2007年2月14日 (水)

日興CGの内部統制を考える(2)

一昨日のエントリーにはたくさんのコメント、トラックバック、ありがとうございました。私見につきましては、皆様のご意見は賛否両論といった感じでしたが、予定どおり、13日に日興CGより「当社グループの信頼回復に向けた取り組みについて」と題する機構改革案が発表されました。改革案によりますと、「内部統制室」なるものが設置されるそうですが、予想どおり、これは「CEOオフィス」を改組するようですね。気になるのは「グループ間における役員兼職の原則禁止」といったテーマでありますが、(私が読んだかぎりにおきましては)どこにも「原則禁止」ということは書いてありませんね。むしろ、コーポレートガバナンスの強化のなかで「当社常勤役員の他社役員兼務に関する基準の整備」として

利益相反が生じず、牽制が働く形で、ガバナンスが保たれる枠内において、当社常勤役員が他社役員を兼務するための基準を整備する

とあります。ということは、やはりこれからも関連会社間におきまして(つまり親子間において)役員の兼職は(ある基準に基づいて)認める、ということなんでしょうか。といいますか、これであれば私も効率性と法令遵守の微妙な調和点を探るためには異議はございません。「切った張った」の世界を牛耳る証券会社の統括会社が、ガチガチの相互牽制で固めてしまって、どうやって競争企業と戦うのだろうか、あまりにも現実的ではないのではないか、とも思っていたのですが、この機構改革論と副社長辞任の「合わせ技」によってなんとか上場廃止論をかわせるかどうか、微妙なところではないでしょうか。いよいよ次は監査法人の訂正報告書の中身が問題になってきそうであります。

ところで、山一證券のように経営不振によって再編されるのは仕方ありませんが、有価証券の虚偽記載(不正会計)を理由に上場廃止という判断はなかなか勇気のいることだと思います。不動産業界や食品業界のように、業界が飽和状態であって、企業数も豊富で、限られたパイの取り合いというものでありましたら、やむをえないかなぁといった判断もありますが、国策的にこれからアジアナンバー1の証券市場を形成しなければならない、つまり是が非でも「右肩上がり」にしなければならない業界の大手企業に退出を命じるとなりますと、ほかにも同じようなコンプライアンス問題が発覚したような場合、その右肩上がりを担うべき企業数が減ってしまって、国策は頓挫してしまわないのでしょうか。いまのご時世、内部告発やら、内部通報やら、行政のコントロールできないところで過去の不祥事が発覚するリスクがあるわけでして、「もう日興のようなところはない」と果たして言い切れるのかどうか。これまでの証券会社の不祥事の歴史を振り返ってみますと、どうも言い切れることではないと思います。ちょっと発想を変えまして、たとえば日興CGが、本当にこのような機構改革案を実施することができるのであれば、これを証券業界のスタンダードな形にすえて、他社にもルール化する手法を考えることのほうが、「右肩上がりにしなければならない」業界、そして今後の日本のためにも適切ではないのかな・・・とも思ったりします。(それとも、厳格な対応を内外に示すほうが、証券市場の信頼性は向上するのでしょうか?このあたりも意見の分かれるところかもしれませんが)最近あたかも、内部統制の強化=万全の不祥事防止策といった図式で、なにかあると社外でも社内でも内部統制強化が叫ばれることが多いようですが、そういった神話が果たしてどこまで有効なものなのかどうか、またお寄せいただいたメールなどを参考にしながら、考えていきたいと思います。

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2007年2月12日 (月)

日興CGの内部統制を考える

以前、「日興CGの役員会と内部統制」というエントリーをアップしましたが、その翌日に社長さんが記者会見にて、「昨日のは一時的なもの。特別調査委員会の報告結果をみて本格的に内部統制の強化策を発表します」とおっしゃっておられました。そしていよいよ13日に新たな内部管理強化策の内容が明らかにされるようです。毎日新聞ニュースにもリリースされておりますが(日興、不適切会計防止策を13日発表)、2月10日付け日経新聞の朝刊に、かなり詳しく内部強化策の内容が示されておりまして、

