2006年8月 9日 (水)

北越はパンドラの箱を開けるのか?

(8月9日夕方 追記及び訂正あります)

このブログがホリエモンや村上ファンド騒動のとき以上にアクセスが増えておりますのは、おそらくコメントをいただいております「小僧さん」の存在が大きかったと思います。小僧さんが「休養宣言」をされましたが、おそらくいろんなところで小僧さんの噂が流れてしまっているはずですし、このあたりで暫くお休みしていただいたほうがいいかもしれませんね。(いろいろと盛り上げていただいて、本当にありがとうございました。m(。-_-。)mまた他の話題のときにもコメントいただければ、と思っております)

ということで、私の当初の予想も空しくはずれそうですが(王子と北越の和解的統合)、シロガネーゼさんがコメントされているとおり、ついに北越製紙の独立第三者委員会が買収防衛策発動の勧告決議を下した模様であります。(北越の独立委員会、買収防衛策発動を勧告)しかし勧告という用語も、本件では少しニュアンスが違うような気もしますね。独立委員会のホンネのところは、朝日ニュースから抜粋しますと

北越の独立委員会は「発動を決議する際は、必要性や影響を考慮したうえ、時期について適切に判断すべきだ」として慎重さも求めた。北越の取締役会は「独立委の判断を最大限尊重し、適切に判断していく」としている。独立委の佐藤歳二委員長(北越監査役)は勧告書を提出後、「実行(発動)しなくてもいい状況になれば、なるべくしない方が好ましく、慎重に考えて下さいとクギを刺した」と述べ、あくまで条件を満たしていると判断しただけと強調した。

とありますので、独立委員会では、あくまでも「条件を満たしているから、規則にしたがって勧告しただけ。できるだけ回避策も考えてください」といったところではないでしょうか。

しかしこのまま北越製紙はパンドラの箱(事前警告型買収防衛策の発動)を開けてしまうのでしょうか?買収希望者がグリーンメーラーでないことは明らかですし、防衛策を発動することによって株式の価値を毀損するおそれもあるわけで、ここから先の北越製紙の取締役には非常に高度な善管注意義務を負う状況が予想されます。また、今後の法廷闘争次第では、松下、東芝をはじめ、たくさんの企業で導入されている事前警告型の敵対的買収防衛プランの「切れ味」も問われることになるわけですから、注目度はいままで以上のものになってしまうことは想像に難くありません。こんな重大局面ですから、もうすこし激突回避作戦を練ることはできませんかねぇ(^◇^;) 株主への双方の説明の機会をルール化したうえで、TOB期間の延長をはかるとか。この防衛策発動に関してはどっちかが圧倒的に有利な状況にあるとはいえないと思いますので、おたがいにリスク管理の精神も肝要かと。

そんな悠長なことを言ってられる状況ではない、とお叱りを受けるかもしれませんので、すこしばかり事前警告型買収防衛策発動に関する法律上の問題点を検討してみますと、まず王子側にとっての最初の悩みは、どうやって北越製紙の買収防衛策の発動を差し止めるかですよね。北越の防衛策は新会社法に基づくものですから、基準日株主に対する新株予約権の無償割当による希釈化作戦です。(差別行使条件付き)今度の会社法で認められた「新株予約権の株主無償割当」を利用したものですね。(会社法277条~279条)この無償割当は、株式分割と同様、既存株主に不利益なシステムではありませんので、そもそも発行を差し止めることを認める条文は会社法には存在しないはずです。(会社法210条、247条は適用外)そうすると、北越製紙の防衛策発動を王子製紙は差し止めることはできないようにも思われます。この問題点は、昨年の夢真ホールディングスと日本技術開発との紛争と似ているところがあるように思います。あの紛争のときは日本技術開発の株式分割に対して、夢真が新株発行の差止ができるかどうか、(株式分割について、旧商法には発行を差止めることに関する明文規定がありませんでした)というところが問題でありまして、私は上村達男教授による意見書と同様、差止規定の準用(もしくは類推適用)でいけるという説に与しておりました。ところが東京地裁第8民事部(鹿子木裁判長)の判断では、「株式分割」には不公正な新株発行の差止請求に関する条文は適用されない、といったものでした。そういった判決(決定)例からみると、この新株予約権の無償割当というのも、ちょっと差止請求がしずらいのではないか、という不安がありますね。そうしますと、ほかには6か月以上、王子製紙が北越製紙の株主であるとして、北越製紙の取締役の違法行為差止請求権(会社法360条)を被保全権利として差止を求めるということが検討されるかもしれません。しかしこれも、発動すること自体が会社に重大な損害を与える行為だといえるかどうか、要件該当性の判断にすこし疑問が残りますし、どうなんでしょうかね。もうすこし争点をしぼって、王子製紙による統合提案の直後に事前警告型防衛策を取締役会で決議した点を問題にして、そもそも防衛策を導入したこと自体が会社に著しい損害を発生させるおそれがある、と構成したらどうでしょうか。(このあたりは、王子製紙の法務アドバイザーもしくは野村のアドバイザーの優秀な先生方が検討されるところではないかと思いますが)

いずれにしましても、事前警告型防衛策には上記のほかにも、たくさんの法律上の論点があります。平時導入か有事導入か、一方的に定めたルールに買収希望企業が従う合理性はあるのか、そもそもルールに従わないことだけで発動できる、といった要件は濫用的買収者にのみ限定的に適用されるものであって、市場再編型の敵対的買収者の場合には(グリーンメーラーと推定されるものではないから)適用されないのではないか、それ以外にも株主平等原則違反(差別行使条件について)、権限分配法理の適用の可否などなど。。。これらの論点が「てんこもり」の防衛策発動が、本当に司法判断の俎上にのぼるのでしょうか?パンドラの箱を開けたがっている人たちもたくさんいらっしゃるとは思いますし、来年の外国企業による事業再編型買収時代到来へ向けて本格的に日本企業が動き出すためにはそのほうがいいのかもしれませんが、「本当の企業価値」向上のためには、どっかで和解をしたほうがいいのではないか・・・・・と、まだ情けなくも和解説を希望しているところであります。(いつから私は「買収防衛策謙抑主義者」になったんだろう・・・・・また、防衛策発動が現実化する段階まで、つづく・・・・・・・・あっそうそう、相澤参事官と先週、お話したときに話題になりました「金融商品取引法における内部統制報告実務が会社法の会計監査人制度に及ぼす影響」とか、そろそろエントリーしたいと思っておりますので、という予告だけしておきますね。)

