2021年4月 9日 (金)

組織風土の違いを感じる東芝(内部告発)と日立(内部通報)の有事対応

昨日の東芝のCVCによる買収提案受領のニュースに続き、本日は日立が上場子会社である日立金属をベイン(連合)を売却先に選定したことが報じられました。国益に大きな影響を及ぼす日本企業というところでは同じですが、海外ファンドから株式非公開化を目的とした買収提案を受けた東芝と、重要子会社(日立金属)を海外ファンド連合へ売却を決めた日立では、どれくらい「組織風土」に違いがあるのでしょうか。

東芝の場合、自身の会計不正事件については金融庁への2名の社員による内部告発が事件発覚の端緒だったわけで、当時は「自浄能力の欠如」と言われました。もし、あの内部告発がなかったら、いったいどうなっていたのでしょうか?ほかにも内部告発者が現れて、遅かれ早かれ会計不正は発覚していたのか、それとも今でもうまく隠蔽し続けていたのか。とくに根拠はありませんが、私は今でも債務超過は上手に隠され続けているのではないかと思います。

一方、日立の場合は(経営の失敗をあえて出し切るかのように)2008年度決算で7800億円の損失を計上し、先日の日立金属の品質偽装事件についてもグループ内部通報によって(長年に及ぶ)不適切な品質偽装の事実を確知し、日立金属の経営トップの隠ぺい工作を認識するやいなや(調査報告書を待つまでもなく)直ちに日立金属の経営トップの交代を実践しました。←後半部分は本年1月に公表された調査報告書および昨年の新聞記事等を参照。

同じような内部通報制度を整備していたとしても、制度が機能する会社と全く機能しない会社があるわけですが、結局のところ、それは通報制度の運用を支える組織風土の違いに起因することが多い。通報することによって「犯人さがし」がされる風土であれば、社員による外部への通報(内部告発)が増えるわけですし、通報することが社内で賞賛される風土であれば、社員も安心して社内通報ができます。「見て見ぬふりなど許されない」「業務の効率性を理由にコンプライアンスを秤にかけない」といった理念を現実の業務で活かせる組織風土はこれからの経済的競争力の大きな要素です。

いま、東芝も日立も役員の皆様は「有事」に直面しているわけですが、有事対応においても組織風土の影響を受けるのではないでしょうか(それは独立社外取締役がたくさんいらっしゃるとしても同様かと)。「自浄能力の違い」といってしまえば簡単ですが、もっと具体的な物言いをするならば、独立社外取締役への報告体制の運用に違いが生じるのではないか。

日立製作所が日立金属のプロバーだった社長さんを、不祥事発覚後(少なくとも対外的にはどこに問題があったのか不明な時期に)ただちに交代させたというショッキングな出来事は、グループ内における報告体制の機能不全への警鐘だったと思います。社内におけるレポートラインが健全であることは、社外取締役からみても、経営判断に必要な情報は適宜的確に受領できる体制が保証されていることを推察させます。

しかし東芝のように(昨年のグループ会社の架空循環取引への関与もそうですが)他者から指摘を受けるまで不都合な事実は開示しない、といった事例が続きますと、たとえ独立社外取締役が多数を占める取締役会であったとしても、重要な経営判断に必要な情報が事前に(社外役員も)共有できているのだろうか・・・との疑念が生じてしまいます。このたびの海外ファンドからの買収提案についても、おそらく東芝の社外取締役の皆様には「現株主の株主価値の最大化」に向けた細心の注意を払った行動が求められますが、トップの「利益相反状況」が顕在化するなかで、必要な情報が共有されるのでしょうか。

2015年の会計不正事件を契機として、大きくガバナンスの改善が期待されている東芝ですが、今回の有事は組織風土の改革が果たされたかどうかを見極める上でも試金石となる事例になりそうです。

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2020年12月 9日 (水)

独立社外取締役が「前科一犯」となる日は到来するか?

昨日のエントリーでは「コーポレートガバナンス改革の転機にあたり、独立社外取締役は覚悟が必要だ」といった話をしました。ただ、私は「もはやそんな悠長なことを抽象的に議論している場合ではない」と考えています。本日は改正公益通報者保護法の施行後における社外役員(主に社外取締役ですが、社外監査役も同様)の役割を具体的にお話しします。もちろん意見にわたる部分は私の個人的見解です。

博報堂DYの元社員らによる架空発注事件を題材として、11月16日の日経新聞「長期にわたる不正 痛手」と題する記事で述べられているように、今年は大手企業の中で長期にわたる架空発注事件が明るみになるケースが多かったようです(たとえば博報堂DY、大和ハウス工業、NTT西日本等、ちなみに上記記事では私のコメントも掲載されております)。本日から朝日新聞では「第一生命の女帝」(89歳の営業職員が顧客から19億円をだまし取った事件)の特集記事の連載が始まり、これもやはり長年発見できなかった不正事件のひとつです。

