2024年2月 2日 (金)

日本の「モノづくり企業」にご提案-不祥事シミュレーションのススメ

1月30日のトヨタ自動車会長の会見は衝撃的でした。トヨタグループ創始者が自動織機会社を開設したのが1926年、つまり100周年直前の不祥事です。その源流企業で「絶対あってはならない不正(豊田会長)」が起きたのですから、神妙な会見になるのは当然かもしれません。豊田自動織機が設置した外部調査委員会の報告書が公表された後、直ちに国交省の立入検査が行われましたが、さて、他社事例と同様、さらなる品質不正が出てくるかどうか。トヨタグループ関係者にとってはグループの誇りにかけて出てこないことを祈っておられることでしょう。

さて、私がガバナンスレビュー委員会委員長を務めた三菱電機も含めて、最近は多くの著名企業で品質不正事件が発覚しておりますが、判で押したように「根本原因」として「経営陣と現場社員との断絶」が指摘されています(「経営陣は知らなかった」との結論が正しいとすれば、情報共有に関する内部統制に欠陥があったと言わざるを得ないですね)。しかし不正発覚の端緒が内部告発、海外当局による指摘、もしくは取引先からの調査要請とされているケースが多いので(本気で調査をすれば発見できるのですから)結局のところ「実は経営陣も薄々わかっていました」または「当社でも品質不正は起こり得る、といった想像力の欠如」のどちらかの問題ではないでしょうか。

天下のトヨタグループでも(販売系列店の車検不正を除き)、系列メーカー4社で品質不正が次々と発覚したわけですから、もはや他の大手「モノづくり企業」でも同様の不正が社内で脈々と続いている、誠実な経営者のもとでも品質不正は不可避である、と考えておいたほうがよさそうです。かつて上場会社の不祥事は「きちんと経営責任をとって再発防止策を粛々と進めていれば、半年くらいで株価は元に戻る」と考えておりましたが、最近は業績にも重大な影響を及ぼし、行政との信頼関係をも裏切ることで競争条件にもハンデをもらってしまう場面が増えました。したがって「経営陣と現場との断絶」を少なくとも品質不正との関係では解消するための施策を練る必要があるように思えます。

ただ、ここで立ち止まって考えてみてください。「経営陣と現場との断絶」って、そんなに簡単に解消できますか?少なくとも日本企業の中間管理層は中長期の経営計画の達成に向けて果たすべき課題が多い。業績向上のために目いっぱい働いて、そのうえで経営陣と現場との「橋渡し」をやれというのはあまりにも酷では?もちろん断絶解消に必要な人的物的資源が豊富な会社であれば対策を打つのが理想ですが、私は「断絶」があることを前提としたうえでの不祥事防止、危機管理のほうが現実的ではないかと思います。なお「不正をやりたくてもできないシステムを導入すればよいではないか」とのご意見もあるかもしれませんが、このたびの豊田自動織機におけるディーゼルエンジンの認証不正問題などをみると万全とは言えないですし、これも資源が豊富でなければ導入は困難かと。

ということで「社内研修のタブー」ともいわれている「社長のセクハラ・パワハラ対応シミュレーション」と同様、品質不正についても「当社でも不正は起きている」ことを前提としたシミュレーションを取締役、監査担当役員、執行役員クラスを中心に(一同に集まって)研修することを強くお勧めいたします。この研修の最大の目的は「社内における多様な意見に耳を傾ける」「担当者の権限と責任を明確に意識する」、いわゆる「ヨコの内部統制の補完」ということです。日本企業は伝統的に「タテの内部統制」は強固ですが、「ヨコ」は(欧米企業とは異なり職務の権限と責任があいまいなので)とても弱い。ちなみに、たくさんの企業の有事対応に関わってきましたが、マニュアルのない「有事」の世界では(利益相反的立場にあるにもかかわらず)事実上権力を持った人、声の大きい人の意見が尊重される(それ以外の人は声すら上げない)という不文律があり、最も企業の信用を毀損する「二次不祥事」へと突入してしまう残念な事例を経験し、私自身も何の力にもなれずに後悔しております。

「不祥事は当社でも起きる」というフレーズを語るだけでなく実行に移しておけば・・・といった反省から、各役員の有事における役割を明確にして、目線を合わせるためには「企業不祥事シミュレーション」がとても有効です。首都圏には企業の危機管理に強い弁護士やコンサルタント会社が多いので、実際に危機管理を経験されている方々にストーリー作りや監修を依頼されてみてはいかがでしょうか。実は企業の事業推進のキモであると同時に不正リスクの元凶ともなるような「組織の深い闇」が理想的な有事対応を邪魔しているのでは・・・といった発見もあるかもしれません(だから社外取締役には報道発表の直前まで情報を伝えなかった、とか)。その結果として、奥歯に物が挟まったような社内調査から解放され、外部第三者調査に匹敵するような社内調査、つまり自浄作用を発揮することにつながります。有事にステイクホルダーを味方につけることができるか(行政も含めて火消しに回ってもらえます)、それとも池に落ちた犬を棒でたたくかのように敵に回してしまうか、その正念場は「自浄作用を発揮したか」どうかにかかってきます。