(8月9日追記)

北越製紙は日本製紙との提携を発表しました。ますます和解の道は遠のくようで、これは王子の身の処し方にも影響が出てきますね。

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2006年8月 7日 (月)

王子製紙による北越の株主名簿閲覧請求

(8月7日夕方の追記あります。)

(土曜日にいったんボツネタにしておりましたが、品田さんからご指摘を受けましたので、とりあえず中身をすこしだけ改訂して備忘録ネタとしてアップしておきます。本当に王子製紙による仮処分命令の申立がなされるかどうかもわかりませんし、ツッコミどころ満載だと思いますが・・・( ̄◇ ̄)ゞ )

企業のコンプライアンス経営の理解に役立ちそうだと思い、最近「行動経済学(経済は感情で動いている)」(光文社新書254 友野典男氏著 新書版にしてはかなり分厚いです。950円)という本を読んでおります。いえ、別に行動経済学を一から勉強しようといった殊勝な目的からではなくて、書店でパラパラとめくっているうちに、激しくうなずける場面の多い非常に楽しい本でしたんで、何回か読み直しては参考にしております。コンプライアンスという言葉が、単に「法令順守」ということを意味するものではなく、企業における「公正とは何か」を問うものである、といった認識に立ちますと、企業はその価格、賃金、利益などに関して決定をする際には、取引相手(従業員、顧客等)が、それを公正であると判断するか否かを考慮して、(すなわち公正を一つの制約条件として)行動しなければならない、したがって企業は公的、法的な規制がない場合であっても、単純に利潤追求的行動は許されない、短期には高い利潤が得られるとしても、不公正であるという悪評が立てば、長期的には利潤を失うことになる、といったところが「プロスペクト理論(応用編)」の概念のなかで紹介されております。北米トヨタのセクハラ騒動の和解とか、松下関連企業の「偽装請負」非難への早期対応など、公表ベースでは「うちは違法なことは一切していない」とされながら、企業イメージの低下を回避するために対応策を検討するというのは、経済合理的に考えると(訴訟の勝訴可能性なども検討したうえで)正しい選択とは言えないかもしれませんが、企業コンプライアンスの中身にモラルや公正といった制約条件まで含めたうえで、コンプライアンス重視の企業行動だと認識すれば、解決策としては納得できるものなのかもしれません。おそらく日本の各企業においても、とりわけ大企業においてはこういった対応が増えるようになるのではないか、と予想しております。なんで「脱法行為はしていない」と言いながら、金を払ったんだと株主からつっこまれた場合に、経営陣としては、一種の経済的に意味のあるリスク管理であると反論できそうな気がします。(まだ研究段階なので、私がかならずそう考えるかどうかは別としまして・・・)

ところで、話題の王子製紙と北越製紙とのTOB問題ですが、王子製紙がTOB開始後、文書をもって北越製紙の株主名簿の閲覧を求めたところ、北越サイドは会社法125条3項を理由に名簿閲覧の要求を拒絶したそうです。(産経新聞ニュースはこちら)また、8月7日の朝日ニュースによりますと、王子製紙側は株主名簿の閲覧に関する仮処分命令の申立を検討中との記事が出ておりました。名簿閲覧請求者が株式会社の業務と実質的に競争関係にある場合は、株主名簿の閲覧を拒否できるという規定は、新しい会社法において新設されたものです。この規定が厳格に適用されることになりますと、今回のような事業再編型の敵対的買収が行われる場合には、買収希望会社(もちろん株主でもあるという前提ですが)は、買収対象企業から軽々には株主構成については教えてもらえない、ということになりますね。たしかに条文で明確に株主名簿閲覧を拒絶できる事由として規定されていますので、拒絶されてもしかたないのかもしれませんが、そもそも敵対的買収であることが明確となり、またTOB開始された後であっても、買収を希望する企業がまったく対象企業の株主名簿をみることができない、というのもなんかフェアではないような気がします。そもそも事前警告型買収防衛策の手続ルールでは、買収希望企業が統合提案をすることになっていますが、どんな株主がいらっしゃるかによって、(タテマエのうえですが)統合提案の内容も異なるものになるのではないでしょうか。そもそも「あなたのほうから、どうやって株式の価値(会社の価値)を上げるのか、説明しなさい」と言っておきながら、「ただし株主名簿は見せませんよ」というのはどうでしょうか。投資家をひとつの母集団として、どの投資家に対しても企業価値の中身は同じなのでしょうか。先に掲げた「行動経済学」の入門書には、ケインズの「美人投票ゲーム」に関する紹介がありまして、「グループのひとりひとりが、1以上100以下の整数についてもっとも好きな整数値をひとつだけ選んだ場合に、その選んだ数の平均値の3分の2倍にもっとも近い予想をした者が勝つ」といったクイズが掲載されています。このクイズの回答については、合理的経済人の正答は1になるはずですが、実際にいろいろなグループでこのクイズを試してみると、25から40の間が多かったり、10~15が多かったり、様々な回答が得られるそうです。(こういったことにご興味のある方は、前記「行動経済学」50ページ以下をご参照ください)人間はまったく合理的に行動できないということではなく、限定的合理性を有する場合が多いということのようですね。「企業価値」というのも、現在から将来にわたって、人が会社の成長についてどう思うか、ということうを予測するものでしょうから、これと同じく、北越製紙の株主という母集団にとっての「企業価値」というのがあって、これは一般投資家全般に提案した場合に出てくる企業価値と同じものと言えるのかどうか、ちょっと疑問をさしはさむ余地もあるのではないでしょうか。もちろん、そこに登場する株主は一般個人ではなく、法人でありましょうから、認知心理学的な個人の錯覚とか偏見といったものがそのまま適用される場面とは異なるかもしれませんが、法人であってもかならずしも経済合理的な判断ができるとは限らないと思います。企業価値の算定にあたっての「定性的分析」と「定量的分析」といった分類もみられるところですし、はたして「企業価値とは絶対的なのか相対的なのか」といった議論も(私がまったく無知なだけで)どこかですでになされているのかもしれません。

