2021年10月 2日 (土)

金融財政事情に「デジタルフォレンジックス調査」に関する論稿を掲載していただきました

Img_20211002_164316 週刊金融財政事情10月5日号におきまして「不祥事調査で脚光を浴びるデジタルフォレンジックス調査の光と影」と題する論稿を掲載していただきました。企業不祥事が発生した場合にDF調査が「魔法の杖」のように扱われるケースが多いのですが、実はAIと人間の協働作業であり、そこには一定の限界がある、という内容です。全国書店で販売されておりますので、ご興味がございましたら是非ご一読ください。

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2021年7月26日 (月)

リスクマネジメントTODAYに論稿を掲載していただきました。

Img_20210725_205209358 リスクマネジメントTODAY2021年7月号の特集「コーポレートガバナンスの新機軸」におきまして、「社外取締役急増時代の『副作用』-ガバナンス事件簿より」と題する論稿を掲載していただきました。タイトルからご推察のとおり、コーポレートガバナンス・コードの改訂により、企業統治改革が深化していると言われておりますが、本当にそうなのか?とりわけ急増している社外取締役は期待された役割を果たしているのか?といった問題を、具体的な事例から検証する、といった内容です。

とりあげた具体的事例としては、東芝事件、天馬事件、シャープ子会社事件です。有事に直面した社外取締役はいかなる対応が期待されるのか、リスクマネジメントの視点から考察しております。いずれの事例もたいへん興味を抱いておりましたが、最近本業が忙しかったこともあり、あまり当ブログでは取り上げていなかった事例ばかりです。リスクマネジメント協会HPから1冊単位で購入できますので(電子書籍ではございません)、もしご興味がございましたらご一読ください。

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2021年6月24日 (木)

証券取引等監視委員会の使命とは?ー「市場の守り人」

Sijomamori002 現役の証券取引等監視委員会委員の方から新刊書をご恵贈いただきました。中央青山監査法人、みすず監査法人、あずさ監査法人の代表社員、理事を歴任された後、2016年12月に証券取引等監視委員会の委員に就任された浜田康氏のひさりぶりのご著書です。

市場の守り人-証券取引等監視委員会の使命(浜田康著 同文館出版 2021年6月初版 3,400円税別)。出版元による紹介文では

公正性・公平性を高め、国内の投資者、海外企業や海外投資者から信頼される証券市場に向けた監視委員会の役割とは?より強力で実効的な機関とするためには何が必要かを検討する!

監視委員会は市場の公正性・公平性を高めるために何ができるのか?どのような権限や責任があるのか、国内外の投資者、消費者から信頼を得られる市場にするために何をすべきか、米国証券取引委員会(SEC)、英国金融行為規制機構(FCA)と何が違うのか(帯書きより)

とのこと。本書は今後多くの会計実務家、研究者の皆様からきちんとした書評が各会計専門誌にて登場するはずですので、内容に関する高尚な論評は会計のご専門の方にお任せして本書の概要のみお伝えいたします。

まず、なぜ私が浜田委員からご献本いただいたのか、と申しますと「内部統制報告制度の課題」のところで私の素朴な疑問を5頁にわたって真摯にとり上げてくださっており、浜田委員が正面から私の素朴な疑問に向き合ったうえで、一定のご理解を示していただき、その結果として証券取引等監視委員会の開示検査課の新たな取り組みに活かしていただいている、ということから、と推測いたします(2013年10月17日付けの拙ブログを本文でも引用していただき、さらには「この山口弁護士の主張内容がちょっとむずかしいので」ということで解説までしていただいております)。内部統制報告制度の運用上の課題については、ここ10年ほどブログでも何度か取り上げましたが、私の意見を(たとえ浜田委員の個人的意見としても)SESCの委員の方に検討していただけた・・・というのは本当にありがたいことです。これからも会社法及び金商法上の内部統制について研究を続ける励みになりました。