初めから100点満点の危機対応ができる企業などほとんどありません(今まで100点満点を見たのは1回だけ、某社カリスマ創業者くらいです)。何度も失敗を重ねて、反省をして、ようやく何度目かに合格最低点60点の危機対応ができるようになります(私も後から振り返ってみると、この「合格最低点」くらいしかお手伝いできていないと思います)。でもその「合格最低点」によって新聞にも文春にも掲載されずに自浄作用を発揮して命拾いをした企業をたくさん知っています(危機管理を専門とする弁護士の強みはここにありまして、「守秘義務」の関係で成功例をお話できないところにアドバンテージがあります。皆様がよく知っている企業不祥事は、様々な要因によって残念ながら発覚してしまったものです)。

 

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2024年1月29日 (月)

SOMPOホールディングスの(お墨付きの)「優良コーポレートガバナンス」について

1月25日、ご承知のとおり損保ジャパンおよび親会社であるSOMPOホールディングスは、ビッグモーターによる不適切保険請求への対応に関して金融庁から業務改善命令を受けました。その処分理由だけでなく、直前に公表された最終調査報告書においてもSOMPOホールディングスのガバナンス不全が監督責任の根拠とされています。

ただ、これまでSOMPOホールディングスのガバナンスは優等生とされていました。SOMPOホールディングスは保険法上の保険持株会社なので、子会社の経営管理のみを事業目的とする上場会社です。その子会社経営管理の実施状況から、2019年、経産省および東証は他社が模範とべき「健康経営銘柄」に指定しました(指定銘柄は35社)。また、SOMPOホールディングスの情報開示の姿勢が評価され、2022年、金融庁は「事業上のリスク開示」「サステナビリティ情報」に関する好事例として、SOMPOホールディングスの有報開示を紹介しました。さらには2022年、経産省は「人材版伊藤レポート2.0好事例集」においてSOMPOホールディングスのパーパス経営の実践例を紹介しています。

すばらしい!!私がSOMPOホールディングスの社外取締役であれば、取締役会の実効性評価においてもESG経営への真摯な取組姿勢をみて、他社に自慢したくなる評価点をつけると思います。誰が見てもガバナンス優良企業であり、いわば「指名委員会等設置会社」の成功例と胸を張って言いたいです。おそらく機関投資家や運用会社の取締役会実効性評価においても最高点が付されるのではないでしょうか。

では、なぜ「ガバナンス不全」と言われるのか?単に「不祥事を起こしたから」という「後出しジャンケン」による結果責任でしょうか?そうであれば、これからも「ガバナンスの実効性評価」などと(私も含めて)やってみたところで少なくとも社会に多大な迷惑をかけてしまうような不祥事は防げないということになります。平時から競争力を高めるための「攻めのガバナンス」に資源を投下しても、有事における「守りのガバナンス」で失敗すれば一日にしてその信用は毀損されるということはきわめておそろしい。

ちなみにSOMPOホールディングスの2022年度「リスクマップ」をみると、さすが優秀なガバナンスを構築される集団、ちゃんと「ガバナンス不全は1000億円規模の損害が発生するリスクであり、発生可能性も低いわけではない」と公表しています。頭の良い人がたくさん集まる組織で、このようにリスクを的確に認識していたにもかかわらず、ではなぜ今回の事案が発生したのか。リスクマネジメントにおいて何が足りなかったのか。

金融庁は、処分理由の中で、このたびの事案の真因を以下のように述べています。

SOMPOホールディングスによる適切な企業文化の醸成に向けた取組みが不十分である中、損保ジャパンにおいては、次のような企業文化が、歴代社長を含む経営陣の下で醸成されてきたこと①顧客の利益より、自社の営業成績・利益に価値を置く企業文化② 社長等の上司の決定には異議を唱えない上意下達の企業文化③不芳情報が、経営陣や親会社といった経営管理の責務を担う者に対して適時・適切に報告されない企業文化

しかしこの度の自民党の政治資金規正法違反の結末(およびこれに対する国民の反応)をみれば、多くの組織でも同じ文化を有しているように思います。「不祥事」という面からみれば欠点にみえても、「持続的に業績を上げる」という面からみれば長所にもみえます(だからこそ、不祥事を発生させた企業のなかで「本気で50年来の企業文化を変えよう!」と、実行に移す人は出てきません)。

なぜもっと深く真因に突っ込んだ記述とはならなかったのか。もっと指摘すべき「不都合な真実」がほかにもあるのではないか。むしろ昨年12月26日の(企業保険に関する大手4社に対する)金融庁の処分理由のほうが真因に迫ることができているように思えました。これまで優秀とされていたSOMPOホールディングスのガバナンスがあるからこそ、本来は業務停止命令が妥当なところ、若干宥恕して業務改善命令にした・・・という理由ならそれなりにわかりますが。。。かように「ガバナンスの評価」というものはむずかしいと痛感いたします。