三菱商事に対する第三者割当によって、王子のTOB成否は非常に微妙になってきたわけですから、実質株主を知りたいとか、少数の株を保有している人についても特定したいといった要請は切実なものがあると思います。さて、もし株主名簿の閲覧認可に関する仮処分が申し立てられる場合に、もうひとつの興味は会社法の強行法規性、任意法規性に関する問題です。125条3項をみますと、法文上では例外なく北越製紙は株主名簿の閲覧拒否が可能なように思えます。ただ、当事者間における様々な事情から、この規定が限定的に適用されるものになるのかどうか、そのあたりも非常に興味の湧くところであります。(なんか当事者じゃないので、ずいぶんとオキラクなエントリーになってしまったような・・・・・・)

(8月7日夕方 追記)

経済法のご専門でいらっしゃる泉水教授が、日本製紙の10%未満の株式取得問題について、独占禁止法の部屋ブログで解説をされています。私も日本製紙の社長さんや報道機関の解説「10%未満としたのは、独禁法に配慮したもの」という意味がよく理解できなかったんですけど、(事後報告が必要といったことだけで、果たして大量取得を10%未満に留めておくための動機付けになるだろうか?)泉水教授の解説を読ませていただき、いろいろと考えを整理することができました。(泉水先生にも、私のブログをお読みいただいているようで・・・笑(=^^=) ありがとうございます)

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2006年8月 5日 (土)

北越製紙に対する敵対的TOB(中間とりまとめ)

最近ココログの有償版では、新しい解析システムが導入されました。とくに商売のためにブログを使っている方でもなければ、「なんでこんなに詳しい分析まで必要なんだろう?」と首をかしげたくなるほど、いろいろな解析ができるわけです。よくお越しになる方はご承知のとおり、私のブログはだいたいエントリーの内容が4つに分かれておりまして、①企業会計モノ②内部統制モノ③企業コンプラ関連、そして④M&Aモノに分類することができますが、いつもダントツでアクセス数が多いのが企業会計モノでして、私の仕事と関係の深い内部統制モノとコンプラ関連が同じくらいのアクセス、そしてアクセス数がもうひとつ、と思われるのがここのところ連日、コメントを頂戴しております「M&Aモノ」であります。どれも社外役員の立場から企業価値を考える、といったコンセプトでして、それぞれの分野ごとにコメントをつけていただける方々がいらっしゃるのは、本当にありがたいですね。内部統制関連と企業コンプラ関連につきましては、ふだん実務経験を積んでいる分野ですので、ブログとはいえ、あまり赤っ恥はかきたくないのですが、企業会計モノとM&Aモノにつきましては、本当にこのブログを閲覧していただいている方々といっしょに勉強するつもりで書かせていただいておりますので、今後とも至らぬ点がありましたら、どんどん指摘していただけましたら幸甚です。最近、メールのほうでカミングアウトされる方がいらっしゃるのですが、「商事法務」やら、「自由と正義」やら、「企業会計」などの雑誌で論文を読ませていただいたような方がここにお越しになることを知りまして、ちょっとビックリしたりもするのですが、「きっと、皆さんも論文の執筆とは違い、気軽に時事問題をあれこれと話したいといった衝動にかられるときがあるんだろう」と気を取り直して、こちらも肩の力を抜いて気軽にブログを続けてまいりたいと思っておりますので、今後ともどうかよろしくお願いいたします。

ということで、きょう(金曜日)は表面的には動きのなかった王子・北越のTOB問題でありますが、来週月曜日は三菱商事に対する第三者割当の払込が予定されておりますので、ここですこしばかり中間とりまとめ(なんかずいぶんと偉そうな物言いですが、あくまでも自分の頭を整理するためのものであります)をしてみたいと思います。(ただし、毎日新聞ニュースでは、金融機関がどうも様子見を決め込んでいるために、王子製紙はかなり苦しい立場に立たされているといった報道はなされているようです)

いままで敵対的買収事件が世間の話題になるたびに、日本でも敵対的買収時代が到来することを歓迎する向きの方々からは、「能力のない経営者は去れ!」といったフレーズが聞かれましたけど、今回の王子・北越騒動のなかで、敵対的買収時代を歓迎する側からのこういったフレーズはほとんど聞かれませんね。私の記憶では村上さんだけでなく、社外取締役制度の導入など、ガバナンスのあり方に詳しい先生方などからも、よく日本企業の足腰を強くするためには、できのわるい経営者が自然淘汰されるのは当然であって、株主にその真を問う敵対的買収はどんどん行われるべきである、といったお話を聞いたものでした。でも、今回の騒動をみておりまして、ふと思うところは、企業効率化をすすめ、業界トップの収益力を誇る企業を作り上げた経営者であっても敵対的買収によって経営の場から去らなければいけないのでしょうか。どうして去らなければいけないのでしょうか。これから北越製紙のように、「がんばって企業収益力を建て直して、業界トップに並ぶ企業にしよう」といった高い志をもった経営者の人達は、どんなインセンティブをもって経営に臨めばいいのでしょうか。今回、この問題がどういった結論に至るにせよ、この経営者のインセンティブをきちんと説明できることがとても大切なことであり、また私を含めた傍観者の立場からすると、この事件から学ばなければいけない多くのことが、そこに潜んでいるような気がします。

