2013年1月30日 (水)

「公正なる会計慣行」と経営判断原則(三洋電機違法配当第一審判決)

昨年9月、大阪地裁で三洋電機の減損会計ルールの適法性が争点となっていた事件の判決が出たことはお伝えしておりましたが、金融・商事判例1407号(2013年1月15日号)に判決全文が掲載されておりますので、(非常に長い判決ですが)一読いたしました。ちなみに昨年10月2日のエントリーはこちら ですので、ご参考まで。本件は、三洋電機社の関連会社株式減損ルールによる会計処理等が違法であり、違法配当がなされたとして、株主らが当時の取締役・監査役らの損害賠償を求めた株主代表訴訟事案であります。大阪地裁商事部は、当時の会計処理は金融商品会計基準の解釈として、公正なる会計慣行に基づくものであり、違法性はなく、被告らの責任は認められない、としております(現在は控訴審係属中)。

ご承知の方も多いかとは思いますが、本件では、第三者委員会(過年度決算調査委員会)が会社側、監査人側に厳しい意見を呈し、また金融庁も課徴金処分を下し、担当した会計監査人(監査法人)も行政処分を受けたものであります。課徴金処分とされたものが、裁判では「違法性なし」という結論となり、この点に関する裁判所の見解も示されています。おそらくこの見解は、今後の同種裁判にも参照されるのではないかと(本日は、この点については触れないことにします)。

本件は未だ裁判中でありますので、この大阪地裁の判決だけでの印象ではありますが、なにをもって「公正なる会計慣行」といえるのか、その判断基準は長銀、日債銀最高裁判決の考え方と、基本的にはそれほど変わるところはないものと思われます。ただ、会計処理基準の選択や選択した基準の解釈にあたっては、(一義的に判断することが困難であることから)経営者の裁量によるところが大きいものとして、いわば経営判断原則に近い考え方が採用されていることがわかります。このあたりは、昨年10月のエントリーでも予想していたところでありました。この裁判では、単純に会計処理基準の選択だけでなく、その基準の解釈も含めて「会計慣行に反するかどうか」が判断されているところは(私個人としては悩んでおりましたので)スッキリいたしました。

たとえば関係会社の株式減損に関する「回復可能性」の判断、貸倒引当金の計上に関する「取り立て不能のおそれ」の判断にあたっては、一義的な判断基準が見当たらない以上、経営者の見積り(将来予測)が決め手となるわけですが、合理的な判断によって見積りがなされた結果としての「回復可能性あり」「取り立て不能のおそれなし」とする判断であれば、これは経営者の判断を尊重しようというのが裁判所の考え方です。判決文は、この経営者の判断が合理的なものかどうか、詳細に検討した上で、極めて慎重に論じているところですが、要は①経営者が関連会社(子会社)の業績について、日頃から関係者に(まじめに)説明責任を果たし、専門家にも真実を伝えていたかどうか、という「誠実性」の点、②会計処理ルールの適用にあたっては、恣意性が疑われないような手続きをきちんと果たしていたかどうかという「公正性」の点が被告勝訴の決め手になっているものと思われます。

さて、この三洋電機損害賠償請求判決と、先日お伝えしたNOVA損害賠償請求事件に関する大阪地裁判決(こちらは民事23部 平成24年6月7日判決 1403号 金融・商事判例)とを比べますと、金融商品会計基準や収益計上基準といった会計ルールの選択・解釈の合法性を、裁判所がどのように取り扱うのか、その判断の過程がなんとなく理解できるような気もいたします。いずれの事件も高裁で審理中のようですので、また今後の控訴審判決の行方に注目しておきたいところです。控訴審判決が出た時点で、また私自身の理解についてもブログで述べてみたいと思います。

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2008年12月 8日 (月)

三洋電機不正会計(違法配当)事件、株主代表訴訟へ

(9日未明 追記あり)

この土日の読売新聞朝刊の一面記事は、三洋電機社の株主の方々にとってはかなり注目すべき話題が続いていました。日曜日はパナソニックによる子会社化の話題(あれ?つい最近まで、先買権契約はGSと大和SMBCの二者間契約だと報じられていましたけど、三井住友も加えた三者間契約だったと報じられていますね。)でしたが、土曜日はちょっとビックリの株主代表訴訟(賠償提訴請求)に関する記事でありまして、三洋電機社の株主の方が、約278億円の損害賠償訴訟を(旧経営陣に対して)提訴するよう、会社に求めるそうであります。(読売新聞ニュースはこちら。週明けにも提訴請求書を送付する、とのこと)このままいくと、過年度修正に係る不正経理問題について株主代表訴訟が提起されることになりそうです。