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2024年1月22日 (月)

損保ジャパンの最終報告書からホールディングスの経営責任を考える

1月16日、ビッグモーターによる不適切保険金請求に対する損保ジャパンの対応について、最終報告書(SOMPO ホールディングス株式会社自動車保険金不正請求に関する社外調査委員会・最終報告書)が公表されましたので、この週末、「全文版」に目を通しました。昨年11月に公表された中間報告書の内容とも併せて、完全親会社であるSOMPOホールディングスに経営責任が認められるかどうか、という視点で考察してみます。これまで私は(こちらのエントリーでも述べておりましたように)親会社の経営責任については消極的な意見でしたが、最終報告書を読む限りでは考えを改めざるを得ないように思えてきました。

まず背景事情ですが、最終報告書を読むと、これまで何度も申し上げていたとおり、SOMPOグループはグループ会社に広範な経営上の裁量権を委ねていて「重要課題についての子会社による自己完結的な処理方針」が良くも悪くも徹底されていたようです。よって、BMによる不適切請求問題についてもホールディングスに(東洋経済の記事が掲載されるまで)報告をしていなかったというのも事実かもしれません。ただ一方でホールディングスは2022年6月、損保ジャパンの社外取締役制度を廃止していたのですね(このあたりは日経ニュースでも取り上げられています)。その理由は「今後はホールディングスが損保ジャパンの管理・モニタリングを強化する方針転換」だそうで、そうであるならば監督機能の不全(コミュニケーション不足)と言われてもしかたない背景事情があったと言えそうです。

つぎに、2022年8月29日に損保ジャパンからホールディングスに報告が上がったときの対応です。(あの東洋経済の記事を読んで)普通であればBMとの取引再開に問題がないのかどうか、ホールディングスの役員から「損保ジャパンのコンプライアンス担当、リスク管理担当者、監査役会の意見は?」と尋ねるはずです。「(BMの組織ぐるみの問題というわけではなく)たいしたことはありません」との報告が損保ジャパン側からなされたとしても、せめて法務コンプライアンス部門や監査役会(とくに社外監査役)も同意見なのかどうか「(グループ会社に対する)管理を強化する方針転換」があったのであれば親会社としては確認するはずでしょう。しかし管理側の役員が一切出席していない会議で取引再開を決定していたわけですから、損保ジャパン側は回答できなかったのかもしれません。もし確認したうえで不問に付していれば、そのこと自体ホールディングスの大問題ですし、確認をホールディングス側が怠っていたのであれば、これもやはり監督責任を尽くしていなかった根拠となり得ます。

さらに個人的に残念と思うのは損保ジャパン及びホールディングスの社外役員の行動が不明な点です。損保ジャパンは社外取締役制度は廃止した一方で、社外監査役の数は増やしており、6名中3名が社外監査役(4名が非常勤監査役)という構成です。ホールディングスは指名委員会等設置会社なので多くの社外取締役がいらっしゃいます。これらの社外役員の皆様は、2022年8月29日の東洋経済記事、9月15日の同記事、そして9月26日のダイヤモンド誌の記事はお読みになっていなかったのでしょうか、それとも読んだけど重大問題とは思わなかったのでしょうか。ホールディングスの社外取締役の皆様に報告されたのは2022年10月7日(正式に監査委員会が報告を受けたのは2023年1月20日とのこと)、損保ジャパンの社外監査役の皆様に説明がなされたのが2022年10月5日(法務コンプライアンス担当役員より)とのことで、それまで逆に社外役員のほうから説明を求めていた事情は認められません。BMとの取引再開を決定するにあたり、東京海上、三井住友との対比が明確な状況だっただけに、ここで社外役員が動いていれば「自浄能力」という意味では相当な違いがあったのではないでしょうか(ここはもっと詳細にご説明したいところですが、また別の機会に)。

最後に、Qちゃんさん、MAXさん、ヤマノボリさんらがコメントされていたように、金融庁「保険会社向けの総合的な監督指針」におけるグループ管理規程違反に関する問題です。金融庁はとりわけ金融機関の内部監査態勢については注目しており、ホールディングスとグループ会社の内部監査部門との連携を要請しています。しかしながら最終報告書を読む中で、ホールディングスおよび損保ジャパンの内部監査態勢および内部監査部門がどのように動いたのか、どのように連携したのか、という点についてはほとんど記述がありません。損保ジャパン自体で25000名の社員が存在するわけですから、相当程度の内部監査部門は当然存在するはずですが、法務コンプライアンス部門と同様「BMとの不適切関係問題は、我々の職務範囲外である」ということで一切タッチしていなかったのでしょうか。このあたりは重要な論点であり、内部監査部門が機能していなかったとすれば、おそらく金融庁からもホールディングスに対して何らかの改善要望が出るのでは、と予想します。