さて、本書は浜田氏の「勉強ノート」ということだそうですが、さすが現役の監視委員会委員の視点から、様々な論点について「監視委員会にもっと力を!」ということで浜田氏の個人的見解が述べられています(「もっと力を!」というフレーズは本書ではとても大事です)。最初の3分の1くらいまでは、取引調査課関係ということでインサイダー取引規制の現状を、証券検査課関係ということで金融商品取引業者規制の実状を、そして開示検査課関係ということで上場会社のモニタリングの現状をそれぞれわかりやすい文章で解説されています。中盤あたりからは特別調査課の告発事案に関する考え方(虚偽記載や公正なる会計慣行が問題となる事例等について)が、過去の著名な事件を参考にしながら示されており、我々「不祥事対応」に携わる者にとても参考になりますね。「勉強ノート」という位置づけからか、各テーマとも平易な文章で書かれていますので、上場会社の管理担当者の方、会計士、弁護士等にもお勧めの一冊です。

私も過去に「法と会計の狭間に横たわる諸問題」をとりあげた本を書きましたが、まさに後半部分は(さすがSESCの委員ということで)長年会計実務に携わってこられた方からみた「法と会計の狭間の問題」を丹念に問題提起され、また浜田氏なりの見解が示されています。法人の刑事責任、金商法上の開示責任(粉飾決算)の「再度の無過失責任化」、経営者確認書の罰則条項の創設、課徴金制度の見直し、会計裁判所制度や紛議調停制度の見直し等による被害者救済の拡大等、いずれも当ブログで私も検討したことがある内容が多く含まれています(ちなみに東芝の会計不正事件を取り上げて、今後、会計監査人の意見表明がどのような影響を受けるのか、といったお話しなどは「なるほど」と納得いたしました)。長らく改正されていない「会社法における刑事罰の改正」などにも触れられており、政策提言という意味においても多いに共感できます。おそらく当ブログにお越しの皆様なら関心の高いテーマをたくさん取り扱っておられて、興味をそそられる内容です。

Img_20210623_162714580ところで、浜田先生のご著書といえば、このブログを書き始めた頃(2005年)から次々と愛読している3部作がありまして、左の写真のとおり、私の蔵書にはたくさんの付箋が貼ったままであり、今でも参考にさせていただいております。とりわけ中央青山の社員でいらっしゃった頃はカネボウの粉飾事件に関与した監査法人、ということで会計不正事件の真っただ中におられたわけで(2002年「不正を許さない監査」参照)、事件が現在進行形だったときに会計監査人として何を思ったのか、その文章はいまでもはっきりと記憶しております。この「不正を許さない監査」では、中央青山監査法人側で、証券取引等監視委員会による調査に向き合う立場にあった方が、いま逆に委員会側の要職に就かれて何を思うのか、そのあたりを上記「守り人」から推察できるかもしれませんね。先日ご紹介した弥永先生の「監査業務の法的考察」とともに(ようやく好きな本をじっくり読める時間がとれるようになりましたので)本書でもしっかり勉強させていただきたいと思います。

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2021年5月31日 (月)

監査業務の法的考察(弥永先生の新刊のご紹介)

100000009003440500_10204毎年この時期には6月総会関連のテーマでかなり長いエントリーをアップしておりますが、今年は本業(調査案件)にほとんどの時間を費やしておりまして、なかなかブログを更新する時間がとれません(あと20日ほど・・・)。そこで、入手した新刊書のご紹介だけしておきたいと思います。私がとても関心のある分野「法と会計のはざまの問題」を深く考察する一冊ですが、弥永真生教授による「監査業務の法的考察」(弥永真生著 2021年5月30日発売 日本公認会計士協会出版局 3,520円)

帯書きでは「27のテーマで監査業務を法律学から視る 法律学(主に会社法)と監査論との橋渡しを試みた意欲作 監査業務・法律学の関係者の議論の活性化を願って研究した成果を1冊にまとめました」とあります。最近の日本公認会計士協会機関誌「会計・監査ジャーナル」の連載をもとに、あらためて研究成果を加えられた1冊だと思いますが、27のテーマはいずれも「法と会計のはざまに横たわる諸問題」といえます。私が(もう6年ほど前ですが)監査法人側で関与した事例なども紹介されていて、近時のKAM開示に関連する法律問題も取り上げておられます。弥永先生の「素朴な疑問(わたしの独り言)」なども注記で詳細に語られるなど、なかなかおもしろそうです。