日本を代表するような大企業において、卓越した内部統制システムを構築しているにもかかわらず、なぜ一部社員の不正が長年発見できないのでしょうか。これはとてもナゾであります。たとえ独立社外取締役がいたとしても、そもそも情報が入らなければ不正を発見することも止めることもできないわけでして、「不正予防と社外取締役の選任とは関係ない」と言われる所以です。過去に「不正見逃し」を理由として社外取締役の法的責任が認められた裁判例もほとんどないのが現状です(社外監査役の責任が認められた事例はセイクレスト、エフオーアイ事件等、いくつか散見されます)。

ただ、そうはいっても社外取締役が「不正事実を知ってしまった以上、不正を放置していたら善管注意義務違反(損害賠償責任)に問われる」のは間違いないでしょう。ということで、私は社内で不正を見つけた社員、片棒を担がされた社員は積極的に社外役員(社外取締役、社外監査役)に通報することを勧めます。とくに、このたびの改正公益通報者保護法では、(常勤従業員301名以上の)事業者は「公益通報対応業務従事者」を定めることが義務付けられますが、本日のお話しはココがポイントです。

※ セクハラ・パワハラの通報は基本的に「公益通報」にはあたらない、と言われていますが、近年、侮辱罪、名誉毀損罪、強要罪、暴行罪、強制わいせつ罪等の刑事犯で立件されるケースもあるので、窓口段階では「公益通報」として扱ったほうが良いケースも増えていることに留意してください

現在、消費者庁で審議されている「指針検討会」の議事録(12月7日に消費者庁HPにて検討会第2回の議事概要が公表されています)を読むと「臨時的に通報を受理した者も『対応業務従事者』として定めるべきか」という点が議論されていますが、「さすがにトレーニングを積んでいない役職員まで『対応業務従事者』には含めるべきではない」との意見が強そうで、おそらく社外役員は「対応業務従事者」には含まれない、という結論に至る可能性が高いと思われます。

しかし社内ルールで「社外役員」も通報窓口とする、と定めれば公益通報者保護法上の「対応業務従事者」に該当することになります。とりわけ本則市場(東証1部、2部)に上場する会社は、コーポレートガバナンス・コード補充原則2-5①を(ほとんどの会社が)コンプライしているわけですから、改正法に基づく「公益通報への対応体制の整備等の措置義務」を果たすためには、社外役員を通報窓口として設置することも検討しなければならないと考えます。

(参考 コーポレートガバナンス・コード補充原則2-5①)上場会社は、内部通報に係る体制整備の一環として、経営陣から独立した窓口の設置(例えば、社外取締役と監査役による合議体を窓口とする等)を行うべきであり、また、情報提供者の秘匿と不利益取扱の禁止に関する規律を整備すべきである。

上記補充原則をコンプライしながら、社外取締役を窓口担当者としないのであれば「改正公益通報者保護法によって『内部通報に係る体制整備』が法的に義務付けられるにもかかわらず、なぜ経営陣から独立した窓口の設置として「社外取締役と監査役による合議体の窓口」を設置しないのか、ほかにこれと同等の実効性を持つ独立した窓口として何を設置しているのか、という点は十分に説明する必要があると考えます。とりわけEU諸国では公益通報保護指令の国内法化が進み、米国では(先日述べたように)報奨金制度によって公益通報が奨励されている状況のなかで、内部通報制度の実効性は機関投資家にも関心が高まるはずです。

さらに、(ここからは上場会社に限らず、常時301名以上の従業員を抱える会社の場合)社外取締役が通報窓口ではなくても、たとえば経営陣が関与する不正疑惑が浮上した場合に、社外取締役が社内調査を担当することは十分に考えられます。そして、社内調査が通報に起因するケースでは、当該社外取締役は「公益通報対応業務従事者」に該当することになるはずです(あくまでも当職の私見です。ここは「指針検討会」の審議で明らかになります。調査後の対象役員の処分審査に立ち会うような場合にも、やはり「対応業務従事者」に該当するものと思われます)。

そして窓口担当であったとしても、社内調査担当であったとしても、通報者を特定させるような情報を漏洩した場合には改正法によって刑事罰の適用を受けます(30万円以下の罰金)。つまり、独立社外取締役は、職務を遂行するにあたって犯罪者となる可能性が生じるわけです。もちろん「故意犯」ですから、悪質な場合に限られますが、ミスで漏えいさせた場合でも、会社が「体制整備義務違反」として行政措置の対象となる可能性が高いわけで、独立社外取締役の行動によって会社が「ブラック企業」の汚名を着せられることになりえます。

一方、改正公益通報者保護法では、対応業務従事者は「正当な理由」がある場合には守秘義務が解除されることになっているので、社外取締役が守秘義務解除の正当理由があるにもかかわらず社内の関係者や監督官庁等と「通報者を特定しうる情報」(通報者を特定させるもの)を共有しない場合には真相解明を困難にしたと評価されます。つまり「不正事実を隠蔽した」「不正実行者に加担した」として、株主から善管注意義務違反の責任を追及されるリスクが生じます。では、どのような場合に「正当な理由がある」と解釈できるのか・・・この点は今後消費者庁より解釈ガイドラインが出される予定になっているので、こちらを理解しておく必要があります。

