2009年3月 3日 (火)

ジャルコ社のMSCB(JASDAQもビックリ!)

2月27日付け開示情報にて、監査役全員辞任というショッキングな事件があったジャルコ社でありますが、3月2日深夜の開示情報にて、その謎が解けました。まさにJASDAQの制止をふりきっての、「ぶっちぎりMSCB」ですね。(行使価格下限付近で転換された場合には、発行可能株式数との関係で既存株主の希薄化はどれほど進むのでしょうね)すでに辞任された監査役の方々も、つぎの監査役が決まるまでは「権利義務監査役」としての職務がありますので、臨時株主総会取締役会にて反対意見を表明されたようでありますが、これが「資金調達」といえるのかどうかは、ちょっとよくわからないところです。「法令違反にはあたらない」と判断されているようですが、(うーーーん)こういった事案が出てきますと、また「第三者割当増資時における株主総会決議の要件化」なる話題がまた浮上してくるのではないでしょうか。また、こういった場面におきまして、監査役さん方は、辞任だけでなく、もう少し踏み込んだ行動に出ていただけなかったか、と。(とりいそぎ、備忘録まで)

3月 3, 2009 MSCBと内部統制の限界論 | | コメント (3) | トラックバック (0)

2007年10月 9日 (火)

MSワラントに対する株主の理解度

ちょうど1年前の2006年10月11日にMSCBと内部統制の限界論というエントリーをアップいたしましたが、サンテレホン事件やオープンループ事件等、裁判所の「有利条件発行」に関する判決なども出た関係で、少しずつMSCBやMSワラント(MSSOとも言われておりますが、証券取引所の開示に関する要請文書等では「MSワラント」と称されておりますので、ここでも「MSワラント」といいます)の法的論点なども認知されてきたようであります。ただし、ビジネス系ブロガーの方々の間では、もうすでにライブドア・ニッポン放送事件以前から、このオプション理論に基づく金融手法の功罪についてかなり詳細な解説がなされていたようでありますし、コーポレートファイナンスにお詳しい方々には、もはやそれほど新鮮な話題ではないのかもしれません。

ただ、最近オックスHD社よりリリースされております「第三者割当てによる第5回乃至第14回新株予約権発行に関するお知らせ(MSワラントの発行」などを読んでおりますと、ホンマ私には内容が理解できません。大証さんなどでも、今年6月に「MSCB等の発行及び開示並びに第三者割当増資等の開示に関する要請について」(東証さんからも、ほぼ同様のものがリリースされています)と題する発行企業向けの要請文を出しておられますし、その要請文によれば、MSワラント発行に関するリリースの最低1週間前までには大証に事前相談に来られたし・・・とありますので、ずいぶんと一般株主でも仕組みがわかるようなMSCBが発行されるようになるのかなぁ・・・と期待をしていたのでありますが、やっぱり私のような典型的な文系人間には、上記オックスHDさんの新株予約権のオプション価値算定の合理性はよくわからないままであります。そもそも、証券取引所の担当官の方々も、とりあえず事前相談は受けるけれども、とくに仕組みの変更を要請したり、一般株主への注意を促すような公表措置をとることもないようでありますので、当事者以外に、いったいどこまでMSワラントの内容が理解できているのか、よくわからないところであります。ちなみに上記リリースの後、オックスHDの株価はストップ高が連日続き、この火曜日からの値動きにも、また注目が集まるところでありますが、オックスのY板(ヤフー掲示板)でのご議論を垣間見ましても、あまりオプション理論に基づくような検討がなされているような気配はなく、また2ちゃんねるの「死期報」シリーズでも、活発な議論はされていない様子であります。

