2007年2月 7日 (水)

3年ぶりに改定された監査役監査基準

本日、社団法人日本監査役協会のHPにて、3年ぶりに改定された監査役監査基準が公開されております。(改定監査役監査基準)おもに内部統制システムの整備運用に関する監査や、買収防衛策への対応、代表訴訟制度における不提訴理由通知制度など、会社法への対応を中心とした改定が確定したことになります。

すでにリリースされておりました公開草案と、今回の確定版との違いにつきましては、対照表が公開されておりますので、そちらでご確認ください。目立ったところで申し上げますと、「監査役および監査役会は」とされていたのが「監査役は」で統一されているところと、公開草案第30条で規定されておりました「財務報告内部統制」に関する条項がすべて削除されているところであります。とりわけ財務報告内部統制への検証、監視といった監査役の権限が明記されておりましたのは、今回の改定版の「目玉」かと思っておりましたので、この全文削除には少し驚きました。そもそも「財務報告内部統制」といった概念は、金融商品取引法上の内部統制報告制度と親和性を有するものと考えられますが、そうであるならば、非上場企業の監査役監査にも適用されるべき監査役監査基準の条項としてはふさわしくない(「会計監査人」なる文言が用いられておりますし)、との判断があったのかもしれません。また、もし「財務報告内部統制」への監査役の関わりを規定するのであれば、ニュースリリースにも記述されておりますとおり、今後策定が予定されております「内部統制システムへの監査実施基準」(改定監査基準21条7項)のなかで、細則として規定される予定なのかもしれません。ただ、公開草案43条2項から改定監査基準の42条2項への文言の変更から推測してみますと、「財務報告に係る内部統制」と監査役監査との関係を完全に断ち切ったものとまでは言えませんので、とりあえず会計監査人の内部統制監査に対する監査役の関わり方について、「検証」する立場というよりも、「協力、連携」といった立場を前面に押し出した形で解決したのではないか、という見方も成り立ちそうであります。さらに、もう少し細かい話になりますが、公開草案の43条2項の規定は、よく読みますと、会計監査人によるダイレクトレポーティングを想起させる文言となっておりますので(会計監査人による評価に関する・・・)、そのあたりを変更したものと考えることもできそうであります。ただ改定監査基準42条2項の「財務報告に係る内部統制に関するリスク評価」という文言も、すこしわかりづらい内容ですよね。(内部統制に関するリスク評価って、いままで考えてきましたでしょうかね? とりあえず、以上はあくまでも私の推測であります。このあたり、詳しい方がいらっしゃいましたら、またご教示くださいませ)

今後、東京、大阪、名古屋にて、改定監査役監査基準の解説会が開催される予定のようですので、またご関心のある方は、参加されてはいかがでしょうか。

2月 7, 2007 改訂監査基準と内部統制監査 | | コメント (4) | トラックバック (0)

2006年10月20日 (金)

改訂監査基準と内部統制監査

今朝(10月19日)の日経新聞には、昔のテレビ番組の資産価値を真剣に検討する研究会が発足したり、大手のリース会社が合併する記事が掲載されていたり、ということでバランスシートへの無体財産やリース資産の項目化など、会計基準の変更(国際標準化)に伴って社会が大きく動く姿が垣間見れます。「これからの20年は会計の時代」というのは、このブログの大きなテーマのひとつになっておりますが、いくら「会計は経済の後追い」と言われておりましても、引当金の積み増し要求などの事例からみても特定の業界や個々の企業の存亡を左右する力が企業会計の世界にはあるわけでして、会計に「見積り予想」とか「実質的判断」「国際標準」の要請が強くなればなるほど、経済社会を動かす力を持ちうる制度だと思います。また、それだけ会計専門職の方々の責任と権限は大きくなるものと思いますね。おそらく会計基準や監査基準というものの持つ規範力につきましても、今後いろいろなところで研究される対象になるんじゃないでしょうか。

私のような法曹からしますと、そういった会計基準、監査基準というものはそれ自体の理解があまり「メシの種」にはならないものですから、あんまり真剣に検討したこともなかったわけでして、「監査論」なる基本書もあまり読んだことはありませんが、やはり「内部統制評価報告書」に対する監査実務というものの実務指針も出る、ということですから、すこしばかり「改訂監査基準」の中身を検討したりしております。それで、またこういった基準や、その解説書などを読んでおりますと、(いつもと同じように)いろいろとわけのわからない疑問が湧いてまいります。この改訂監査基準というのは、一般に公正妥当な監査基準でありますから、相当高いレベルの規範力を持っていると思うのですが(基本的には平成19年3月期の決算から適用される、ということですよね。もう適用してもいいとも書いてありますが)、この監査基準の「第三実施基準」の「三 監査の実施」第2項におきまして、

2 監査人は、ある特定の監査要点について、内部統制が存在しないか、あるいは有効に運用されていない可能性が高いと判断した場合には、内部統制に依拠することなく、実証手続により十分かつ適切な監査証拠を入手しなければならない。

と規定されております。おそらく、この規定は金融商品取引法193条の2第2項の「内部統制評価に関する監査証明」制度の運用についても規範力を有するものと思いますが、これ、普通に素直に考えますと、もし金商法における監査人(公認会計士もしくは監査法人)の内部統制評価監査において「経営者の内部統制評価は信頼できない」といった不適正意見を述べる場合、その監査人はこの監査基準にしたがって、実証手続によって財務諸表監査の適正性判断のために十分かつ適正な監査証拠を入手しなければならないように読めるのですが、本当にそうなってしまうんでしょうか?要するにある程度内部統制がしっかり確保されているからこそ、財務諸表監査において「試査」が可能になるわけですから、試査ができないことになる、と理解していいんでしょうかね。でも、もしこういった解釈が正しいとしたら、財務諸表監査と内部統制報告実務における監査とは同一人が行うことを前提とした場合、内部統制監査に不適正意見を表明する監査人って、出てこないんじゃないでしょうか?実証手続によって監査証拠を入手しながら財務報告の信頼性を精査する、というのは現実問題として困難なんじゃないですかね。 「実施基準」はあくまでも内部統制監査に関する基準でしょうから、財務諸表監査の実施基準とは別なわけで、最終的に内部統制報告実務が「財務諸表の信頼性確保」にあるとしたら、この監査基準がまともに適用されてしまうような気もします。そうなると実は上場企業にとっては、内部統制評価報告書を作成することというのは、あんまり恐れるほどのこともないようになってしまわないでしょうかね。内部統制評価報告書そのものについての「確認書」というものも徴求されないわけですし。

あと、法律的な発想を会計基準や監査基準に持ち込んでいいものかどうかはわからないのですが、金融商品取引法において義務化される四半期開示については、逐一内部統制評価書の提出とか、内部統制監査というものはなされないわけですよね。そこで行われる監査のレベルというのは、「レビュー」になるものと解しておりますが、それも一応は投資家を誤った判断に導かない程度の「真実性」を確保するために行われるわけですから、当然のこととして内部統制の有効性についても評価されているのではないでしょうか。しかし、その評価というのはなにをもって有効と考えるのでしょうかね。その直前に行った内部統制報告書への監査結果を援用する、と考えるのでしょうか。このあたりも実にわかりにくいところでありまして、もし議論が整理されている文献などございましたら、どなたかお教えいただけますと幸いです。

10月 20, 2006 改訂監査基準と内部統制監査 | | コメント (14) | トラックバック (1)