ということで最終報告書を拝読したうえで、やはり法人としてのSOMPOホールディングスには経営責任を認めるべきと思い直しつつあるところですが(かなり「負け惜しみ」っぽい表現ですが🐱)、それでも経営陣の個人的な責任についてはSOMPOホールディングス側で明確にしなさい、ということになりそうな気がいたします。いずれにしてもSOMPOホールディングスのガバナンスは「体制」という意味では日本の上場会社の中でも超一流といっても過言ではありません。ただ「体制」が「運用」を伴っていたのかどうか・・・、ここが投資家の皆様にとって、日本企業のガバナンス評価のうえでもっとも難易度が高いところかと思います。

 

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2023年12月26日 (火)

高島屋Xmasケーキ騒動と「コンプライアンス費用」の負担問題

Publicdomainq0028447tqk 業績絶好調の百貨店・高島屋ですが、すでにご承知のとおり、【通販Xmasケーキの崩壊問題】が大々的に報じられています(たとえば読売新聞ニュースはこちらです)。広告ではたいへん美味しそうなXmasケーキが5400円!著名パティスリー監修!ということで、楽しみにされていた方にとっては苦情を申し立てたくなるのも当然かと。現時点では苦情が900件超(販売数2900個中)ということですが、まだまだクレームは増えそうな気配です(なお、著作権フリーのイラストを使用)。

高島屋によると「原因は調査中」とのことですが、果たしてどこに原因があったのか。ケーキの製造元か、冷凍保管受託者か、あるいは配送業者か。いずれにしても最終消費者との関係では高島屋が対応する立場にありますので、注文者の希望があれば電車で2時間かけてでも注文者のもとへケーキを届けて謝罪をされたケースもあるようです(毎日新聞ニュース)。そして、今後想定される法律問題といえば、コンプライアンス対応費用の分担問題ですね。高島屋としてはブランドイメージを守るため、レピュテーションリスクを回避するために、おそらく法律的な損害賠償義務の範囲を超えた対処を余儀なくされ、注文者に対して最大限の誠意を尽くすことになるでしょう。

一方で(原因判明後に、調査に要した費用を含めて)高島屋から求償権、もしくは損害賠償請求を行使された事業者としては「原因を作ってしまった事業者としてはどこまで過失による不法行為の補償が必要か?」と悩むわけでして、法律的には(注文者に対して)損害賠償義務を負う範囲内、ということになります。ひょっとしたら「共同不法行為」や「過失相殺」といった主張を出したい気持ちになるかもしれませんし、そもそも高島屋のコンプライアンス方針によって対処した費用を求償権の行使としてそのまま請求されても支払うべき法律上の責任はないかもしれません(もちろん、今後の取引継続のために高島屋の意向に従わざるを得ない、と考える事業者もいらっしゃるかもしれませんが、それは経営判断の問題)。このあたりは難問です。

そういえば7年以上前の話になりますが、2016年4月5日のエントリー「横浜マンション傾斜事件-難問山積の三井不動産求償権問題」でも、同様の問題に触れましたね。(風のうわさでは)この求償権問題はまだ地裁レベルで裁判が続いているようで、三井不動産レジデンシャルが対処に要した費用を、取引先(三井住友建設、日立ハイテクノロジーズ、旭化成建材等)がどのように分担すべきなのか、(争点は他にもありそうですが)今後示される裁判所の判断はとても興味深いものであります。BtoCの企業は「安心思想」で対応しますが、BtoBの企業は「安全思想」で物事を解決するのが当然かと(合理的な理由もなく過度に分担金の責任を認めると、かえって経営陣の善管注意義務違反となるので)。

ちなみに、もうひとつの象徴的なコンプライアンス問題は、この騒動の発端です。誰かがSNSに「こんなに崩れてた~!」と写真付きで上げたところ、他にも同じケーキについて「私も崩れてた(泣)」というコメントが次々とアップされたそうです。もしSNSによる横の連携がなかったとすれば「昨年は一件も苦情がなかった」そうなので(朝日新聞ニュース)、「配送者のずさんな管理が問題!」として済ませられてしまった可能性が高い。おそらく全国的に数十件ほど同様の崩壊ケーキが存在するという事実が判明した頃から「これは輸送時だけの問題ではない」という印象が世間に広まり、ニュースでも取り上げられるようになった(その結果、900件という苦情数が判明した)という経過だと思います。これは日大アメフト不適切タックル事件が世間で騒がれるようになった経緯と似ています。SNSの浸透は、コンプライアンス問題を浮上させますね。

今回の高島屋のケースでも、(もちろん金額は比較になりませんが)誰がどの程度の解決費用を負担するのか、今後サプライチェーン・コンプライアンスの発想が当たり前になってきますと、当事者にとって合理的といえる理屈での解決策が求められます。どの業界でも「人手不足」が悩みの種ですが、どこに原因があろうとも、今度は「おせち料理」でも(SNSの力を借りて?)同様の事態が起きそうな予感がいたします。