内容とは全く無関係ですが、この本の厚さで470頁ということで、とても質の良い紙を使っていますね。ひさしぶりに紙質の良い本に出会いました。弥永先生の前著「会計処理の適切性をめぐる裁判例を見つめ直す」と同様、通読をするのはかなりしんどそうですが、会計や監査に関連する法律問題を調べるにはどうしても手元で参照したい一冊です。

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2021年4月16日 (金)

週刊金融財政事情に論稿を掲載いただきました。

1618551767455-2_400 日経や産経のニュースによりますと、東芝の経営陣や金融機関が、ファンドによる買収提案に対して消極的な意見を持っていると報じられています。ファンドによるバイアウトが成立するとなれば、そもそも指名委員会等設置会社である必要性も、また独立社外取締役が設置される必要性もなくなるはずなので、東芝の現経営陣の判断は多分に利益相反性を帯びているものと考えられるのですが、いかがなものでしょうか。

さて、週刊金融財政事情の最新号(2021年4月20日号)に「日本郵政の検証報告書から読み解く内部通報制度の重要性」と題する論稿を掲載していただきました。当ブログでも必読!と書いた日本郵政の内部通報制度の検証報告書ですが、この報告書は、他社が今後の法改正(公益通報者保護法)やガイドライン・指針の策定に伴い、現状の内部通報制度を見直すにあたってたいへん貴重な資料と思われますので、本稿を執筆いたしました(なお、日本郵政は当該報告書に沿って内部通報制度を見直したようです)。

とりわけ(日本郵政グループの)現行の内部通報制度の検証方針を(図表にして)ご紹介しておりますが、ここは公益通報への適切な対応体制の整備が義務付けられる事業者にも参考になるのではないかと。日本郵政の報告書はとてもよくまとまっているものと思いました。全国書店にて発売中なので、ご興味がございましたらご一読くださいませ。なお、私的には同誌に掲載されているNOT法律事務所弁護士の方による論稿「コロナ禍で相次ぐ大企業の減資、『資本金1億円』の誘因」がとてもおもしろかったので、そちらをお読みなることもおススメいたします。

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2021年3月31日 (水)

法学から考えるESGによる投資と経営(新刊書のご紹介)

Img_20210330_201036_512 いよいよ3月31日には金融庁と東証から改訂2021コーポレートガバナンス・コードが公表されるはずですが、今朝(3月30日)の読売新聞1面トップでは「気候変動 企業の戦略開示-金融庁、東証 リスク、投資家に」と報じられていました。東証のプライム市場に上場する企業には、気候変動関連の戦略や目標の情報開示を要請する、とのこと。おそらく気候変動に対する経営戦略や目標、リスク管理などを投資家に報告すべき、との指針が出され、いわゆるTCFDに即した情報開示が推奨されることになる模様です。

3月初めの金融庁フォローアップ会議では「信頼される監査制度」について議論されていたようで、そこまでは会議再開時の予定通りだったと思うのですが、いきなり「気候変動関連の情報開示」という新しいテーマが入ってきたのでしょうかね?真相はよくわかりませんが、おそらく政府の強い要望があったものと推測いたします(それにしても一般の上場会社が6月までに準備できるのでしょうか?)。

さて、先週までは書店に立ち寄る時間もなかったのですが、昨日、どうしても気になっておりました一冊をようやく購入することができました。筑波大学(大学院)教授の大塚章男氏によるご著書「法学から考えるESGによる投資と経営」(2021年3月初版 同文館出版2,200円税別)です。帯書きは「株主利益の最大化」や「金銭的な投資利益の最大化」のみを追求するべきなのか?ESG投資・経営について、法的視点から企業への影響や新たな経営のあり方を考える」とあります。

大塚先生の7年間の研究成果だそうですが、上場会社の経営者の皆様、社外役員の皆様にはおススメの一冊です(同文館の編集・企画のAさん、相変わらず良い仕事してますね。(*^-^*))。前半部分はESG投資の概要や株主構造の変化とESG経営との関係、日米英における最近のガバナンス関連事情の解説がよく整理されています。投資家側はアクティビストとインデックスファンドと分けて解説されている点やESG投資の具体的な手法などもコンパクトに解説されていて有益です。私自身、前半部分は結構勉強してきたつもりなので、比較的サラっと読めました。ただ、ガバナンス・コード2021改訂版をきちんと理解したい、という方には、2014年ころからの日本の事情もよくまとまっていて理解が進むと思います。

