(4日夕方 追記あり)
帝国データバンクのまとめによりますと、行政処分を受けたり、粉飾決算をするなど、コンプライアンス違反が確認された負債額1億円以上の法的整理は、2006年度には102社にのぼり、前年比で37.8%も増加しているそうであります。あまり詳細な引用は避けますが、今週号の日経ビジネス誌では「ルールなき『事後規制社会』」特集ということで、行政処分を受けたことで企業が大きく信用を失うことの功罪と、場当たり的な行政処分を達観できる企業作りを目指すことへの提案が示されており、コンプライアンス経営に関する関心を持つ方にはお勧めの記事であります。(先の帝国データバンクの数字も、また本日のエントリーのタイトルも今週号の日経ビジネス特集記事より引用)実は同じような問題意識につきましては、私自身も昨年5月16日に行政法専門弁護士待望論というエントリーのなかでも少しばかり示しておりました。事前規制から事後規制の社会へ、という時代の流れのなかで、企業には自由を確保することと引き換えに自律的行動が求められるわけでして、ルール違反があれば事後的に厳しいペナルティが課せられるのも当然のこと(自己責任原則)と考える傾向が強まりつつあると思われます。
行政処分を受けることでマスコミからも標的にされ、事件の内容が一般消費者の脳裏にこびりつく前に、たとえ行政処分に不満はあったとしても、役員一同で謝罪をして、マスコミの騒ぎを一回ポッキリで済ませてしまおう・・・・・。この「一回ポッキリで済ます」ことができるかどうかも、結構企業におけるクライシスマネジメントとしては重要なところでありますので、こういった企業の対応もけっして「弱腰」と決め付けることはできないところであります。しかしながら、社会からどのように非難されようとも、自分たちの言い分が正しいと思うのでありましたら、企業の名誉にかけて、断固行政処分の不適切であることを主張し、戦う姿勢を持つことも企業コンプライアンス経営の一方法であると考えます。ただし、その場合には、行政と互角に渡り合えるような有能な「行政専門弁護士」が不可欠である・・・というのが私見であります。(税務訴訟の分野では、著名な弁護士の方々もいらっしゃいますが、税務以外の行政分野となりますと、行政書士さん方の独壇場でありまして、風営法等の警察行政も含めて、なかなかいらっしゃらないのではないでしょうか?)
この日経ビジネス誌の特集記事のなかで、すこしだけ気になりましたのは、フルキャスト社の全営業所における業務停止1ヶ月(神戸市内の営業所は2ヶ月)という処分が、ほかの具体的な前例などと比較すると理由もわからず重い処分であり、なぜフルキャスト社だけ重いのか、その説明もほとんどないのは不合理ではないか?との認識が書かれております。(もともと今回フルキャスト社が労働者派遣業法違反と指摘されている港湾運送業務といったものも、どこまでが普通の検品作業であり、どこからが港湾運送作業となるのか等、かなり曖昧な部分も残るところでありますが、本日はそのあたりまでは論及しません)たしかに、私自身も行政処分については平等原則、比例原則、ディープロセス原則といったあたりは重要だと思いますし、納得できなければ、争うべきものと思います。ただし、行政処分というものの性質を考えた場合、比較すべき材料はたくさんあって、他の面からみれば行政処分に差があっても不合理とはいえない、といった最終判断が下される可能性もありますので、留意する必要があると考えます。
たとえば労働者派遣業法違反を例にして考えましても、同じ違反行為であっても、それがどれだけ労働者を過酷な状況にしていたか、被害者たる労働者たちは、実際にどれだけの被害を受けていたかといった被害状況の差や、同様の行動が繰り返されていたのかどうか、実際の行政処分発令までの間に、未然防止のためにどれだけコンプライアンス体制を構築したか、問題とされる事実関係を企業自身が自社独自で十分調査できたか、最終責任者を特定して、しかるべき対処をしたか、といった状況によって、客観的には同じようにみえる他の事例とは行政処分に軽重が出てもおかしくないと思われます。この日経ビジネス誌のフルキャストの事例を読みましても、こういった部分においても同じだったのか、差があったのかは不明であります。最近でこそ、課徴金賦課のように、ペナルティを主目的とした行政処分が発令されるようにはなりましたが、もともと行政処分は行政目的を達成するための手段、つまり先の例でいえば、労働者の生命身体および財産の安全を守るために発令するためのものでありますので、客観的な事実における前例と今回の対象行為が同様に見える場合でありましても、その代表者の属性とか、違反行為の累犯性とか、再犯防止のための反省や行動などによって、事業停止期間や免許取消など、必要な対応は千差万別であってもとくに不合理とはいえない世界ではないでしょうか。これを「行政の恣意性」と捉えるか、「行政目的を達成するための柔軟性」と捉えるかは紙一重であります。
この紙一重のところを、できるだけ明確に行政に説明責任を尽くさせることこそ、行政に精通した弁護士に期待されるところであり、私が行政専門弁護士を待望するところであります。(ただし金銭的にはあまり儲かる分野ではないかもしれません。(^^;;)今後の金融行政におきましても、同様の問題点が大きくとりあげられるときが近い将来に到来すると思ったりもしております。
(追記)
こういった行政関連の話題となりますと、普段お越しいただいていない方も合わせて、たくさんのアクセスをいただきました。(ありがとうございます)そういえば、以前「耐震偽装」に関する話題のときにイーホームズ社のコンプライアンスを採り上げましたが、事前規制から事後規制へ、といった流れのなかで、これまでは行政権限だったものが民間委託されるケースが増えておりますので、こういった民間に委託された処分行為といったものをどう扱うべきか・・・というのも「新しい論点」になってくるように思います。また、別の機会にでも検討してみたいと思っております。