2007年2月22日 (木)

いちご白紙をもう一度

すでにご承知のとおり、大阪製鐵による東京鋼鐵の完全子会社化に向けての株式交換契約が、本日の東京鋼鐵側株主総会により否決されたようです。(日経ニュースはこちら。否決ラインは出席株主の3分の1超でして、40パーセント以上の否決票が投じられたとのこと)いちごアセット・マネジメントによる委任状集めが奏効されたようで、東京鋼鐵側の開示情報によりますと、株式交換契約は白紙となり、今後も統合比率の見直しに向けた動きはしない、とのことだそうです。(なお、大阪製鐵側は、簡易株式交換となるため、総会決議は不要であります)しかし、東京鋼鐵側株主にしてみれば、もう一回大阪製鐵側と統合比率の変更に向けた努力を東京鋼鐵側経営陣に希望するところではないでしょうかね?(まあ、最善を尽くして10月26日付けの統合比率発表に至ったとする手前、そう簡単に変更することはできない、との姿勢も理解できるところでありますが)

またまた、おバカな疑問でたいへん恐縮ですし、どっちの味方なのか不明な立場で安閑としているように見えるかもしれませんが、この委任状争奪戦に関するニュースやブログなどを拝読していてよくわからないところがございます。まず、ひとつめは、本日否決された株式交換契約でありますが、否決されたとはいえ、55%程度の株主は大阪製鐵側の株主として今後も東京鋼鐵の傍に残ることに同意をされたわけであります。つまり、ある程度の少数株主の人たちも、これだけ話題となった「いぢごアセット」の言い分をいちおうは聞きながらも、最終的には経営者サイドの意見に与した、ということであります。これはどう解釈すればいいのでしょうか?(以前から時折、TOBに関する疑問として、このブログでも書いてきたことでありますが)東京鋼鐵は大阪製鐵と比較して、長い歴史を持つ会社でありまして、おそらく株式を長期保有されている株主さんも多いのではないでしょうか。また経営陣も長期保有を勧めるようなIR活動を行ってきたのではないでしょうか。そういった株主さん方に対して、東京鋼鐵の経営者としましては、プレミアムをつけてのTOBに賛同すること(つまり、TOBということになりますと、通常は金銭で買付価格が決定されますから、お金で精算して皆様、さようなら、ということになりますが)を勧誘するよりも、これまでどおり、子会社にはなりますが、今後も一生懸命、企業価値を上げていきます、と決意を表明して、だからこそ我々についてきてください、と長期で株式を保有してもらうことを勧めることにも一理あるのではないか、と思う次第であります。(私だって、本当に事業統合が企業価値を上げるのであれば、機会コストを考慮しても、その株式を保有したいと考えると思いますし)そうしますと、MBOとは異なり、そのまま統合企業の株主として残るわけでありますから、支配権プレミアムの移動という概念も異なってくるのではないでしょうか。(このあたりは、私の勉強不足でありますが、統合比率を検討する場合に、プレミアムは発生するとしましても、それが、株主が権利を放棄する場合、つまりTOBと同じような基準で上乗せしなければいけないものなのでしょうか。また、おそらく交換契約時を基礎とした理論株価を中心に比較しなければならないでしょうから、プレミアムの考え方についても、いろいろと意見が異なるところかもしれませんが。ただ株式交換契約の発表と一緒に、業績の上方修正をしたことにつきまして、一見すると一般株主を甘くみているようにも思えますが、うーーん、これはすこし理解に苦しむところです)

もうひとつの疑問でありますが、おそらく東京鋼鐵社としましては、いちごアセットが委任状争奪に至った時期以降、一般株主に対しましては「統合は今後の企業価値を上げるものであるから、ぜひわれわれ経営陣の意向に賛同してください」とのお願いをされていたと推測いたします。そして、それに賛同した一般株主も多数いたものと推測いたします。そうだといたしますと、株式交換契約は相手方(大阪製鐵)のあるものとはいえ、その賛同していただいた株主の皆様に対して、もうすこしきちんとした説明責任を果たしてもいいのではないでしょうかね?否決の趣旨を表明した株主の方々も、統合自体を否定しているのではなく、比率を問題にされているわけでありますし、統合が正しいとして、経営陣に賛同した株主の方々には、なおさら、白紙しか方法がない旨の説明を必要とするものと思うのですが、いかがでしょうか。株主が正しいと思うところを、経営陣がもう一度、統合相手にぶつけてみて、それでもダメなら仕方ないかもしれませんが、そういった行動に出ることもなく、白紙撤回ですんなり決まるというのは、よほど第三者機関による統合比率算定に自信があったものと思われます。ただ、企業の再編は企業価値が絶対のものでないことは自明のことでしょうし、それ以外の要因で成功もすれば失敗もするわけでしょうから、そういった努力はなぜされないのか、そのあたりの説明はぜひとも欲しいところではないでしょうか。おそらく、この東京鋼鐵、大阪製鐵の事例は、今後数ヶ月は法律雑誌でいろいろな議論がなされるところでしょうから、高尚な議論の前座としまして、ぜひとも、私のような素人疑問を解消させたく、恥をしのんでエントリーさせていただきました。

2月 22, 2007 東京鋼鐵・大阪製鐵 委任状争奪戦 | | コメント (0) | トラックバック (0)