ヒルトンホテルで私の所属する弁護士団体の総会がございまして、昨年度の役員でありました私は慰労対象者として、胸に大きなバラのリボンをつけまして(こんな経験は初めてですが)ご招待を受けました。二次会はちょっと失礼をしまして、総会が終わるなり、地下のタワーレコードに直行。。。いやいやありました!6年ぶりのニューアルバム、本日発売の竹内まりや「Denim」(初回限定盤) 早速事務所へ戻って、涙しながら(?)ひさしぶりの「まりや節」に酔いしれておりました。(;_;) 発売初日にCDを購入する・・・というのはチーちゃん(森高千里)の「ラッキー7」以来であります。
さて、critical-accountingさんも話題として採り上げていらっしゃいますが、5月22日日経朝刊の大機小機にて「頑張れ監査役、あなたの出番だ」と題する「問題提起」がなされております。(記事の要旨はブログ「会計、監査の話などなど。」をご覧ください)記者の方も、会社法と金融商品取引法を整理して「公開会社法」を制定すればもっとすっきりするのでは・・・とのお考えのようでありますが、とりあえず現行制度のもとにおいて、監査役の責任が重くなり、反面権限は強化されたわけでありますから、もっと監査役制度は有効に活用されるべきであると考えていらっしゃるようです。ただし、企業不祥事がマスコミで報道されましても、いつも監査法人さんや取締役さんばかりが責任の矢面に立ち、監査役は何をしていたのか?といった問題提起がほとんどなされないところをみますと、反面それほど監査役の権限行使について、あまり世間では期待されていないことを意味しているようでもありまして、それは現実問題として認めざるをえないところかもしれません。こういった現状を前にして、もっと頑張れ!と「あるべき監査役の姿」を追求するように経営者や監査役の方々に檄をとばしてみましても、これがなかなか伝わらないどころでありまして、それどころか機関設計の自由化ということで、子会社から監査役制度が消えつつある・・・というのが、また現状のようでもあります。また海外のファンドや議決権行使助言会社から上場企業に発信される「ガバナンス上の要求事項」というものも、独立社外取締役の採用への要望はありましても、監査役制度活用へのインセンティブになっている、といった話もあまり聞いたことがございません。
「公開会社法」における監査役制度の位置づけ、といったものがどのようなものを理想としているのかは、私も現在のところではよく存じ上げません。ただ、会社法と金融商品取引法が想定している内部統制システム構築の理論のなかで、監査役制度が大きな期待を寄せられていることは事実なわけでありますから、この制度を企業側、監査法人側双方から「有効活用したほうがオトク」であることがわかりやすく説明され、実践されることによって監査役制度活用のインセンティブが機能する場面というものを、どこかで設定する必要があるのではないでしょうか。
最近の企業成長率の回復基調によりましても、まだまだ管理部門へ大幅な予算が投入されるような時代とも思えません。そんななかで、各企業が内部統制システムの整備運用に多大な費用を投入している現実といいますのは、結局のところ金融商品取引法上の内部統制システムを整備しないと監査人による意見表明がもらえない、といった心理的強制力が働くなかで、外部専門家による導入提案への企業側からの反論の根拠がなにもない・・・といったことに起因するところが大きいのではないでしょうか。しかしながら、先日の関連エントリーのコメントのなかで、どなたかがおっしゃっておられましたが(私もそのとおりだと思っておりますが)、経営者による評価方法(評価範囲も含めて)については、その企業の規模や業種によって相当広範な裁量が認められるはずでありますし、そのような広範な裁量の幅のある評価方法こそ、内閣府令で「一般に公正妥当と認められる会計慣行」として認められたはずであります。そうしますと、私の理解が間違っていなければ、「攻めの内部統制」つまり、業務の有効性や効率性を高めるための内部統制システムの構築を目指す、ということ(つまり一切の心理的強制が働かない領域)を企業の目標にしているのであれば格別、監査人から適正意見を表明してもらえる範囲(つまり心理的強制力の機能する領域)においては相当大幅な経営者の裁量が認められるはずであります。(つまり公正妥当と認められる会計基準にしたがった評価である、と判断される評価方法の選択肢はかなりたくさん存在する、という意味)そうであるならば、まさに企業の監査コストを低減するためにこそ、監査役制度を有効に活用する道があるのではないでしょうか。
一番有効だと思われるのは、そもそも他社の内部統制コンサルタントなどをされている独立系の公認会計士さん、そうでなくても一般に財務会計的知見を有する公認会計士の方に社外監査役に就任いただいて、当該企業のコストや社風に見合ったシステムの整備運用の助言をいただくことだと思います。もちろん、監査人の方と協議連携していただくわけですから、話は早いですし、経営者の裁量範囲は広いわけでありますから、コストに見合った代替案の提示、といった交渉も可能かと思われます。だいいち、監査法人さんのほうでは、おそらく海外提携事務所のマニュアルを基本として、内部統制に関する組織的監査をなされるのではないかと思いますが、そもそも監査役制度は日本独特の制度でありますので、企業側が監査役制度を活用して内部統制システム整備を充実させます、と言われると、(裁量の範囲が広いだけに)かなり反論しにくいのではないでしょうか。また、日本における監査方法として、ダイレクトレポーティング採用しない理由として、実施基準が監査役制度の存在を掲げているわけでありますから、ダイレクトレポーティングを行う「監査役」の意見に従うのであれば、監査人自身の責任範囲も限定され好都合のように思いますが、いかがでしょうかね?
決して曖昧にしてはいけないと思いますのは、内部統制システムの評価、監査制度といったことを金融商品取引法といった重要な経済法に落とし込んでしまった現実であります。外部第三者は「あるべき内部統制システム」の導入を目的として業務に従事するものと思われますが、重要なことは、その「あるべき」というのは「理想」なのか「最低限」なのか、その見極めが誰の責任においてなされているか、であります。それが最終的に財務諸表の信頼性を担保(「監査の水準」において)するものかどうかは、法律と会計基準(監査基準?)の狭間の悩ましい問題に帰着するはずであります。そういった法律と会計基準(監査基準)の間における悩ましい問題、それを受け入れるにふさわしい立場といえば、監査役をおいて他には存在しないと思われます。多額の内部統制システム導入費用をかけること自体がひとつのリスクでありますが、そのリスクは監査役制度の充実で回避することにより、費用も低廉に済みますし、また内部統制監査人の立場からも、監査に付随するリスクを低減する方向において有益ではないかと思われます。また、監査役と内部統制監査人は、連携協調する必要もあるわけですから、経営者側においては監査役の意見が尊重されませんと、内部監査人による意見表明にも影響が出てくるわけですし、監査役自体の地位向上にも役立つのではないかなと思われます。内部統制報告制度に関する意見書自体が「監査基準」であること、その監査基準には(少なくとも経営者評価の方法においては)相当広範な企業側の裁量が認められること、経営者が優秀な監査役を選任することも、この監査基準適合のための選択肢のひとつであること、そしてなによりも、監査役があるべき企業の内部統制システムの妥当性まで判断できると考えることが法律上もトレンドであることから、監査役制度の活用は企業にとっても、監査人にとってもプラスの方向でインセンティブが働いてもいいお話に属するのではないでしょうか。(今週号の日経ビジネスの特集にありますように、本当に内部統制システム導入問題によって「経営がすくんでいる」のであれば、こういったことも真剣に考えてみてもいいのでは・・・という趣旨でエントリーしてみました。)
(追記)ご指摘を受けまして、会計基準→監査基準と修正いたしました。勉強不足ですいません。これからも基礎的な誤りがございましたらご指摘いただけますとありがたいです。