株主代理人はダスキン事件の原告株主側におつきになっていた方ですね。ちょうど一年ほど前、当ブログでも何度かエントリー(三洋電機の粉飾決算と会計士の判断ほか)させていただきましたとおり、本不正経理事件につきましては、商法(会社法、金融商品取引法)の大御所の先生が社外調査委員会委員を務めておられ、その委員会報告がかなり経営陣(監査役も含めて)に厳しい報告内容を示しておられますので、今後の旧経営陣に対する賠償提訴の動向がまた関心を集めるところだと思われます。なお、監査役への法的責任追及も視野に入れておられるようですが(あくまでも新聞記事からの推測)、そうなりますと、会社への「役員責任追及の要求」は監査役と代表取締役双方にクロスで書面を通知することになるのでしょうね。この場合、代表取締役側と、監査役側とでは、それぞれ独立して別途、法律事務所のサポートを受けて提訴判断を行う、という段取りになるのでしょうか。また、もし(会社としては)提訴しないとの結論になった場合、株主からの要求があれば「不提訴理由通知書」を送付する必要がありますが、これも代表取締役側、監査役側それぞれ別個に通知書を作成する必要がありそうです。そして、代表取締役側、監査役側それぞれが、一年前の「社外調査委員会報告書」の内容をどのように評価して、どのような結論を下すのでしょうか?旧商法時代の事案ですから、違法配当に関する会社への責任につき、取締役と監査役の責任要件が異なっていたこともありますので、かなり複雑ですね。

ちなみに、監査役の損害賠償責任も認められたダスキン株主代表訴訟では、当初、株主側の提訴請求の手続きに法令違反が認められ、裁判では争点となりましたが、裁判所は「手続上の瑕疵が治癒された」として、結論には影響がないものとされておりました。ちなみに、ダスキン事件の場合もそうですが、こういった事件の場合、原告株主側が提訴対象となる役員を選定することになりますので(ダスキン事件の場合には、不祥事公表を熱心に社長に勧めておられた社外取締役さんが被告からはずれていましたよね)、会社法で初めて採用された「不提訴理由通知書」の記載状況から被告となる取締役、監査役と被告から「はずれる」取締役、監査役が選定される可能性もあるんじゃないでしょうか。そこでは法律では割り切れないようないろんな「人間模様」が浮かび上がってくるような気もいたします。

(お知らせ)コメントを頂戴しておりますが、以前から申し上げているとおり、特定企業(特定人)の違法事実を指摘して批判されるものにつきましては、申し訳ありませんが(管理人の法的責任にも関連するものであり)掲載できませんので、あしからずご了承ください。

(9日;追記)朝日新聞ニュースに提訴請求書が送付された、との報道がなされております。監査役や某ニュースキャスターだった社外取締役の方も提訴請求に含まれているようです。現経営陣は旧経営陣に対する提訴はしない方針をすでに固めているとか。ところで違法配当を問題とするのであれば、会計監査人に対する損害賠償請求はどうなるのでしょうか。

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2007年12月29日 (土)

三洋電機粉飾疑惑と会計士の判断(その4)

帰省ラッシュが始まっているようでありまして、私のブログもアクセス数が減少傾向にあります。しかしながら、三洋電機社(オグシオ人気でのバトミントン6連覇おめでとうございます)の不正決算の件、もうすこしまとめておきたいので、ご自宅やご実家でもPCをご覧の方々はどうかおつきあいください。