それからもうひとつ、法曹という視点からは、できるなら事前警告型の敵対的買収防衛策の有効性について、独立委員会による発動要件の判断を含めて、司法の場での紛争経験が蓄積されることを期待しておりますが、どうも今回の問題が司法の場で争われた場合、これまでとは違った様相を呈する主張が繰り広げられるのではないか、という予想といいますか、期待感のようなものを抱いております。これまでの敵対的買収に絡む問題では、買収対象企業(つまり防衛策を発動する側の企業)は、企業価値の持続的向上といった内容について、従業員の士気低下とか、地域住民による拒絶反応とか、取引先の離散(これはニッポン放送事件のときでしたっけ?)など、いわゆるステークホルダーの利益を比較的重視した主張を繰り返し、いっぽうの買収企業側は将来における対象企業の価値といったものを現在価値に引きなおして、目の前の株主へ的確な数値でもってシナジー効果による有利性を提示するといった手法と対比されていたと思います。しかしながら、今回の王子製紙の北越株主への統合提案の内容をみますと、買収する王子製紙側のほうから、緻密に北越製紙のステークホルダー重視の姿勢を示して、敵対的買収による手法の正当性を説明しようとしています。また、途中から登場した日本製紙が約10パーセントの株式取得に至った理由についても、やはり「業界の秩序」などとともに、北越製紙の利害関係者への配慮を説明しています。こういった主張が飛び交う紛争のなかにおいて、いったい「企業価値」というものの中身はどういったもので構成されていくのか、ひじょうに興味が湧いてきますし、これまでとは異質な要因によって買収防衛策が認められたり、もしくは否定されたりするのではないでしょうか。そういえば今月号の「月刊監査役」で公表されているシンポジウム「敵対的企業買収の防衛と企業の社会的責任」のなかで、東大の神田教授も「会社の利益」(=企業価値)の解釈として、株主利益最大化だけではなく、株主以外の関係者の利益を考慮することが結局は会社の利益になる、あるいは企業価値という言葉を使うと企業価値を高める結果となるといった解釈もありうるんだ、と説明されていらっしゃいます(月刊監査役8月号 30ページ以下参照)。また同志社大学の森田教授からは、皮肉なことに、最近のアメリカでは敵対的企業買収などの支配権変動時に経営者がステークホルダーの利益を考慮して行為できる旨の社会的責任規定が30以上の州法で立法化されている、といった解説もなされております(同37ページ以下参照)。私自身、ここで企業価値論の結論的なスタンスをあれこれと述べるつもりはありませんが、事業再編型の大きな買収事案を「本格的な敵対的企業買収」の典型とみるのであれば、そこで問われる「企業価値」というものは、ずいぶんと「一般の経営陣でもわかりやすいもの」(少なくとも司法の場で争われるような事態に至るケースにおいて)であり、また「株主にわかりやすいように開示されるべきもの」に変容されていく可能性があるのではないでしょうか。日本の社会に敵対的企業買収の成功事例が増えれば、東京の大手法律事務所が儲けるとか、フィナンシャルアドバイザー業務が各金融機関に広がるといったことが言われておりますが、各企業の経営者たちが、敵対的買収を試みたり、これを防衛したりするなかで、予測可能な基準のようなものが必要となるはずでありましょうから、こういった企業価値の中身をどう捉えるか、といったことは社会資本のひとつとして、できるだけ一般の経営者にもわかりやすいものに収斂されていくべきだと私は思います。

こういった問題意識を持ちながら、来週のこの騒動の行く末を、できるだけ客観的かつ冷静に見守っていきたいと考えているところであります。

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2006年8月 4日 (金)

北越製紙経営陣の「立ち位置」

司法修習生と採用希望事務所との「お見合い会」に行ってきました。(ある親睦団体の役員としてのお世話係としてですが)いやいや、今年の修習生の就職はたいへんですね。なんといっても現行司法試験合格組(現行60期)と、ロースクール卒業組(新60期)という二つのグループがどちらも来年法曹資格を取得するということになっておりまして、お見合い会もこの8月と来年早々に新60期向けに年2回開催ということになります。採用を希望する事務所も、現行司法試験を合格した人達をとるべきか、それともロースクールを卒業した人達を採用すべきか迷っておられるところも多いように聞いています。100名規模の大懇親会でしたが、修習生側の真剣なまなざしがとても印象的でした。

ということで、今週は「紙」のおはなしに終始した感がありますが、速報版でもお知らせしましたとおり、日本製紙の登場で、ますます当事者における最適解の行方が混沌としてきたようであります。こうじまちさんより、「王子製紙側にとって(野村や著名法律事務所がついている以上は)こういった参戦も想定内ではないか」とのコメントを頂戴しておりますが、それはホワイトナイトとしての参戦なのか、それとも業界事情や再編後の自社の不利益を考慮したうえでの一方的な参戦が予想されたのか、そのあたりはどうなんでしょうね。北越製紙側からの要請で、というのはマズイと思いますので、やはり日本製紙側の計算によって防戦買いが行われるといった予想があったのでしょうか。まぁ、いずれにしましても、今回の日本製紙による株式取得が行われた後の、北越製紙経営陣の立ち位置というのもけっこう難しいように思われます。とりあえずは自社の株主価値を最大化するための対応としましては、参入は歓迎するけども、王子製紙と日本製紙のどちらと組んだほうがトクが真剣に検討する必要があるでしょうし、王子のTOBへの対応策をこれまで同様、検討するのみ、ということになるんでしょうね。