上場企業におけるMSワラント(転換価格修正条項付新株予約権)の発行問題も、純粋な会社法240条、238条あたりの解釈問題ですし(第三者割当てによる場合は、「特に有利な発行金額」の場合には株主総会による特別決議が必要)、行使価格の合理性については、おそらく開示情報からも、一般株主がその価格の合理性を(その気になれば)理解しうる程度に「やさしい開示」が必要になるのではないか・・・と常々思っておりますが、一向にそんな気配はないようですね。たとえ私が「あぼーん」と言われようとも、せめて私クラスの「ごく一般的な株主のレベル」の人間に、その仕組み程度は発行要領から推認できる程度の説明がなされないとおかしいのではないか?と思うのですが。もちろん、MSCBやMSワラントが、ある意味で企業の資金調達方法としては有意義であることは承知しているつもりですし、新株予約権取引上の税務問題や、資本取引における会計上の取扱がスキームに影響している(本件スキームの複雑さは、むしろこっちのほうと関係しているようにも思えますが)こともある程度は理解しているつもりでありますが、まずはその前提として「これはどんなスキームなのか」把握できませんと、なんとも前に思考が進まないわけでありまして、同じような気持ちでイライラされている方もいらっしゃるのではないでしょうかね。たとえば、先のオックスHDの例でいいますと、二項格子モデルをもって合理的な新株予約権の発行条件を算定されているようでありますが、この算定価格というものは、いったい修正条項がどのように使われることを前提としているのか、それとも修正条項は参考とされていないのか等、算定の基礎となる条件事実がはっきりと説明されていなければ、はたして一般株主によって第三者割当がどの程度の経済的不利益をもたらすものなのか、本当に理解できないと思うのであります。MSワラント発行の仕組みにつきましては、相対取引当事者の細かなリスク管理とも関係するものでしょうから、その仕組み自体が複雑になることは承知しているものの、開示情報のなかでは別紙を使ってわかりやすく解説することは当然の前提ではないかと思ったりしております。

このオックスHDのMSワラントにつきましては、どちらかというと表向きでは発行企業側のほうに若干有利に作られていて、一般株主の株式の希薄化を極力低減するためのスキームとなっているのかもしれませんが、そうであるとしても、もう少しオックスHD社の取締役の方としては、株主への説明責任を尽くすべきではないでしょうかね。このMSCBやMSワラントによる資金調達におきましては、たしかに既存株主への影響度をできるだけ少なくするための対応に配慮されつつあるとはいえ、いまのところ「やったもん勝ち」の世界にあるような気がしてなりません。(どなたか、先のオックスHDのMSワラントにつきまして、包括行使請求と個別行使請求との関係について、わかりやすく解説いただいておりますブログ等ご存知の方、またお教えいただけましたら幸いです)

※なお、本エントリーは管理人自身の「ボヤキ」を綴ったものであります。どうか証券取引にあたっては、すべて自己責任においてなされますよう、お願いいたします。

10月 9, 2007 MSCBと内部統制の限界論 | | コメント (3) | トラックバック (1)

2006年10月11日 (水)

MSCBと内部統制の限界論

最近拝読いたしました「粉飾の論理」(高橋篤史著・東洋経済新報社)や、昨日の社外監査役実務研究会における会計士さんのお話に触発されまして、ここのところMSCB(転換価額修正条項付転換社債型新株予約権付社債)、転換予約権付優先株式、行使価額修正型新株予約権のスキームにとても興味が湧いてきました。いろいろなブログ、雑誌、書物などを読んでおりますが、10%程度のディスカウント買取価格が「特に有利な条件」に該当するかどうかは著名な法律学者の方々に、また金融商品としての発行価格の適正性に関する判断基準の研究は金融関係の方や公認会計士の先生方にお任せするとして、とりあえず「社外監査役からみたMSCBとコンプライアンス」といった視点で検討してみたいと思います。

このMSCBの議論の方向性というのは、コンプライアンスという面からみますと、金融商品取引法上の内部統制システム構築論、いわゆる日本版SOX法導入の議論とよく似ているところがありますね。そもそもMSCB自体が「発行すること自体、株式の希釈を招き、株価を低下させるけしからん存在だ」といった議論が先行して注目を浴びたのですが、その後大手の証券会社さんがそれなりにMSCBや新株予約権発行による実績を築き、これは発行企業と買受(引受といったほうがいいような実態だと思うのですが、いちおうアンダーライティング業務とは違いますから、買受ですよね)証券会社との合意内容と、資金需要が正当なものであるかぎりは、株価の需給関係をコントロールでき、関係者にとってはとてもハッピーなスキームである、という考え方があとから浸透しつつある、といった具合ではないでしょうか。ただ、逆に申し上げると、発行企業と買受証券会社(もしくは買受証券会社に貸し株をする大株主)の間におきまして、ひとつボタンの掛け違いが発生しますと、既存株主に大損害を与えてしまうほどのリスクを抱えているスキームであることは間違いないわけでして、これもやはりコンプライアンス的な発想で、検討しておく必要はあろうかと思うわけです。もちろん経営が順調な企業につきましては、公募増資や間接金融によって資金調達は可能でしょうから、むしろ比較的規模が大きくなく、資金調達の必要性はあるが、諸々の事情で他の資金調達手段はちょっと困難ではないか、といった上場企業向けのお話であることは確かでしょう。