さて、前回の(その3)におきまして、平成13年3月期ころの金融商品に関する会計基準・実務指針につき、果たして「三洋減損ルール」は公正妥当な会計慣行に該当しなかったのかどうか、といった問題点を検討しておりました。日本のトップクラスの監査法人(中央青山監査法人)が、平成13年当時「適切」と判断していたルールですから、現時点から振り返って「不適切」と判断されるのであれば、それはなぜなのか、個人的には非常に興味があるところです。もちろん、この金融商品会計基準の今年までの運用や、最近の社会情勢を考慮して「不適切」と判断することは許されませんよね。当然のことながら、平成13年当時の社会情勢や、上場企業他社における実務慣行、平成13年ころまでの取扱いなどを(当時にもどって)判断する必要があるわけでして(つまり、三洋減損ルールはおかしい、ということが平成13年当時において誰もが感じることができたかどうか)、おそらく「過年度決算調査委員会」のメンバーの方々も、平成13年当時に触れることができた資料および平成13年当時に集めることができた情報、平成13年当時の会計士さんの一般的な認識などを十分認識されたうえで、「三洋減損ルールは当時の状況からしても不適切だった」と判断されたものと推測いたします___

実は、本業含め、いろいろと忙しかったために、これまで12月25日に三洋電機社HPで公表されておりました(適時開示情報)「過年度決算調査委員会調査報告書について」(42ページあります)を読めておりませんでした。今日、これを熟読しましたが、(その3)でいろいろと書いておりました疑問もかなり解消いたしました。この報告書は今年の「外部第三者委員会報告書」のなかでも貴重な逸品ではないでしょうか。今年のクリスマスは、人にプレゼントをあげるばかりで、何ももらえませんでしたが、ようやく自分ももらえたような気分であります。三洋電機社の元役員さんには失礼ですし、我々監査役にとりましてはたいへん耳の痛い内容を含んでおりますが、外部監査人と監査役が「どのように連携協調していくべきか」といった疑問への具体的な解決を示すものでもあり、私自身、たとえば社外取締役ネットワークの関西での勉強会などで、ひとつの教材としてご提案申し上げようかと思いました。とにかく「過年度の会計処理が適切だったかどうか」といったあたりを、会計専門家の方を中心として判断していく過程は今後の参考になろうかと思いますし、証券取引法監査、会社法監査において、会計士の意見には「セカンドオピニオンはあるか」といったあたりを考えるモノサシになるかもしれません。

この調査報告書(要旨)によりますと、まずは平成11年に策定された金融商品会計基準および平成12年に公表された実務指針を平成13年当時には(異論はあるかもしれないが)旧商法32条2項の「公正な会計慣行」に該当する、としています。(6ページ)そこでつぎに「三洋減損ルール」も、この公正な会計慣行に該当するかどうかを検討するわけでありますが、この金融商品会計基準(実務指針)の策定に関与された方への聞き取りなどをもとに、①導入時における三洋電機子会社の財務状況、②重要性判断に基づく子会社選択の余地はあるが、実際には選択のための作業をしていないこと、③将来収益回復可能性判断はあくまでも経営者の主観的判断、ということを尊重しつつも、その事業計画案作成のための客観的な資料等がみあたらないこと などから、見事に三洋減損ルールの「公正な会計慣行」性は否定されております。また、これらの判断過程において、元役員らの主張と、この外部委員会の結論とでは対立している構図もうかがわれます。やはり、この委員会報告によりますと、平成13年当時の状況に立ち返って考えても、この三洋減損ルールは「公正な会計慣行」たりえない、といった結論に至ったようであります。

このたび三洋電機社は、こういった委員会の報告内容を尊重して、決算短信等の訂正を行ったものでありますので、配当可能利益(旧商法適用下)が存在しないにもかかわらず、多額の配当を行ったこととなるわけで、その結果各紙報道されておりますように「違法配当を認めた」ことになろうかと思われます。(ただし、法定準備金の取り崩しによって配当は可能だった、という論点もありますが)

