2019年10月25日 (金)

企業不祥事対応に関する良書2選(新刊書のご紹介です)

10071623_5d9ae80ac83fa私自身、不正調査関連の委員長職務を3つほど掛け持ちしている関係で、なかなか本のご紹介ができませんが、ほぼ同じタイミングで企業不祥事防止関連のおススメ良書が2冊出版され、私の本業にも参考にさせていただいておりますのでご紹介いたします。

(図解)不祥事の予防・発見・対応がわかる本 竹内朗(編)プロアクト法律事務所著(中央経済社 2,500円税別)

ACFE(日本公認不正検査士協会)理事であり、企業の危機管理・有事対応の分野では著名な竹内朗弁護士の法律事務所が書かれた本です。タイトルのとおり、ふんだんに図表を活用していて、読みやすく、徹底的に実務目線の解説書です。後でご紹介する本にも登場しますが、最近「コンダクト・リスク」なる言葉が浸透しているのですね(恥ずかしながら、私は存じ上げませんでした)。

企業不祥事対応の最新事情(防止や早期発見における最新事情)も紹介されていますので法務や監査、内部監査等の実務部隊の方々にとても参考になる一冊です。第三者委員会実務も詳しく書かれていますが、私は不正発覚時の初動対応などが最も参考になるように思いました。

また、「三線ディフェンス」の解説なども図表を交えて盛り込まれていて、ぜひ不正防止や早期発見のトレンドとしてご理解いただきたいところですが、本書は「ESGや開示規制と不祥事対応の関係」や危機管理広報など、機関投資家を意識した項目も目につきます。不祥事対応といいますと、先に述べたように法務や内部監査、総務といった部門がスキルを学ぶべき、といった観念があるかもしれません。しかし当ブログでも何度かお話したとおり、最近は機関投資家も企業不祥事に強い関心を抱いていますので、ぜひともIRや広報担当者、財務・経理担当者の皆様にもお薦めしたい一冊です。(まったく関係ない話ですが、プロアクト法律事務所も所属弁護士が増えたのですね。いやいや、商売繁盛でなによりでございます)。

しかしながら、どんなに実務部隊のスキルが向上したとしても、法務や監査、内部監査等の重要性を経営者が認識し、それなりの予算をつけなければ不正予防はおろか不正の早期発見も困難です。つまり、経営者自身に不正予防や早期発見の重要性を認識してもらう必要があります。次に紹介する本は、ぜひ「経営者に読んでいただきたい」一冊です。

41az5wltcpl_sx340_bo1204203200_ とうことで、こちらもよく存じ上げている方の、ひさしぶりの新刊書でございます。さきほどご紹介した「不祥事の予防・・」もアマゾン1位ですが、こちらもアマゾン1位(つまり、私がとくにブログでご紹介せずとも二冊とも売れている、ということですが)です。

企業不祥事を防ぐ 国廣正 著 (日本経済新聞出版社1,700円 税別)

言わずと知れた危機管理部門の第一人者、さきほどご紹介した竹内朗弁護士のお師匠さん(出身事務所の代表者)でもある国廣さんの新刊書です。実は単著ではひさしぶりですが、今年商事法務から出版された「コンプライアンス・内部統制ハンドブックⅡ」の共著者でもあり、この「ハンドブックⅡ」は隠れた名著だと思います(けっして従来から出版されていた「ハンドブック」の改訂版ではなく、斬新な視点から「ハンドブック」をさらに展開しているところが秀逸です)。

ぜひ経営者の方々にこの国廣本を読んでいただき、コンプライアンス経営への認識を改めていただきたい。私が最も共感しているのは、帯にも記載されていますが、コンプライアンスを前向きに捉えるための「ストーリー」が必要ということです。おそらく国廣さんが関与した事件だと思いますが、うまく初動対応できた会社が匿名で紹介されていて、このストーリーによって役職員の気持ちが変わる(当然、不祥事対応という形で行動も変わる)実例が3つほど掲載されています。これは私もふだんの仕事に参考にさせていただきたいと思いました。しかし「これでもか」というほど、国廣さんがご自身で関与した事例の分析が紹介されているので、解説の説得力がありますね。(やや上から目線で恐縮ですが)かなり国廣さんが頑張って書かれた一冊です。