※ 「正当な理由」とともに「通報者を特定させるもの」(法12条本文)の解釈も問題になりうると思われますが、こちらも正式な消費者庁の解説(ガイドライン)でできるだけ明らかにしていただきたいところです

ということで、これから不正を通報したいと思う方は(公益通報者保護法の改正によって緊張感の高まる)社外取締役・社外監査役への通報が効果的ですし、これから社外取締役・社外監査役に就任される方は、令和4年6月までに施行される改正公益通報者保護法の研修はかならず受けておいたほうが良いと思います。「窓口」を担当することがなくても、有事において「社内調査」を担当することは誰にでも可能性はありますよ。

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2018年2月16日 (金)

(緊急告知)内部通報制度と企業集団内部統制に関連する最高裁判決が出ました。

昨日(2月15日)、最高裁第一小法廷にて、内部通報制度と企業集団内部統制に関連する重要な判決(高裁一部破棄判決)が出ましたね。すでに最高裁HPにて全文が閲覧可能です。

すいません、このような事件が係属していたことについて、全く存じ上げませんでした。企業の内部通報制度(とりわけグループ内部通報制度)の運用、企業集団内部統制の構築実務にも大きな影響を及ぼしそうな判決です。

ちょうど来週月曜日から、監査役協会での講演が始まりますが、監査役(監査等委員)の皆様にとっても必読の判決ですので「緊急解説」をさせていただこうかと思います。

また、来週21日ころに、某団体から重要なソフトローの草案が公表される予定ですが(まぁ、これくらいならフライングもありかな・・・と)、こちらも「緊急解説」させていただこうかと思っております。以上、お知らせまで。

 

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2018年2月13日 (火)

「ないことの証明」にこそ活きる内部通報制度の実効性

来週19日の福岡が初日となりますが、今年も約1か月にわたる日本監査役協会でのリスクマネジメント研修の講師を務めさせていただきます。毎年春の講演では「監査役員の有事対応」についてお話することになっておりますが、今年は「内部通報制度の実効性」について、具体的な事例や設問を交えてお話する予定です(東京3回、大阪2回、福岡、名古屋が各1回です。ご興味がありましたら、ぜひご参加いただければと存じます。すでに満席となっている会場もありますが、監査役協会の会員以外の方も参加可能でございます)。

本日(2月12日)の日経法務面でも、会社の不正を見逃さないための手法として、内部通報制度の活用が挙げられていました。通報を受付ける情報を競争法違反や贈収賄に限定する、社内リニエンシー制度(通報者への社内処分の減免制度)を取り入れるなど、各社の工夫が紹介されており、それなりの成果が期待されるところです。昨年の「全農神戸ビーフ事件」の調査報告書では、上記記事でもコメントを出されている国広委員長が「自社にとってリスクの高い不正に限定して通報義務を社員に課すことも検討に値する」といった提案を示しておられました。

さて、内部通報制度といいますと、不正事実が「あることの証明」「あることの端緒」として活用されるのが当然だと思われていますが、実は「ないことの証明」にこそ活きるということはあまり知られていないところです(そういったことを今回の講演ではお話する予定です)。講演の前に二つほど頭出しをしますが、一つ目は、たとえばこのたびの三菱マテリアル・グループ各社の品質データ改ざん事例が典型例です。

昨年11月に三菱マテリアル社のグループ会社での不適切行為が発表されましたが、このたび新たに多くの不適切事例が発覚し、不祥事対応のずさんさが指摘されています。なかには親会社の窓口に内部通報が届くまで不正を発見できなかったグループ会社もあったそうで、どうしてもっと早く徹底した調査をしなかったのかと批判されています。

このような事態にならないように、有事に至った時点で、いわゆる「件外調査」が不可欠となりますが、その際に活用されるのが社内アンケートや臨時の内部通報窓口の設置です。「発覚した不正以外には、同種類似案件は存在しない」という点をわかりやすく説明するツールとして、通報制度の活用が求められます。とりわけ発覚した不祥事の量的・質的重要性が乏しく、公表せずに済ませることができるかどうかは、この社内アンケートや臨時内部通報制度の運用に依拠するところが大きいです。では、どのように運用すべきか・・・というあたりは、また研修をご聴講される方々にご説明したいと思います(笑)。

そしてもうひとつは2月2日にリリースされました中堅ゼネコンさん(証券コード1822)の第三者委員会報告書が参考になります。いくら研修等によって内部通報制度や内部告発対応の勉強をしたとしても、関係者の目のまえに「私は内部通報です」といった顔をしてやってきてはくれない、ということです(笑)。現実には、後になって「ああ、あのときに私が知った情報こそが、実は内部通報だったのだなあ」と思い返すことになります(ここが本当に実務的にむずかしいところです)。上記の中堅ゼネコンさんの事例では、社長に届いた情報への対応として、経営幹部が「このまま取締役会で本件を取り上げたら、会長との派閥争い、経営権争いの一環だと思われてしまう。しかし経営陣としては本気で会社の姿勢を正そうと考えて行動したい。そうであるならば、本件はA所長からの内部通報という形にして問題提起がされるべきではないか」と考えたようです。ちなみにこの内部通報は、会社の公式な発表では「匿名の通報」として扱われていました。

