2006年10月14日 (土)

製品事故報告と企業コンプライアンス

ここのところ、消費生活用製品安全法の改正案が閣議決定され、来年の通常国会へ上程されるというニュースが目に付きますね。(朝日ニュースほか多数)特定製品についてのみ、厳しい事故報告義務を課すのではなく、ネガティブリスト方式によって、他の法律で既に報告義務が課されている生活用品以外のすべての生活用品に政府に対する重大事故報告義務を課す、というものです。つまり非常に多くのメーカーさんが、この報告義務を課される対象企業となりますし、製品事故にまつわる経済産業省、消費者センター、メーカー、消費者、販売業者、輸入業者、下請業者など、製品を取り巻くステークホルダーそれぞれが、その対応方法を真剣に検討しなければいけない制度であります。

いろいろな記事や改正法案の内容などを検討してみますと、この改正案は会社法上の内部統制システムのあり方と密接に関係する制度を内包しておりますし、これまでは裁判でもなかなか認められることのなかった「内部統制システムの構築義務違反」=「取締役らの善管注意義務違反」といった図式を連想させるものでして、たいへん興味深いものですね。 また「財務報告の信頼性確保」ということよりも、リスクマネジメントと一体となった(経済産業省が以前から提唱していた)内部統制システムのあり方を各社で検討するためのモデルになることは間違いないと思われます。詳細なところは追って別のエントリーに譲ることとして、まず実際の企業の対応方針として懸念されるところは、事故報告に対する正確性と迅速性というふたつの相反する要請をどこでどう調和させるか、といったかなりの難問を解決しなければならない、ということであります。これは、政府に対する「報告」ということのほかに、製品事故に関する「公表」といった企業行動もどこかで必要になるのではないか(これはダスキン控訴審事件からの教訓として)という課題を併せ検討する必要性が認められるからであります。正確性といいますのは、いたずらに一般消費者に不安を与えないように、また取引業者を回復困難な信用毀損状態に陥らせないために、できるかぎり正確な情報を伝えなければならない(事故発生原因が、製品の欠陥によるものなのか、消費者による悪意的使用法によるものなのか、中間の第三者による行為の介在によるものなのか)ということであり、また迅速性といいますのは、被害拡大をできるかぎり速やかに防止し、かつ被害情報を速やかに収集しなければならない、といった、いずれも企業のクライシスマネジメントの要請に起因するものであります。

たとえば製品販売業者は(努力義務になる予定だそうですが)、消費者から事故報告を受けた場合には、すみやかにメーカー側に報告をする義務が規定されますし、また消費者センターに申し出られた製品事故については、これも速やかに政府に報告をする運用となります。また、経済産業省は受領した事故報告を公表し、同様の情報が集積されることによって製品自体における欠陥が推定される場合には、メーカーと機種名を公開する、という対応方針とのことですから、メーカー側としましても、どのタイミングで「報告」だけでなく一般消費者に対して「公表」や「対応措置」を明らかにするか、非常にむずかしい選択を迫られるわけです。パロマの事故や、シュレッダー事故などから判断しますと、製品事故とういものは大規模の企業にとりましても、その信用問題やステークホルダーへ与える損害の程度は大きいことが予想されますので、「報告すべきかどうか」「公表すべきかどうか」「いかなる措置を会社としてとるべきか」など、おそらく取締役会で十分な資料のもと検討すべき事柄ではないかと思います。(もちろん、何が重大事故に該当するか、といった基準は法令等で規定するそうですが、この法律が適用される業種が広範に及ぶ以上はかなり解釈の余地を残すものになると思われます)有事対応のあり方ももちろん重要ではありますが、平時のリスクマネジメントとして、この報告義務のために企業としては何をしておけばいいのでしょうか。

こういった報告義務の法制度が発達し、その法制度をもとに業者団体によるルール作り、社内における規則制定等が行われるにいたり、いままで比較的抽象的な規範概念として捉えられていた「会社法上の内部統制システムの構築義務」といったもののレベルが、取締役の注意義務の範囲を具体的に確定できるレベルにまで、かなり近づいてきたような感があります。上場、非上場に関係なく、製品事故への対応に関するリスクマネジメントをどうすべきか、いろいろとこれから検討していきたいと思います。

10月 14, 2006 改正消費生活用品安全法 | | コメント (2) | トラックバック (0)