上記竹内弁護士(プロアクト法律事務所さん)の本でも登場しますが、国広さんの本書でも「新時代のリスク管理を考えるにあたって」ということでコンダクト・リスクなる言葉が登場します。私も意味(リスクの内容)はよくわかっているつもりですが、なるほど最近はこのような言葉が使われているのですね。

私も単著本はちょうど2年前に出版して以来書いておりませんが、こういった企業不祥事関連の本を拝読すると「また書きたい」と意欲が湧いてきますね(このお忙しい方々が出版されているので「忙しい」は理由にならない。「時間は作るもの」ですよね)。

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2019年6月22日 (土)

中央経済社「ビジネス法務」2019年8月号に小稿を掲載いただきました。

Img_02055-2_400 本日(6月21日)は「今年最初で最後の株主総会支援業務」ということで、某社定時株主総会に伺っておりました。業績連動型報酬への質問や政策保有株式の議決権行使方針への質問など、総会リハーサルでは偉そうに(?)レクチャーさせていただいたのですが、(お土産を廃止しているせいもあってか)無風のままあっけなく終了(*´Д`)。株主の皆様方の対応も含め、最近は企業統治改革が総会に及ぼす影響にも「二極化」が進んでいるように思いますね。来週は話題の株主総会が目白押しですが、私は自分が当事者(社外役員)の株主総会が続きますので、ブログを書く時間もとれそうになく、皆様のTwitterやブログなどを拝見しながら勉強させていただきます。

さて、本日発売の「ビジネス法務」8月号・特集企画「平成から令和へのメッセージ」におきまして、「神戸製鋼等品質不正」なる論稿を掲載していただきました。平成の時代も終わりに近づいたころ、日本のモノづくりのお家芸である「品質」に関して偽装事件が相次いで発生しました(発覚しました、というほうが正確でしょう)。その代表的な事例である神戸製鋼さんの品質偽装事件を総括して、令和の時代のコンプライアンス経営を展望する、といった内容です(1頁にまとめるのに苦労しました)。カナダでの集団訴訟がようやく和解によって終結したかと思いきや、本日は同社社員によるインサイダー取引に関するSESC勧告が報じられており、事件の落とす影の大きさを感じます。

ところで、江頭憲治郎先生の「会社法の制定」に関するメッセージの中で、東京地裁立川支部平成25年9月25日判決(金融・商事判例1518号54頁)が紹介されている点に目がとまりました。この判決は、神田秀樹先生も岩波「会社法入門」の改訂版の中で紹介されています(あのコンパクトな新書の中で、改訂に合わせて紹介されているのです)。この両先生がなぜ中小規模の株式会社の個別紛争に注目して会社法を語っておられるのか・・・そこを考えるだけでも「会社法改正の奥の深さ」を知ることができてワクワクします。

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2019年6月10日 (月)

平時にこそ学んでおきたい「資本市場とプリンシプル」

Sihonsijo 6月19日の通常総会をもって東証自主規制法人の理事長を退任される佐藤隆文氏の新刊書を拝読いたしました。

資本市場とプリンシプル 佐藤隆文著 日本経済新聞出版社 2,500円税別

当ブログでは、佐藤氏が金融庁長官時代に執筆された「金融行政の座標軸」(2010年)をご紹介し、内部統制報告制度に新しい行政規制手法「プリンシプル」が活用されていることを述べておりましたが、その後、東証においてエクイティ・ファイナンスのプリンシプル、企業不祥事対応のプリンシプル、企業不祥事予防のプリンシプルが策定されたことはすでにご承知のとおりです。最近ではプリンシプル準拠の本格施行として、コーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードも策定、運用されています。

本書は総論と各論に分かれており、各論部分では東証が打ち出した各種プリンシプルの解説が中心です(ただし解説はあくまでも佐藤氏個人の見解です)。上場会社では、会計不正が発覚した時点において「企業不祥事対応のプリンシプル」に準拠した行動が求められます。しかし、ひと段落した後も、改善報告書提出のための「根本原因の解明、再発防止策の策定」とその実行計画が求められますので、「企業不祥事予防のプリンシプル」への理解も不可欠です。こういったプリンシプルの理解は、有事になってからでは間に合わないので、平時から学んでおきたいところです。