第三者委員会は、この経営幹部の処理方針を

確かに,その報告を受けたO社長ら会社幹部が,これを直ちにM元会長に報告することなく,また取締役会に上程することもなく,投書という形 で社内通報制度に乗せたため,これに疑惑の目を向ける者もないではない・・・(中略)しかし,この問題の本質が,M元会長らとX社との特殊な関係にある以上,会社幹部らが,これを公平妥当に処理するためには,当時なお会長であ ったM元会長の影響力の行使や介入を防止することが不可欠であると考えたとしても,これが不当であるとも断じがたい(注-個人名は修正しております)。

として「不当なものとはいいがたい」と結論付けていますが、「お家騒動」といった風評が広がることで企業の信用を毀損させないためにも、内部通報制度を活用して「支配権争いではないことの証明」を行うといったことも、企業の有事にはよく見られるところです。このような活用方法が最近になって広がってきた背景事情はどこにあるのか・・・、これも講演にご参加いただいた方々にはお話させていただく予定です(笑)。なお、この第三者委員会報告書には、取締役の「実質的な利益相反状況」における行動の在り方についての詳細な検討が示されており、とても参考になります。とりわけ社外取締役、社外監査役に就任されている方にはご一読をお勧めいたします。

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2016年9月22日 (木)

不正対応に向けた内部統制の機能(日本内部統制研究学会年次大会のお知らせ)

(本日はBLOGOSさん等、転載いただかなくても結構な話題でございます)従業員の長時間労働による過労死問題について、会社役員の責任を追及する株主代表訴訟が、我が国で初めて提起されたそうです。被害者のご遺族に対する(会社の)損害賠償義務が確定したため、従業員としての持株を相続されたご遺族が、今度は株主として会社役員を提訴されたようで、いわゆる職場環境配慮義務違反が根拠となるようです。これだけ世の中で「働き方改革」が叫ばれているわけですから、当然のこととして役員の内部統制構築義務違反を問う裁判は、労働法の世界にも波及することになります(ちなみに原告代理人はミスター株主オンブズマンで知られる手強いM先生ですね)。

さて、私が理事を務めております日本内部統制研究学会の年次大会も、今年で9年目となりまして、来週10月1日(土)に第9回大会が開催されます。隔年で東京開催となりますが、今年は御茶ノ水の明治大学駿河台キャンパスで行われます(詳細は日本内部統制研究学会のお知らせをご覧ください)。今回は企業不正に焦点をあてたテーマが統一論題となっておりまして、「不正対応に向けた内部統制の機能-内部統制の構成要素からみた評価と課題」を研究、報告する内容です。「ごあいさつ文」にもあるとおり、ついに!「統制環境」に光を当てます!いや、ホントに昨今の企業不祥事をみるかぎりは「統制環境」こそ内部統制の最重要課題ですよね。この学会の趣旨は企業実務に役立つ研究ということなので、もちろん企業の方々にも多数ご参加いただける内容になっております。

学会による上記告知のとおり、私は午前中の自由論題報告の司会を務めます。私が司会を務める第1会場は、企業不祥事発覚時の第三者委員会報告書について取り上げます。最初に報告をされる東ソー株式会社の齋藤氏は、自社の内部統制構築に、どのように第三者委員会報告書を活用されているか・・・という点を、長年自社の内部統制推進に携わっておられる実務家の視点から発表いただきます。また、会社法、金商法問題に詳しい遠藤元一弁護士は「第三者委員会制度を再考する」というテーマで、第三者委員会制度の理想と現実に鋭く切り込むことが期待されます。日弁連ガイドライン「なんちゃって」準拠報告の現状などにも触れられるかも?うーーん、こちらも楽しみであります(そういえばこの学会の会長は例の「第三者委員会報告書格付け委員会」の委員ではなかったかなぁ・・・と 笑)。

また、第1会場と同時刻に開催される第2会場の自由論題報告では、青学の町田先生が司会を務められるようで、そちらでは内部統制コンサルタントの方による「企業における内部統制対応の現状」、生命保険会社の方による(COSOフレームワークを取り上げながら)内部統制の原点を探るといった報告内容だそうです。すいません、第2会場分の報告要旨は拝見しておりませんが、時間が重なっていなければ、こっちもぜひ聴講したかったなぁと(いつも思いますが、自由論題といってもジャンルが狭い学会なので、どっちも聴講したい人がかなりおられるのではないかと。なにか工夫できないものでしょうかね?)

