2012年1月16日 (月)

経営者のリスク感覚と「通訳者」の必要性

当ブログでも5年半前に盛り上がりました「阪神電鉄VS村上ファンド」の一件でありますが、先週1月12日の朝日「法と経済のジャーナル」の特集記事「元住銀副頭取が語る阪神VS村上ファンド攻防の秘話(その1)」は誠におもしろい内容です。村上氏が、NPO団体の活動に参加し、「炊き出し」など東日本大震災のボランティア活動をしている・・・という話しも新鮮ですが、なによりも当時阪神電鉄の社外取締役であった玉井英二氏によって村上ファンドが47,5%の阪神株式を保有するに至るまでを詳細に語られている攻防秘話は、とても興味深いものであります。住友銀行の元副頭取である玉井氏といえば、その後、不祥事問題で騒がれた赤福社の取締役に就任したことでも有名な方です。

玉井氏の語る阪神電鉄首脳部の村上氏への対応は、おそらく「どこの会社でも大なり小なりあてはまる」(玉井氏)ものであり、玉井氏が「たいへんですぞ」と申し向けても、首脳陣には買収リスクというものがほとんど実感されず、30%を超えるほどに村上氏から株を買い占められた頃になって、初めて「えらいこっちゃ」ということで右往左往することになります。この阪神電鉄の取締役の方々と村上氏との対面の場面も詳細に記されておりますが、私はこの部分を読み「なるほど、IFRS(国際財務報告基準)を経営者が理解する、ということは、こういう場面があるから必要なのか・・・」と合点がいきました。

企業買収リスクやIFRSだけでなく、反社会的勢力対応やBCP(事業継続計画)、システム障害や個人情報管理など、専門家の方々が「これは現場担当者が理解しているだけで済む問題ではなく、経営判断マターですよ」とおっしゃるわりには、どうも経営陣と温度差が激しい課題というものがあるように感じます。金曜日(1月13日)にも、私は日本内部監査協会で講演をさせていただき、そのあと懇親会で多くの内部監査室の方と意見交換をさせていただきましたが、内部監査や監査役監査の重要性を実務担当者は理解されていても、業務の有効性・効率性のために重要であることがどれほど経営執行部に理解されているか心許ない・・・との意見が多数聞かれました。

普通は、「みずほ銀行さんがシステム統合に2500億円をかけて取り組む」との報道(1月7日付日経新聞ニュース)にあったように、自社が痛い目に合わないと、なかなか経営判断にまでは至らないケースが多いのではないでしょうか。経営トップにとりまして、業績がなかなか向上しない状況のなかで、リスク管理に真摯に取り組むインセンティブはなかなか見いだせないかもしれません。ただ、内部監査や会計監査、監査役監査の重要性については、このたびのオリンパス事件や大王製紙事件が、いわば「通訳」の役割を果たしたものと思います。毎日の新聞報道等から、「うちの会社のガバナンスは大丈夫だろうか」と冷静に考えた役員の方々も多いと思います。

IFRS対応にしても、反社会勢力対応にしても、専門家の間では議論の深化が進み、たとえば専門家同士、もしくは専門家と実務担当者での議論はなるほど、高度なものになりつつあるように思います。しかし、そこで専門性が高まれば高まるほど、経営者の意識とかい離が生じ、課題への対応の必要性が認識されず、また認識されたとしても、取り組みは実務担当者任せ、という結果に終わるようです。村上ファンドは10%の阪神電鉄株式を取得した時点で玉井氏に連絡をとってきました。「えらいこっちゃ」の予兆が玉井氏から経営トップに情報伝達されるのですが、これに経営トップは全く反応しませんでした。リスク管理は実務担当者任せ・・・という事態では、おそらく経営トップはこれと全く同じ状況になってしまうのではないかと。

監査の重要性では、オリンパス事件等の突発事故が「通訳」となりましたが、IFRS導入やリスク管理の機運が盛り上がるためには、こういった専門家や実務担当者と経営トップのコミュニケーションを図る「通訳の立場の人たち」が必要になるのではないか・・・と最近、考えております。そこでは専門領域の異なる人たちが集合して、統合的な知識が必要となる場合もあるでしょうし、また「俺はこの分野ではこんなに高いスキルを持っていて、業界をリードしてるんだぞ!」といった意識を捨てて、一般の経営者の方々が、自己責任によってリスク評価が下せる程度にわかりやすい説明が求められる場合もあるでしょう。また、そういった通訳の方々の話を聞き、不要不急なコンサルティングを理解することにも役立つのかもしれません。きっと専門領域に生きる人たち(専門性を追求したい方々)には「おもしろくない仕事」かもしれませんが、でも誰かがそれをやらなければ、上記に示したような課題が経営判断と認識されることは「法の強制でもないかぎり」は非常にむずかしいのではないか、と思う次第であります。

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2011年6月10日 (金)

インサイダー取引規制の現状とその最新論点(大証セミナー)

「管理部門はつらいよシリーズ」をアップしておりましたので、すっかり出遅れてしまった感のある村上ファンド、インサイダー刑事事件最高裁判決でありますが、村上氏らによる上告が棄却されたそうであります。日経新聞の6月8日朝刊には有識者の方々のコメントがたくさん掲載されておりました。①立法の不備を解釈で補った日本商事事件判決、②インサイダー規制を「効率的な価格形成や取引倫理というよりも、一般投資家が市場から去らないために、不公平な取引を規制する趣旨」とみて、その趣旨に合致した解釈指針を展開した日本織物加工事件判決の流れからするならば、今回の最高裁判決の内容はごくごく当然のことと思われます。「実現可能性」が構成要件の内容になってしまったら、おそらく今度は故意犯(規範的構成要件事実)の解釈が大問題となってしまって、金商法を含めた全法律体系にゆがみが生じてしまうことになるのでは・・・と考えておりましたので、至極穏当な解釈に落ち着いたものと考えております。

いずれにしましても、有識者の方々が、「今後はインサイダー取引規制が厳格化する可能性が高く、企業としても情報管理を徹底する必要がある」と指摘されておられます。私も同感でありますが、こんなときにタイミングよく、7月11日(月)のインサイダーセミナー(大証、大阪弁護士会共催)のお知らせでございます。大証のホームページにて広報されておりますとおり、原先生(北浜法律事務所)、小西氏(大証上場管理グループリーダー)の講演とともに、今回は宇澤先生(宇澤公認会計士事務所)を交えてのインサイダー取引規制の現状とその最新論点と題するシンポを開催することとなりました。3月のセミナーとは異なり、今回は大証JASDAQ上場企業の役職員の皆様向けのセミナーでありますので、多数ご参加いただければ幸いです。