各論部分は企業の「守り」にとって重要ですが、総論部分は「攻め」にとっても重要です。総論部分については、企業規制全般に及ぶプリンシプル・ベースによる行政規制手法を理解するためのヒントが含まれています。6月8日の日経朝刊では、株主総会問題のひとつとして「複数議決権株式の行使」への機関投資家の反応が話題になっていましたが、本書でも複数議決権問題がとりあげられており、市場の規律付けの目的(自国の利益を優先させるのか、市場の公共性・公平性を尊重するのか)なども配慮しながら規制手法を検討する必要があることなどが示されています。複数議決権株式を活用したい企業にとっては、このような市場規制を行う側の論理(公正性に関する理屈)を心得ておくことが肝要です。

1990年代、「護送船団方式」による行政規制から脱却するために、いち早く規制手法の転換を模索していた金融庁で活用されだしたプリンシプルによる規制手法は、生産者重視の規制から消費者重視の規制へと大きく変わろうとしている現在、他の省庁でも多用されるようになっています。企業が競争に負けないためには「グレーゾーン対策」がとても重要ですが、ルール・ベースによる「行政法」に基づいて、行政と企業との法律関係を理解するだけでは「行政規制への対応」が十分とはいえない時代になったことを、あらためて感じました。

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2019年5月 1日 (水)

金融財政事情(令和と歩む金融経済・特集号)に論稿を掲載いただきました。

1260134_o 週刊金融財政事情「『令和』と歩む金融経済」(4月29日・5月6日合併特集号)におきまして「真に社外取締役に期待すべき役割とは」と題する論稿を掲載いただきました。

令和特集号ということで執筆陣がとても豪華な顔ぶれです(「目次」が掲載されているきんざいストアさんのHPはこちら)。謙遜でもなんでもなく、私の拙稿を掲載しても大丈夫なのかとも思いますが、日本経済の活性化に寄与するための社外取締役の「あるべき姿」を私なりの視点から考察した内容です。独立社外取締役に求められる役割についての「期待ギャップ」(世間一般と法政策との間における期待ギャップ)に焦点をあてております。

ぜひとも多くの皆様にお読みいただき、ご意見を賜れればと存じます。令和の時代となり「社外取締役2.0」が求められることは間違いないわけで、その「あるべき姿」は今後も模索していきたいと考えております。

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2019年2月25日 (月)

会計不正の「いま」を知る-「鼎談・不正-最前線」

9784495208417_600日経ビジネス誌の最新号(2月25日号)の特集は「実録-不正会計(気づけば あなたも当事者に)」ということで、近時の会計不正事件が大きく取り上げられています。また、サンケイビジネスニュースでも「東京商工リサーチ特別レポート」として、開示されている会計不正事件が、ここ数年急増していることが報じられています。いずれも上場会社の不祥事の増加に警鐘を鳴らす内容ですが、私からみると、とくに上場会社の不正が増えているわけではなく(これまでも同様の不正事件は発生していたのですが)、発生した会計不正事件に対する会計監査人(監査法人)の審査が著しく厳しくなってきたことで、「不祥事の見える化」が進んできただけと考えております。

このようにメディアで取り上げられている会計不正の「いま」を知るのに最適なのが上の書籍です。2月15日に発売されましたが、この週末に一気に読了しました。

鼎談-不正-最前線 これまでの不正、これからの不正(八田進二、堀江正之、藤沼亜紀 同文館出版 1,900円税別)

会計監査の世界では重鎮として知られた3名の学者・実務家によって会計不正の「いま」を語り合う座談会記録です。企業不正の現況認識から始まり、会計不正と内部統制、ERM、監査との関係、国際動向、テクノロジーの発展と不正、不正に関する教育や人材育成が中心テーマです。会計専門職の方々が、いま発生している上場会社の会計不正に対してどのように向き合い、また会計監査は今後どのように向き合うべきなのか、企業実務家にとっては関心が高いところです。とくに2016年3月に公表された「会計監査の在り方に関する懇談会」の提言書の内容が次々と具体化され、実施される中で、有事だけでなく、企業における平時の不正リスクの認識においても参考となる意見がいろいろと述べられています。