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2023年12月22日 (金)

ダイハツ品質不正問題-第三者委員会報告書への素朴な疑問

Daihatsu002 まだ報告書すべてに目を通したわけではありませんが、品質不正問題発生の原因分析について、少しだけ(頭に浮かんだ)疑問点を述べておきたいと思います。なお「素朴な疑問点」といいましても、調査委員会の報告内容を批判するものではなく「自分としてさらに知りたい点」という意味でございます。

今回の品質不正は製造・開発現場で発生していたもので、管理職が指示したり黙認していた事案ではない、とのこと。これが「経営陣と現場との乖離」という発生原因の基礎となります。ただ、神戸製鋼事案のときにも同様の疑問を抱いたのですが、2010年あたりから継続的に不正が繰り返されていたのであれば、2010年頃の現場社員はすでに「管理職」になっているのでは?そうだとすると、過去に不正に手を染めていた管理職の方々は、現場の不正を知っているわけで、この方々は黙認していたことにはならないのでしょうか?不正に関与していた方がまったく管理職になっていない、というのもおかしな話だと思うのですが。

つぎに、トヨタがダイハツを完全子会社化したのが2016年ですが、2014年ころから不正が急増したということは、やはりトヨタとの支配関係が品質不正に影響を及ぼしているのでは?報告書によると、いったん2015年、2016年あたりで(一時的に)不正件数が減っていますが、これもトヨタの完全子会社化とは関係あるのでしょうか?かつて「日経クロステック」でも報じられていましたが、「できない」と言えばトヨタの管理下に置かれてしまうので、できなくても「できます」と言い続けてダイハツの自主独立性を確保していた、という仮説は成り立たないでしょうか?もちろん、これは現場の問題ではなく、ダイハツの経営サイドの事情ではありますが。短絡的に「親会社の責任」とは申しませんが、親子会社における「深い闇の問題」が不正の温床になっていたのではないかとも考えられそうです。「短期開発」には光と影の部分があり、影の部分にあえて目を背けていたということであれば、親会社はこれに気づいていたのかどうか。そのあたりはさらに知りたいところです。

つぎに、2016年といえば世間で三菱自動車の燃費偽装事件で揺れた時期です。「他人事ではない」ということで、自動車メーカーではどこも自社の点検に余念がなかったと思います。ダイハツでも品質不正に関する社内点検が行われたと思うのですが、ではそこで今回の不正は発見できなかったのでしょうか。また、親会社であるトヨタとしてもグループ会社に対して厳格な不正チェックを要求し、その結果の報告を求めたりしなかったのでしょうか(これは経営陣のガバナンスの問題と思います)。

また、調査報告書(全文)の1頁目に、第一次公表事案の発覚端緒が示されており、ダイハツが不正の疑いを知ったのは、社員による内部通報制度の活用に基づくものではなく、外部機関に情報提供がなされ「外部からの指摘」によって知ったとあります。おそらく「内部告発」によるものと思われます。通常、社員がいきなり内部告発に及ぶことは少なくて、内部通報窓口を活用するとか、上司や同僚に相談して是正を促していたというプロセスを踏んでいることが多いと思います。調査委員会がこの告発した社員にヒアリングできたのかどうかは不明ですが、このあたりの経緯については知りたいところです。ちなみに現場社員が「内部通報」がされたことを知りつつも不正行為に及んでいたことが報告されていますが、これはかなり根が深い。

さらに、これだけ長期にわたる多くの不正事案が認定されたわけですから、いったん不正に手を染めたものの(生産終了といった事情もないのに)ここ数年の間に「やっぱりこれはマズイ。やめておこう」と不正と手を切った部署もあったのではないでしょうか。そのような「過去の品質不正事案」もカウントされているのか、されていないのか。なぜ現場は自主的に止めることができたのか。そのあたりは組織風土を知る上でも重要ではないかと考えます。

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2023年12月 4日 (月)

日大アメフト薬物事件-「廃部決定」の審議は時期尚早と考える

自民党派閥のパーティーに関する政治資金規正法問題について、不透明な処理を批判するのは正当だが、検察が立件するのはかなり厳しいのではないかと思っていたところ、12月3日のサンデーステーションに生出演されていた郷原弁護士が明快に同様のご意見を示しておられたので、やはり刑事立件はハードルが高いなあと感じております。ただ、民主主義の前提となる「お金の話」なので、ぜひ検察は積極的に動いていただきたい(以下本題)。

日大アメフト薬物事件について、第三者委員会報告書が公表されてからの報道をみておりまして、展開が混迷を極めているように感じているのは私だけでしょうか。とりわけアメリカンフットボール部の存廃をめぐって、いろいろなご意見が示されておりますが、私はまだ今回の薬物事件の全貌が明らかになっていないので、決めるのは時期尚早かと思っております。ガバナンスの再生と事件の手じまいは別ではないかと。以下は私の個人的な意見です。