以前ご紹介いたしましたとおり、宇澤先生(公認会計士)は、約12年間にわたり、財務捜査官として警視庁、証券取引等監視委員会で犯則事件の摘発に従事されてきた方でして、インサイダー事件、粉飾決算事件の立件に関わってこられた方であります。最近ではあのエフオーアイ、プロデュース等の粉飾決算事件の立件にも関与され、また私も事件の代理人として関与しておりましたアイ・エックス・アイ事件の立件も手掛けられた方です。もちろんインサイダー事件も間近で見ておられたので、摘発する側からみたインサイダー事件の現状と課題について、いろいろと語っていただこうと思っております。小西さんを交えて、取引所審査と行政当局の特別調査との連携などについても実務的なところをお話いただければ、と。また、原先生には個人犯罪にすぎないインサイダー規制につきまして、なぜ最近は企業の内部統制構築の問題としてとらえられるようになったのか、企業のリスクという視点からわかりやすく解説していただきたいと考えております。

モデレーターは不肖私ですが、関係者の方々に、守秘義務スレスレの濃いお話(ただし個別案件にわたるお話は無理ですが・・・)をしていただくよう尽力いたしますので、どうか皆様(お時間の都合がつきましたら)7月11日午後2時から5時まで、大阪弁護士会館2階ホールにお越しいただきますよう、お願い申し上げます<m(__)m>

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2009年2月 8日 (日)

村上ファンド事件控訴審判決からインサイダー防止体制を考える(2)

「村上ファンド事件控訴審判決からインサイダー防止体制を考える」のエントリーにつきましては、関沢洋一さんやJFKさんより有益なコメントを頂戴いたしました。また、関沢先生がご紹介された東大の藤田先生の内部者取引規制(フィナンシャルレビュー1999年3月)についても一読させていただきました。(いろいろとご示唆いただき、ありがとうございました。また一夜をかけて関連判例、文献等をお読みいただき、コメントいただいたことについて感謝申し上げます>JFKさん)上記エントリーにおきましては、私自身は素朴な疑問を述べたまでですし、ぜひともコメント欄をご参照いただければ幸いです。

村上ファンドの裁判における最大の鍵は、平成10年の最高裁判例(日本織物加工事件)をどう解釈するかにあると思います。私は、この判例は証券取引法第166条第1項に関する判例であって、同法第167条第3項には適用されないと考えています。(関沢先生のコメントより)

日本織物加工事件最高裁判決(平成11年6月10日 資料版商事法務183号52頁)は、行為者が、いわゆる証券取引法(金融商品取引法)166条1項4号「履行に関して知ったとき」に該当する「会社関係者等」に該当する事案ですね。ところが、166条3項や167条3項で処罰対象とされる行為者は「情報受領者」、つまり「会社関係者等」から第一次的に「重要事実」を受領した者ということになり、禁止行為の対象者が異なることになります。実務家の立場からみて、この関沢先生のご指摘は重要ではないかと思います。村上ファンド事件は被告人側より上告受理申立が行われたそうでありますが、先例的価値の高い上記平成11年の最高裁判決が、本事件にも妥当するのかどうか、という点は、最高裁が(どのような結論になるとしても)あらためて争点に関する判断をするかどうかの大きな分岐点になるように思われます。そこで、関沢先生はインサイダー取引規制の趣旨については主として情報を入手した会社関係者の信認義務違背を糾弾することにあり、そういった信認義務が認められない「情報受領者」の可罰性については「従たる目的として有価証券売買の公平性確保」と捉えることになるようであります。ここから「重要事実(公開買付事実)の決定」の意味も日本織物加工事件最高裁判決の事例とは別異に解してよい、といった理屈になるものと思われます。以下のコメントにつき、私はそのように理解いたしました。

平成10年の日本の最高裁判例において、株式取得の準備行為段階であっても「決定」があったという一見無理な解釈をしているのは、アメリカ的な考え方に基づいて、背信行為を行った者(この事例の場合は顧問弁護士)を罰しようとする意図があったと考えられます。証券取引法第166条第1項による処罰の目的が証券市場の公平さの確保のみならず、背信行為の取締りも含んでいるという立場に立てば、証券市場の公平さの確保に対する懸念が現実化しない場合であっても、背信行為があれば当罰性は存在するため、「決定」についての解釈は柔軟にすることが可能になります。
 これに対して、第167条第3項の場合には、処罰の対象となっている者はこのような信任義務を負っている者ではありません。加えて、日本の証券取引法においては、情報を伝達した者については、信任義務違反があっても、罰則が適用されません。従って、証券取引法第167条第3項においては、第166条第1項とは異なって、背信行為の取締りが法目的であると解釈することはできず、証券市場の公平さの確保のみが法目的と解釈せざるを得ないため、証券市場の公平さが実際に損なわれる段階に至ったかどうかが、インサイダー取引が成立するか否かを区別する基準となると考えられます。。(関沢先生のコメントより)

私がもし村上氏の弁護人たる立場であれば、こういった理屈をもって、とりあえず上告受理申立の理由を記述するかもしれません。ただ、こういった控訴審判決をもって一般企業のインサイダー防止体制を検討する立場であれば、やはり若干の疑問が生じるところであります。まず証券取引法157条(包括条項)1項との関係ですが、インサイダー取引規制条項で刑事処分を課すことに疑問がある場合、果たして不公正取引一般を禁止する157条によってインサイダー取引(らしき行為)を訴追するのでしょうか?197条と197条の2において、罰則の内容はずいぶんと異なりますし、インサイダー取引規制に関する立法経過などをみても、インサイダー取引(らしき行為)については安易に157条は適用しないのではないかと思われます。(このあたりは法条競合か観念的競合か、といった議論もありますが)罪刑法定主義との関係などを考えましても、実務としては「できればインサイダー取引に関する規制はすべて166条、167条によって摘発したい」というのが捜査の考え方かもしれませんし、また裁判所においても同様の考え方に立つのではないか、という推測を抱くところであります。つまり裁判所としてはなるべく166条、167条の条文解釈、適用除外、軽微基準をもって柔軟に対応する方向で検討するのではないか、といったところです。つぎに課徴金処分に関する金融商品取引法175条と166条、167条との関係についてであります。実際のところ、当該インサイダー取引が悪質であるか、それほどでもないか、という基準によって犯則処分とするか行政処分とするかを判断しているのが実務の流れでありますが、現行の課徴金処分の制度趣旨(不当利得返還)と、信認義務違背なる「倫理的規範に反する」という概念との整合性に若干の違和感を覚えるところであります。こういった実務の流れを前提としますと、裁判所においても、日本織物加工事件の最高裁判決の考え方を、そのまま「情報受領者」事案においても踏襲する可能性が高いのではないか、と思いますが、いかがなものでしょうか。

この事件を見るとき、「実現可能性」という言葉にとらわれるべきでないと感じました。被告人は単に情報を聞いちゃった者ではなく積極的に打合せを重ねるなど実現可能性すら左右しえたように読めます。
また、当時のLD社の経営判断を取締役会による機関決定に求めるのも妥当でなく、実質的な経営判断はむしろ堀江氏を中心とした幹部の意思決定、ミーティング、対外的な会議の中でなされることもあったとみるべきです。この点にはH11判決が妥当すると考えます。
それに加えて、単なる情報受領者でなく実現可能性をも左右しえた等、事案の特殊性も踏まえて判断したのではないでしょうか。。(JFKさんのコメントより)