日本版SOX法の導入という問題も、そもそもカネボウ事件やライブドア事件など、不正経理の撲滅を目的として法制化が検討されはじめたわけでありますが、現在はどちらかといいますと、コンプライアンスというよりも統制活動までを含めて財務情報の信頼性確保といった目的(いちおう法令遵守とは別の目的として)が最重要視されていて、経営者の不正防止というよりも、もっと広く財務情報の信頼性向上のために有益な管理行為とは何か、といったところで議論が広がりを見せているのが現実ではないでしょうか。それでいて、内部統制には限界がある、とされており、おそらくライブドア事件やカネボウ事件というものは、この「限界」の範疇に入る、つまり、当初の目的とは違って、どんなに頑張って内部統制システムを構築してみても、防ぎきれない経営者の暴走として捉えられてしまうおそれもあるわけです。(「全社的統制システム」や「統制環境」といったところで、取締役や監査役の人的関係を広く判断基準に加えて、内部統制の不備もしくは欠陥とすることが可能という考え方もありうるわけでして、まぁここはおそらく異論のあるところだとは思いますが)

そこでMSCBの話に戻りますが、こういった資金調達スキームが企業にとって有用であり、今後も広く活用されるべきもの、つまり認知度が高くなったとした場合に、会社の一方的な経営判断によって既存株主が著しい損害を被ったり、一部の上場企業にあったような経営の末期症状にある企業が、背任に等しいような金銭流用の道具として用いられるといった弊害を除去する方法とは、いったいどういったものが考えられるのでしょうか。日本で発行されるMSCBにつきましては、有価証券届出書の提出が必要であり、また適時開示の対象ともなりますから、開示制度の充実といった方向性がもっとも適正であるかなぁとも思われますね。しかしながら、「開示制度によるコンプライアンスの実現」というものは、そこに開示された情報によって、投資家が「これは怪しい」といった判断が可能であることが前提で、初めて問題企業の淘汰を実現できるものだと思いますし、現在のように適格機関投資家にだけ販売されるようなものであればけっこうですが、これがもし一般投資家にも購入してもらる商品になりうるとしたら、はたして開示情報によって、どれだけ有益な投資判断ができるのか、きわめて疑問があるように思います。CBの譲渡制限条項や、大株主からの貸し株の有無などを含めて、その内容が開示されることは重要だとは思いますが、それだけではもっとも「開示統制によって、不正利用が防止されることが期待される企業」に対してはあまり効果はないかもしれません。

資本市場における企業のコンプライアンスを考えるにあたって、その1社のステークホルダーの被害を予防すれば足りると考えればいいのか、それとも不埒な1社が発生したために、ほかの数千社の上場企業までが市場の信頼性を失うことで迷惑を被るわけで、その数千社の迷惑予防まで考えなければいけないのか、そのあたりは意見の分かれる可能性がありそうです。アメリカあたりの市場では到底発行規制のために発展しないMSCBであっても、それが日本の市場促進の機能を果たすのであれば、「不埒な上場企業によって、多数の市場参加企業が迷惑を被ることとなる」ために、日本の資本市場の信頼性確保のために、開示統制を超えて、行為規範の増強や、監視機関による十分な監視活動、事後的な刑罰強化まで必要になるのかもしれません。そして、このあたりの企業コンプライアンスに関する考え方によって、発行企業の役員のMSCBへの対処方法も変わってくるように思います。

まぁ、もしMSCB発行といった事態になった場合には、おそらく証券会社のほうから、発行企業へ(価格やリーガルチェックなどの)意見書を書いてもらえるような専門家(弁護士等)を紹介してもらえるのが通常でしょうから、とりあえずは社外監査役としては、そういった専門家のご意見に従えば、善管注意義務を問われる可能性は薄くなるのではないでしょうかね。(しかし、証券会社が紹介する専門家が、買受を中止する方向でいろいろと指導してくれるようには思えませんが)(具体的な社外監査役の行動のあり方への持論につきましては、たいへん長くまりましたので、また後日につづく・・・ということで・・・)

10月 11, 2006 MSCBと内部統制の限界論 | | コメント (4) | トラックバック (0)