品質偽装や不正競争防止法違反事件などは、一見すると会計不正とは関係なさそうにみえます。しかし、重大性があれば会計的には偶発事象として財務諸表に注記が必要となり、また合理的な金額的見積もりによって引当金計上が求められるので、本書の話題は会計不正を超えた「企業不正」にも広がります。またグループ会社における不正が親会社のレピュテーションにも影響を及ぼす時代となり、会計監査の世界でも「グループ内部統制」に大きな関心が向けられていることにも言及されています。

さらに、ダボス会議でも有名になりましたが、世界がVUCA化していることから(変動性、不確実性、複雑性、曖昧化が進んでいることから)、不確実性の時代を前提としたリスクマネジメントが求められるようになり、COSO-ERMに真剣に取り組む企業が増えていることも紹介されています(おそらくリーマンショックにおける「ブラックスワン」の影響かと思います)。このあたりは、内部監査に力を入れだした企業が増えていることとも無縁ではないと思います。ホント、リスクに脆い組織と強い組織がありますので、自社が不正リスクに脆いのか強いのか、そこをまず(内部監査によって)きちんと実態把握することが大切です。

おそらく本書を読みたいと考えている方は「八田さんや藤沼さんの考え方を知りたい」という気持ちが強いかもしれませんが、私は一読して堀江先生(日本監査研究学会会長)の意見に最も共感を抱きました。内部統制報告制度の改正に向けた堀江先生の考え方には賛同するところが多かった。日本公認会計士協会への注文なども八田先生や堀江先生から出されていますが、ぜひとも実務に活かしていただきたいと思います。また、「法と会計の狭間に横たわる問題」についても議論されていますが(たとえば監査役監査の在り方等)、3名のご意見に対して、法律専門家もどのように受け止めるべきか、熟考すべきところもありました。なお、ACFE(公認不正検査士)JAPANの理事長に就任された藤沼先生が、不正調査の専門職としてのCFEの役割を逐次解説いただいており、ぜひCFE取得をお考えの方にもお読みいただきたいところです。

上記日経ビジネス誌でも取り上げられていたH社の会計不正事件などは、第三者委員会報告書が出た直後に、新たな内部通報が監査法人に届いたために、さらなる追加調査という事態になりました。これにより、H社のレピュテーションが大きく毀損されることになりましたが、ではなぜ通報が(第三者委員会報告書が開示された直後に)監査法人に届いたのか・・・。私も第三者委員会の委員を務めていて、このあたりの会計監査の厳格性を認識しましたが、こういった最新事情も、本書を読みますと「なるほど」と改めて認識するところです。

なお、本書への批判すべき点をあげるとすれば(もちろん個人的意見です)、まず誤字脱字が多い(笑)。一読しただけで、13か所の誤字脱字が見つかりましたので、関係者の皆様も最終チェックが甘かったのではないかと(まあ、私も人のことを言えたものではありませんが・・・でも「真剣に読んでやろう!」と考えている読者には気になってしまうのですよね・・・)。次刷のために、私が見つけた分は出版社に連絡しておこうと思います。そしてふたつめが「鼎談」であるにもかかわらず、「意見の相違」が少ない。みなさま「お仲間」なので、それぞれの意見の相違があらかじめわかっているから、かもしれません。しかし読者は「それは違います!」といった白熱した議論があるほうが座談会モノの場合には読んでいておもしろいと思います。そういった意味では週刊経営財務の最新号(2月18日号)の「座談会-KAMを意義あるものとするためには何が必要か」は、実務家と会計プロフェッションとの意見の相違が明確になっていて読み手を惹きつけるオモシロさがありますね。

ともかく、会計監査の最新の知識やスキルを学ぶということよりも、監査のプロフェッションが会計不正のどこに関心を持っているのかを知ることに興味を持っておられる方にはおススメの一冊といえます。