なんとなくですが、いまの当事者間の利益状況を勘案いたしますと、この週末か来週早々にでもまた新たな動きがありそうな気配がしますので、とりあえず今夜はあまり深入りの詮索をしないようにいたします。なんかいろいろと予想してみたところで、金曜日の午前中にあっと驚くようなニュースが出てたら、またガックリしてしまいそうなんで・・・・・

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2006年8月 3日 (木)

(速報)ついに日本製紙グループも登場(王子と北越)

王子製紙による北越製紙株式TOBを阻止するために、業界第2位(といっても王子と紙一重ですが)の日本製紙グループが北越株の大量取得を行う方針だそうです。記者会見は5時からとのこと。

昨日のエントリーにも書きましたけど、そりゃそうですよね。王子だけが北越と統合に企業価値を見出すってことはないわけでして、競業他社もやっぱり同じ気持ちでしょうから。野村と王子はどこまで日本製紙の登場を予想されていたのでしょうか。まだホワイトナイトなのか、競合買付なのかはわかりませんが、とりあえず仕事中ですので、速報版ということで。

(しかし、これだけたくさんの当事者を支える法律事務所があるんですね。監査法人やフィナンシャルアドバイザーなどは利害相反とかだいじょうぶなんでしょうか。)

(追記)

さっそく、日本製紙より「当社子会社による北越製紙株式会社の株式取得に関するお知らせ」と題する書面が公表されております。三菱商事による増資後の議決権ベースで10%未満の範囲内での取得を目的としており、王子のように単独での支配を目的とするものではなく、三菱、北越、日本製紙による「ゆるやかな提携」を目標とするもののようです。日本製紙の株式取得の経過はわかりませんが、どうも三菱、北越とは何の意思連絡もなく独断で取得されたようで、今後の本問題の行方はますます混沌としてきたような気もします。昨日の「亀田VSランダエダ」の判定結果、甲子園初日の「横浜VS大阪桐蔭」の組み合わせと同様、世の中、なにが起こるかわかりません。。。この日本製紙の「株式取得の背景」をお読みになって、「胸のすくような想い」にひたった方もいらっしゃるかもしれませんね。

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王子製紙の「経営統合案」への疑問

昨日の「続・王子と北越は本当に敵対的か」には、著名な方々のコメントをたくさんいただきまして、なんとも恐縮しております。(あの方にまで登場いただきましたが、案の定、どちらかの当事者に絡んでおられるようで、予想どおり実質的なコメントはいただけないようですね。実は大王製紙サイドだったりして・・・・・いや、それはないですよね。(* ̄▼ ̄*) こうじまちさんをはじめ、有益なご示唆をいただいたにもかかわらず、まだお返事をさせていただいておりませんが、また追々書かせていただきますのでどうかよろしくお願いします。)本当は「事前警告型買収防衛プランの脆弱性」といったタイトルで、北越製紙の独立第三者委員会委員の立ち位置について考察してみようと思っていたんですけど、王子製紙のHPで「世界第五位の紙・パルプメーカーへの創造 北越製紙との経営統合」といった王子製紙の経営統合案が出されました(8月2日)ので、こっちのほうに興味が出てしまいまして、すこしばかり路線変更といたしました。松下のESVプランを含め、事前警告型防衛策の使い勝手というものが、今回の統合問題のなかで問われるような気配がしてきましたので、そっちのほうもまたエントリーしたいと考えております。

私はM&Aの専門家でもありませんので(って、毎度このフレーズで逃げておりますが(⌒▽⌒ゞ )、こういったときには、素人的疑問をぶつけてみたほうが気楽なものでありますし、ブログを閲覧されている企業価値論素人の皆様にも参考になるかもしれませんので、ちょっとだけ統合案の中身について語らせていただきます。この王子製紙の統合シミュレーション「公開買付開始の趣旨」なるページの解説に、実は私なりの若干の疑義がございます。こうじまちさんや、あすくるさん(あすくるさんは「先生」じゃなかったですよね?)がご指摘のとおり、860円→800円の買付価格変更が、単なる王子から北越への友好的和解案の意味ではないことはよく理解できましたし、納得もいたしました。(ご教示いただき、どうもありがとうございます)ただ、それはいいとしましても、なぜ王子製紙が買収をしかけた後の(買収が失敗に終わった場合の)スタンドアロンの北越製紙が550円や570円の株価予測なんでしょうか?同業者の大手が「これは欲しい」と思った企業ですから、もし王子が失敗したら、ほかの企業だって欲しいと思うのが常識ですよね。たしか王子のフィナンシャルアドバイザーは野村證券だったと思いますが、その野村證券が昨年発行した「敵対的M&A防衛マニュアル」の191ページを読みますと、

「また、効率的な経営をしており、株価はさほど割安でなかったとしても、敵対的買収の対象となるような会社の多くは業界において再編の相手方として適当な規模であったり、統合メリットが生じやすくなるため、新たに別の買収者が現れる可能性が高いのである」「いったん買収の対象となった企業は、狙われやすい企業であると投資家にも社会的にも認識され、投機的な投資家による売買が増加することも含めて株価の変動が不安定になる」

と書かれています。しかしおそらく野村證券が作成のアドバイスをされたと思われるこの王子製紙の統合シミュレーションには、そんな予想による株価というのはどこにも出てきませんね。これは不思議です。買付価格との比較ですから、ここでは純粋な企業価値ではなくて、予想株価との比較を問題にしているわけですから、外部的要因の有無も当然考慮されるはずですが、どうして野村證券さんのお作りになっている本で大きな要因とされている事実に関する説明がないのでしょうか。純粋な企業価値の比較でしたら買手側にはデューデリの限界もあるでしょうが、外的環境に基づく株価予想であれば容易に理由を説明できると思うのですが。