ご指摘のとおりかと思います。本件の特色は、村上氏が単に「情報受領者」ではなく、積極的にライブドア側に働きかけたからこそ、「聞いちゃった」場面となってしまったわけでして(あくまでも事実認定のレベルですが)、そのあたりをどのように評価するか、という点は裁判所の判断内容を子細に検討してみる必要があると思います。

ただ、JFKさんが

私は166条も167条も一貫して「投資判断への重要な影響」が基準だと思います(最判H11・6・10は166条の決定の解釈に背信者処罰の要請を持ち込んではいない)。

とおっしゃっておられる点につきましては、ちょっと素朴な疑問が湧いてくるところであります。そもそも166条2項では「決定事実」として、その列挙事由に該当するからこそ「投資者の投資判断へ著しい影響を及ぼすもの」と評価されるわけですよね。(166条2項4号参照)つまり企業にはいろいろな決定事項があるわけですが、そこに列挙事由とされている「決定」が行われたからこそ「投資判断に著しい影響を及ぼす」ものと、法は規定しているはずであります。ではその「決定」があったかどうか、という評価(解釈)のレベルにおいて「投資判断に著しい影響を及ぼすかどうか」という基準をもってくるのは、ちょっと論理的に苦しいところではないでしょうか。それとも法文上の「投資判断に著しい影響を及ぼすもの」と、「投資判断への重要な影響」とは異なるものなのでしょうかね?私自身は、やはり「決定」なる文言が法文上で使用されている以上は、たとえそれだけが要素ではなくても、「実現可能性」を理屈のうえでは不可欠な要素として検討するべきではないかと思うのでありますが、いかがなものでしょうか。(誤解がございましたら、またご指摘ください)

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2009年2月 5日 (木)

村上ファンド事件控訴審判決からインサイダー防止体制を考える

すでに新聞報道でご承知のとおり、村上被告(および法人たるMACアセットマネジメント)の証券取引法違反被告事件につき、東京高裁は(村上被告に対しては)原審の有罪実刑判決を破棄して、執行猶予付きの判決を出したそうであります。2月4日の読売新聞朝刊には、高裁判決要旨が掲載されておりましたので、以下はあくまでも判決要旨を読んだかぎりでの感想ということでご了解ください。(判決全文にアクセスできた場合、また少しばかり見解が変わるかもしれません)

村上氏自身に(課徴金ではなく)刑事罰としての証券取引法(現金融商品取引法)167条による犯罪が成立するためには、その構成要件としての①上場株式等の、②公開買付等事実を知った(情報の伝達と受領)、③公開買付者等関係者等が、④その公表前に、⑤株券等の買付等を行ったこと、および上記構成要件事実に関する認識(主観的要件たる故意の存在)が必要であります。また、上記②の「公開買付等事実」とは、公開買付者が法人である場合、その業務執行を決定する機関が、公開買付等を行うことについての決定をしたこととされております(証券取引法167条2項)。そして地裁、高裁を通じて争点とされていたのが、村上氏がライブドアと交渉していた当時、この「公開買付等を行うことについての決定」があったのかどうか、ということであり、地裁判決は平成16年9月15日の時点において、堀江氏や宮内氏がライブドア社員に、ニッポン放送株式取得に向けての具体的な指示を出していたことをもって「決定」があったとしておりました。しかしながら、高裁判決では、この「決定」があったといえるためには、大量の株券買い集め行為が主観的にも客観的にもそれ相応の根拠を持って、そのような実現可能性があると認められることが必要である、とされており、具体的には平成16年11月8日のライブドア首脳と村上氏との会談の時点ではじめて、この「決定」が認められる、とされているようであります。この点、原審が「実現可能性が全くない場合は除かれるが、あれば足り、その高低は問題にならない」としていたのとはかなり裁判所の意見内容に差がみられます。今朝の日経新聞に掲載されておりました著名な法律学者の方々のご意見も分かれておりましたが、この「決定」に関する原審の解釈については、多くの学者や実務家によってかなり批判の的になっておりましたので、この高裁判断についてはおおむね妥当な基準を示したものではないか、と歓迎される向きも多いのではないでしょうか。

ただ、私が疑問に思うところでありますが、このように「決定」の内容を(すくなくとも)原審よりも限定的(客観的)に捉えるということになりますと、犯罪成立要件たる故意との関係はどうなるのでしょうか?この点は、とりわけ証券取引法166条、167条いずれにおいても「情報受領者」のケースでは問題にならないのでしょうか?とりあえず、証券取引法167条の犯罪が成立するための故意としては、公開買付等事実を知って、ということでありますから、「ひょっとして公開買付を行うことについての決定があったかもしれない」といったいわゆる未必の故意が行為者に認定される必要があります。原審のように「決定」に関する概念を「実現可能性があれば足り、その高低は問題にならない」と捉えるのであれば、この「未必の故意」とは親和性が高く、構成要件該当性と主観的要件との整合性にぶれが生じないと思います。しかしながら、構成要件該当性としての「決定」の存否については主観的にも客観的にもそれ相応の根拠を持って、実現可能性があると認められることが必要だとするならば、たとえば公開買付者側の主観的側面に重きをおいて「決定」が認められるケースでは、その判断根拠となる証拠等が、行為者の未必の故意を認定する証拠には使えないケースも出てくるのではないでしょうか。また、客観的な側面に重きをおいて「決定」が認められるケースにおいても、理屈のうえでは、その客観的な側面については、公開買付者と行為者との間で共有されていたのかどうかを認定する必要があるのではないでしょうか。「重要事実の決定」に該当するかどうか、といった「あてはめの錯誤」については故意が阻却されることはありませんが、「重要事実の決定」と評価するための根拠事実(生の事実)について、その解釈にあまり複雑なファクターを持ち込みますと、結局のところ行為者の目からは見えないような事実や主観的要素を盛り込んで判断することになる可能性は否めないと思いますし、そうなりますと、犯罪成立要件としてのインサイダー行為者の「未必の故意」が認定できない事態になるのではないかと考えられますし、そのように考えても、市場取引者間における不公平感の是正というインサイダー取引防止のための制度趣旨を損なうことにもならないと思うのでありますが、いかがなものでしょうか。現に、この高裁判決においては、理屈の問題ではありませんが、情状理由として「被告は当初からインサイダー取引を利用して、利益を得ようとしたものではなかったことや、当初は被告の得た情報がいわゆるインサイダー情報に該当するとの認識自体も強いものではなかったことなどは、十分に考慮すべきものと思われる」とされております。村上氏側の弁護人は原審、控訴審を通じて「村上氏には実現可能性に関する認識はなかった」と主張されていたそうであり、これはおそらく構成要件該当性との関連性で主張されてきたものだと推測いたしますが、この主張は村上氏の主観的要件との関係ではどのように位置づけられるのか、ちょっと私のなかでは整理がついていないところであります。