ところで違法配当が故意によるものか、過失によるものか、という点が問題提起されているニュースをみかけますが、旧商法上の違法配当につきましては、故意過失に関係なく、取締役の損失補填責任が発生する、というのが判例の立場であります。(旧商法266条1項の解釈問題であります)たとえば、東京地裁決定平成12年12月8日(金融法務事情1600号94ページ以下)は、違法配当にかかる旧商法266条1項1号の取締役の損害賠償責任は無過失責任を定めたものである、としつつも、かりに法が理想とするような勤勉かつ有能な取締役であったとしても、取締役会決議に反対することが期待できないような事情がある場合には、取締役が決議に反対しなかったことについての違法性は阻却され、旧商法266条1項1号の取締役の責任は免れるとして、実際に取締役には法的責任がないとしたものがあります。(なお、この事案では社長の権限が絶大で、取締役会で反対の意見が言えなかった等によるものではなく、取締役に就任してまもなくの決議であって、その議案の内容を熟知していなかった、といった点に違法性阻却の原因があったようです。また、監査法人による承認があったことは、そもそもこの違法性阻却事由には該当しないようであります)つまり、よほどの特殊事情でもない限りは、決算承認に関する取締役会で承認をした取締役の方々の違法性が阻却されることはないわけですので、「違法配当」を認めつつ、その法的責任を免れることは至難の業ではないかと思われます。たとえば財務担当役員の独断で三洋減損ルールが適用されようが、全社的に財務会計的知見に乏しかったとされようが、監査法人が適正意見を出して承認していようが、あまり関係ないようにも思われます。また、会社としては、取締役の責任を追及することによって得られる利益と、訴訟提起に要する費用との「費用対効果」を考慮することで、損害賠償責任を追及しない、といった理屈についてもあまり説得的でないように思います。むしろ、(一般投資家保護のための)証券取引法上の「虚偽記載」を認めて減損ルールの修正をはかったことと、(会社債権者保護のための)会社法上の違法配当の基準となる会計基準の取扱いとを区別して考えるなどによって責任回避の理屈を考えるほうが妥当ではないかと思いますが、これは単なる思いつきにすぎませんので、また改めて検討してみたいと思います。

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2007年12月27日 (木)

三洋電機粉飾疑惑と会計士の判断(その3)

朝日新聞ニュースの深夜版(12月26日深夜)「三洋不正決算 議事録『先送り』言及 意図的の可能性も」は、けっこう衝撃的な内容を含んでいるようであります。この三洋電機不正決算問題につきましては、今年2月ころの発覚当初報道の時点から、内部告発によって発覚したものとされておりましたが、私は三洋の関係者から証券取引等監視委員会へ告発があって、その事情を朝日が報道しているものと思っておりました。しかしこの朝日新聞の自信ありげな報道内容からしますと、実際に内部資料とともに、朝日新聞社に告発がなされていたようであります。

しかし、grandeさんもコメント欄でおっしゃるとおり、この不正決算は配当の違法性(違法配当か否か)が問題となっているだけに、2002年ころからの会計処理の違法性が論点となるはずでありまして、当時の三洋電機社における会計処理が公正妥当な会計慣行に従って処理されていたのかどうか、という点が今後大きな争点になってくるのではないでしょうか。(もちろん、朝日新聞ニュースのように意図的な先送りをはかった、ということについて、「違法と知りつつ、先延ばししてしまった」と当事者が認めるのであれば別でありますが、第三者委員会含め、故意による不正決算は認められないとされておりますので、事はそう簡単なものではないと思われます)つまり、02年当時に、公正妥当な会計慣行がいくつかあったのか、それとも当時の社会情勢などからみて、唯一のものだけがあって、三洋電機社がそれに従わなかったのか、そのあたりが問題になってくるのではないかと思われます。たとえ三洋電機社が、意図的に損失を先送りしたとしましても、損失引当金をすぐに積まなかったり、将来見通しとの関係で評価損をすぐには計上しなかったとしましても、そういった慣行が当時、実際に通用していたのであれば、「唯一の公正妥当な会計慣行」は存在しなかったわけでありますので、三洋電機社も、当時の会計監査人も会計慣行に従ったまでであり、セーフと判定される可能性もあります。(このあたりは、上記朝日新聞ニュースによりますと、三洋電機側と会計監査人側との長年にわたる協議議事録が残っているようでありますので、かなり詳細に事実認定が可能なのではないかと思われます。)

つまり、当時の事実関係からみて、会計基準の適用を誤っていたことが判明し、「虚偽記載であった」と認めることと、その会計基準を適用することが、社会の慣行として定着していて、それ以外の適用はおよそ間違いであることが当然とされており、今回修正適用した会計基準が「唯一」の処理方針であったと一般に周知されていたこと(つまり違法性を基礎付ける事実が認められること)とは別個の問題と解されます。このあたりは、私の過去のエントリーのうち「公正妥当な会計慣行」と長銀事件(その1)から(その5)あたりが参考になろうかと思われますので、お時間がありましたら、ご一読ください。このあたりは、法と会計の狭間の問題であり、私自身とても関心のあるところです。また「現場を知る」会計士の方や、経理担当者の方のご意見、反論等もいただけましたら幸いです。