それともうひとつの大きな疑問ですが、製紙業界再編の流れといったものは、このシミュレーションには織り込まれていないのではないか、といった疑問であります。王子側は、北越側に対して、この550円程度になってしまう株価と買付価格との45,4%の価格差を埋めるに値する企業価値の増加予想についてきちんと株主に説明せよ、と迫っているわけですね。でもこの価格差を説明する義務が発生するのは、まずこの550円という株価予想がある程度の「確からしさ」をもっていることが前提のはずです。王子さんは、三菱が24%の株を保有していても、買い付けが成功すると読んで800円の値段をお付けになっておられるわけですから、現在の製紙業界再編の流れをみれば、たとえ三菱商事さんが株式を保有していたとしても、競業他社が同様に統合を打診してくることも当然に予想されるわけです。そのような現状を前提としますと、550円で株価が維持されるというのはおかしいわけでして、もし550円の株価予想が正しいとするならば、「王子と北越でしか、北越の企業価値を上げることはできない。競業他社と北越では北越の企業価値は上がらない」ということが正しいものとして合理的な説明がなされることが先行されなければならないはずです。改めて申し上げることもないかと思いますが、ここで問題になっているのは、北越の純粋な企業価値を数値に表現するのではなくて、公開買付価格との比較における株価予測ですから、支配権プレミアムの有無を論じることは無意味ですよね。そうであるならば、自社と北越という組み合わせだけが、なぜ株価を上昇させることが可能であるのか、そこのところの合理的な説明がなければ、このシミュレーションは破綻するのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

いままで日本で登場してきた敵対的買収事案というのは、フィナンシャルバイヤーであったり、新規事業展開のためのスピード経営が目的だったりということでしたが、今回のような本格的な市場再編型の買収とは、すこしばかり企業価値を論じる場合に考慮すべき要素が異なるんじゃないでしょうか。この程度の素人考えによる疑問への回答であれば、王子側も即座に説明も可能でしょうし、ぜひとも北越の独立第三者委員会を構成する社外監査役の先生あたりから、質問を投げかけていただければ、と思ったりしております。

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2006年8月 2日 (水)

続・王子と北越は本当に敵対的なのか?

このブログへお越しの常連の皆様方でしたら、すでにご承知のとおり、8月1日午後7時に王子製紙が8月2日より34日間、北越製紙の株式をTOBにて1株800円にて買い付ける旨発表がありました。(各社報道がされていますが、読売ニュースはこちら    王子製紙による公開買付のお知らせはこちら )いわゆるストラテジック・バイヤー(事業戦略上の買収者)による本格的な敵対的TOBの幕開けとなるような雰囲気が漂っているようで、今後の成り行きがたいへん注目されるところであります。個人的な興味で申し上げますと、北越製紙の事前警告型買収防衛策が果たして使われるのかどうか、そのカギを握る独立第三者委員会3名のうち、2名は北越製紙の社外監査役の方々ということですから、明らかにグリーンメーラーとはいえない王子製紙によるTOBに対して、どういった対応をおとりになるのか、非常に関心のあるところです。しかしながら、こういった本格的なM&A事件が勃発したときには、いつも「あの方」のブログを参考に勉強させていただくのが楽しみでしたが、今回はあの方の所属されている法律事務所も、4当事者(王子、北越、三菱商事、野村)のいずれかのアドバイザーであることは間違いなく、ご登場願えないのが寂しい限りですね。。。(憂鬱・・・・)

統合提案を二度も反故にされた王子製紙ですから、もはや堪忍袋の緒が切れたとばかり、当初の予定を繰り上げてTOB開始に至ったわけですし、代表者も「もはや敵対的と言わざるを得ない」とお認めになっておられるのですから、これはもう「王子と北越は敵対的」としか言いようがないようにも思えます。ただ、この期に及んで私はまだ「本当に敵対的なんだろうか」と逡巡しております。前のエントリーからの話の続きで申し上げると、和解的解決の公算が強いのではないか、と。

当事者でないために、こんな呑気なことを申し上げているのかもしれませんが、北越の業績発表の直後におけるTOB(今後TOBに応募せずに保持することによる株価上昇の見込みが当面なさそうであること、つまりは比較的容易に北越の企業価値を判断できるタイミングでTOBをかけたこと)であることや、三菱への第三者割当を撤回した場合には800円→860円にTOB価格を引き上げるとの条件を付したことなどをみますと、王子製紙としましては、北越製紙の取締役がステークホルダーや株主に対して善管注意義務違反にならずに王子のTOBを成立させる「道筋」を残している、つまりまだ和解的解決に至る可能性をきちんと残しているように思えるのです。(北越側の方には怒られるかもしれませんが)この王子の態度というのは、ぎりぎりまで友好的統合をめざそうとしているところであり、製紙業界の国内的事情(需給関係の安定化の急務)と海外事情(中国市場への日本企業の進出)も併せて考えますと、敵対的買収が「品格のない行為」と受け止められるマイナスイメージはかなり薄まっているように思われます。

一方の北越製紙ですが、なにをもって「価値ある選択」とみるか、であります。はたして敵対的買収を排除して、防衛に成功したとして、それが本当に株主価値の実現に寄与することといえるのだろうか、ということを検討する必要がありそうです。(これは野村證券が買収防衛策導入を検討している企業向きに出版した本からの引用ですが)トムソンフィナンシャルのデータによりますと、2001年から2003年までの敵対的買収事件の結果、全体の46%は買収者へ売却され、20%は第三者へ売却され、34%は独立を維持されたそうです。しかし、この独立を維持した34%のなかには、防衛策の実行としてのリストラやスピンアウト、事業売却(事業分離)なども含まれておりますので、元のままの姿で残っている企業というのは「ごく少数にすぎない」のが現実だそうです。また、たとえ元のままの姿で残ったとしましても、おそらく買収対象企業にふさわしい株主によって株が取得され、株価の安定化にも不安を抱えることになります。残された時間のなかで、従業員や株主にできるかぎり有利な条件を引き出して、TOBに賛同するという「英断」も、こういった買収防衛後のリスクを考えても十分検討に値するのではないでしょうか。もちろん、三菱の出方次第といったところもありますが、競業他社によるTOBですから、めいっぱいのプレミアムがついているでしょうし、垂直的統合をはかるためのカウンターというのも、今回はないと予想します。