その後の研究部会報告では、おなじみの神林先生司会、石島先生部会長による「ITを活用した内部統制のモニタリングの有効性向上策研究」が1年間の研究成果として報告されまして、おそらく会計専門職の方々を中心に聴講される方も多いかと思われます。

午後からは金融庁の古澤審議官による「不正事案等を踏まえた三様監査の進化」に関する記念講演だそうで、古澤審議官としては、あまり講演で扱ったことのないテーマではないでしょうかね?「不正事案等」の「等」は何を意味するのかよくわかりませんが。。。(「不正」と「不適切」は違うということでしょうかね?ともかく監督する立場の人たちが監査部門に何を求めているか・・・という点は、理解しておくと相当に役に立ちます。これは聴かねば・・・)。そして最後は統一論題によるディスカッションとなりまして、おそらく最近の企業不祥事の原因分析や再発防止に関する論点を、内部統制の視点から議論することが予想されます。まちがいなく「統制環境」に切り込む内容ですが、これこそまさに内部統制の本領ですね。細かな統制ルール違反ではなく、「取締役会自体の実効性がない」と評価することへの勇気が求められるところであり、これも興味あるテーマです。

さきほど事務局の方に問い合わせましたところ、まだ参加申込には余裕があるとのことで、都心のキャンパスでの土曜開催ということもあり、ぜひとも内部統制に関する理論、実務両面での企業対応状況にご関心のある方々には多数ご参集いただければ幸いでございます。なお、数年前に日大商学部キャンパスにて開催される年次大会直前、当ブログでご紹介しましたところ、多数の方がお越しになられて当日の配布資料が大幅に不足してしまいました。参加ご希望の方は、事前に出席通知を事務局あてお出しになられて参加いただけますと事務局側としてもありがたいです。どうかよろしくお願いいたします。

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2014年11月25日 (火)

タカタ社のエアバックリコールと内部告発奨励法の活用

自動車部品大手のタカタ社がリコール問題で厳しい状況に置かれています。11月20日の朝日新聞ニュースによると、アメリカの上院議員2名が、自動車部品の欠陥に関する内部告発について高額の報奨金を付与するための法案を提出した、とのこと。当局が把握していなかった事実について内部告発を行った者に対して、企業に課された罰金の最大30%にあたる報奨金を付与する、というものだそうです。

「当局が把握していなかった事実」とは、自動車の欠陥はもちろん、法律違反や報告義務違反などの債務不履行の事実も含む、ということなので、これは重大事故を発生させた「製品の不具合」のような一次不祥事だけでなく、そのような事故の調査を怠った、調査結果を報告しなかった、不都合な証拠を廃棄した、といったような二次不祥事もあぶりだそう・・・という意図があります。「手続的正義」に厳しいアメリカらしい法案ともいえるかもしれません。

11月6日のニューヨークタイムズの記事によると、このたびのタカタ社のエアバックリコール事件について、同社の匿名社員2名からの内部告発があり、2004年の時点でエアバック事故の調査結果が出ていたが、不都合な調査結果を同社が報告せず、調査部品も黙って廃棄した、と報じられていました(なお、先日の公聴会ではタカタ社の幹部の方は否定していました)。アメリカではGM(ゼネラル・モータース)の点火スイッチの欠陥問題も発生しましたが、おそらく、このタカタ社のような事例において、当局側に有利な証言が得られるよう、報奨金を付与して告発を奨励しようとしたものと思われます。

以前、拙ブログでも「内部告発奨励制度」について取り上げたことがありまして(たとえばこちらのエントリー)、2011年に前橋市が内部通報奨励制度を採用しようとしましたが、「通報者に税金から報奨を出すというのは違和感がある」との市民の声が強かったため、結局採用されぬままに立ち消えになった、ということがありました。またフランスのように、個人のプライバシーが厳格に尊重され、内部告発の奨励には否定的な国も存在します。そこで、こういった内部告発奨励制度は日本の社会では受け容れられるのか・・・といった疑問も湧きますが、しかしこれ以上の国民への被害拡大を防止するためには、徹底的な原因究明が必要、という場面では、こういった内部告発奨励制度が必要な場面もあるかもしれません。「高額の報奨金がもらえるのならば、実名を出し、当局側の証人になってもかまわない。それが多くの国民の安全を守ることにも寄与するのだから・・・」といったインセンティブが働く余地はありそうです。

一般的に考えても、「製品の不具合」について、これを公表することにより「補償可能な程度の事業リスク」と把握できれば、コンプライアンス経営の時代、企業は躊躇なく製品の不具合を公表するでしょう。しかし、自社の事業リスクがどれほどになるのか把握できないほどのリスクとなると、いくら「コンプライアンス経営は重要」と唱えている人でも、「間違っていたら社会に重大な影響を及ぼすから、もう少し詳しく調査してみよう」などと理由をつけて、公表を遅らせたり、不都合な真実は隠したうえで報告したりするのではないでしょうか。ましてや品質保証部門や製造部門の責任者となると、たとえ製品の不具合の原因が自分の責任ではないとしても、他人の不正について「見て見ぬふり」をすることが組織としての在り方として正しいと考えるところではないかと(もちろん、これは平時の認識からではなく、有事に至った心境を前提として、ということです)。