  • 持ち株会社側には、子会社の違法行為の有無をチェックする専門の監査部門を設置する。
  • 子会社を監査する専門の執行役員を持ち株会社側に置く。
  • いっぽう子会社側も監査、内部統制部署を設置して、グループ全体において相互牽制により不正問題防止をはかる。
  • グループ相互での役員兼任は禁止する。

というのが骨子のようであります。。(子会社の違法行為を監査する監査部門といいますのは、日興CGのコーポレート・ガバナンス報告書に記載されている「CEOオフィス」のことでしょうか?)

おそらく日興CGのCFOの方が、このたびの不正会計問題に関与していた(と疑われる)ことや、NPIの元代表者の方が、これまたCG側の執行役員を兼務されていたような事実から、このたびの一連の不正会計の原因は、持ち株会社と子会社間でのチェック機能が働かなかったことにあると、現経営陣が認識され、このような防止策を公表するに至ったのではないか、と推測されます。たしかに企業コンプライアンスといった見地からすれば、公表された内部統制強化策も妥当なものであり、現経営陣の新生日興へ向けての意気込みを感じることができそうなのですが、果たして効果的なものかどうか、ということで考えますと、かなり疑問があるのではないでしょうか。

1 内部統制の運用面ではどうなるのか?

グループ全体において相互牽制により、違法行為の予防を図る、というもののようでありますが、そもそも親子会社間において、相互牽制作用というのは期待できるものなのでしょうか?並列的に並んでいる組織間においては、よく相互牽制機能を果たすことがいわれますが、上下関係(支配関係)のあるところで、相互牽制が有効に機能するためには、相当の運用面でのシバリ(運用基準の策定とか)をかけないと期待可能性はかぎりなく0に近いでしょうね。たとえば子会社のトップは社外から招聘するとか、過半数を社外取締役で構成するとか、一般社員への内部通報制度を充実させるとか、目に見える形で、整備された内部統制システムの運用まで保証されるものでなければ、絵に描いた餅に終わってしまうような気がします。まだ不正会計を組織ぐるみに行った本当の動機というものが明らかではありませんので、これは推測にしかすぎませんが、今回はたまたま持ち株会社と子会社との間で、兼務していた役員さんがおられたから、そこに原因があると結論付けておられますが、もし子会社であるNPIが単独で暴走していたような事例であったとすれば、今度は子会社に目が行き届かなかった持ち株会社に責任があったとされて、ぎゃくにグループ全体の内部統制を機能させるために、親会社と子会社との役員の兼任が提案されていたのではないでしょうか。最近の金融検査における「指摘事例集」などを読んでおりますと、金融庁による評定のランクが低いのは、せっかくコンプライアンスプログラムにしたがって「いい組織」を作っておきながら、その運用がまったくできていない、といったところに問題を指摘される事例が多いようです。戦略リスク管理の一環としての内部統制や、オペレーショナルリスクを回避するための内部統制など、今年はもうすこし概念整理が進むものと予想しておりますが、法令遵守体制を構築することを最大の目的とする「内部統制」のあり方については、本当にムズカシイ部分、つまり「運用面」で工夫をこらさなければ目的達成に向けての「説得力」がでないものと考えております。そもそも子会社専門の監査部門というのは、いったい何をされるのでしょうか?子会社との取引に異常性が認められた場合に、その経営内容をチェックするというものでしょうか。

2 親子間の役員兼務禁止は妥当か?