そして圧巻は後半です。ESG経営に関わる企業側には会社法の視点からESG経営への法的規律について、とりわけ取締役の善管注意義務との関係で様々な課題が示されています。また、ESG投資に傾斜する投資家側には信託法の視点から(受益者に対する)忠実義務とESG投資との関係について課題が示されています。企業側にとっても、機関投資家の忠実義務とESG投資との法的規律を理解することは有益ですよね。

令和元年改正会社法及び関係政省令が施行され、最近は会社法関連の実務書、基本書がたくさん出版されていますが、どうしても「おなじみの論点に対する正解」「改正法に対応するためのひな型」に光があてられてしまいます。しかしながら、本書はESG経営や投資の実務に会社法、信託法の視点から「有意義な問い」を投げかけていて(たとえばSDGs、ESG重視の戦略決定に「経営判断原則」は適用されるのか等)、とても読んでいて新鮮な気持ちになります(平易な文章で書かれているので、企業の皆様にも普通にお読みいただけます)。株主資本主義からステークホルダー資本主義へ、といった安易な理解だけでは「株主利益の最大化」に重きを置いてきた取締役の法的義務の内容まで変えることはできない厳しさ(会社法解釈の厳しさ?)を痛感いたしました。

なぜ今、気候変動に対する経営戦略を開示しなければならないのか、そこになぜ投資家が注目をするのか、本書には「なるほど」と納得できるヒントが示されています(あくまでも「ヒント」です。「正解」は各社各様の状況によって変わるものであり、自分の頭で考えなければならない、ということなのでしょう)。法律学の視点からガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードを論じる書籍というのは、これまであまりなかったのではないでしょうか。上場企業に対しては、機関投資家から(公式、非公式を問わず)重要な提案が示されたり、またエンゲージメントの機会が増えたりすることが予想されますが、本書はそのような場面における企業対応にも十分に参考になる内容です。大塚先生、勉強になりました!<(_ _)>

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2021年2月25日 (木)

中央経済社「ビジネス法務」に論稿を掲載していただきました。

Img_20210220_200343_400 2月22日の日経夕刊の1面に「買収防衛策導入-ピークから半減」との見出しで、M&A助言会社の調査によると買収防衛策を導入している企業がピーク時から半減している、と報じられています(昨年末で281社だそうです)。買収防衛策に批判的な機関投資家が増えていることから、今後も防衛策の廃止に踏み切る上場会社が増えることが想定されているようです。

ただ、非友好的買収事案が最近1年で10件以上に上る状況から、日住サービスのように(2019年に廃止したにもかかわらず)再度、買収防衛策を導入する議案を上程している会社も出てきておりますので、今後は導入すべきか、廃止すべきか(自社の株主構成なども踏まえたうえで)個社において検討される風潮も出てくるのではないでしょうか。

ところで「買収防衛策」って、(事前警告型が典型ですが)その外形にこだわり過ぎていませんでしょうか。「これが防衛策だ」といった概念が固定観念化しているわけですが、ここ15年ほどの間に社外役員の数も増えましたし、TOBルールも変わりましたし、支配権獲得を目指す議決権比率、株主総会の機能、株主とのコミュニケーションの取り方等も変わりました。最近は「(ファンドと組んだ)なんちゃってホワイトナイト事案」や「買収防衛目的で他社を買収する事案」まで登場するようになり(笑)、私からみれば事実上の買収防衛策は圧倒的に増えているように思います(大手法律事務所の功績のひとつではないでしょうか)。

このあたりの研究なくしてガバナンス・コードを改訂しても、結局は「いたちごっこ」で終わってしまうような気がしております。株主価値を高めることに熱心な経営者がすべて利他的な行動に出るわけもなく、むしろ「俺しか価値は上げられない!」と妄信しているパッションこそ、株主にとって必要ではないのか・・・と思うところもあります。要は「買収防衛策は善か悪か」といった議論ではなく、マクロの視点から「どう扱うか」といった議論が必要な時代になってきたのではないかと。