そして、このように考えていきますと、「監査意見の相対性」なる概念を認めるのか、認めないのか、監査意見のセカンドオピニオンは存在するのか、しないのか、そのあたりの結論が、違法配当などにおける取締役、監査役の法的責任を論じるにあたって、きわめて大きな問題を提起することになるものと思われます。(詳細はまた続編のなかで検討してみたいと思います。)

PS 12月26日に金融庁のHPにおきまして、 「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)」(監査報酬の開示・監査人交代時の開示に係る部分)が公表されております。たとえば監査人の異動がある場合、会社側、監査人側いずれも、異動の理由を開示することになろうかと思われますが、会計処理についての意見が対立するような場合、またいろいろと問題が発生するケースも出てくるかもしれませんね。

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2007年12月26日 (水)

三洋電機粉飾疑惑と会計士の判断(その2)

三洋電機株式会社の過年度粉飾疑惑につきまして、昨日(12月25日)過年度決算調査委員会より報告書が提出されたようでありまして、報告書を受領した三洋電機社が「過年度決算訂正に関する報告」を公表しております。過年度決算調査委員会報告では、監査役や会計監査人に対して、「有効かつ適切な監査をしたとは認められない」として、かなり厳しい回答をされているようであります。

代表者や財務担当取締役、監査役、会計監査人らの法的責任があるのかどうか、といった個別事例に関する意見は控えますが、とりあえず法的責任の有無について検討すべき視点をここに提供させていただこうかと思います。私が過去にエントリーいたしました「三洋電機粉飾疑惑と会計士の判断(1)」と「金融庁が三洋電機に課徴金納付命令見送り?」にそれぞれコメントをいただいた方々の意見であります。(いずれも、今年の3月ころに書いたエントリーでありますが、いま読み返してみますと、ずいぶんと恥ずかしいことを平気で書いています(^^;;このように恥ずかしいことを書いているにもかかわらず、非常に貴重なコメントをいただいているところに、改めて感謝いたします )

まず、元会計士さんのコメントでありますが、今回の三洋電機社の過年度決算訂正問題のどこが核心か、という点については、私もこの元会計士さんのコメント内容にほぼ同意見であります。(以下引用)

本件の争点は子会社株式の評価と言うことだと認識しています。子会社株式の評価は原則として、当該子会社の財政状態(純資産)及び今後の事業計画により判断します。通常はこの純資産から算出される実質価額が取得価額の50%程度を下回った場合には、財政状態が著しく悪化していると考えられます。

しかし、著しく悪化している場合でも、事業計画等で回復可能性が十分な証拠によって裏づけされる場合には、減損処理を行なわないことが認められています。本件は、おそらく財政状態の著しい悪化は明確になっていたが、事業計画等の評価の判断の問題であったと思われます。事業計画の評価は毎期行なわれるので、時点が異なれば当然評価が変わり、ある時点で減損処理を行うという判断になります。
問題は事業計画の評価を監査法人が適切に行なえるか?と言うことだと思います。一般的には、会社が公式に作成した事業計画を監査法人が否定することは、非常に難しいです(否定できる根拠が無い)。

1~2年経過した時点で、当該事業計画が達成できていないなどの明確な根拠が無ければ、事業計画を受け入れて減損処理を見合わせるのは、監査人として止むを得ない判断だと思います。すなわち『監査法人が主体的に立証』というのは、不可能であり、仮に投資家がこの立証を求めるのであれば、すなわち投資家が監査の限界や性質を理解していないのだとも言えます。保守主義の原則については、企業会計原則に記載されていますが、一方で過度な保守主義にならないようにということも明示されています。『過度』の定義は無く、その境界は曖昧であるため、保守主義の原則で論じることはなじまない気がします。しかし監査法人の対応策としては、子会社への投資損失引当金の計上が適切な処理として考えられます。この処理を行なっていれば、減損処理をしたことと実質的には同じ効果が得られるため、監査人はこの措置を要求することは可能であったと思われます。この点において監査法人としての判断に疑問はあります。監査法人自身のリスクに対する感覚が鈍っていたと言われても仕方ない気がします。(後からの意見ではなく)。直接本件監査に携わっていたわけではないので、近いところにいた一会計士の私見として書かせていただきました。おそらく他の方は、また別の意見をお持ちだと思います。それが監査というものだと思っています。