そもそも会社法における内部統制システムの整備に関しましては、会社法施行規則100条に、取締役(執行役)の職務執行の効率性を高める体制の整備、企業集団における職務執行の適正が確保されるための体制の整備が含まれております。(日興CGのような委員会設置会社の場合は会社法施行規則112条2項)また、金融商品取引法における内部統制報告制度(いわゆるJ-SOX)におきましては、その実施基準(まだ確定はしておりませんが)のなかでも、持分法適用会社を含めて、関連会社間の内部統制評価は不可欠なものとされております。したがいまして、どちらかといいますと、内部統制という面からみた場合には、親子会社間におきましては「相互牽制」のために役員兼任を禁止するよりも、役員を兼ねているほうが内部統制的には都合がいいのではないでしょうか。そのほうがトップの意思が即座にグループ企業に伝達される仕組みとなって「効率性」に資することになりますし、最高裁平成18年2月の文書開示命令に関する決定の趣旨からいたしますと、(もし役員兼任禁止ということになりますと)意思形成文書ではなく、意思伝達文書(持ち株会社で決定されたことが子会社へ伝達される)が飛び交うことになり、社内文書が第三者によって開示要求されるリーガルリスクを背負い込むことにもなりそうですし。そもそもこういった場合に、効率性ということよりも、「法令遵守、コンプライアンス経営の徹底」を主たる目的とする内部統制を検討するのでありましたら、役員兼任禁止、といった対応よりも、子会社役員の利益相反場面における行為規範準則を規定したり、子会社のバックとフロントにチャイニーズウォールを作ったり、子会社と持ち株会社とのアームスレングスルールを規定するなどの行為規範によって規制するほうが、なにかあったときの「個人的責任」が明確となり、不正会計防止策としては現実的には有効ではないかと思うのですが。皆様はこのあたり、「内部統制」という視点から、どのようにお感じになられましたでしょうか?

これらの意見は、まったくの私見でありまして、ひょっとしますと既に日興CGにおきましては検討済みかもしれません。また、そもそも役員兼務禁止は当たり前であって、私の常識がずれているのかもしれません。ただなんとなく、この報道を読みまして、どうも内部管理体制の強化策といいながら、ずいぶんと「場当たり的」ではないのかなぁ・・・と腑に落ちないところがございましたので、すこし長くなりましたが書かせていただきました。

(2月12日午後 追記)

経営コンサルタントさん、まほろばさん、コメントありがとうございます。またお返事書かせていただきます。ちょっと日本取締役協会によります「監査委員会ガイドブック」(商事法務)の72ページあたりを読みますと、そこに「(委員会設置会社における)グループ内部統制の考え方」という項目がございまして、内部統制の建付としまして、「いの一番」に「持株会社の場合には、傘下の事業会社の社長を持株会社の執行役として、子会社管理を担当させる」とあります。やはりこのガイドブックにおきましても、企業集団における内部統制のあり方としましては、子会社のトップが持株会社の役員を兼務することが効果的、との考え方に立っておられることがわかります。これが果たして正しいのかどうかはわかりませんが、あながち私の意見も常識から逸脱したものではない、と思われます。

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2006年12月25日 (月)

日興コーディアルの役員会と内部統制

(12月25日深夜追記あり)

ブログの更新が進まなかったこの2週間ほどに、金融審議会から「監査法人制度改革報告書」がまとめられたニュースや、日興コーディアルグループによる(とされている)不正な会計処理に関する一連のニュースなど、このブログをお読みの方には関心のある話題が世間で賑わっておりました。なかでも、23日の日経朝刊では、社外役員による反対意見を押し切る形で2005年3月期の利益水増しに関する決算書が作成されていた、というニュースは、「社外取締役、社外監査役と企業コンプライアンス」をテーマの一つにしている当ブログとしても、たいへん関心のある記事でした。日興側が課徴金納付に応じる、ということのようですので、果たしてどこまで証券取引等監視委員会の把握している情報がオモテに出るのかは不明でありますが、これだけ「内部統制」に関する社会的な関心が高まっている時代ですので、ぜひとももうすこし内容が明らかになってほしいなぁと思っております。たとえばダスキン(大肉まん違法添加物混入に関する)株主代表訴訟におきましては、違法添加物混入の事実が調査委員会の把握するところとなった時点におきまして、おひとりの社外取締役の方が「いまならまだダスキンの信用低下を食い止めることができるから、ともかくも早く世間に公表すべきである」として当時の社長に書簡を送っておられたのでありますが、この方は代表訴訟の被告からははずれておりました。たとえば、今回の日興の事件におきまして、もし「企業ぐるみ」の不正会計処理、といった認識が正しいのでありましたら、取締役会における意思決定についても今後議論の対象になってくるものと思われますが、「粉飾ではないか」と疑義を表明していた役員の方々の責任というものについてはどのように考えればいいのでしょうか。軽々に意見を述べることもできないかもしれませんが、基本的には取締役会議事録に、その意見表明(最後まで反対の意思をもっていたことを示す)が記入されていない限りは、賛成されていた役員方と同様、「消極的ではあるにせよ、賛成の意思を表明していた」と評価されることもありうるのではないか、と考えます。