さて、中央経済社「ビジネス法務」2021年4月号におきまして、「特別企画 2020年に起きた企業不祥事とコンプライアンス強化へ向けた示唆」と題する論稿を掲載いただきました(計6頁)。昨年も「2019年に起きた・・・」というタイトルで同趣旨の論稿を掲載いただきましたが、反響が大きかったそうで、本年も6頁にわたって執筆いたしました。もちろん、法律雑誌の特別企画の一環なので、網羅的なお話しではございませんが、近年の不祥事に特徴的な点を指摘して、平時からの対応のヒントを記したものです(本当に少しでもヒントになれば幸いです)。 2月21日より、全国書店にて販売中ですので、よろしければご一読くださいませ。

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2021年2月 6日 (土)

中央経済社「企業会計」に論稿を掲載していただきました。

Img_20210204_140740_512 2月4日発売の中央経済社「企業会計」(2021年3月号)に、「会計監査の視点から公益通報者保護法の改正を考える」と題する論稿を執筆いたしました。同誌の今年1月号からの巻頭ページ「Accounting Synergy」(カラー刷り)に掲載されています。2022年から施行される改正公益通報者保護法について、「会計監査人や会計士資格を有する社外役員が通報を受領した場合」を想定して解説したものです。

詳しい方はご存じのとおり、改正法の内容を具体化する「指針」策定作業が進んでいる途中なので、実務への影響が明確になっていないところもありますが、進行中の検討会の議論なども踏まえながら執筆いたしました。最近の会計不正事件をみても(また、私が不正調査を担当した事件でも)、社員から会計監査人に内部通報がなされるケース、社員から東証や金融庁、あるいは機関投資家に内部告発がなされて、各ステークホルダーから会計監査人に調査依頼が届くケース等、多くの事例で内部通報を含む「公益通報」が会計不正の端緒となっています。

公益通報保護法上の対応業務従事者には(情報漏えいについて)刑事罰を含めた制裁措置があり(ただし、会計監査人が「対応業務従事者」となるかどうかは現在のところは不明-策定中の「指針」次第でしょう)、また、たとえ「対応業務従事者」に該当せずとも、公認会計士法上の秘密保持義務に関わる問題も考えられることから、改正法への監査法人の準備は必須です。その準備にあたっての参考にしていただければ幸いです。全国書店にて発売中なので、ご興味がございましたらぜひお読みください。

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2021年2月 5日 (金)

法務部門の活躍に期待します-契約書の見直しよりも取引の見直しに関与する

Img_0220_400本日(2月4日)は朝から午後8時まで、日経WEBニュースのランキング1位はずっと三菱電機の設計不正を報じた記事でした。このニュースのトーンからすると第三者委員会を設置して事実関係を調べる必要があるように思うのですが、先日の日立金属や3年前の神戸製鋼の品質偽装調査と同様、「弁護士秘密特権を失えば海外訴訟が不利になる」という点に配慮してか、外部の調査委員による調査はやらない、ということなのでしょうか。

さて、首都圏、関西圏を中心に、緊急事態宣言が延長されることとなり、大企業を中心に「出社7割削減」のための施策も継続されるようです。大阪でも状況に改善がみられる場合には3月7日を待たずに宣言が解除される可能性もある、とのことで、当事務所も(もうひと頑張り)感染対策を強化いたします。ということで(?)、本日は在宅勤務に関連する話題です。

今週月曜日(2月1日)の日経朝刊法務面では「契約書、2割が見直し-押印の削減・廃止(対外文書も押印廃止・削減進む)」との見出しで、リモートワークの障壁とされている日本のハンコ文化が少しずつ「脱ハンコ」社会へと進んでいる状況が(最先端を行く企業の実例を引用して)紹介されていました。日経の調査に回答した121社の集計結果をもとにしたアンケート調査なので「かなり押印廃止に関心を持っている企業のうち」ということになりますが、新型コロナウイルス感染症拡大として、社内書類の押印廃止や削減を行ったと回答した企業が57%に上ったそうです。

そのうち、とくに「契約書の押印廃止・削減」を実践した企業は回答企業全体の2割だそうで、たとえばサントリーホールディングスでは、契約書の作成や支払いなどの業務をオンラインで完結させる新システムを2020年から導入したそうです(2022年にはサントリーグループ全社員が利用可能になる、とのこと)。押印のために出社するような事態をなくし、またクラウド型の電子契約システムを活用し、経費の削減を図るそうです。

