金商法の内部統制報告書「等」
私のブログにお越しの皆様方であればすでにご承知のとおり、金融商品取引法におきまして、上場会社は有価証券の流動性に着目した開示制度の一貫として、「内部統制報告書」を有価証券報告書と併せて内閣総理大臣に提出することが義務付けられております。また、この内部統制報告書には監査法人(公認会計士)の監査証明を受けなければならないこともまた規定されております。(いまさら申し上げることもないと思いますが、金商法24条の4の4 1項、同法193条の2 2項です)
ところで、このあたりの条文を詳細に見渡しますと、「内部統制報告書等」といった概念が登場します。(金商法24条4の4第6項)
金融商品取引法24条の4の4 6項
第二十四条第八項、第九項及び第十一項から第十三項までの規定は、報告書提出外国会社が第一項又は第二項の規定による内部統制報告書を提出する場合(外国会社報告書を提出している場合に限る。)について準用する。この場合において、同条第八項中「外国会社(第二十三条の三第四項の規定により有価証券報告書を提出したものを含む。以下「報告書提出外国会社」という。)」とあるのは「外国会社」と、「第一項の規定による有価証券報告書及び第六項の規定によりこれに添付しなければならない書類(以下この条において「有価証券報告書等」という。)」とあるのは「第二十四条の四の四第一項又は第二項(これらの規定を同条第三項において準用する場合を含む。)の規定による内部統制報告書及び同条第四項の規定によりこれに添付しなければならない書類(以下この条において「内部統制報告書等」という。)」と、「外国において開示(当該外国の法令(外国金融商品市場を開設する者その他の内閣府令で定める者の規則を含む。)に基づいて当該外国において公衆の縦覧に供されることをいう。第二十四条の四の七第六項及び第二十四条の五第七項において同じ。)が行われている有価証券報告書等に類する」とあるのは「内部統制報告書等に記載すべき事項を記載した」と、同条第九項中「、当該外国会社報告書に記載されていない事項のうち公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして内閣府令で定めるものを記載した書類その他」とあるのは「その他」と、同条第十一項中「有価証券報告書等」とあるのは「内部統制報告書等」と読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。
なぜ、「等」がつくかと申しますと、上記の条文にもあるとおり、金商法24条の4の4第4項が以下のとおり規定しているからであります。
第4項
内部統制報告書には、第一項に規定する内閣府令で定める体制に関する事項を記載した書類その他の書類で公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして内閣府令で定めるものを添付しなければならない。
先日、金融商品取引法の施行にあたり、政令、内閣府令案が公表されましたが、この流動性に着目した開示制度のうち、内部統制報告制度の施行に関する政令、内閣府令、事務ガイドラインにつきましては、後日公表ということで、まだ明らかになっていないところであります。(内部統制報告制度が適用される企業の範囲についてのみ公表されております。「会計・監査ジャーナル4月号」の座談会記事において、金融庁の企業開示課長さんのご発言では、春ころにも公表する予定、ということだったんですが・・・・・)いろいろな雑誌やネットでの解説などを探してみましても、この「内部統制報告書等」の「等」って、いったい何を示しているのか、まったく話題になっておりませんし、実は私はよくわからないのです。上記24条の4の4第4項の文言からは、内部統制報告書に添付される書類ということですが、193条の2がありますので、監査証明とは別モノですよね。(じつはこの193条の2の第2項にも、内部統制報告書に監査証明を受けなくてもいい場合があることが記載されておりまして、これも少し関心のあるところですが)有価証券報告書に関する金商法24条との対比で考えますと、定型的な会社の書類でいいのかな、とも思われるのですが、そもそも内部統制報告書自体が有価証券報告書の計算基礎(もしくは開示情報)の信頼性を担保するような役割を担っているわけですから、有価証券報告書に要求される添付書類と同じものが要求されるわけでもないですよね。したがいまして「有価証券報告書等」(同法24条第8項)と「内部統制報告書等」における「等」は、ちょっと意味が異なるのではないか、つまり内部統制報告書とともに、実質的には開示内容について、経営者が真実性を担保しなければならないような書面を提出する必要があるのではないか、と推測されます。
内部統制報告書、というものは、おそらくA4一枚程度の経営者の署名捺印を付した報告書になると思いますが、その報告書に添付されるのは、「財務報告の信頼性を確保するための内部統制システム(整備と運用)を記載した書面」ということになるのでしょうか?でも、そんな実質的な記録を添付書面として提出しなければならないのであれば、すでに内部統制(とりわけJーSOX法)に関する大きな話題になっているはずですよね。少し前に、東京で金融庁の方の解説を拝聴した際には、内閣府令で規定することは、テクニカルなところが中心であり、それほど大きな論点は出てこないようなお話だったと認識しておりますので、私の勘違いかもしれませんが、どうもモヤモヤっとしたところが漂っております。どなたか、情報通の方がいらっしゃいましたら、そのあたりをご教示いただけますとありがたいです。
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