北越製紙の外国人持株比率は、ここ3期ほどほとんど変動はありませんが、その比率の高さは上場製紙会社ではナンバー1であります。このまま私の予想がはずれて、本当に敵対的TOBがもつれてしまいますと、安定株主が見当たらず、外国人株主の多い北越製紙の場合には、協力要請をしてもけっこうな数の株主が応募することになるんじゃないでしょうか。以上は私の「素人的予想」でありまして、なんの根拠もないものでありますが、「ホンモノの敵対的買収成功事例」を心待ちになさっている業界の方々が多いなかで、あえて友好的M&Aの結末が全ての関係者にとって最大の利益をもたらすことを再考すべきではないか、との視点から、検討してみたような次第であります。(あっ、でももし司法判断が出てくるような方向に進んだ場合でも、臆面もなくまたなんかエントリーしちゃいますんで、そのへんは優柔不断ではありますが、ご勘弁ください・・・・・・(^^;)

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2006年7月26日 (水)

王子と北越は本当に敵対的なのか?

(7月26日お昼 追記あり)(7月27日 お昼 追記あり)

辰のお年ごさんより、ひさしぶりにコメントをいただきました。「王子製紙と北越製紙、敵対的TOBと色づけされていますが、本当にそうなのでしょうか?・・・・・・」いや、私もまったく同感です。王子製紙、北越製紙、三菱商事それぞれの記者会見の報道などから、「新たな敵対的M&A時代の幕開け」「大企業による企業買収への道」といった見出しが躍り、もはや王子製紙が北越製紙に対して敵対的TOBを仕掛けることへの期待感は(世間的に)高まっているかのようであります。野村證券が日本の証券会社としては初めて王子製紙側のM&Aフィナンシャルアドバイザーに就任した、とのことですから、普通に考えますと王子側に分があるようにも思えますね。しかしながら、王子製紙側の全社的リスク管理といった観点から考察してみますと、本当にこの騒動は「敵対的」に進むのかどうかといいますと、私は随分と懐疑的でありまして、やはり(最初のエントリーでも書きましたが)どっかで和解的な解決が図られるのではないかと予想しておりますし、その和解的解決の指導も含めた野村證券のアドバイスが期待されているのではないか、と思うのであります。

「会社は誰のものか」といったM&Aの本論に戻るような言い方になってしまいますが、やはり連結ベースで従業員数2800名にも及ぶ北越製紙を傘下に収めるにあたって、敵対的買収による北越従業員のモチベーションの低下というものは相当大きいのではないかと思います。製紙業界は2000年に入ってからも、相次ぐ人員削減によって厳しい労働環境となったはずで、そんななか北越製紙は苦労して採算改善をはかり高収益企業に好転させてきたわけで、また将来の北越製紙のために新潟の軽量コート紙生産設備も開発させたのはずです。おそらく経営陣が保身目的によって敵対的買収防衛策に走ったとしても、従業員だってそれを知りつつ経営陣に賛同するのは当然ではないでしょうか。いままで、こういった実業ベースでの経営統合というものは対等合併、しかも相当に対等性に気を使って統合を図った例くらいしかシナジー効果を上げていないわけでして、上場企業を吸収合併するにあたり、対等性なくして成功させるのはまず日本では無理ではないか、と私は素直に予想します。

価格競争のライバルを一社でも少なくして紙業界における価格安定を図ることや、中国市場を欧米列強製紙会社の寡占から解放するために、中国ビジネスのリスク低減を図ることは、日本全体の製紙業界を守ろうとする王子製紙の高い志のあらわれでしょうし、だからこそ野村證券もこれを支援するに至ったであろうことは私もたいへん理解できるところなのですが、それで「力ずく」の方法を用いることは、シナジー効果どころか、せっかくの良質な上場企業のパフォーマンスを減少させてしまうだけに終わってしまいませんでしょうか。支配権プレミアムというのは、その企業の将来的な価値を現在価格に引きなおして算出されるものだと理解しておりますが、そもそも将来的価値というのは、買収されたほうの企業の従業員のモチベーション低下といったことをどこまで加味しているのでしょうか。とりわけ今回のように、業績が好調な企業の場合、その従業員も企業に対する思い入れもあるでしょうし、ここまでの道のりで削減されていった仲間達への思いや、その分過重となった労働への思い入れなど、経済的な対価関係だけでは割り切れない意識というものがあるはずです。こういった抵抗を残したまま統合を敢行しても、たしかにライバルの数を減らすといった目的は達成できるかもしれませんが、王子製紙の目指す国内市場のスクラップアンドビルドは絶対に達成できないと思うのですが、いかがでしょうか。

王子製紙が筆頭株主である中越パルプと三菱製紙との合併合意は、昨年わずか発表から3ヶ月で白紙撤回されましたが、これは三菱製紙側の関連会社の社員95パーセントの反対署名によるところが示すとおり、社員の猛反発によるもののようです。(ニッセイ基礎研究所の報告による)これまでの投資ファンドや新興企業による敵対的TOBと異なり、今回は伝統企業による業績の良い企業に対する買収ですから、やはり「企業はモノでなく、ヒトである」という論理が教科書的に妥当するケースだと思います。だからこそ、王子は北越製紙との統合においては(最終的には)敵対的であってはならないと思いますし、リスク管理として、敵対的に買収するのであれば計画を撤回すべきではないか、と思う次第であります。(ここまで苦労をともにしてきた従業員の人たちの前で、これからの荒波にもまれようとしている北越企業の舵取りをする経営陣たちが、たとえパフォーマンスであっても、毅然と大企業に立ち向かう姿勢を見せなければ、経営陣として失格だとは思いませんか?どこまで、その姿を見せ続けるべきかは、まだ私にもわかりませんが・・・・・)