このような契約書作成業務のオンライン化などは、サントリーのような巨大企業だからできる・・・とも思われがちですが、そもそもサントリーホールディングスでは、契約書作成業務の電子化(オンライン化)が最終目的ではなく、法務部門が現場の取引業務のデザインに関わるための効率化が目的であり、作成業務の電子化はそのためのツール(手段)のひとつに過ぎないのでは・・・と推察します。というのも、昨年、サントリーホールディングスの法務部長でいらっしゃる明司雅宏氏のご著書「希望の法務-法的三段論法を超えて」(商事法務 2020年-上写真参照)を拝読して(AmazonやSNSでの本書の評価はかなり分かれていますが、サラリーマンの経験を持たない私には、法務部門と事業部門との関係性の解説等、とても興味深いものでした)、「会社書類の電子化-その先にあるもの」に法務のスペシャリストとして目が向いていることに納得したからです。

契約書があるから、その契約書に沿った取引の実践を要求するというのは本末転倒、会計基準に従って経理処理を行うというのも本末転倒、そもそもまずは取引の実態を理解して、自社のリスクを低減するためには取引をどのようにデザインすべきなのか、そこに現場と一緒に知恵を絞るのが法務担当、というもので、これはいたく共感いたします。「ひな型という契約書は存在しない」「契約は実在しない。取引だけが存在する」と述べる明司さんの意見はまことにその通りかと。

サントリーホールディングスにおける具体的な取引の実態は存じ上げませんが、他の企業において、自社のリスク管理の一環として「契約の見直し」ではなく「取引の見直し」が必要な場面はたくさんありますね。たとえば①「契約書を作成しない取引慣行」が存在する業界での取引をどう見直すのでしょうか。先日、日経新聞社会面に、大手広告代理店グループにおける多額の架空発注事件の記事が掲載され、取引管理の不備が指摘されていましたが、まさに業界慣行を逆手にとったような事件です。

また、②当社の専務が相手先企業の社長の自宅に深夜上がりこみ「この物件はウチでやらせてくれ!『男の約束』だからな!よっしゃ、実務はあとでお互い事務方に任せよう」と迫って相手方社長の合意を取り付けた場合の契約の有効性はどうか、さらに、③「どんな合意をしたとしても、お互いに署名・押印を行った文書を取り交わすことで最終的な合意となる旨の慣習法(民法92条)が存在する業界においてはどのような取引の見直しが必要か、など、実際に大企業の取引慣行の法的有効性が裁判で争われた例はたくさんあります。みんな法務担当が「後始末」で苦労します。

もちろん、リアルな法務担当者としては、現場からいろいろと詰められたくないという意識がはたらいて、現場社員に契約書の見直しを要求するにあたっては「電子署名の有効性を裏付ける法改正がなされた」や「タイムスタンプの公的認証制度の普及した」という「錦の御旗」が欲しいところです。ただ、交渉段階から現場に入って行って、契約の裏にある当社と相手方企業との真の狙いまで理解して、一緒になって取引をデザインすることまで踏み込めば、法務の仕事もとてもおもしろいものになるように思います(その結果として「業務委託契約」なのか「共同開発契約」なのかわかりませんが、契約書を締結することに至る)。そうは言っても、まずは「法務の役割を社内で高めること」が必要なので、このたびの「脱ハンコ」に向けた取組みは、まずは法務の役割を高めるきっかけになることを願っております。

よく法務や経理部門は「儲けを生まないコスト部門」と思われがちですが、私はBS、PLに載らない資産価値(人財、ネットワーク、組織文化)を高めるために多大な貢献をしているのが法務部門だと認識しています。コロナ禍において、テレワークをはじめとした働き方改革が進む中で、法務の役割も変革させる良い機会となるのかもしれません。ぜひとも法務部門の方々の奮起を期待しています。

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2021年1月26日 (火)

内部通報制度の理論と実務(新刊書のご紹介)

