2006年8月21日 (月)

フタタの臨時取締役会における特別利害関係人

1 AOKI・フタタ統合問題解決への雑感

AOKIインターナショナルによるフタタへの統合提案問題も、8月18日の株式会社コナカとの株式交換による経営統合決定(8月19日株式交換契約締結)によって、ほぼ収束に向かいつつあるようですね。株式交換比率からみて、26パーセントほどコナカの株式が希釈化されるわけでして、最低でもコナカ、フタタの統合によって26パーセントほどの収益向上をもたらすシナジー効果を両社が説明できなければいけない、と言われておりますが、こういったシナジー効果に関する説明は今後一般株主に対して行われるのでしょうかね。また、郊外型店舗展開サービス業(私が社外監査役を務める会社もこれでありますが)につきましては、不採算店の統廃合時の「解約損」問題が大きくのしかかるわけでして、これを回避するには「カラオケ店」「ネットカフェ」「中古書店」などの比較的改装に費用のかからない店舗へ業態転換するか、同業他社への転貸に回す以外には方法がありません。したがいまして、AOKIの提案は現実問題として非常に収益確保(損失防止)策として筋が通っておりますので、これを覆してコナカとのシナジー効果に優位性があるとするには相当具体的な本業収益確保に関する説明を要すると思うのですが、そういった説明も公表ベースでは見当たらないようです。コナカとフタタの主力取引銀行である三井住友銀行作成による意見書に重きを置く、というのも、なんとなく公正性に欠けるように思いますし、どうも今回の紳士服業界における統合問題には、透明性に欠けるように思います。M&Aのお仕事に関わっていらっしゃる専門家の方は、今回の問題解決までの経緯について、どのように考えていらっしゃるのでしょうか。どうもこれで沈静化したままになりますと、「敵対的買収防衛策の最大の手段はやっぱり株式持合い」というところに落ち着いてしまうような気がしますが、それで本当によろしいのでしょうか。

2 フタタの臨時取締役会で議決権を行使した取締役は誰?

今年の5月28日に株式会社フタタより大証および福岡証券取引所に提出されました「コーポレートガバナンス報告書」によりますと、現在フタタの取締役は8名いらっしゃいます。読売ニュースに記事によりますと、今回の統合先を決定する8月18日の臨時取締役会には8名のうち5名が議決権を行使する予定であり、3名は議決権を行使しないとされております。つまり会社法369条2項にしたがい、取締役会ではその決議について特別利害関係のある取締役は、議決に加わることができない、といった法文に基づいて、あらかじめ3名は特別利害関係人に該当する(もしくは、該当するおそれがある)として議決権行使の対象からは除いた、ということだと思われます。上の読売ニュースでは、コナカの代表者である社外取締役、コナカより派遣されてきた専務(社内取締役)がその3名に含まれていることが記載されておりますが、あとの1名は誰なのか明らかにされておりません。そこで、これは私の推測でありますが、あと1名はコナカの社外取締役に就任しておられるフタタの常務取締役の方ではないか、と思います。

会社法369条2項によって取締役会で議決権を行使できない「特別利害関係のある取締役」とは、いったいどんな内容が「特別利害関係」事由に該当するのか、いろいろと説が分かれているところであります。(そもそも単に議決権を行使できないだけなのか、その審議にすら出席権がないということなのか、についても争いがありますが)基本的にはその決議内容について、当該取締役が個人的な利益がからむために、会社に対する忠実義務を尽くすことが期待できないような事由かどうか、で判断されるべきだと思われます。統合提案を受けている片方の会社の取締役に就任されている方が、果たして「どっちの会社の統合提案を受け入れるか」といった決議に参加するというのは、厳密には「個人の利益」に関係するものではありません。しかしながら「コナカの社外取締役」という立場は、コナカの株主の利益のために行動しなければならない義務を負っているわけですから、そのコナカの提案している統合案よりもAOKIのほうが優れているといった結論を採択できる期待というのは乏しいはずでありまして、やはり「フタタの株主との関係で、忠実義務を誠実に行使することは期待できない」と結論付けるほうが穏当のように思われます。こういった経緯から、フタタの常務取締役の方は、(自ら非常に重要な立場であるにもかかわらず)議決権を行使しない、といったことになったのではないかと推測しております。