なお、判決要旨を読みますと、高裁判決は、平成16年11月8日の堀江氏らとの会議において「ニッポン放送株の3分の1獲得を目指す決定をしたと言うべきである」として、検察側主張のとおり「3分の1以上の株式取得に関する決定」を認定しているようであります。これは、原審が「すくなくとも5%以上の株式を取得するための決定」と認定したことと対比されるべき点であります。また、「公開買付を行うことについての決定」という解釈として、「ついての決定」を重視すれば、原審のような「社員に対する調査のための具体的な指示」なども重要な根拠事実に含まれる可能性がありますが、高裁判決では「たとえ調査を開始することになっても、いまだに大量買い集めの可能性の検討の端緒にとどまるというべきで『決定』があったとは認めることはできない」として、初期における調査行為などは実現可能性の判断においては重要な要素たりえない、としている点にも注目すべきではないかと考えております。

「インサイダー防止体制を考える」と言いながら、ここまで何も書いておりませんが(すいません・・・)、長くなりましたので続きとさせていただきます。要はこういったインサイダー刑事事件の否認事件の構造を検討するなかで、理屈の問題と量刑事由を振り分けて、行政処分たる課徴金処分の対象となるインサイダー取引を防止するためにはどうすればいいのか、また刑事処分を免れて、行政処分たる課徴金処分で終わらせるためにはどうすればいいのか、そしてチャイニーズウォールを敷いたり、信託を利用することによって、法人に対するインサイダー処分を免れたり、社員を不幸に陥れないためにはどこに留意すればいいのか等を検討するためには、この村上ファンド高裁判決はかなり有意性があると思われますので、そのあたりを次回以降検討してみたいと考えております。ともかく、検察庁(金融庁)サイドとしましては、これほど国民の関心を集めるインサイダー事案において、「執行猶予付き」の判決で終わらせるとなりますと、言葉は悪いですが、「やっぱり刑事事件で立件することは労多く益少なし」として、今後ますます課徴金行政によってインサイダーを取り締まる方向へ傾斜していくことになるものと予想されます。先日のエントリーでも書かせていただいたように「コンプライアンスの官民分担」がうまく機能するようになれば、たとえば「金融庁による違法行為のお墨付き(課徴金処分)」→「日証協による過怠金処分」「証券取引所による違約金処分」→「投資家による民事賠償責任の追及」「株主代表訴訟」→「社会的評価の急落」といった流れにおいて、法人や代表者が刑事罰を受けること以上の抑止効果を得ることができるのではないか(またそのほうが早いし簡単だし)、といった考え方が成り立つように思われます。また、インサイダー取引規制が初めて導入された昭和63年に一度検討されていた「インサイダー取引規制違反に対する他の投資家からの損害賠償制度」も真剣に検討されるかもしれませんね。課徴金処分とは別に「刑事罰」の抑止的効果が「最後の砦」として残るものかどうか、検察庁による上告次第ではありますが、注目しておきたいところであります。

PS ところで話は変わりますが、貴乃花親方の新潮社に対する名誉棄損損害賠償事件の判決が出ていますが(読売新聞ニュースはこちら)、これって内部統制構築義務違反が問題になっているみたいですね。(代表者の重過失が認定されているようです。事件は2005年頃の事案ですが)判決全文を読んでみたいですね。

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2007年7月20日 (金)

村上ファンド、東京地裁決定の影響度(1)

すでにご承知のとおり、東京地裁で村上ファンドの元代表村上氏に対する実刑2年追徴金11億という有罪判決が出ております。基本的な構成要件を整理しますと、

証券取引法167条「公開買付者等関係者等のインサイダー取引規制」が問題

公開買付者等関係者等←①公開買付者等には、議決権数ベースで5%以上の株式の買い集め行為者も含む②「関係者等」には、関係者から情報の伝達を受けた者も含む(以上、証券取引法167条3項、および施行令31条参照)

公開買付等事実の発生後、公表前に(売却、買付の時期的制限) ←つまり、この時期にインサイダー取引の故意が認められなければならない

当該公開買付等事実を←公開買付等(ここでは買い集め行為)事実とは?←①業務執行を決定する機関が②買い集め行為実現への決定行為にいたること

「知りながら」 ←決定行為の実現可能性を認識していなければ故意があるとは認められない(なお、実現可能性は「決定があった」という事実認定にも影響している模様)

現実に、有価証券の売買、買付を行い、その後当該公開買付等事実が公表されたこと。ただし、買い集め行為者の要請を受けて、応援買いをする者については適用除外とする。

と、いったところでしょうか。(間違いがございましたら、ご指摘ください)

そこでまず「公開買付者等関係者等」につきましては、村上氏が「伝達を受けたか」どうかが問題となります。それから実行行為時に故意が認められる必要がありますが、逮捕事実によりますと、平成16年11月9日から翌17年1月26日にかけての約193万株の買い付け行為が実行行為ですから、すくなくとも11月8日までに村上氏に実行行為の故意が認められる必要があります。したがいまして上記のとおり、決定行為に関する実現可能性を、この11月8日までに村上氏が認識していなければ故意が認められませんので、 「執行機関による決定」の有無と、その実現可能性の有無、そしてそれらの時期が判断される必要がありそうです。私的な整理ではありますが、このように理解すると、新聞報道なども頭に入りやすくなるのではないでしょうか。

先日のブルドック・スティール事件のように、地裁と高裁でかなり構成が異なる裁判の結果となる可能性もありますので、現段階での地裁判決への感想でありますが、上記のような各論点への地裁の対応が、すべて「村上ファンドは存在そのものがインサイダーである」という特殊な見方から帰結されているように思えますので、私はこの地裁判決は、今後の企業実務にとりまして、(後記の点を除けば)それほど大きな影響を与えるものではない、といった印象をもっております。たとえば、買い集め行為決定の時期や、その実現可能性の有無、また「伝達を受けたかどうか」につきましては、それまでの村上ファンドのライブドアへの働きかけや、実際の資金運用力の大きさ、そしてなによりもファンドとしての組織的欠陥(監査役からアクティビスト活動部門と、投資顧問業部門を分離するように、強く勧められていたにもかかわらず、なんらの措置もとらなかったようです)が大きく事実認定に影響を及ぼしているようですし、まさに判決に出てくるように「本件は偶発的な犯行ではなく、必然的なもの」が前提となっているからであります。(もちろん、事実の当てはめ方が罪刑法定主義の見地から適切かどうか、といった問題は別途ありますが、ここでは事案の特殊性を裁判所が強調したかったのではないか、といったところに焦点をあてております)感覚的な物言いで恐縮ではありますが、先日のブルドック高裁決定が突然「濫用的買収者だ」と認定したかのごとく、本件地裁判決でも、「あなた自身が自らインサイダー状況を作り出している」と言われて、困惑している、といったところではないでしょうか。なお、当初気になっておりました「応援買い」や「共同買付者」に該当するのではないか、といった論点につきましては、公判前整理手続きの中身がわかりませんので、推測にすぎませんが、ライブドアとフジテレビを天秤にかけて、自己の利得のみを考えていたとの事実や、そもそもの要請があったかどうか、といったところでのライブドア側からの供述が得られなかったことなどから、論点としては採用されなかったのかもしれません。