(引用おわり)

つぎに、課徴金を三洋電機社に課すべきかどうか、に関する以下のAYさんのコメントにも参考となる点があると思います。(現実には、証券取引法における課徴金制度につきましては、いまのところは行政に裁量権が付与されておりませんので、自主的な決算数値の訂正がある以上は「虚偽記載があった」ものとして課徴金命令は出すことになりますよね。今年3月ころの読売ニュースでは「悪質とはいえない」として、課徴金賦課が見送られるのでは、といった記事が出ましたが、よく考えてみますと、虚偽記載について課徴金を課すのは、故意過失の存在は不要なわけでありますので、現状では見送りはないですね。  以下引用)

証券取引等監視員会が理由を明示しなければわかりませんが、三洋を行政処分するには以下の理由で酷です。
①子会社および関連会社のいわゆる関係会社株式は、国際基準では、関係会社の持分を反映する「持分法」を適用することで連結純利益と一致するが、日本の会計基準「金融商品に係る会計基準」では、原則、取得原価で表示し、発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときは、相当の減額をなし、評価差額は当期の損失として処理しなければならない。 日本の会計基準は、実務上、会社にとっても監査人にとっても、非常にあいまいな基準であること。国際基準では、三洋のケースは起きない。
②上場会社の投資家に対する情報開示では、個別財務諸表を開示するのは日本だけ。海外では、通常、連結財務諸表のみを開示する。海外では、個別財務諸表を開示しないので三洋のようなケースは起きない。

(引用おわり)

いずれにしましても、法的責任を問題にする場合、平成12年、13年当時の状況に戻って、果たして「関係会社株式減損(未公開会社の株式)」の処理については、会計基準によって一義的な判断が可能だったのかどうか、いくつかの選択肢があったのかどうか、経営者や監査人(監査法人)が子会社の業績に関する「見積もり」を行う場合、その根拠となる資料(収益事業計画等)は合理的な見積もりを行うに足りるものであったのかどうか、配当政策を決定するほどの「赤字か黒字か」を分ける会計処理であるにもかかわらず、経営トップなどがまったく知らなかったということが普通にありえたのかどうか、などいろいろと検討すべきところが多いと思います。時間がありましたら、もう少しゆっくりと検討したいところであります。

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2007年3月 1日 (木)

金融庁が三洋電機への課徴金付加見送り?

読売新聞によりますと、金融庁は三洋電機の粉飾決算疑惑について、課徴金処分を見送る可能性が高いとのことであります(ニュースはこちら)理由とするところは、証券取引等監視委員会が「今回の件は悪質とはいえない」と判断している、とか。今回の件、もし見送りということになりますと、企業コンプライアンス的にはとても重要な事例になるのではないでしょうか。なにが見送りの原因になったのか。会計基準の判断に起因するのか、それとも後日、自主的に修正したことに起因するのか。「悪質とはいえない」といった報道が正しいとするならば後者のような気もいたしますが、もしそうだとしますと、たとえ企業不祥事が発生したとしましても、その後企業が自律的行動(ここでいう「自律的行動」というのは、次年度に修正をした、ということですが)に出ることで、その情状が公的処分においても考慮されることがありうるといったことが認められるわけでして、今後の企業行動にも影響を与えるのではないでしょうか。(とりあえず、備忘録程度にて失礼します)

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2007年2月26日 (月)

三洋電機粉飾疑惑と会計士の判断(1)

2004年3月期における三洋電機社の決算について「灰色疑惑」が浮上しておりますが、またまた当時の監査法人の適正意見についても問題視されているようであります。(こちらの朝日新聞ニュースが、入手した内部資料などに基づいた記事を掲載しており、参考になります。)先日の日興CGにおけるSPCの「連結はずし」につきましては、私と仕事や研究会などでご一緒させていただいている会計士の方々も、調査委員会の結論が出る前から「あの会計処理だけ取り上げても明確に不当とはいえないのではないか」といった意見が多かったのも事実でありまして、現に特別調査委員会の結果報告におきましても、「会計基準の判断だけみても堂々めぐり」といった結論となっておりました。このたびの三洋電機社(単体決算)の子会社評価の妥当性(減損評価の可否)につきましても、いくら新聞報道で解説がなされましても、監査法人のどういった行動が問題視されるのか、正直申し上げてよくわからないところですし、ここはやはり現実に監査業務の経験を有しておられる現役の公認会計士の方々の解説のようなものが欲しいと思いますね。「いやいや、あのような状況なら、誰でも同じように減損はしない」と考えるのか「明らかにまずい処理であって、三洋電機さんに押し切られたとしかいいようがない」と判断されるのか、そのあたりの感想でもけっこうですから、新聞等でコメントをお出しになる方がいらっしゃったら、もうすこし新聞解説もわかりやすいのに・・・・と思いますね。

