弁護士と「内部統制」の関係(1)
今年の日経新聞社「弁護士」に関する調査結果が26日朝刊の一面に出ておりました。企業アンケートで「今後弁護士への依頼が増えそうな分野」として「訴訟などの紛争解決」に続いて「内部統制・コンプライアンス」(61%)とありまして、いっぽう弁護士からみて企業の依頼が今後増えそうな分野としましては「内部統制・コンプライアンス」がトップ(68%)とのこと。第2位の「友好的M&A」(52%)につきましては、そもそも法務DDがこれまでの弁護士の業務と密接に関連しておりますので、とても納得できるところなのですが、「内部統制・コンプライアンス」分野が、同業者からみても「今後依頼が増えそうな分野」としての共通認識が出来上がっている、というのはとても意外であります。(ひょっとすると、「内部統制」なる言葉よりも「コンプライアンス」なる言葉のほうに、企業担当者や経営者の方は敏感に反応なさったのかもしれませんが。なお、アンケート対象とされている「弁護士」とは、主に企業法務に従事されている弁護士のことだそうであります)東京の大型法律事務所では、それぞれの事務所におきまして、内部統制分野に関する著名な論文や書物を出されている弁護士の方もいらっしゃいますが、あまり関西では「私は内部統制、コンプライアンスに特に関心があります」とおっしゃる先生は、ほとんどお見受けしないようです。
財務諸表監査において、常にこれまで「内部統制監査」に親しんでこられた会計士の先生方と違って、弁護士の場合、この「内部統制」との「出会い」といいますか、「なれそめ」といいますか、そういった出会うキッカケそのものがあまり存在しないのではないか、と思います。私の場合もいまから約5年ほど前に、総合病院のM&Aに何度か関与しておりましたが、たまたま経理担当者や理事長の業務上横領の「証拠固め」を依頼され、いわゆる「不正検査」の仕事に従事することがキッカケとなり、コンプライアンスや内部統制に関連するお仕事に関心を持つようになりました。「よし!これから内部統制を専門にするぞ」と宣言をして、専門知識を習得して、といったことではまったくありません。いまでも体系的に勉強した経験がないものですから、ときどき大きな誤解をしているのではないか、と不安になることもあります。そもそも「何を勉強したら内部統制の専門家になれるのか」よくわからない分野だと思いますし、非常に企業法務にとって大切な分野であることは理解しておりますが、地味でそれほど儲からない(^^;商売だと考えておりましたので、同業者の方々が「今後依頼される可能性のある分野のトップ」と評価されていることにつきましては、「ホンマかいな?」といった印象が素直なところであります。いろんなところで「内部統制」に関連するテーマの講演を今年一年させていただきましたが、会計士さんの視点、内部監査担当者の視点、監査役さんの視点、企業企画部の視点と、それぞれが共通認識のもとで一致しているというわけではありませんので、やはり弁護士からみた内部統制というものも、少し他業種の方からみたものとは異なるのも「あたりまえ」なのかもしれません。また、本来「内部統制」という用語そのものがはっきりとした外縁がなく、ぼやっとしたモノを表現していることは間違いなく、将来的にはもう少し細かく区分できるような体裁に変わっていくことも考えられます。
いずれにしましても、私的には「もっと内部統制に関心を持つ弁護士が増えてもいいのではないか」と感じておりましたので、関西において「企業価値向上を目的として内部統制を語れる弁護士」を育成しよう(もちろん私自身も含めて)との意識のもとで、大阪で研究会を立ち上げて、効率性向上やIPO支援、コンプライアンス経営に関する具体策の社内浸透などを図るための業務活動(単なる研究ではなく、金融機関さんや会計士さん、財務アドバイザーさん、ベンチャーキャピタリストさんなどのお力をお借りしてのお仕事の場)を準備しております。(といいましても、私は代表ではなく、副代表でありますが。。。)来年はいよいよ本格的な活動に入ることと思われますので、またこのブログでも、そういった活動を(もちろん守秘義務に反しない範囲で)ご紹介していきたいと思っております。本当にこういった分野に興味を抱いてくれる若手の弁護士さんが集まってくれるのかどうか、一抹の不安を抱いていたところでありますが、きょうの日経アンケートの結果をみて、すこしだけ明るい気分になりました。
「内部統制」と言われるものは、なにも「日本版SOX法」に限られるものではございません。弁護士の視点からの「内部統制」、企業にとって役立つリーガルサービスのあり方というものも、私なりにいろいろと検討しているところでありますので、またこのシリーズの次回以降、少しずつではありますが、オリジナルな見解としてご紹介していきたいと思っております。
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