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本日開示された弁護士ドットコムの四半期決算説明資料はなかなか興味深いです。週刊東洋経済の最新号では「弁護士という職業は10年後には希望はない」とダメ押しされていましたが、我々の業界の現状と将来像を把握・展望するにはとても有用な資料ですね。ともかくクラウトサインの伸びがスゴイ(同社の収益の柱となっています)。もはやサービス事業というよりも製造業の域に達しているような気がします。私はビジネスロイヤー事業くらいしかお世話になっていませんが、将来的にはプラットフォーマーとしての地位を確立する企業になるのでしょうね。

さて、令和2年の改正公益通報者保護法や改正個人情報保護法、近時積極的に活用されている日本版司法取引(協議・合意制度)、国内法化されつつあるEU公益通報者保護指令等、日本企業における内部通報制度の改革を取り巻く法制度が大きく動き出しています。今後はさらに(行政機関への内部告発が増えることを想定して)消費者法や競争法分野における消費者、取引先保護の実効性を高めるための改革も想定され、この改革へ向けた内部通報制度の変容も議論される機会が増えるはずであります。

このような時期に、まことにタイムリーな新刊書が商事法務さんから出版されました(「内部通報制度の理論と実務」弁護士法人中央総合法律事務所編 2021年1月 商事法務)。先日、(本書をとりまとめられた)森本滋先生に恵贈賜りましたものの、実は昨年12月の時点で(裁判所の書店で目に留まった)「どうしても気になる一冊」として、購入しておりました( ゚Д゚);;スミマセン。体裁は、かつて私も執筆者として関与した「社外監査役の理論と実務」(商事法務)になんとなく似ていて、手にとると親近感が湧いてまいります。

常用雇用者が300人を超える事業者の皆様、つまり改正公益通報者保護法に基づいて「公益通報への対応体制の整備等の措置義務」を負う事業者の皆様には、改正公益通報者保護法施行時の実務レベルを認識するうえにおいての最新情報が掲載されておりますので、とてもお勧めの一冊です。「理論と実務」というタイトルからも推察されますが、かなりの分量なので、通読するよりも、各企業における現時点での課題への参考書として活用されるほうがよいかもしれません(すいません、私も通読してからご紹介しようと思いましたが、いまだ読了しておりません)。私が過去に執筆した関連書籍3冊も、各所で引用していただいておりますが、本書も原則として企業実務家向けの書籍ということで、たいへん読みやすい内容です。文中ややむずかしい用語や制度運用については、別途コラム欄を設けて実務上の運用例などと共に解説が施されている点は嬉しい。

本書のご執筆者の本意に沿うかどうかはわかりませんが、本書は「内部通報を検討している従業員」「外部第三者への情報提供(内部告発)を検討している従業員」の方にもとても参考になりお勧めできます。たとえばパワハラ相談への通報対応についても詳論されていますが、その相談窓口などの解説は、むしろ通報を検討されている方々に参考となる情報がとても豊富です。私も「なるほど、これはすぐ使えそう」と思いながら読み進めておりました。

また、私が過去に執筆した本と大きく異なるのは、私は恥ずかしながら(私のアバウトな性格に由来するのか)制度の大づかみ、周辺法領域との関係性等の記述は得意でも、実務上で問題となりそうな細かな点までは詰めきれずに出版しております。しかし、本書は規模の大きな事業者だけでなく、中小規模事業者向けの「社内規程モデル」の解説(ひな型付き)や、実務上とても悩ましい通報への対処方法の手順等、企業実務担当者にとって取扱いがむずかしい細かなプロセスにまで配慮されております(まあ、言い訳に聞こえるかもしれませんが、本書は規模の大きな企業法務系の法律事務所の中堅・若手クラスの方々がご執筆されているので、悩ましい事例への対処経験も私よりも豊富なのでしょう)。したがって、内部通報制度を支える専門家の皆様(外部窓口担当者、社内調査支援者)にも有用な一冊です。

これまで、私自身が「しっかりした通報制度の参考書」として重宝しているのは日野勝吾先生の「企業不祥事と公益通報者保護法」(2020年 有信堂)、升田純先生の「裁判からみた内部告発の法理と実務」(2008年 青林書院)ですが、本書は内部通報制度や公益通報制度の「歴史を知り」「今を知る」ことができる書籍として、今後は上記2冊と共に「しっかりした実務書」として参考にさせていただきます。

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