このたび、最初に逮捕された元アメフト部員に対する正式裁判の様子が報じられていますが(産経ニュースはこちらです)、この裁判が(大麻ではなく)覚せい剤を保持していたことが重要な要素であることを報じるメディアはあまりありません。なぜ覚せい剤を保持していたにもかかわらず、大麻を保持していた罪に問われているのか、という理屈はなかなかむずかしいのです。昭和61年のこちらの最高裁判決でも、麻薬と思っていたものが実は覚せい剤だった事件について、麻薬取締法違反の成立を最高裁が認めていますが、一部の裁判官から補足意見が出ており「なぜ覚せい剤を保持しているのに麻薬取締法違反罪が成立するのか、おかしいではないか」との合理的な意見が出てくることにも言及しています。

元アメフト部員が公判で「長い間大麻を使用していた」といった供述をしていることが報じられていますが、これは覚せい剤を保持していたにもかかわらず大麻取締法違反で立件するために必要不可欠な供述であるがゆえの証言です。覚せい剤はどのような目的で保持していたのか、という点に裁判官が補充質問をしているのも同様です。ちなみに後から逮捕された別の元アメフト部員については略式裁判で罰金が確定していますが、これは覚せい剤の使用や所持とは関係なく、純粋に大麻取締法違反だけの事実が問題だったからだと思われます。

警察・検察が日大アメフト薬物事件を立件する最大の目的は(何度も当ブログで申し上げているとおり)日大の学生を通じて教育機関と反社会的勢力との癒着のおそれが生じており、これを絶対に防止して教育機関を守ることにあります。8月の報道では、元アメフト部員は「小さな塊は密売人から『おまけ』として渡された」と説明していると報じられていました。この点において、こちらの高橋弁護士の解説が的を得ていて、この「おまけ」こそ、反社会的勢力の常とう手段だということです。大麻ではさほどの収益につながりませんが、大麻使用を通じて覚せい剤の常習者に仕立て上げて高額の収益を反社会的勢力が稼ぐという構図です。おそらく大学に反社会的勢力が接触するためのストーリーの一つかと思います。オーバードーズの10代に近づいて「おまけ」を渡すとかホストクラブに通う若い女性を最終的には借金漬けにして収益を上げるというストーリーにも似たところがあります。

ところが元アメフト部員は公判で「おまけとして密売人からもらった」とは証言しておらず、報道によれば「友人から預かってほしいと依頼を受けて所持していた」と証言したそうです。「おまけとして・・・」という証言であれば、そこで話は完結していたかと思いますが「友人が密売人からもらったものを今年3月に預かった」ということになりますと、「覚せい剤を所持していた友人が別にいる」ということになり、おそらく警察・検察の捜査はそちらにも及ぶことになるでしょう。もはや大麻ではなく覚せい剤の話となり、反社会的勢力に資金を支援していた、という意味では違法性の程度が大きく変わります。そのあたりの全貌が明らかになってはじめて「アメリカンフットボール部を存続させるべきか、廃止とすべきか」という議論の前提がようやく確定するのではないでしょうか。

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2023年11月28日 (火)

日大アメフト薬物問題-理事長と副学長との確執について

さて、ひさりぶりの日大アメフト薬物事件に関するエントリーです。本日(11月27日)警視庁は新たに日大3年生の男子部員を逮捕した、とのことで、当該事件では3人目の逮捕者が出ました。ただ、逮捕者が出たことよりも、副学長がパワハラ(不法行為に基づく損害賠償請求)で林理事長を提訴したことの方が大きく報じられております。まだまだ日大の混迷が続きそうです。

1701086885530_512 理事長が副学長にパワハラをした・・・というのは、①副学長に「労働者性」は認められるか、②理事長と副学長との間には指揮命令関係(優越的地位の存在)が認められるか、といった疑問があるため、厚労省のパワハラ定義からは外れているようにも思えます。ただ、昨年3月の福岡地裁判決(かなり有名)は、株式会社の取締役会で(つまり他の役員の目の前で)、代表取締役会長が代表取締役社長に対してさんざん罵倒するような発言をしたことをパワハラと認定して、会長側に高額の損害賠償責任を認めています。したがって、裁判上は理事長の言動が、客観的にみて副学長の人格を否定するような言動と認められた場合にはパワハラと認定される可能性はあるのでしょうね。

なお、私立大学におけるガバナンスの問題としても、この裁判はとても興味深い。理事長の学長、副学長への指揮監督権限とはどういったものなのか、これまであまり議論されてこなかったので、経営上のガバナンスと教学上のガバナンスの関係が明確ではありません。おそらく開示されている日大の「寄附行為」を読むと、一定の手がかりは把握できるとは思うのですが、学校法人内の力学でいえば「理事会」と「理事長」と「学長(副学長)」と「教授会」ですね(現行法上「評議員会」は除きます)。そのあたりの力関係のねじれが、このたびの提訴に至る要因ではないかと勝手に想像しております。