ただ、上記の取締役会におきましては、すでに監査法人による適正意見が述べられている、という事情があったようですね。社外役員の方々にどこまで財務会計的知見がおありだったのかは存じ上げませんが、公正妥当な会計基準の適用に関する問題点に関する意見の相違があったのでしょうから、ある程度は監査法人の意見にしたがって「やむをえず賛成した」ということが真実でありましたら、免責される可能性も高まるかもしれません。(このあたり、まだ真実がどのようなものであったのかは、報道されているところからは判明していないようですが)しかし、こういった重大な問題が、あいかわらず企業トップだけが責任をとって決着される、ということでありますと、内部統制ルールを導入したり、経営者による確認書制度が法制化されたり、といった制度改革も、これから先、どこまで有効性を持つのか、すこし不安になってしまうのではないでしょうか。とりわけ今回のように、証券取引等監視委員会が課徴金を課すための前提として、さまざまな調査をして、結論として対象企業の内部統制に問題あり、とした場合に、その企業の(経営者による)内部統制評価を適正とした監査法人は、その適正意見になんらかの責任が発生しないのでしょうか。金融商品取引法の成立に当たり、衆参両議院から附帯決議がなされておりますが、その決議によりますと、課徴金制度については、その運用をみて2年ほどで見直しをする、とあります。したがいまして、ここ2年ほどは、(運用実績を作る必要がありますので)積極的に課徴金賦課を前提とした調査や報告の徴求、さらには金融庁への勧告、建議がなされることは間違いないと思いますが、そういった活動のなかで、経営者の内部統制評価や内部統制監査人の評価と食い違う場面というものがいくつも出てくることが予想されます。「内部統制の限界」論で逃げてしまうことや、内部統制報告制度と課徴金賦課制度とは、その制度目的が異なるから、評価が異なることもあたりまえ、と主張することなども考えられますが、こういった場面で、内部統制報告制度が有効に機能しないことをはじめから認めてしまうといたしますと、ずいぶんと財務報告の信頼性確保という制度趣旨からすれば、魅力が半減してしまうようにも思います。

このたびの不正会計処理に関する事案におきましては、当時の監査担当法人の方々が、「どのように訂正報告書をまとめるか」苦渋されているとお聞きしておりますが、今後も課徴金制度と内部統制報告書制度や確認書制度との関係で、監査法人さんが苦労される場面というものがしばしば起きるのではないでしょうか。そういった意味で、金融審議会で話題になっておりました「監査役による監査人選任権、報酬決定権」など、会社法上の監査役の権限強化によって、監査人の独立性を強化する、ということも十分検討されるべきではありましょうが、そうなりますと今度は監査役の責任も現状よりも重いものになるような気もしますし、ここでもムズカシイ問題が発生してしまうことになりそうです。この論点につきましては、もう少し日興コーディアル問題の帰趨をみてからまた検討してみたいと思っております。

(追記)

日興コーディアルの会長、社長辞任会見の席で、特別調査委員会による解明がなされる予定であることが明らかになったようです。(毎日ニュース)記者会見では組織的関与があったことは認めるものの「利益かさ上げを目的としたものではない」と弁明されておられます。では、何のために監査法人と協議のうえ、SPCの連結はずしが行われたのでしょうか。

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