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2019年2月19日 (火)

成長戦略法制-イノベーションを促進する企業法制設計

411ggsk6xl_sx350_bo1204203200_ 今朝(2月18日)の日経朝刊法務面では、AI開発における法制面での制約が技術開発の萎縮を招き、海外との競争力の差につながりかねないとして、各企業による自主ルールの活用が紹介されていました。AIに対応した法的インフラの整備は喫緊の課題として、経済界から法律の世界に様々な提言が出されています。

成長戦略法制-イノベーションを促進する企業法制設計(成長戦略法制研究会 編 2019年2月 商事法務) 3,400円税別)

さて、西村あさひ法律事務所の武井一浩弁護士からご恵贈いただきました本書は(どうもありがとうございます!)、いま日経法務面で特集されている各記事を理解するには最も参考となる一冊です。日本企業の知財戦略、オープンイノベーション、働き方改革と成長戦略、ベンチャー投資法制、国際紛争解決に向けた効率的な対応等、最近の日経法務面で、頻繁に取り上げられている話題について、経済学者や行政官の立場から法律学に対して(日本企業の成長に向けた)提言が示されています。本日の日経法務面の話題も「デジタルイノベーションと成長戦略」として取り上げられています。

本書は、2016年4月ころから開始された成長戦略法制研究会の発言録や同会会員の方々によるご論稿をとりまとめたものです(武井一浩弁護士も上記研究会委員のおひとりですね)。会社法改正の目玉である株式交付制度(M&A法制における)なども、本書をお読みになりますと興味が湧いてくると思います。

P_20190216_222538_400上記の新刊書とは異なりますが、2016年3月に出版されたこちらの本を、私は拙ブログのネタ本として活用しております。経済成長のために、金商法や独禁法のルール(創造や解釈を含めて)はいかにあるべきか・・・という点を考えるにあたって、豊富なヒントが語られていてとても参考になります。

「成長戦略論-イノベーションのための法と経済学」(ロバート・E・ライタン編著 木下信行・中原裕彦・鈴木淳久監訳 NTT出版 2016年)

本書は米国の経済学者が中心になって、米国の経済的な成長を後押しするための法創造や法運用の在り方に関する論稿を集めたものであり、(今回初めて知ったのですが)上記「成長戦略法制」の著者の多くは、本書の監訳にあたっておられた方々です。経産省では平成22年ころから「成長戦略と法制度のあり方」については研究が重ねられておりましたので、その流れの中で監修作業が続けられたものと推測します。

昨日(2月17日)のNHKスペシャルで「田中耕一、ノーベル賞受賞からの苦闘の16年」を視聴しましたが、まさに上記「成長戦略法制」で語られていた「日本企業におけるイノベーションの阻害要因」を認識しました。また、グローバル企業との競争に負けないためには法務部門の強化が不可欠であることや、企業法務に携わる者が(ソフトロー等を通じて)法創造機能を発揮する必要性も、本書から認識したところです。なお、「成長戦略論」の全体像は、上記「成長戦略法制」の第1章にて概要が示されていますので、もしご興味がありましたら、このほど出版された上記「成長戦略法制」をまずご一読されることをお勧めいたします。

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2018年10月22日 (月)

企業不祥事のケーススタディ-実例と裁判例(新刊書のご紹介)

Hushouji013今年も本当に企業不祥事が多い1年(正確には企業不祥事が多く報道された1年)になってしまいました。近時、不正が発覚するたびに第三者委員会報告書が公表され、原因分析や再発防止策が語られるわけですが、どれも紋切り型の表現が多く、企業不祥事の予防・早期発見とガバナンス、内部統制の在り方が説得的に語られている第三者委員会報告書は少ないように思われます。

企業不祥事のケーススタディ 実例と裁判例(2018年10月 弁護士法人中央総合法律事務所編 商事法務 4,400円税別)