これを「組織の構造的欠陥」というのであれば、そのような欠陥を事後的に責めることよりも、むしろ「おかしい」と感じる人が声を出すためのインセンティブを付与することのほうが、国民の生命、身体、人格、そして財産の安全を未然に防止するためには効果的ではないでしょうか。独禁法の世界だけでなく、景表法の世界でもリニエンシー(自主申告制度)が採用されるようになった日本でも、不正をあぶり出すために報奨制度を活用するという思想も決して間違いとはいえないと思われます。

ただ、内部告発奨励制度は、このように国民に迫った喫緊の危険を回避するためには効果的かもしれませんが、内部通報制度の趣旨とは抵触する場面もありうることには注意が必要です。なんといっても第三者への情報提供を国が奨励する、ということになりますので、企業への情報提供を第一に求める内部通報が軽視されるおそれがありますし、企業秘密等の第三者提供の違法性を阻却する理由にもなりえます。現在の公益通報者保護法の制度にも変更が必要となります。事故情報の共有に関する消費者安全法の運用、消費者教育に関する制度の検討などを通じて、自己責任を負える国民、負えない社会的弱者それぞれの危険を、誰がどのように回避する責任があるのか、議論を重ねる中で「内部告発奨励法」の仕組みを考えるべきだと思います。

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2014年3月10日 (月)

公益通報者保護法制は「漢方薬」である(松本先生の名言)

内閣府の調査によると、偽装表示や悪徳商法への対応など、消費者行政に不満を持つ国民は6割に上るとのこと(3月8日の日経新聞記事より)。とりわけ消費者に関心が高い規制項目は「食品の安全性」や「商品・サービスの偽装表示」だそうです。課徴金制度の導入など、消費者庁において景表法改正への取り組みが急ピッチで進んでいるのも、こういった消費者行政への不満に応えるための当局による姿勢の表れかと思います。

以前、当ブログでもお知らせしておりましたが、先週金曜日(3月7日)、福岡市で開催されました消費者庁主催シンポ「お客様と社員の声が企業を救う」に登壇させていただきました。九州まで遠征した甲斐がありまして、シンポでご一緒させていただいた独立行政法人国民生活センター理事長の松本恒雄先生(元一橋大学大学院法学研究科教授)の基調講演を拝聴する機会に恵まれました。消費者政策の歴史と手法から始まり、CSRとコンプライアンス、消費者相談問題、公益通報者保護制度(社員の声)まで、松本先生の消費者政策や企業コンプライアンスに関する意見、思想の一端に触れることができ、たいへん勉強になりました。

1960年代(行政規制によるハードローの時代)→1990年代(裁判所等での権利行使を通じた民事ルールの時代)→2000年代(市場を利用した消費者保護、ソフトローの時代)、規制緩和と標準化(仕様規格から性能規格へ→プリンシプルベースが規制の主流となる中で、企業は自分の頭でルールへの適合性を考えなければならない)、そして「気がついたら企業はステークホルダーから監視される時代になっていた」とのお話は、私がふだん漠然と考えてきたことが間違っていなかったことを確認するきっかけになりました。

なかでも法制度の「生みの親」でいらっしゃる松本先生の公益通報者保護法に関する解説は、なかなか他では聞くことのできない内容でした。以下、松本先生が解説されたなかで、とても印象的だった点のみご紹介したいと思います。ご紹介にあたり正確を期しているつもりですが、もし間違っているところがございましたら、これは当職の責任です。

1 偽装表示問題の頻発と中国ギョーザ事件の発覚が契機となり、当時の福田康夫首相の音頭で消費者庁が作られた。公益通報者保護法は、けっして内部告発を奨励するものではないが、国が「内部告発は決して悪いことではない」と宣言したことに、もっとも大きな意味があった。

2 公益通報者保護法は即効性が期待されるような「抗生物質」ではなく、企業社会の改革のためにジワジワと効いてくる「漢方薬」のようなものである。ソフトロー時代に活用される政策であるから、誠実な企業には効果があるが、そもそも不誠実な企業には効果は限定的である(不誠実な企業への消費者政策のためには別の規制が必要である)。

3 公益通報者保護法は通報先ごとに保護要件が異なり、とくに外部通報の場合には加重要件が存在するが、これは逆にみると、「社員が外部通報しても保護されないほどに企業自身が内部通報制度を作る」ことへのインセンティブとなりうる。加重要件は、このような企業の自浄能力発揮を目的に作ったものである。

4 通報イメージと告発イメージは異なる。通報イメージは内部への不正事実の申告を、そして告発イメージは、不正事実の外部への申告を念頭に置いたものである。

経産省や厚労省、金融庁あたりの規制手法とも重なるところだとは思いますが、消費者行政においても(誠実な企業に対する)企業の自立的行動を促すための施策と、(不届き者企業に対する)罰金、課徴金、民事における損害賠償制度の拡充等、不当な企業利益を吐き出させる施策とのバランスをどうとっていくのか・・・・・、このあたりが今後の行政によるコンプライアンス施策の要点ではないかと感じました(松本先生、どうもありがとうございました!<m(__)m>)。