と、いいましても、この裁判が指摘している「村上ファンドの組織上の構造的欠陥」というものはやはり気になるところでありまして、今後のファンドや証券会社などにおける活動への影響といったところも無視できないように思えます。また、このたびの刑事事件でも、やはりメールの証拠価値といったものが明確になったようですので、またそのあたり続編ということで書かせていただきます。

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2006年11月14日 (火)

インサイダー規制とコンプライアンス

先のエントリーでも少し触れましたとおり、先週土曜日に郷原教授の関西講演会に参加させていただいたのですが、そのお土産に季刊誌「コーポレート・コンプライアンス」のバックナンバーから最新号までいっぱい頂戴してきました。最新号の第8号では「証券取引法から金融商品取引法へ」というテーマが特集になっておりまして、そのなかで郷原信郎教授の「村上ファンド事件を通して考える金融商品取引法(証券取引法)」なる講演録が掲載されております。(関西講演のなかでも、この話題について解説しておられました。講演内容をあまり詳細に紹介するのはマズイかなぁと思っておりましたが、こうやって文書で公開されておられるようですので大丈夫のようですね)

この村上ファンドのインサイダー疑惑が毎日のように報道されている頃から、郷原教授は村上氏の一連の行動についてはインサイダー規制に関する構成要件(証券取引法166条)を適用するのではなく、むしろ証券取引法上のバスケット条項である157条1項で規制(捜査、公判維持)すべきである、といったスタンスで新聞に意見を述べておられました。

第157条  何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
一  有価証券の売買その他の取引又は有価証券指数等先物取引等、有価証券オプション取引等、外国市場証券先物取引等若しくは有価証券店頭デリバティブ取引等について、不正の手段、計画又は技巧をすること。

今回の村上氏の行動をインサイダー取引に関する166条で網をかぶせようとしている捜査手法への意見として、郷原教授は「重要事実の決定の時期」に関する構成要件該当性に疑問を投げかけておられ、これはかなり説得的な内容であります(詳しいところをお知りになりたい方は、前記コーポレート・コンプライアンス第8号をご覧ください)ただし、だからといって村上氏の行動が刑事処罰の対象とならない、というのではなく、堀江氏をそそのかして高値でニッポン放送株を売り抜けた行動全体を捉えて、先の157条1項を適用すべし、というものであります。ただ、私のような一般の刑事弁護の経験が長い弁護士からしますと、構成要件があいまいなうえに、被告人の故意を間接事実のみから立証しなければならない経済犯罪としては、157条1項を適用するのはかなり公判維持がキビシイのではないか、と思われますし、もっと端的に166条を維持しようとする捜査機関の真意はほかにあるのではないか(つまり村上氏を157条1項で有罪にしてもおもしろくない理由がある)と考えております。

「虚偽の風説・偽計取引」と「インサイダー規制」の2点セットの有用性

ライブドア刑事事件では「虚偽風説、偽計取引」で立件し、村上ファンド事件では「インサイダー規制」で立件して、いずれも有罪に持ち込むことができるとしますと、取締機関側からすれば(誤解をおそれずに言えば)、証券市場における関係者の行動を「一般的な違法状態」に陥れることが可能になります。つまり「うさんくさいことをやっていると思われる人達」が、原則的には偽計取引やインサイダーなど、基本的には違法なことを恒常的にやっている、という状態にしておくほうが(取り締まる側にすれば)のぞましいわけです。ただし、そういった違法状態すべてを取り締まるわけには(捜査体制には限りがあるでしょうから)いきませんので、投資家に大きな被害をもたらすような企業が出てきたり、市場機能の健全性を大きく損なわせるような行動が目に付く連中を「捜査機関の自由裁量によってピックアップして摘発できる」体制を整えることが本来の目的だと思われます。たとえば、本来の捜査機関の目的が、大型の粉飾決算事件だったり、企業トップの商法違反事件としての立件だとしますと、その前提として比較的立件が容易な証券取引法違反で強制捜査をかけて(つまり別件で身柄を拘束、捜索差押をして)本来の事件の捜査へ持ち込む、とか、たとえそこまでいかなくても、捜査機関に対して挑発的な行動にでる市場参加者をみせしめ的に摘発する、といった手法をとりやすくしたい、というのが本当のところではないでしょうか。もし157条1項で村上氏を有罪に持ち込めても、この157条1項で起訴するためには、かなり大掛かりな捜査をしなければいけませんし、また無罪となるリスクを背負うということになりますと、そういった捜査機関による「立件すべき事件の選択」というに用いることは困難であります。できれば「摘発することで社会的に意義のある事件」をピンポイントに狙って捜査できるほうが、捜査する側からみても効率的なはずです。

捜査機関が「違法状態」を利用できる企業環境

私のように風俗関連企業の顧問弁護士の経験をもつ弁護士(注 いまは他の仕事で忙しくなってしまったんで、やっておりませんが・・・)からしますと、警察行政というのが、まさにこのピンポイント作戦を多用する舞台だと思いますね。たとえばちょっと目立った行動でマスコミや一般顧客に注目される「ファッションヘルス」が登場したとする。すると近隣住民や風俗産業撲滅グループより「なぜ警察は取り締まらないんだ!」と警察がお叱りを受ける。「ハイハイ、わかりました」ということで、行政処分、刑事処分でそのファッションヘルスに圧力をかけ、業務停止60日(実質的には廃業)とする。もともと(全部とは言いませんが)風営法や旅館業法、消防法その他行政法規のどっかにひっかかって、違法状態を抱えつつ営業をしている業界ですから、警察としては、「あれ、オタク裏口の階段の踊り場の面積がすこし足りないよ。じゃあ行政処分ね」「あれ、従業員名簿の形式が警察指定と違うみたいよ。じゃあ行政処分」みたいなところから始まるわけです。ほかのお店も似たり寄ったりであるにもかかわらず、ピンポイントで摘発をして、「ハイ、このとおり社会の害悪を摘み取りました」として一件落着となるわけであります。これは風俗の話とは別ですが、たとえば先日のイーホームズの藤田氏や、木村建設の篠田氏の刑事裁判におきましても、耐震偽装とはまったく別の「見せ金」(電磁的記録不実記載罪)や「粉飾決算」(建築基準法違反)で捜査しておき、最終的には耐震偽装に関する立件をめざす、といった手法も同様であります。明らかな別件による捜査であったものの、検察側はそれぞれの公判において見せ金や粉飾が「耐震偽装事件につながっていった」と論告しておりましたが、裁判所からは見事に「見せ金」や「粉飾」と耐震偽装とは「因果関係がない」と指摘されておりました。「見せ金」や「債権者に信用してもらうための粉飾」が「業界のどこもやっているほどの違法状態に至っている」とまでは申しませんが、なかには内心ドキっとされていた経営者の方もいらっしゃるのは事実であります。