本書は、森本滋先生(京大名誉教授)の指導のもと、中央総合法律事務所の実務家の方々が中心となって企画したセミナーや、資料版商事法務に掲載された同事務所のご論稿「不祥事事例の分析」をもとに、「企業不祥事に関して取締役等に生じうる法的責任」に係る実例や重要裁判例の事実と分析を一冊の書籍として取りまとめた新刊書です。企業不祥事発生企業に焦点をあてて効果的なガバナンスや内部統制について分析をして、さらに近時の裁判例を分析したうえで役員の法的責任を解説するところに本書の特長があります。最近の関心事であるグループ会社における不祥事予防や早期発見のためのガバナンス、内部統制にも多くのページをさいて解説がなされています。東証の「不祥事予防のプリンシプル」の解説も詳細です。

企業実務家の皆様には全編を通じて第三者委員会報告書や裁判例を通じた事例分析をお読みいただくのがお薦めですが、法曹実務家向けには144頁から186頁までの森本先生ご執筆「裁判例における取締役の責任の考え方」が参考になろうかと思います。私が不勉強なので、これまでの森本先生のご論稿やご著書で解説済の論点もあるかもしれませんが、不祥事発生企業の取締役・監査役等の法的責任の考え方に特化して解説されたものであり、「監督義務と監視義務の区別」「法令違反の認められない場合の任務懈怠と経営判断原則」「業務執行の決定と経営判断原則」「経営判断原則下における裁量範囲」「経営判断原則と信頼の権利」「内部統制システムの構築と経営判断原則」など、取締役の責任の存否を判断するにあたって微妙な問題を取り上げておられます(これはとてもありがたい)。

個人的に「これはとてもありがたい」と考える理由は、おそらく今後コーポレートガバナンス・コードのコンプライ・エクスプレインとの関係で、企業不祥事が発生した場合に(会社法上の役員の善管注意義務の履行責任、金商法上の「役員が相当を注意を果たしたことの立証責任」の根拠事実として)コードの運用責任が問われる可能性が高まってくると考えるからです。理屈・法理論のうえでは森本先生の解説を参考にして、さらにその根拠とされる裁判例、第三者委員会報告書における実例の理解については上記法律事務所の先生方の解説・分析を参考にする、といった本書の活用がお薦めです。まだ、読み始めたばかりですが、ぜひとも私自身の本業にも参考にさせていただきたいと思います。

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2018年7月14日 (土)

企業法務革命-企業価値向上のための法務機能とは?

51fjfiuogl私自身の論稿等が掲載されている専門誌が二つほどありますが、そちらの紹介は後回しにしまして、本日は企業法務に携わる方々にお勧めしたい新刊書をご紹介いたします。

企業法務革命-ジェネラル・カウンセルの挑戦-(ベン・W・ハイネマンJr著 企業法務革命翻訳プロジェクト 訳 商事法務7,500円税別)

今年4月、経産省から「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書」がリリースされました。リーガルリスクが多様化、複雑化する中で、経営層・事業部門も法務リテラシーを高めることが必要である、法務機能の守り(ガーディアン機能)と攻め(パートナー機能)は表裏一体の関係にあり、企業の持続的成長のためには両社は単純には切り分けられないと提言されています。この報告書が公表されて以来、日経新聞でもやや後ろ向きに捉えられていた(と思われる?)法務記事が、かなり前向きに捉えられるようになり、各企業が(弁護士ではない)ロースクール卒業生などを別枠で採用したがっている、といった紹介記事まで掲載されるようになりました。そのような中で、企業法務革命と題する本書は、まさに絶妙のタイミングで発刊されたといえます。

著者は、GE社元ジェネラル・カウンセル(役員クラスの企業法務責任者)であり、ご自身の経験を踏まえて、企業法務がいかに経営にとって重要であるかを全編で説いておられます。その趣旨を一言でいえば「企業法務革命:パートナーとガーディアンとの間の緊張関係の解決」というもの(ご著者は、「日本語版はしがき」にて、本書のタイトルを、このように紹介しています)。企業は、高い業績と倫理性・誠実性、そして健全なリスク管理を統合する使命があり、法務責任者にはその使命を全うする責任がある、というジェネラル・カウンセルの基本思想が企業の在り方を変えつつある、その変遷が「革命」という名のもとで示されています(たとえば社内における法務の役割の変遷、社内弁護士と社外弁護士の役割の変遷など)。