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2013年2月21日 (木)

組織の不正を許さない30代社員(内部通報・内部告発アンケート)

もうすでにいくつかのブログでも紹介されておりますが、共同ピーアール社(JDQ)の内部告発アンケート結果が公表されております(アンケート結果はこちら)。10年ぶりの調査だそうでありますが、やはり不正を見つけたら告発すべきだ、告発してもよい、と回答された方が、どの年代でも増えているそうです(ちなみに、このアンケートでは内部通報と内部告発を含めて「内部告発」と表現されているようです)。公益通報者保護法に関する期待感が、残念ながら、ずいぶんと薄れてしまっていることもリアルに認識できて参考になります。

マスコミ等でも紹介されておりますので、当ブログでご紹介する必要もないとは思うのですが、ひとつだけ興味深いのは今回のアンケートでも、10年前のアンケートでも、ダントツで内部告発意識の高い年代が30代なのですね。今回の調査結果でも、30代社員の半数以上は不正を見つけたら内部告発する、とのこと。しかし(10年前は30代だった)40代の方々が、他の年代層とあまり変わらない率に落ち着いています。これはどうしてなんでしょうか?やはり30代くらいの会社員の方々は、間違ったことは許さない、不正は見逃さないという熱い想いをお持ちなのでしょうか?それが40代くらいになると、ご自身を取り巻く生活環境の変化や将来への期待感の喪失などによって急速にしぼんでしまうと。。。

そういえば、私がいつも愛読している富山和彦さんのご著書のなかにも、 「30代が覇権を握る日本経済」というオモシロイ本がございまして、この年代でなければ、これからの日本は変えられない!40代、50代はもう変える力はない、経営者は30代の若きエリートに注目せよ、というもので、こういったアンケート結果をみますと、あながち間違いではないのかもしれません。このあたりのことを理解する感覚が、サラリーマンの経験のない私には乏しいように思います。

ところで、この内部告発アンケートを公表された共同ピーアールさん、ん?どこかで聞いたことがあるような・・・と思っておりましたところ、当ブログでも以前ご紹介した事件がございました(組織ぐるみの会計不正に立ち向かう社外監査役の事例)。そうそう、社員から内部告発を受けた社外監査役さんが、経営者関与の会計不正を暴き、社長と他の取締役2名に対して辞任勧告を突き付けた・・・というまさに「ガバナンス+ヘルプライン」の典型的な事例でありました(40年間君臨された社長さんが辞任をされたのですよね)。まさに内部告発の脅威を身をもって体験された会社さんなので、このアンケート調査結果への思い入れもかなり強いものかもしれません。

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2013年1月28日 (月)

グループ企業ヘルプライン(内部通報制度)活用のススメ

企業集団における業務執行の適法性を確保するための体制の一環として、最近はグループ企業ヘルプライン(内部通報制度)を策定している親会社も増えつつあるように思います。子会社で発生している不正を知った社員が、子会社だけでなく、親会社の内部通報窓口に情報を提供できるシステムです。子会社としては、自身の社内で発生した不正事実を自ら調査したい、という気持ちはわかるのですが、親会社が子会社で発生している不正を覚知することは非常に困難ですし、ましてや子会社トップの不正となりますと、親会社への不正報告も期待できないため、かなり実効性は高いものと考えております。

これまでグループ企業ヘルプラインが有効に機能した例というのも、あまり世間に公表されてこなかったのですが、1月24日、医薬品販売大手の富士薬品社の子会社トップが業務上横領の件で(経理課長と共に)逮捕されたことを受け、本件に関する富士薬品のリリースが出ております。当社100%子会社の元社員逮捕のお知らせ(お詫び) (ちなみに毎日新聞ニュースはこちら)いわゆる子会社不正が親会社への内部通報(内部告発?)によって社内調査に至った事例だと思われます。

この富士薬品社のリリースや新聞で報じられているニュース記事を総合しますと、子会社の代表者および経理課長から領収書の偽造を命じられた社員が、この事実を親会社に通報し、社内調査を進めたうえで警察署へ相談、刑事告訴に及んだとのことであります。富士薬品社のリリースからしますと、社内にグループ企業ヘルプラインが設置されていたかどうかまでは不明でありますが、ともかく自社に通報がなされたことで自浄能力を発揮できた事例だといえそうです。また、不正への加担を命じられた子会社社員にとって、親会社への内部通報が唯一の救いだったものと言えますので、(すでに被害額は1億円以上に上るようではありますが)不正拡大を防止するのに、本件通報が役立ったものといえそうです。