おそらく、「規制緩和」「事前規制から事後規制の社会へ」「小さな政府」といった世の中の流れから考えますと、今後とりわけ証券市場の規制におきましては、こういったピンポイント作戦による市場規制はさかんになるものと思われます。一般企業におきましては、まずこういった「恒常的な違法状態」の網にひっかからないこと、これが企業コンプライアンスの要諦であると考えております。先の郷原教授のご講演における言葉をお借りするとすれば、日本の企業不祥事の特徴は「カビ型」であり、構造的なものだそうであります。会社のため、組織のため、そして業界慣行のため、といった名目のうえで倫理に悖る行動に出るということで、その環境を変えなければ企業不祥事はなくならない、とのこと。そうであるならば、なおいっそう、企業の構造的な違法状態の存否について、全社あげて一掃するくらいの気概を持たねば、ピンポイント作戦には抗えないのではないでしょうか。

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2006年6月 5日 (月)

やっと明らかになった(?)村上ファンド事件

(追記あります)

夜になって、東京地検特捜部の考え方が示されたようで、(毎日ニュース日経ニュース)私もやっと「事件のどこが問題なのか」わかってきました。いままでなんだか「自分だけ蚊帳の外」みたいな気持ちで、とても寂しかったんですけど、これで村上ファンド事件を考える足元が固まったような思いであります。

結局、地検特捜部はお昼の村上氏の会見をみて、「まったくデタラメやないか!」と立腹されたんじゃないでしょうか。そもそも、地検のシナリオは、最初から村上氏がライブドアの経営陣を騙すつもりで「一緒にフジテレビの支配権を握ろう」とそそのかした、というものですね。支配権をライブドアと一緒に握ろうなどとは、これっぽっちも村上氏は考えていなくて、当時保有していたニッポン放送株と「その気になった」ライブドアによって株価が高騰する前に買い集めた株をできるだけ高値で売却して利ざやを稼ぐ気持ちしかなかった、ということをこれから立証するわけです。(おそらく当初からライブドア経営陣を騙すつもりだった、といった客観的証拠を、ライブドア経営陣の供述とともに、村上ファンド側幹部からもすでにとりつけているのではないでしょうか)こういったシナリオであれば、当初から申し上げておりますとおり、「ギブアンドテイク」の論点(村上ファンドはライブドアの経営権奪取を支援する、そのかわり村上ファンドは株の一部を高値でライブドアに引き取ってもらう、ライブドアは支援先である村上ファンドに大量買付の意向を明確に伝える)も外形上はっきりしますし、村上氏に最初からライブドアを騙す意思があったかなかったか、といった主観的要件こそ大きな争点になることも明確になりますので、非常に自然な形になりました。ライブドアの経営陣から「支援してください」という言葉を聞いたことが「インサイダー取引疑惑」だったり、言葉を聞いたあとに支配目的であってもニッポン放送株式を大量に取得したことが「インサイダー取引」に該当する、といった報道が当初されていたようですが、地検のように「支配権目的で大量購入なんてありえない、村上氏は最初から利ざや稼ぎだったから、問題なんだよ」と言っていただきますとホント問題点が整理されたような気持ちであります。(「最初からライブドアを騙して、大量購入して利ざや稼ぎが目的だった」というシナリオを村上氏がすぐに認めるかどうかはわかりませんが。でもこういった点を検察が問題視して立件するのであれば、一般の方々にも論点がわかりやすいですし、証券市場における支配権争奪をめぐる適正な競争行為に対する「国家権力介入による萎縮的効果」はかなり薄らぐことになるのではないでしょうか。「村上氏は普通では考えられないような、こんなひどいことをした、だから市場からの退場を命ぜられたのだ」と理由をつけることが可能になったと思われます)

それにしても、証券取引法上の内部者取引の規制条文の解釈はむずかしいですね。「防戦買い」や「応援買い」の場合には適用せず、といった条文の解釈として、(条文で適用除外事由とされている)防戦買いや応援買いのケースでは構成要件該当性はあるが、これらの事由が違法性阻却事由となるということになるのでしょうか、それとも防戦買いや応援買いに該当する事実がないことが構成要件該当性の有無に影響を与えるのでしょうか。法理論的に考えますと、もし防戦買いに該当する事由が存在しないことが構成要件に該当するのであれば、防戦買い目的を有してこたことは故意不存在と結びつくように思われますが、違法性阻却事由だとしますと、判例通説の立場では「違法性阻却事由に関する錯誤」は故意を阻却しない、とされておりますので、当初から応援目的とか防戦目的だった、といった抗弁はなんら故意の成立には影響を与えないということになりそうです。また、共同で支配権を得る目的だった、といった抗弁はどうなるのでしょうか。敵対的買収目的で、複数の企業が共同で買い集め行為を行うことはまったく正当な行為だと思われますが、そういった場合のルールに影響はでないのでしょうか。

当初の報道では幹部を含めて4名が逮捕される、とのことでしたが、結局のところ村上代表だけ、ということになりました。ファンドの顧客との清算業務のためなのか、警察OBの方がいらっしゃるからなのか、それとも昨日、「逮捕は俺ひとりにしてくれ」ということで、インサイダー取引自体は認めるかわりに、幹部逮捕を免れる「司法取引」があったからなのか、は定かではありませんが。

きょうの村上氏の記者会見で、阪神と京阪が統合されることを勧めた理由を述べていましたが、私がエントリーで書いていた理由とまったく同一だったので、思わずビックリしてしまいました。というよりも、関西の人間はどうみても企業価値(シナジー効果)という点からみたら阪神・京阪統合しかありえないと思うんですよね。。。私はいまでも「阪神・阪急統合」は、単なる「村上ファンドへの敵対的買収防衛策」(阪急HDホワイトナイト説)でしかありえないと確信しています。

いつもご意見を頂戴するkitiomuさんが、自身のエントリーで述べていらっしゃるあたりが、検察が本当に言いたかったことではないかなぁ・・・と。ただ、私はまだ「ステークホルダー」という言葉を裸のまま企業価値論のなかで使うことにためらいを覚えているところなんです。どうも「株主主権」という言葉と同じくらいにわがままを内包しているような気がしまして。いちおう「企業価値」=「株主価値」と定義しておいて、「少数株主の保護」とか「株主権の内在的制約」みたいな考え方で利害調整するほうが穏健かなぁ・・・などと考えてみたりしております。

