました。この「公開会社法への道しるべ」シリーズ、これからも折に触れて書き連ねていきたいと思っております。

5月 12, 2006 「公開会社法」への道しるべ | | トラックバック (0)