「内部統制の要点」は「買い」か?
忘年会や来週の講演の準備などで、かなり時間的制約がございまして、あまりブログをシタタめる余裕もありませんが、竹村さんより「内部統制の要点」はどうですか??というご質問がございましたので、すこしだけコメントさせていただきます。
実は、昨日のエントリーに書かせていただきました「内部統制実施基準(公開草案)セミナー」に参加された方には、この「内部統制の要点」(国際会計教育協会 編、第一法規)が付いておりまして、私も昨日、初めて手に取ったような次第です。パラパラっと読みましたが、unkownさんご指摘のとおり、「あれ?これって、e-ラーニングの広報誌ちゃうんかいな?」というのが第一印象でありました。(待ち時間とか、プロジェクターでe-ラーニングのデモビデオ流してましたし・・・・(^◇^;)>)
私のような法曹にとりましては、第4章(新会社法における内部統制と企業法務)はまったく不要ですし、ある程度これまでに監査法人さん主催のセミナーなどに参加された方にとりましては物足りなさを感じられるかもしれません。ただ、どうでしょうか、すでに第3章(内部統制の構築と評価に関する実務対応「内部統制の構築を効率的に進めるために」)を読まれた方はいらっしゃるでしょうか?企業会計審議会の専門委員の先生が執筆されている部分でありますが、ここは秀逸だと思います。わずか48頁程度ではありますが、経営者からみた内部統制評価実務のイメージが、執筆者の内部統制実務への考え方とともに、かなり具体的に伝わってくるのではないでしょうか。きょう、家庭裁判所の帰りに立ち寄りました、天満橋松坂屋ビルのジュンク堂書店でも販売しておりましたので、東京あたりでは比較的容易に入手できるのではないかと思います。この第3章を立ち読みしていただいて、「あれ、これは使える」とお感じになられましたら、ご購入されてはいかがでしょうか。(ちなみに、e-ラーニングがいいのか悪いのか、そのあたりは、私は存じ上げませんが・・・)
この「内部統制の要点」を読んでおりましても、また昨日の多賀谷先生のご講演を拝聴さえていただきましても、ちょっと素朴な疑問として感じますのが、「経営者評価と内部統制の不備、重要な欠陥」についてであります。「不備」や「重要な欠陥」という概念はとても規範的な概念のように理解しておりまして、はたして「不備」や「重要な欠陥」というのは一個、二個・・・というように数えられるものなのでしょうか?公開草案の「Ⅱ財務報告に係る内部統制の評価及び報告」の「②重要性の判断指針」のところでは、「不備」がいくつか合わさって「重要な欠陥」になる可能性がある・・・と書かれておりますので「不備」に関しましては一個、二個といった個数が想定されているように思われます。それでは「重要な欠陥」につきましても、やはり個数の概念は想定されているのでしょうか?先の「要点」の第3章をお書きになっている専門委員の先生は、その記述のなかで個数を想定されているようです。しかしながら、経営者が評価報告のなかで「当社の内部統制には重要な欠陥がある」と表明した場合には、監査人は「いやいや、この会社には2個の重要な欠陥がありますよ」とは言わないわけでして、単に「経営者評価は適正である」とだけ意見表明することになるわけですよね。もし「重要な欠陥」にも個数の概念が想定されるのであれば、経営者評価に個数の誤りがあれば、それを示すのが本来の監査の役割ではないかと思うのですが、いかがでしょうかね?それに、個数を問題にするならば、経営者が「重要な欠陥」と指摘した部分とは異なるところで、(監査人は気づいていた)「重要な欠陥」によって投資家が被害を被った場合、監査人が責任を問われる可能性というのはないのでしょうか。
もし(重要な欠陥を表明した経営者への監査人の意見として)「経営者の評価は適正である」というだけが想定されているのであれば、そもそも重要な欠陥の個数は、財務報告の信頼性にとってはそれほど重要ではないと考えるのが筋のように思われます。むしろ重要な欠陥というのは、ほとんどの場合が「全社的内部統制」に関わるものでしょうし、あまり個数を気にすることはなく、もっと規範的な概念だと捉えてもいいのではないでしょうか。つまり、量的(税引き前利益の概ね5%程度)な部分と質的(投資家の判断に重要な誤りをもたらす可能性のある項目)を総合的に判断したうえで、全体として「重要な欠陥があるかどうか」を考えるべきであって、個数につきましては、経営者が個別に期末日までに「是正したかどうか」を逐一精査する際にだけ考えれば足りるように思われます。
こういった疑問点があと13個ほど私的には残っておりまして、こういった疑問をどう解決しようかと悩んでおります。また実務的に詳しい方にいろいろとご教示いただけますと幸いです。
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