先日ご紹介した「法学の誕生-近代日本にとって『法』とは何であったか」 においても、中心テーマは「どうやって日本が憲法典・民法典を輸入したのか」ということよりも「どうやって西欧のリーガルマインドを日本に根付かせたのか」という点でした。本書でも同じことが中心テーマです。法務部門のガーディアン機能といえば法的スキル(専門家的スキル)に光があたりますが、パートナー機能ではリーガルマインドに関心が向きます。たとえば私流に述べるのであれば「経済的合理性」「関係当事者の信頼と協働(信頼の原則)」「公正であること(実体的正義と手続的正義)」「公平であること(私的自治原則、ステイクホルダーの利益保護)」「論理整合性があること(説明責任)」「安定性があること(他の事案でも同様の解決方法が妥当する)」といったところが事業戦略には不可欠な考え方かと思います。ビジネスを進めるうえで「法的なグレーゾーン」は山ほどありますが、あえてリスクをとってチャレンジする、リスクを回避して考え得る代替手段を実践するといった決断にはリーガルマインドが不可欠かと思います。

また、私は重大事故を発生させた某社の品質管理委員会の委員として、某社経営陣の方々と議論を重ねている中で、「ジャストインタイムの生産方式は品質偽装の温床ではないか」といった私の考え方が間違っていた(恥ずかしながら・・・)ことを教えていただきました。BCPに配慮したうえで、時間とコストを極限まで省く日々の努力は、生産計画、生産管理の実効性を高めることになるので、むしろ不正の芽を摘むことになります。つまり、高い業績と倫理性はトレードオフの関係には立たないのであり、生産効率と倫理性の相乗効果をいかにして発揮するか・・・というところに法務の役割を見出すこともできるように思います。

このあたりは、そのまま私自身の日ごろの業務でも心がけているところでして(心がけているだけでなかなか実現はしておりませんが)、「適法ではあるが、正義ではない」「従業員の皆様に新たなルールを厳守してもらわなくてもコンプライアンス経営はできる」という結論を社長さんにどう腹落ちしてもらうか・・・というところに腐心しております。本書では、著者のご経験や他のジェネラル・カウンセルの方々の経験に基づく知見がふんだんに示されており、社内における意思決定、社外に対する説明責任の実践に役立つヒントとなりそうです。また、大きな法律事務所の弁護士の方々には、後半の「外部の法律事務所との付き合い方」といったところも参考になるかもしれません(やや耳の痛い話ではありますが・・・)。大部ですので、まだまだ読了には時間を要しますが、今年上半期では(先日ご紹介した)内田貴先生の「法学の誕生」に匹敵するほど、ワクワクしながら拝読しております。

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2018年7月 5日 (木)

金商法の「いま」を理解する最適の入門書(本のご紹介)

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文科省の現職局長さんが逮捕された、と報じられています。もしこれが6月1日に施行された日本版司法取引の第1号ということになりますと(あくまでも仮定の話ですが)、本丸は贈賄側ではないのかな(組織的犯罪)?とも思ったりしております。

さて、市場規制の手法については、ソフトローの重要性がますます高まっています。しかし、ソフトローの中にも、上場会社の行動規範を示すもの、投資者保護に向けた開示規範を示すもの、逆に投資家やゲートキーパーの行動規範を示すもの、あるいは民間の力を活用するための解釈指針を示すものなど、その内容も様々です。そして、なぜソフトローが興隆するかといえば、市場に参加する人たちが、①ソフトローの趣旨を理解する能力を有し、②その理解に従った行動が期待できる誠実性を持ち合わせているからです。

ソフトローが適用される企業社会では、これに対応できる企業には営業の自由が最大限保障され、逆に対応できない企業は「フトドキモノ」と社会的に評価され、行政からピンポイントで規制(行動監視)の対象とされます。私は常々、市場規制を目的としたソフトローを理解するためには、ハードローとしての金融商品取引法の考え方を理解する必要であり、その考え方を、わかりやすく伝えてくださる書籍があれば良いな・・・と思っておりました。ちなみに、私にとりましては、なんといっても河本一郎大先生の「証券取引法(金融商品取引法)読本」でありました。