私事ですが、昔から作家・林真理子氏のファンでして、今年「成熟スイッチ」を読んでいたころは、まさかこんな出来事が起きるとは想像もしておりませんでした(「昨日とは少し違う自分」がこんな形で登場するとは洒落にもならないです)。でもなんとなく「紫綬褒章をとって、日本文藝家協会の理事長になって、つぎに日大の理事長?ちょっと違うのでは?」と思っておりました。たしかエッセイで「(不祥事が続いていた日大を嘆きながら)こんな母校、私が変えてやる」とか述べて、そのノリで就任要請が来たように記憶しています。

日大の第三者委員会も、林理事長が「見て見ぬふりをしていた」と認定したわけではないので、もう少し有事の振る舞いを誰かに相談できなかったのか。学生が平穏に勉強・研究に打ち込める環境、教育の質の確保のための最善策は何か、その答えとしての幕引きを急いだのでしょうか。「芸の肥やし」とするにはあまりにも代償が大きすぎたような気がします。

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2023年11月 6日 (月)

日大アメフト薬物事件-ガバナンス再構築には改正私立学校法の理解が不可欠

阪神タイガース38年ぶりの日本一おめでとうございます!私は諸事情により(?)、どっちのファンであるかも公言できなかったのですが、関西ダービーは第7戦まで盛り上がりましたので本当に感謝しております。阪神佐藤とオリックス森が期待通りの実力を発揮できなかった点では五分五分でしたね。ともかく第7戦のノイジーの3ランは一年分の年俸の価値があったような気もしますし、第6戦の山本由伸の138球完投は、日本球界への置き土産として最高のパフォーマンスでした。

さて、当ブログでも日大アメフト薬物事件を取り上げていることから、何名かの方から「日大はどうすればガバナンスの再構築が可能か」とのご質問を受けております。しかし、前回のエントリー(11月2日)で申し上げておりますとおり、学校法人のガバナンスは教学のガバナンスと経営体としてのガバナンスが交錯しており、極めて難問でして軽々に申し上げることはできません。

なんといっても、2025年4月施行予定の令和5年改正私立学校法によって、非営利財団法人としての学校法人に初めて「機関」の概念が誕生しますので、再来年施行予定の法律を前提としたガバナンス再構築が求められます。当然のことながら、7,800ほどの学校法人すべてに同じガバナンスが求められるのではなく、日大レベルの収益を上げる大規模財産法人ならではのガバナンスを考える必要があります。したがって現行法から大きく変わる改正法の理解は不可欠です(さらに改正法に関連する政省令や文科省ガイドラインの理解・実践も必要)。仕組み作りについてはマクロの視点から、また運用についてはミクロの視点から非営利組織のガバナンスや内部統制に詳しい方の支援が一番効果的かと。学外理事や評議員に、私立学校法に詳しい方が入る必要がありそうです。

このたびの日大問題を外から眺めてみて、不祥事を防止するための仕組みや運用が必要なことは間違いないのですが、しかし経営体としての学校法人の意思決定の在り方を株式会社のようなイメージで捉えてしまいますと、今度は学外からの支配権介入のおそれが高まりますので、大学の自治つまり教学のガバナンスが毀損してしまうことにつながります(学校法人法の改正がかなり時間を要したのも、この点について私学団体からの厳しい批判・反対があるからですね)。憲法に保障された「学問の自由」を守りつつ、理事長や学長の不祥事を予防するということの「両立のむずかしさ」はここにあります。

そもそも理事長や学長をいかに監視・監督するのか・・・、その仕組みも2025年4月から大きく変わりますので、日大は他の学校法人のガバナンス構築への影響にも配慮しながら、長い目で(学校法人のガバナンスに精通された方々の力を借りて)再構築を図る必要がありそうです。

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2023年9月19日 (火)

地銀の「なんちゃってダイバーシティ」は金商法違反?

ジャニーズ事務所問題については多くのグローバル企業を巻き込んでたいへんな状況になっていますね。今朝の日経(法財務)では、「ビジネスと人権」に詳しい専門家の皆様の意見が三者三様で、たいへん参考になりました。まだまだ現在進行形で事態が進みますので注視していきたいと思います。さて、本日は別のお話ですが、9月18日の東京新聞WEBニュースの記事「地方銀行に『水増し』が横行? 『職員3人に2人以上が管理職』にして女性管理職比率が増 各行に聞いた」を読みました。いやいや、金融機関に特有の問題では済ますことができない、ちょっと笑えない内容です。

サステナビリティ開示の一環として「女性管理職比率」が有価証券報告書に記載されるようになり、これに伴い多くの地銀で25%前後の数値が開示されています。しかし、課長代理や調査役を「管理監督者」として含めているため、部下のいない管理職や社員の半分が管理職になってしまったというお話。厚労省の基準とはかなり乖離していますし、「金融機関の管理監督者の範囲」に関する行政通達105号の運用では「管理監督者は二桁台(%)にはならないはず」とされているので、実態と開示との齟齬が生じていると言われてもしかたないと思います。