ちなみに、こういった事件の社内調査を支援した経験からしますと、1億円以上の被害が生じているにもかかわらず、どうして告訴金額が300万円なのか・・・という疑問も生じるかもしれませんが、横領事件の告訴には有力な証拠が必要となります。警察、検察側からは、「確実に立件できる範囲で被害額を限定してほしい、そうすれば告訴を受理し、強制捜査に踏み切れる」といった要望が出されるからです。決して親会社から出向している子会社代表者ということで、身内に対して甘い処理を行っているわけではありません。また、調査の相手が子会社トップや経理課長、ということですから、調査準備の密行性をどのように確保すべきなのか、とても難しいところがあります。したがいまして、アクセスできる資料にも限界がありますので、300万円程度の被害申告に至ったものと推測されます。

しかし経理課長が預金口座のすべての管理を任されていた、ということですから、経理課長と代表者がグルになってしまえば内部統制は全く機能せず、親会社としては子会社不正を認識することは困難であります。内部統制が無効化された状況において、不正を早期に発見することが可能となるのは、やはり本件のように社員による内部通報が効果的であることを痛感いたします。

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2012年9月 3日 (月)

自浄能力を発揮した大阪ガス社の危機管理(社内賭博事件)

さて、先週に引き続き内部通報・内部告発モノのネタであります。先週金曜日、大阪ガス社の野球部の部員36名(現役28名、OB8名)が、少なくとも3年ほど前から高校野球賭博、競馬賭博に打ち興じていた、ということを同社が公表、直前に迫った日本選手権予選への出場も辞退、ということが報じられておりました(新聞やニュースでもかなり大きくとりあげられておりました)。同社では、人事部長さんらが謝罪会見を開き、関係者の社内処分も今後行われるようです。

当ブログで過去に何度も申し上げておりますとおり、社内における遊興賭博が大問題とされる理由は、①反社会的勢力と企業との癒着の発端となりやすい不正であること、②「これくらいなら・・・・」と、不正を黙認してしまう社内風土を醸成させてしまうこと、そして③社内に(たとえ軽微なものであったとしても)形式的違法状態を存在させることによって、警察権力が自由に社内捜査に立ち入る口実を作ってしまうこと(たとえば別件の重大な法令違反の捜査のために、賭博容疑を活用する等)といったところにあります。大阪ガス社のごく一部の社員による賭け事が、社を挙げての徹底調査の末、警察の捜査が開始されてしまうほどの大きな問題として捉えられてしまう、ということに一番驚いているのは、おそらく賭博に関わった野球部員の人たちではないでしょうか(賭博参加への勧誘が社内メールや張り紙で行われていたそうですから、おそらくリスクに関する認識が当事者にはなかったのではないかと)。

掛け金の多少にかかわらず、社内で賭博が行われることは問題であり、もちろん非難されるべき問題ではありますが、不正が発覚した以上、企業の危機対応の巧拙が次の企業コンプライアンス上の課題となります。今回の一連のマスコミ報道からしますと、大阪ガス社の対応としては、企業の自浄能力がはっきりと示された典型的事案ではないかと思われます。まず、マスコミでは「内部告発があった」と報じられていますが、実際には匿名による文書が社内の窓口に届いているわけですから、これは内部告発ではなく「内部通報」だと思われます。内部告発であれば、関係書類(証拠)を添付して、マスコミへ通報がなされるのが一般的であります。つまり匿名の通報者は、社内で徹底的な調査が行われ、自浄作用が発揮されることを期待していたものと推測されます。

次に、自浄能力が発揮された、といえるためには、社内調査や第三者委員会調査の際に、特に要求される「真実性」「迅速性」「客観性」のトレードオフの関係について、バランスよく配慮された調査がなされていることが必須の要件であります。今回の大阪ガス社の社内調査に関するマスコミ報道からしますと、まず8月13日に通報が届き、それからわずか2週間ほどで36名もの社員の不正行為を認定しているため「迅速性」についてはまったく問題ありません。10年前からやっていた、という社員の証言もありますので、なぜ過去3年間の不正に限定するのか?といった「迅速性優先のために真実性を犠牲にしたのではないか?」との疑問も湧いてくるところでありますが、これは賭博罪の公訴時効の関係や、時間の経過による証拠収集の限界があったため、と認められますので、これも「真実性」との関係では合理的な説明がつくものであります。さらに、社内調査で認定した事実が、果たして公正なものであるか、という点につきましては、同社は大阪府警に調査結果を報告し、引き継ぎを済ませたというものですから、できる範囲での「客観性」は担保されているものと思われます。そして不正事実に関する経緯を自ら公表し、社内処分も今後行われるというものなので、自浄能力を発揮したクライシスマネジメントとしては、相当にレベルの高いものであり、他社にも参考になる事例ではないでしょうか。

商品の提供にあたり、一般事業会社以上に消費者からの信頼を確保しなければならないガス事業者ということで、大阪ガス社としても万全の態勢で今回の不正問題に対処したものと思われます(幸い日本野球連盟から処分は課さない方針のようであります)。社外第三者に対して自浄能力のあるところを示す必要性も高い事例かとは思いますが、こういった不正に対して経営陣が断固許さないという大阪ガス本社および同社数百に及ぶグループ会社の役職員へのメッセージとしての意味も強いものがあると推測いたします。

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