2016年10月 5日 (水)

注目度が増す?「第三者委員会」委員選定プロセスの開示

大戸屋さん(東証1部)の現経営陣と創業家との対立解消に向けた「第三者調査」報告書(第三者委員会報告書ではございません)がリリースされました。なるほど、創業家側にも大物弁護士(元東京高検検事長)が代理人となって交渉を担当されていたのですね。新聞報道等で概要は存じ上げておりましたが、創業家側の協力が得られないままに第三者委員会が設置された事情、経緯が報告書末尾で説明されているところはとても興味深いです(すいません、報告書をきちんと読めていないので内容についてはまた追ってコメントさせてください)。

この大戸屋さんの件は不祥事発覚ではないので関係ありませんが、証券取引所の企業不祥事対応のプリンシプルが公表されて以来、第三者委員会設置プロセスを透明化したい、といったご相談が企業側から出されることが増えているようです。ここ5,6年ほど、日弁連の第三者委員会ガイドラインが公表され、これに準拠した形の委員会報告書が作成されることで、相当程度に報告書の信用性は高まったと思います。ところが、この「信用性」を利用(悪用)した「なんちゃって第三者委員会報告書」が増えてきたことも事実。「第三者」とは言いながら、実は経営陣の責任転嫁の隠れ蓑としての意義しか持たない報告書も(かなり多く?)作成されているように思われます。しかし「なんちゃって報告書」かどうかは、外からはなかなか見えにくいため、結局のところ報告書の内容と第三者委員会委員が独立性を有するかどうかで判断せざるをえないのが現実です。

この「独立性」判断にあたり、やはり第三者委員会の選定プロセスが開示されることが望ましいわけでして、もっとも効果的なのは第三者委員会の選定指針を社内ルール化することです。そこで、コンプライアンス経営に熱心な企業(企業担当者)では、不祥事発生時において第三者委員会設置の要否を判断する基準、および設置を決めた際における委員の選任方法に関する基準をあらかじめ社内ルールとして策定しようとの試みが出てきました。私自身も3社ほど、社内ルール策定に関するご相談を受けています。たとえば関西のある上場企業では、大阪弁護士会と日本公認会計士協会近畿会が共同運営している「第三者委員会委員推薦名簿」を活用して、その名簿登載者から会社側が(委員長候補者)を選定する、といったルールを検討中です。

会計不正事件等、とりわけ有事に至った後に第三者委員会委員を選定しようとすると、(調査の時間が限られていますので)どうしても顧問弁護士さんからの紹介・・・ということにならざるをえず、候補者の方がどんなに独立公正な立場で職務を全うしようとしても、独立性に疑念を抱かれることになりかねません。したがって平時のうちから、有事を想定して社内ルール化するというのも一案ではないかと思います。弁護士会が推薦した人を委員長に選ぶというのではリスクが大きいのであれば、名簿から企業側が選ぶということにすればかなり会社側の拒絶感も薄らぐように思います。最近は社外取締役の数が増えていますので、たとえば社外取締役や社外監査役さんが中心になって選定作業を進めるというのも検討されるべきではないでしょうか。

もちろん日弁連ガイドラインへの準拠は、第三者委員会の公正性を担保するひとつの判断根拠になりうると考えます。ちなみに会計不正事件に対する第三者委員会報告書のモデルとしては、私は監視委員会の開示課や特別調査課で数年間、開示不正を審査した人たちが作成したものが秀逸だと思いますね。あくまでも私の好みですが、これまで読んだ会計不正に関する報告書の中では、この5年前の第三者委員会報告書は、金融庁で会計不正を摘発してきた任期付公務員の方々(しかも別々の法律事務所の弁護士で構成されているので独立性が高い)による報告書なので、ベストモデルではないか・・・と考えています。

10月 5, 2016 独立第三者委員会 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年9月28日 (水)

ニッセンHD臨時株主総会を終えて・・・独立社外取締役の重み

すでに日経ニュース、産経ビズニュース等でも報じられておりますとおり、セブン&アイ・ネットメディア(セブン&アイHDの100%子会社)との三角株式交換を承認するためのニッセンホールディングス臨時株主総会が本日開催されまして、特別多数(賛成率97%)をもって株主の皆様より承認されました。これをもってニッセンHDはセブン&アイHDの100%子会社となりますので、10月27日には上場廃止となる予定です(産経ビズニュースはこちら)。株主の皆様、本当に、本当にご承認どうもありがとうございました。

