CCO(チーフ・コンプライアンス・オフィサー)の適正なる行動と金融庁処分
先日のシャルレ社MBOにおける第三者委員会報告の内容も相当に生々しいものであり、読みごたえのあるものでしたが、11月7日付けにてSESC(証券取引等監視委員会)よりなされました投資運用法人に対する検査に基づく処分勧告の理由についても、かなり生々しいものでありまして、CCO(チーフ・コンプライアンス・オフィサー)の行動自体が当社の内部統制の大きな不備と評価されることとなる一例を示したものといえそうであります。(SESCの処分内容および理由はこちら)ちなみに、当該投資運用法人に運用委託をしている投資法人本体は、本日(10日)に上場廃止予定とのことであります。(本件に関する投資法人側からのリリースはこちらです)
運用受託先の投資法人による第三者割当増資議案について、運用上の助言を当投資運用法人が行うにあたり、社外取締役のひとりが反対していた「投資委員会決議」でありますが、社内規定によりますと、議決権を有する社外取締役の全員一致が決議要件とされていたところ、その社外取締役の反対を押し切って多数決にて決議をしてしまったということで、当該決議時点においては、「全員一致要件」に関する社内規定の存在を誰も知らなかった、という点がまず一番大きなポイントだったことは間違いないと思われます。少なくとも、CCOの方がこういった社内規定の存在を当然の前提として熟知しておられれば、事前の根回しも可能だったでしょうし、根回しが奏功しなかった場合でも、別途対策を練ることが可能だったと思われます。(すくなくとも、その後の「石が転がり落ちる」ような不適切な行動に至ることはなかったものと推測されます)
その後の社外取締役への棄権勧誘、取締役会での不作為、議事録の不実記載、社外取締役への虚偽報告などの問題点は、処分理由を読んでおりまして、にっちもさっちもいかなくなってしまったCCOの様子が手に取るようにわかるものでありまして、実際、CCOの方にも諸事情があったものとは思いますが、とうてい企業の法令遵守体制を構築するために先頭に立たねばならない者としての行動とは理解できないものであります。(この程度の虚偽記載(虚偽の隠ぺい)は、企業運営にとって重要な問題ではない、とCCOにおいては認識されていた、ということもないと思いますし。)またこれを代表者が容認していた、というのもかなりショックであります。正直なところ、もし社外取締役が、こういった棄権勧誘の説得に応じて、社内で「うやむや」なまま、投資法人側が第三者増資決議を行っていたとするならば、内部管理体制の不備を理由に処分勧告を受けることもなかったと思われますし、普通の会社でもあまり笑える話ではない、と思う次第であります。こういった一連の行動は、本年4月下旬の事実でありますが、SESCが5月中旬から検査を開始していた、という点からみましても、不適切な行動が、行政処分を通じて表に出てしまうリスクというものも、改めて考えるべき問題のような気がいたします。今回は、金融商品取引法51条を通じて、金融商品取引業者への行政処分が介在することで表面化したものと思いますが、開示規制に関する金融庁の調査や、証券取引所の調査などが厳しくなるのであれば、一般の上場企業においても、たとえ法令違反が明確に認定されなくても、内部統制に欠陥があると指摘されるケースというものが増えてくるのではないでしょうか。
なお、このCCOの方はすでに辞任をされておられますが、企業人として、また弁護士として、企業法務に精通されておられる方による行動であったことも、私的にはショックであります。(そういえば、先日のシャルレの第三者委員会報告によりますと、シャルレ社の社外取締役の3名の方々は、「もし800円以下の株価に賛同するように求められるのであれば、みんなで辞任しよう、と話し合った」とありました。その「心意気」は社外役員にも、またコンプライアンス責任者にも必要な気概だと私は確信しています。)社内規定の存在に熟知されていなかった、ということよりも、むしろ進退を賭けてでも、コンプライアンスの責任者たる地位を全うしていただきたかった、といった点にこそ、残念な気持ちを抱いてしまいます。「所詮、CCOなどといっても、金融商品取引業者においてもこの程度のもの」といった諦念を抱かれないように、私自身にも本件と同様、ふりかかるリスクのひとつとして肝に銘じておきたいと思いました。
11月 10, 2008 コンプライアンス経営はむずかしい | Permalink | コメント (2) | トラックバック (0)