ただ、こういった考え方には、「特別利害関係のある取締役」を広く捉えすぎている、といった異論もあるところだと思いますし、もし議決権を排除した取締役のおひとりが、フタタの統合問題で「準主役」を演じておられる常務取締役の方ということでしたら、今後の企業買収実務に及ぼす影響といった点からも、(これを一般化できるものであるかどうか)フォローしておくべき問題点ではないか、と考えている次第であります。

8月 21, 2006 買収防衛策導入と全社的リスクマネジメント | | コメント (0) | トラックバック (2)

2006年8月13日 (日)

買収防衛策導入と全社的リスクマネジメント

紳士服のAOKIインターナショナルが大証2部のフタタに対して公開買付を行うという報道につきましては、いままで全くこのブログでは触れませんでした。といいますのも、本当に敵対的なのかどうか、よくわからないままですし、フタタのHPでも何も公表されておりません(唯一、大証のHPでAOKIより提案を受けた、との1枚のペーパーが公表されているだけです)ので、問題をどのように取り上げてよいのか、ちょっとわからないままでありました。ただ、フタタの代表者(社長)がAOKIと現提携先であるコナカとそれぞれトップ会談をされたことに関する報道をみておりますと、なるほど公表できるほどに社内での合意形成がなされていないということのようですね。

こういった創業者一族が上場後も経営トップに君臨されている企業の場合、全社的なリスク管理というのは難しい場合もありそうですね。私の予想の範囲を超えませんが、創業者である会長さん(代表者のお父様)は、AOKIの100%子会社になるほうがいい、との考えですが、会社を仕切っておられる常務取締役管理本部長の方は、これからも独立経営しかありえない、コナカの提携案についても十分検討する、(会長さんがAOKIとの統合に前向きとの報道陣からの質問には)会長個人の見解を述べられたのでは?との考えのようで、(社長さんはどっちの意見なのかは不明)社内での意見が未だ統一されていないようです。フタタの社員の方々も、一体この先、どうなるのか不安だと思います。こういったときに事前に買収防衛策がきちんと導入されていれば、すくなくとも誰がどのように買収希望企業の提案を受け止めて判断するのか、ひとつの社内指針になりえますから、社内の意思決定の不統一といった事態も起こりにくいのではないでしょうか。(事前に買収防衛策を導入できるだけの資金を準備できるかどうか、といった問題は別にあろうかとは思いますが)事前警告型防衛策の導入とまではいかなくても、こういった創業者一族の影響度の高い上場企業の場合でしたら、せめて全社的リスクマネジメントの一貫として、敵対的買収時における対応マニュアルのような「社内指針」を作っておくことも一考に値するかもしれません。(作るときに、いろいろと揉めたりするかもしれませんが)

しかし青山商事とAOKIとの差はかなり大きいようですね。店舗網の拡大ということだけでAOKIが青山を追撃できるかといいますと、すこし疑問もありそうです。なんといっても青山は「青山カード」を発行していますから、どの年齢にはどのような服装が売れる(売れている)といった情報が瞬時に把握できるのが強みですね。1年に2回購入する顧客から、数年に一回しか購入しない顧客まで、それぞれにターゲットを絞った営業戦略も立てられますし。普通のクレジットカードで購入しても、個人情報保護の関係で、おそらく他社は売れ筋商品のリアルタイムでの把握ができないのではないでしょうか。あと学生さんの取り込みにも青山商事は成功していますよね。紳士服専門店の「土日チラシ大作戦」から一歩も二歩も抜きん出ているように思えるのですが。私はこのAOKIの提携話を聞いたとき、フタタの持っている福岡の一等地のビルを活用して、いわゆる営業戦略の転換を図るための資金源にしたいのではないか、と思ったのですがどうもそうでもないようです。単なる規模の拡大ということでしたら、フタタにとっての企業価値向上というのはいったいどのあたりにあるのか、ひょっとしてコナカとの提携関係を強めるほうが価値向上につながるのではないか、などとも考えるのですが、そのあたりはどうなんでしょうか。

AOKIに対するフタタの回答期限は14日だそうですが、社内の合意がいつできるのか、ということも踏まえ、もう少し先になりそうな雰囲気ですね。

8月 13, 2006 買収防衛策導入と全社的リスクマネジメント | | コメント (0) | トラックバック (0)