ここ3カ月ほど、ニッセンHDの第三者委員会委員長として、大株主と少数株主との公平な利益分配に尽力してまいりました。業績は既報の通りであり、経営責任をとらねばならない立場ではございますが、役員一同とりわけ独立役員は少数株主保護のための対応(三角株式交換方式を採用した正当性、株式交換比率の合理性、手続きの公正性)には万全を尽くしました(第三者委員会のためだけのリーガルアドバイザーとのコミュニケーションも十分にとりました)。交換比率の合理性にあたっては、セレブリックス株式取得価格決定申立事件の決定(東京地裁決定平成25年9月17日)の要旨を参考にし、また手続きの合理性については今年2月のジュピターテレコム事件最高裁決定の立場を参考にいたしました。

本日の株主総会では、もちろん厳しいご質問も受けましたが、想定していたよりも短い時間で終了し、ニッセンは上場会社としての最後の株主総会を終えました。私の独立役員(社外取締役)としての任務もほぼ終えました。まったく偉そうに言える立場ではございませんが、有事における手続きの公正性については自信を持って確保できたと申し上げます。何が公正な手続きであるかという理屈を考えることよりも、公正だと信じる手続きをいかに実践するか、という点のほうがよっぽどムズカシイことを認識しました。とくにニッセンHDの取締役会には親会社関係取締役が3名おりますので、株式交換に関する情報障壁を確立しながらも、同時に日常の重要な業務執行を決定する取締役会を運営する意識の共有が求められました。

親会社が50.7%を保有する上場子会社において、特別多数(66.7%)の賛成を得るためには、創業家の方々を含め、本当に少数株主の皆様のご理解、ご賛同を得る努力が求められます。そういった意味ではISSさんとグラスルイスさん(議決権行使助言会社)の賛成意見は大きかった。また、「モノ言う個人株主」の皆様による猛烈な反対推奨運動がなかったことにも助けられたように思います(もちろん、今のところ、という意味ですが)。このように株主の皆様に非上場化を理解していただいたわけですから、今後はセブン&アイグループにおいて(一日も早く)赤字体質の脱却がはかられねばなりません。

そういえば、「モノ言う個人株主」として(以前、事務所にも遊びに来ていただいた)Yさんのブログに、本日(9月27日)「ブログの方向性について」と題する衝撃的なエントリーが掲載されています。平成18年のカネボウ事件以来、レックス事件、サンスター事件ほか価格決定申立事件で数々の裁判例が形成されることに寄与され、平成26年会社法改正にも多大な影響を与えたYさんが、「今後は価格決定申立は基本的にはしません、ひとつの区切りとして四季報や有価証券報告書を読みながら普通の投資家としての活動をちゃんとやろうかな、と思っています」とのこと(ええ!?ホントに!?)。カネボウ事件ではYさんと対決した(カネボウ側の)Kさんが、本日私とともにニッセンHDの第三者委員会委員(社外取締役)としての役割をほぼ終えましたが、このような日にYさんの上記ブログ記事に接するというのも、単なる偶然とは思えない気がいたします。

しかしYさんに、このようなブログ記事を書かしめたジュピターテレコム事件最高裁決定の影響力は大きなものだと感じます。この最高裁決定によって、経済界はM&Aにおける予見可能性、ソフトローによるルールメーキングの迅速性を手にしたばかりか、有能な個人株主がもたらすリーガルリスクの脅威からも解放されるわけです。ただ、だからこそ、今後は経済界が「お飾り」ではなく、真の意味で少数株主の利益保護を実践できる社外取締役を育成する必要があると思います。決して株主にウソをつかないこと・・・・、社外役員の役割はこれからますます重みを増すことになります。

9月 28, 2016 独立第三者委員会 | | コメント (1) | トラックバック (0)

2016年5月 3日 (火)

三菱自動車特別調査委員会に期待する「真の原因究明」

企業不祥事発生時において設置される第三者委員会の評価を(勝手に)行う第三者委員会報告書格付け委員会では、2月~3月にかけて東洋ゴム工業免震偽装事件に関する調査委員会報告書の評価をめぐって、興味深いやりとりがありました。格付け委員会の委員は同報告書に対して極めて厳しい評価結果を下した(委員4名が不合格)のですが、東洋ゴム事件の調査報告書を作成した委員長(著名な弁護士)の方が、この評価委員会の評価結果に対して反論書を提出、そして3月末には、この反論書に対する格付け委員会としての再反論が出されました(いずれも上記委員会HPにて全文公開されています)。