(追記)なんか、とりとめのない話をしておりますが、もうひとつだけ。インサイダー取引にせよ、虚偽の風説、偽計取引にせよ、おそらく今後の証券取引市場において、構成要件該当性の認められる取引事例はたくさん発生すると思います。企業のリスク管理という面からみて、将来のリーガルリスクの発生予測が可能となるように、「ライブドアはここがいけなかった」とか「村上ファンドは特別にここが悪いから起訴に及んだ」といった差別化(区別化)が可能となるような立件をしていただきたい、と願っております。その理由は、また私自身の経験なども交えながら別エントリーで述べたいと思っております。

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村上氏に違法性の認識はあるか(3)

(6月5日午後 村上氏の記者会見に関する追記あり)

あすくるさんや、47thさんのコメントにおきまして、私の基本的な勉強不足の点をご指摘いただき、どうもありがとうございました。167条の構成要件や166条適用の前提問題など、さらに検討しておきたいと思っております。村上氏の事情聴取に関する報道などを読んでおりましても「5%以上のニッポン放送株式を(ライブドアが)大量取得することは聞いていなかったし、またそんな力のある企業(ライブドアのこと)だとも思っていなかった」と容疑を否認しているとのことですから、やはり167条(公開買付者等関係者等による取引規制)違反ということが問題になっている、とみていいのでしょうか。

では、かりに167条違反が問題になるとすると、(一昨日のエントリーでも述べましたが)村上ファンドが行ったニッポン放送株買付行為のいったいどこが犯罪になるのか、根本的な疑問が湧きませんかね。「一緒にニッポン放送株式を大量に取得しよう」と言って、堀江氏と大量購入の約束(合意)をして、購入をしたことのどこに違法性があるのでしょうか?昨日は応援買いを例に出しましたが、ライブドアの取締役決議との関係で、応援買いには該当しないという場合であっても、共同購入、共同支配ということでも違法なんでしょうか?応援買いがインサイダー取引に該当しないのは、そもそも事前に公開買付者は応援者による株取引を認識しているわけですから公開買付者を害することにはなりませんし、一定の要件をかけることによって公開買付者自身の買付と評価できることで、なんら市場の健全性を害することにはならないということからだと思われます。その趣旨からすれば、共同買付といったことも、事前に公開買付者とその関係者の間で、共同支配に関する認識が共通化しているのでしたら、応援買いのケースと同視してもよろしいのではないでしょうか。(→つまり、解釈で違法性判断が分かれるほどに曖昧な要件の問題だとしますと、いくらプロのファンドマネージャーである村上氏もしくはその幹部の方であっても、その違法性の認識を立件するのは困難ではないか、これを政策的な意味合いで要件を緩和することはできないのではないか、といった根本的な問題を含むものであります)

いまになってみましても、私は「感情的には」村上ファンドの灰色疑惑という点は否定しておりませんが、ただ「クロ」といった判断をされるほどの「悪いことっていったいなんだろうか?」とよくわからなくなってしまいました。今週にも、強制捜査が入る予定だそうですが、もしそうなりましたら、一度ゆっくりと捜索差押令状やその他の令状の中身を検討してみたいと思います。

(6月5日午後 追記)

日経朝刊に「きょう逮捕」とあったのもビックリでしたが、いきなり村上氏の記者会見というのもサプライズでした。毎日ニュースが比較的詳しく報道されているようです。これ読んで事件の内容わかる方おられます?投資のプロとしてミスを犯したことは謝罪するし、構成要件に該当するかもしれないから、おそらく起訴されるだろう、起訴されたら甘んじて受ける。だけど「もうけようとして取得した」わけじゃないが、検察からもうけようとして取得したわけでなくても、宮内さんから聞いてますよね、と言われたらそうかもしれない・・・・・・・。これ、インサイダー取引の構成要件該当性は認めるけれども、犯罪は成立しませんよ、と言っておられるに等しいように思えますが。つまり、検察から指摘された客観的事実については争わないけれども、村上氏の主観としては違法性の認識はなかった、との解釈でよろしいんでしょうか。普通「裁判やるには2年かかる」というフレーズを使うのであれば、事実関係を否認する場合であって、法律上の解釈を争う場合には、そんなに時間はかかりませんし、何をおっしゃっておられるのかは、さっぱりわからないのが現実です。(仕事中なので、このへんで。。。)

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2006年6月 3日 (土)

村上氏に違法性の認識はあるか(2)

いろいろなコメント、TBありがとうございます。きょう(6月3日土曜日)あたりの産経新聞ニュースを読みますと、村上氏は堀江氏に対して「いっしょにフジテレビの支配権を握ろう」みたいな勧誘をして、堀江氏にニッポン放送株を大量取得させて、その後村上氏が値段がつり上がったところで勝手に売っちゃった、みたいな書き方になっていますね。これは私が昨日のエントリーで予想していた事実関係と少し異なります。この事実関係が真相に近いということですと、堀江氏はあまり村上氏と組むメリットはないですよね。しかも最初から村上氏が「いっしょに支配権を握ろう」といいながら大量取得をしたというのであれば、167条5項4号のライブドアへの応援買いに該当してしまって、(他人の公開買付を支援する目的で、その他人からの要請を受けて、応援目的で公表前に買付を行うことは正当な株式取得行為とされています)違法性が阻却されてしまうんじゃないでしょうか。かりに、後から他の人に村上氏が売却してしまったとしても、村上氏がニッポン放送株式を大量取得する時点で「ライブドア支援目的で取得した」と考えていたとすれば、その行為は主観的な違法目的が存在しなかった、つまり犯罪は成立しない、ということになりそうです。

報道機関はさかんに167条違反を問題にしているみたいですが、上記産経新聞ニュースの事実関係でしたら、166条(会社関係者による内部者取引)でいったほうが「違法性の認識」を立証しやすいように思います。2003年当時から村上ファンドはすべての実質保有団体所有のニッポン放送株式を合わせると(つまり共同株主とすると)帳簿閲覧権を有する少数株主(商法293条ノ6)に該当しますから、少なくとも2004年12月当時、当該団体の代表者もしくは代理人たる地位にある村上氏は証券取引法166条の「会社関係者」に該当します。またニッポン放送株を大量購入する者の存在は、166条2項2号ロ「主要株主の異動」に該当するため「業務等に関する重要事実」に該当することになりそうです。ただ、この166条構成の最大の問題は会社内部者たる株主は、「その権利の行使に関し知ったとき」が要件となっている点です。条文に忠実に読むならば、帳簿閲覧権の行使に関して知った重要事実だけが、インサイダー情報ということになりそうです。もし、この要件をクリアできるとしたら、166条(会社関係者による内部者取引)の場合、村上氏と堀江氏の「ギブアンドテイク」の関係はなくても、単に村上氏がライブドアが大量買付行為を決定した、という事実さえ知っていれば、その後の村上氏のニッポン放送株取得が共同支配目的であれ、自己の利得目的であれ、「会社関係者による内部者取引」の犯罪要件には該当するわけですから、たとえ村上氏が犯意を否定したとしましても、客観的証拠の積み重ねによる違法性の認識の立証ハードルは相当低くなるはずです。