(7月26日お昼 追記)

昨夜は記事を見落としておりましたが、北越製紙の買収防衛策導入に関する東証への事前相談の際、直前に統合提案を受けていたことを東証側に情報提供していなかったようです。(東証の社長はこれに不快感を表明した、とのこと 朝日新聞ニュース)少しずつ事実関係が明らかになってきますが、やはり王子製紙からの統合提案については、東証や三菱商事に事前に告知せずに第三者割当決定や買収防衛策導入に踏み切った、との報道は正しいようです。今後の事件の動向に若干影響を及ぼすような内容かと思いました。

(7月27日お昼 追記)

本業がバタバタしているため、きちんとしたエントリーもできず「追記」で処理しておりますが、毎日ニュースによりますと王子製紙は三菱商事が増資の合意を撤回しない場合でもTOBを開始する方針を固めた、との報道がされています。これは差止請求のための下準備とみるべきか、それとも三菱商事が撤回しやすいような道を作った、とみるべきか、それとも報道にあるように「断固、闘う」という熱い意思表示とみるべきなのか。いずれにせよ、ヤマ場が来るような予感がしますね。。。

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2006年7月25日 (火)

王子製紙・北越製紙統合問題と競争制限

私は大阪のインディーズ系弁護士ですので、M&Aの専門家でも、独禁法の専門家でもございませんが、たとえばもし私が北越製紙の社外役員の立場であれば、三菱商事と提携したほうが企業価値が向上するのか、それとも王子製紙の子会社となるほうが企業価値が向上するのか、わかりやすい説明を株主に対して行わなければならないわけですし、なにか大きな決断をする場合には、株主の代弁者として行動しなければならないわけですよね。

そこで、どういった視点で検討すべきなのか、ということですが、もちろんTOB価格と時価との比較も大切かもしれませんが、支配権プレミアムはとるべきなのか、それとも一般株主のプレミアム取得の機会を減少せしめても三菱商事との提携をとったほうが有利なのか、そのあたり判断根拠となりうるような、なにかいい基準はないものでしょうか。事前審査制度があるために、独禁法違反に関するリスクはあまりないのかもしれません。しかし、競争制限が製紙業界に及ぼす影響をきちんとみておくことは必要ではないでしょうか。北越と王子が統合されるような事態に至った場合、水平的な競争制限が発生します。しかし、ここ10年ほど製紙業界は値引き競争が激化して値崩れが発生し、どこかの大手製紙会社が音頭をとって、また製品の値上がりを成功させる、といった状況がみられたようでして、競争制限には厳格な対応が必要だったのかもしれませんが、東南アジア経済圏からの輸入が活発化したことで、もはや内需との関係から日本における競争制限だけを規制していても、独禁法のめざす成果を期待することはできなくなってきた、さらに製紙業界全体の活性化のために海外における市場獲得を目的として国際競争力をつける必要性も認められることから、あまり水平的なところでの競争制限的な対応はとるべきではないようにも思えます。

いっぽう三菱商事が正式に北越製紙を傘下におさめて、原料から製品製造、営業までを一気にまとめるような場合には、いわゆる垂直的な合併に近い状況に至るために、北越の経営効率化は格段に高まるものと思われますが、一方で製紙業界に原料供給という面で競争制限が働くこととなり、業界全体の利益という点からはマイナスに働く要素となるのではないでしょうか。今後、中国市場の覇権を日本製紙グループや王子製紙など比較できないほどの大きな欧米企業と争うことになるわけですから、ここはぜひ一企業の内部問題ということではなく、日本の製紙業界の将来にとって北越製紙はどう対応すべきか、という視点も(社外役員にとっては)大切ではなかと思います。このあたりはまったくの素人考えなので、またご教示ください。

きょうもいろいろと動きがあったようですが、まだ今後交渉の経過がどうなるのか予想もつきませんので、備忘録程度に自分なりの問題点と思われる点を書きとめておく程度にしておきます。

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2006年7月24日 (月)

王子製紙、北越製紙へ敵対的TOB

王子製紙の中国進出のためのビルドアンドスクラップ政策のためには、規模の大型化と国内基盤の整備が不可欠でしょうから、統合提案というのも理由があるように思われますが、北越製紙としては統合提案を拒否し、三菱商事による資本参加の道を求めているようです。

王子製紙、北越製紙へ敵対的TOB(日経ニュース

王子製紙のTOB実施は、三菱商事との提携撤回を条件としているようですから、北越製紙の一般株主に支配権プレミアム35%の価値を取得させる機会を失わせてでも、三菱商事との提携を選ぶことの合理的な説明を北越製紙の取締役が一般株主に説明できるのかどうか。ひょっとすると、基礎的な事実関係が変動するかもしれませんし、まだなんともいえない状況ですね。

しかし、王子製紙と三菱商事は、共同出資によって世界一の環境保護のための森林管理企業を作っているくらいですから、国策的にも両社が禍根を残すような紛争を起こすことはありえないのではないでしょうか。むしろ、欧米の大規模な製紙企業がアジアに進出している現在、日本企業間で紛争をしている余裕はないでしょうから、行政の介入はあっても、司法判断に至るようなケースにはならないと思っております。もちろん、王子と北越、それぞれに感情的になる経緯はあると思いますが、三菱製紙さんとの関係も含めて、どっかで和解的解決が図られるものと予想しております。

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