非財務情報の開示内容については、内容自体で虚偽記載の責任を問うものではない、と(たしか)金融庁の見解が示されていたように記憶しておりますが(間違っていたら訂正いたします)、しかし女性管理職比率については定量的に同業他社と比較することが可能ですから、やはり虚偽記載の問題が生じるようにも思えますが、いかがなものでしょうか。たしかに「厚労省判断を満たさない場合でも、自主的に実態をみて判断してもよい」とのことですが、さすがに常識では考えられないですよね。

上場会社の無形資産(たとえば人的資本)を適切に開示しようとの制度趣旨は理解できますが、それが新たな不正リスクを招くというのはなんとも。。。さらにこの「管理監督者」の評価ミスは労働法違反リスク(時間規制、賃金規制)にも発展しかねず、金商法違反リスクでは済まないように思います(この「管理監督者の範囲」問題は、いまだ最高裁判決も出ておらず、労働法においてはグレーゾーンの領域です)。諸々の不正リスクがある以上、企業としては少なくとも厚労省の判断基準にだけはしたがっておいて、たとえ目標には達していなくても正直な開示を心がけるべきでしょう。

 

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2023年9月13日 (水)

ビッグモーター事案-損保ジャパンの親会社責任を認めるのは難しいのでは?

昨日(9月11日)の朝日新聞有料版記事「調査報告書の書き換え、損保ジャパンの出向者関与 BMの部長指示で」を読みましたが、ここに書かれた記事の内容が真実であるとすれば、損保ジャパンのガバナンス、コンプライアンス意識にはかなり深刻な問題がありますね。先日の記者会見でも損保ジャパンの親会社であるSOMPOホールディングスCEOの方に対して「どう責任を果たすつもりか」との質問が飛んでいましたが、なるほど親会社経営陣の責任問題にも発展しそうな気配も感じられます。

実は先日の会見の前後に、いくつかのメディアから取材の申し込みがありましたが、いずれも「親会社であるSOMPOホールディングスの経営トップの責任はあると思いますか、その根拠は?」というものでした。私は社外調査報告書も出ていない状況では、どのような根拠で親会社経営者の責任が発生するのか不明であり、現状では回答できない、と申し上げました(おそらく記者の皆様は責任が認められる、なぜなら・・・といった回答を期待されていたと思います)。

もちろん金融庁への報告内容や社外調査委員会報告書の内容が判明すれば意見も変わるかもしれませんが、私は親会社であるSOMPOホールディングスの経営陣の経営責任を問うことは(よほどの隠れた事情が認められないかぎり)難しいのではないかと考えています。

Sonpogroup02

上図は2018年6月8日の日経朝刊記事をもとに、私個人で要旨をまとめたものです。記事のテーマは買収した海外子会社への統治については大手損保の間で三者三様である、ということを報じたものです。ただ、この各社方針は海外のみならず、国内事業会社への統治方針にも通じるものではないでしょうか。SOMPOホールディングスは、現経営トップの方がコメントされているのですが、スピード感を重視して、経営判断はグループ会社に極力移譲すべきと述べておられます(逆に東京海上日動は中央集権的な意思決定を重視しておられるようです)。つまり、この図表でもおわかりのとおり、グループガバナンスの構築については、親会社の広範な裁量権が認められる領域であり、損保ジャパンとSONPOホールディングスとの関係でも、経営判断のスピード重視、重要な意思決定権の移譲、ということで対応されていたのではないかと。

たしかにSONPOホールディングスの経営トップの方も、社外取締役として損保ジャパンの役員会(取締役会)には出席されていたと思いますが、このたびビッグモーターとの取引再開を決めた「役員会議」は取締役会ではなく、一部の有力役員が集まった会議体のようなので、損保ジャパンのトップの方は、むしろ親会社に(意図的に)情報が届かない状況を作出したうえで決断をされた可能性が高いように思います。ちなみに記者会見の際、SONPOホールディングスのCEOの方は「ビッグモーターの前社長とは面識がなく、一度も会ったこともない」と断言されていました。

これは、いわゆる「(内部統制の限界としての)内部統制の無視、無効化」の典型例であって、親会社がどんなに企業集団内部統制を立派に構築していたとしても限界があると思います。事の重大性からみれば、親会社の責任を追及したい気持ちもわかるのですが、経営責任を問うにしてもなんらかの親会社経営陣に帰責性が認められる必要があります。帰責性を前提とした親会社トップの経営責任を考えるにあたっては、SONPOグループ全体における経営方針に基づく内部統制の在り方や損保ジャパンによる内部統制の無効化の状況なども精査することが必要と考えております。ただ、ひとつSONPOホールディングスに要望したいことは社外調査委員会報告書については公表版を開示していただきたい、ということです。

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