このたび、私も存じ上げている梅本剛正教授(甲南大学大学院法学研究科)が、一般の方々が金商法の発想や考え方を学ぶにはピッタリの一冊を上梓されました。金商法入門(梅本剛正著 中央経済社 2,500円税別) もう10年ほど前ですが、梅本先生による「現代の証券市場と規制」(商事法務)というレベルの高い論文集を拝読し、私が副代表を務めているIPO研究会にお招きして以来、ご活躍には注目をしております。

タイトルを「金商法入門」とされた理由は、おそらく「金融商品取引法入門」なるタイトルは、すでに著名な先生方の執筆されたご著書が複数存在するから・・・と推察いたします。そして、本書の内容も「金商法」というタイトルのとおり、他の教科書が詳しく説明している内容を大幅に省き、本当に重要と思われるお話に絞って(図表もふんだんに取り入れながら)書かれています。本書の目次の進め方(入門の入門→企業内容開示規制→投資者が受ける規制→証券会社→証券取引所→不公正取引規制)にも、そのような「わかりやすさ」や「考え方や発想を学ぶ」ということを重視した姿勢が示されています。読み物としても面白いのは、商法学者でありながら、著者ご自身も「泣き笑い」の投資家人生を歩まれているからではないかと。

一般の方にお勧めしたい本ですが、実は私もじっくりと拝読させていただいております。というのも、金商法は法律だけでもたいへんな分量ですが、関係政省令の改正が毎年のようにございますので、正直、勉強が追いつきません。本書では、本文もさることながら、ふんだんにコラムが掲載されていて、金商法界隈の最新事情も入手できます(クラウドファンディングやフェア・ディスクロージャー・ルールなども、金商法の条文との関係で概要だけでも理解できます)。まさに「金商法の今」を知る、学ぶためにとても重宝しております。

そして、もうひとつ指摘できる本書の特色は、著者が毎日のように更新されていらっしゃるブログ(匿名)の存在です(ブログの存在を書いてよいのか迷いましたが、本書ではご自身のブログを紹介されているので、その存在だけご紹介しておきます。ブログのタイトルとアドレスは、本書の著者紹介欄に記載されています)。金商法や会社法に関連する話題、たとえば今年の6月総会における話題の事件の解説、機関投資家と経営陣との支配権争いに関する法律解説など、本書とブログを併せて読むと、ますます金商法の理解がすすむのではないかと思います。ソフトローを含めた「金商法の今」を理解するためのおススメの一冊です。

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2018年6月12日 (火)

週刊エコノミストに拙稿を掲載いただきました。

Ekonomisut三菱マテリアル社の経営トップの方が、品質偽装事件の責任をとって辞任されることが決まったそうで、大手企業の危機対応の巧拙に関心が高まりそうです。オムロン社でも不適合製品の出荷が公表されましたが、他社でも品質偽装問題が開示されるケースがまだまだありそうです。最近の風潮からみますと、企業が(品質偽装の事実を)公表することを決定したのであれば、そのタイミングも含めて、ステイクホルダーへの説明責任の尽くし方を慎重に検討したほうがよさそうですね。

さて、本日(6月11日)発売の週刊エコノミスト(6/19号)の特集「日本版司法取引にご用心」におきまして、拙稿「Q&Aで分かる 日本版司法取引 他人の罪を申告して処分軽減」を掲載いただきました。Q&A形式にて、日本企業による改正刑訴法「協議・合意制度」への対応をわかりやすく解説したものです。内容は、現場担当者向けというよりも、社会の変遷を感じるべき経営者向けに書いたものです。

最高検察庁準備室の対応指針が策定されていること、警察庁の犯罪捜査規範が改定されていることなどから、あまり神経質にならないでもよいのでは・・・といったことを中心に、比較的冷静な立場で書かせていただきました。当ブログでも以前から書いているように、弁護士倫理上の課題なども企業関係者の皆様に知っておいていただくほうが良いのではないかと思いましたので、そのあたりも後半部分で論じています。全国書店で販売しておりますので、ご興味がございましたらご一読くださいませ。

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