ただ、よく考えてみますと、会計基準の適用に関する判断というのは、前後にわたる会計年度の数値を詳細に比較したり、「収益見込み」といった定性的情報(その企業が秘密として公表できないような資産や情報を含めて)を相当長期にわたって分析するなど、当該企業を知悉していなければ判断できない前提条件も含まれているように思われますので、おそらく社外の会計士さんからみれば、到底「セカンドオピニオン」を発信できる立場にはない、といった認識をされているのかもしれません。このたびの三洋電機粉飾疑惑につきましても、私がよく参考にさせていただいております、いくつかの会計士さん方のブログを拝見しますと、いずれも旧中央青山監査法人さんの監査対応については「やむをえないものだったのではないか」「粉飾加担とまではいえないのではないか」といった同情に近いご意見が多く聞かれるところのようです。

しかし、私のような会計専門家ではない者からすれば(これまた、まったくの素人考えかもしれませんが)「収益見込み」というかなり曖昧な判断を要する事項に関わる問題であるからといって監査法人にはやむをえない事情がある、としてそれ以上の議論を放棄するのでは、積極的に粉飾に加担した場合と、そうでない場合との境界線をどこに引くべきか、という問題の解決策を見つけることができないために、今後ますます監査法人の監督などを含めた事前規制を容易にしたり、課徴金や刑事罰などの厳格化などの事後規制の増加を招く原因になってしまうのではないでしょうか。素朴な意見で恐縮でありますが、会計原則からすれば、なぜ2004年3月期になって、はじめて子会社の減損が問題になったのか(つまり、別の会計基準を適用しなければならなくなった原因事実がはっきりとしているのかどうか、はっきりしているとすれば、それはどういった事実を根拠としているのか、はっきりしていないとしたら、その前年度から監査法人は減損の必要性を十分認識していたのか、このあたりが明確でなければ、監査担当者としては、継続性の原則にしたがって、合理的理由がないかぎりは前年度と同様の扱いをすることが好ましいのではないでしょうか)、またかりに2004年3月期における子会社株式の評価を、これまでとは別の会計基準を適用すべきであったと評価される場合、それでは「会計保守の原則」があるにもかかわらず、どうして監査法人さんは三洋電機社側の主張にしたがった意見を表明するに至ったのか。どういった「収益見込みの急速な回復」を基礎つける資料が提出されたために、回復が見込まれることへの合理的判断が可能になったのか、そのあたりの説明はそもそも「会計保守主義の原則」がある以上は、監査法人さんのほうが主体的に立証しなければならないのではないでしょうか。(といいますか、立証できなければ、株主や投資家に対する説明責任を尽くすことができなくなり、結果として監査の信頼性を失わせてしまう結果になってしまわないでしょうかね)

なお、新聞報道におきましては、2005年3月期には、三洋電機社側で1500億円の評価損を処理しているので、いまごろなぜ2004年3月期の不正が問題とされるのか、といった解説が聞かれるところでありますが、これは理由にはならないと思います。本件がたまたま2007年になって問題視されるに至っておりますが、もしこれが2005年のうちに発覚したとしましたら、先の日興CGの場合と同様、三洋電機社さんにおいて隠蔽していたものと一般的には評価されると思われます。「会計の継続性の原則」や「保守主義の原則」など、会計学の基礎からすれば、言葉の適用場面が異なるかもしれませんが、もし誤りなどございましたら、またご指摘いただけますと幸いです。なお、議論の進化(といえるかどうかはわかりませんが)を目的としまして、過年度の決算に関する調査の持つ意味や、収益見込みに関する被監査企業の(監査法人に対する)説得のあり方など、また詳細なところにつきましては、別のエントリーで続編とさせていただきます。

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