そこで、166条による立件というケースでは、「その権利の行使に関し知ったとき」という要件をクリアできるのかどうか、これが大きな問題になるような気がします。ちょっと調べてみましたら、最近の学説などでは、この要件をかなり広げて解釈してもいいのではないか、といった意見も出ているようですし、そもそもインサイダー取引規制というのが、市場における適正なルールの確保といった趣旨によるものであるならば、帳簿閲覧権を行使するための調査、準備など広い範囲を含む概念と捉えて解釈することも可能なのかもしれません。(ただ、そうはいってもかなり罪刑法定主義からすると問題かも・・・・・)

ただ、新聞報道の論調では、どこも167条による立件を前提として書かれていますよね。166条による立件ということはないんでしょうか?私はどうも166条による立件のほうが可能性が高いような気がしてきましたが・・・・・。

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2006年6月 2日 (金)

村上氏に違法性の認識はあるか

(6月3日午後追記あります) ライブドア事件の際には「堀江氏に逮捕はない!」などと断言して、大きく「はずして」しまいましたので、あまり信憑性はないかもしれませんが、やはり今回の村上ファンドのインサイダー疑惑で注目されるのが村上氏の「公開買付等関係者による不正取引」、いわゆるインサイダー取引の違法性を(村上氏が)認識していたかどうか、という点ではないでしょうか。本来、立件が非常にムズカシイと言われている内部者取引であり、かつ自白は容易にとれないことが予想される村上氏のことですから、捜査機関としては「違法性の認識」という主観的な要件につきましても、いわゆる客観的な証拠の積み重ねによって、ほぼ100%故意(違法性の認識)を立証できるレベルに持っていく必要がありそうですね。

前回のエントリーでも少し触れましたが、ライブドア事件の捜査によって、「5%を越える買付に関する準TOB行為の決定が、ある時点までに適正になされたこと」「その後17年1月5日に村上ファンドが80万株を買い付け、ニッポン放送の株式18.57%を保有するに至ったこと」「ライブドアの買い付け決定に基づき、実際に17年2月8日(ライブドアがニッポン放送株を大量に取得し、持株比率が約35%に上った日)までの間に準TOB行為が実行されたこと」「その後、ライブドアはさらに買い進めて、ニッポン放送株を40%以上保有するに至ったこと」は間違いないところです。そして宮内氏もしくは堀江氏によって、「準TOB行為が決定した旨を村上氏サイドに伝えたこと」につきましても、おそらく供述の裏づけはとってあるのではないでしょうか。また、取得を決定すべき村上氏自身の面前で準TOB行為が行われることが決定した旨を伝える(情報の一次受領者)必要がありそうですが、これも宮内氏、堀江氏どちらかの供述によって、なんとか補完できるようにも思われます。

では、果たして上記の事実が認定されると、村上氏の違法性の認識も立証されたことになるんでしょうか?それまでニッポン放送の株式取得に興味をまったく示していなかった村上氏が翻意をして一気に買い進んでいたとするならば肯定できそうにも思えますが、そもそも村上氏は2003年9月30日からニッポン放送株を6.3%取得してニッポン放送の筆頭株主ではなかったか、と記憶しております。つまり、「ニッポン放送株」の取得を勧めていたのは村上氏側であって、ライブドアはその村上氏の話を聞いて準TOB行為に及んだのではないでしょうか。ということになりますと、上の事実が立証されるだけでは、村上氏によって「ライブドアは(ニッポン放送株を)買いたいという希望は聞いていたが買うことを決めたとまでは言ってなかった。私はそれまでの自身の買付行為の延長として、その後も自分の判断で株を購入したにすぎない」と抗弁されてしまいますと「違法性の認識」立証まで到達しないような気がいたします。(もし、村上氏の従前からの保有、という点に事実認識の誤りがありましたらごめんなさいです)

あまり参考となる刑事判例の存在しない分野なので、まったくの推測ですが、このライブドアと村上ファンドとの関係を考えるうえで、もっとも重要なポイントは「ギブアンドテイク」の関係が立証できるかどうか、というところではないかと思います。つまりは、2月8日の大量買付けの公表日をはさんで、村上氏がライブドアの内部情報を入手するかわりに、ライブドアのほうが何かを村上氏(もしくは村上ファンド)から得ることができたかどうか、そしてその二つの行動を結びつける因果関係、という点であります。そこが明確になりませんと、なんでライブドアが村上ファンドにもうけさせる必要があるのか、重要事項をなぜ村上氏に教える必要があるのか、その動機がはっきりしないわけでして、全体像が最後まで見えてこないことになりかねません。(ただ、こういったギブアンドテイク説は、巷間噂されているように、2月8日に村上ファンドが保有している株式をライブドアが時間外取引で取得したのではないか、という風評が真実ですとまったくハズレになってしまいますかね?それともギブアンドテイク説が維持できるストーリーはあるでしょうか。私は、あくまでもこの2月8日以降に村上ファンドの保有していたニッポン放送株がライブドアの利益として利用されたことが前提となるような気がしますが。)

(追記 6月3日午後)

朝日新聞のネット記事に 村上ファンド利益100億円、裏で何が というのがリリースされております。これを読みますと、株価5500円程度だった1月5日時点には18パーセントだった村上ファンドのニッポン放送株の株数が、時価8000円程度にまで上った2月末時点ではわずか3%になっておりますが、その間に半分程度はライブドアの買付公表時点までに処分され、残る半分を市場で売却したのでは、との推測が記載されております。もし、こういった密約があったとするならば、「ギブアンドテイク」の関係は成立するはずですし、どうしてもファンドからライブドアや市場にどうニッポン放送株が流れたか、という客観的な取引履歴によって主観的な要件も立件できるのかもしれません。

それともうひとつ気になるのが、ライブドアの元代表取締役の熊谷氏の身柄拘束の経緯です。関係者のなかではもっとも遅く身柄を拘束され、また裁判所の保釈につきましても、(否認をしている堀江氏を除き)もっとも遅く許可が下りました。この一連の熊谷氏の身柄拘束の経緯は、捜査機関が村上ファンドへの捜査方針となんらかの関係がありそうに思うのですが。

(追記おわり)

したがいまして、村上氏のインサイダー取引に関する違法性認識立証の鍵は、「ギブアンドテイク」、つまり村上ファンドがニッポン放送株の内部者取引によって保有した株式(もしくは株式売却による金銭)が、どういう理由かはわかりませんが、その後のライブドアの大量保有に対してなんらかの支援策となったことが、客観的に解明されることではないでしょうか。この「ギブアンドテイク」の関係が解明されてしまいますと、取引関与者がどんなに否認したとしましても「違法性の認識」があった、という認定に裁判所は傾くのではないかな・・・と考えたりしております(いや、すでに全容は解明されているのかもしれません。)

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