このやりとりを通じて、とくに日弁連「企業不祥事における第三者ガイドライン」がなぜ策定されたのか、その経緯や目的がよくわかります。また、東証が2月に公表した「企業不祥事対応のプリンシプル」として上場会社に要望している危機対応の指針についても、この日弁連ガイドラインの趣旨がほぼそのまま踏襲されていることも理解できます(日弁連ガイドラインは、「あるべき企業対応を求めた規範を創設したもの」ではなく、ステークホルダーへの説明責任を果たすことで企業価値の再生を図ってきた企業不祥事の歴史の中で、ベストプラクティスの集大成として策定されたものである、という点がきわめて重要です)。

ところで三菱自動車さんは4月26日、約3カ月の調査期間を決めて特別調査委員会を設置したことを公表しました。そこには委員として、元検察官である弁護士の方々の名前が掲載されています。前掲の東洋ゴム工業免震偽装事件の調査委員については、いったん会社側の危機対応の支援をしていながら、その後調査委員として不正調査に関わったことを格付け委員会が厳しく指摘しているところですが、今回の燃費偽装事件に関する特別調査委員会の構成メンバーにはそのような独立性、公正性に問題はないのでしょうか。もちろん三菱自動車さんの公表文には独立性、公正性には問題がない、と記されています。しかし、4月27日の毎日新聞(東京版)朝刊「自浄作用働かず」と題する事件記事では、

関係者によると、三菱自動車は、当初、約3カ月間の調査委員会による調査が終わるまで発表を先送りすることを検討したが、日産などの反対を受けて発表に踏み切った

と報じられています。この書きぶりからすると、今回の燃費偽装問題を三菱自動車さんが公表する前から(社内調査を目的とした)特別調査委員会が設置されていたようにも読めます。そうなると、そもそも今回選任された委員の方々は、不祥事公表前の三菱自動車さんの危機対応を支援していたことも憶測されるところです。三菱自動車さんは上場会社なので、当然のことながら東証「上場会社における企業不祥事対応のプリンシプル」に沿った行動が求められます。そこでは第三者委員会を設置する場合における独立性・中立性・専門性の確保が要請されています。もし本当に「独立性、公正性に問題がない」のであれば、まずは今回の特別調査委員会のメンバーの方々は、どの時点から調査に関わったのか、その選定プロセスが明らかにされる必要があると思います(ちなみに日弁連第三者委員会ガイドラインの解説書では、公的機関による調査が同時並行的に進んでいる場合でも、第三者委員会はできるかぎり公的機関とのコミュニケーションを図りながら調査を進める必要があるとされており、三菱自動車さんが置かれている現状のもとでも、プリンシプル対応は不可欠だと思われます)。

国交省による再現試験等が厳密に行われる中で、とりわけ特別調査委員会に期待されることはこのような燃費偽装が20年以上も繰り返されてきた組織としての構造的欠陥がどこにあったのか、という点を明らかにすること(真の原因解明)です。三菱系の金融機関も、三菱商事さんも、三菱重工さんも、「今後、自動車を支援するかどうかは調査結果次第である」と社長さんが述べておられるので、まさに特別調査委員会の報告も、果たして支援に値する組織かどうか・・・という点へのスコープが求められます。そのような中で、昨日(5月2日)プレジデントオンラインに掲載されているモータージャーナリストの方の記事「三菱自動車の重罪-もしあなたが三菱自動車の社員だったら」がアップされましたが、とても説得力があり秀逸です。筆者はできるかぎり三菱自動車にとって有利な側面に光をあてつつも(私もこの側面には納得します)、それでも今回の不正は重大であり、その原因は三菱グループとしての「驕り」にあるのではないかと仮説を立てています。これまでの数々の不祥事への対応ぶりから、この仮説には私も同意します。

この筆者の厳しい指摘はあくまでも仮説であり、仮説である以上検証が必要です。三菱グループが三菱自動車さんを「社会的に価値のある企業」として支援を続けるのであれば、この検証こそ特別調査委員会によってなされるべきではないでしょうか。

「三菱という企業の慢心や驕りの臭い」「自らを勝手に例外扱いするエリート意識、相手が監督官庁であろうとも容喙されたくないという自己肥大」「人命よりも重い何かを守ろうとする構図」

という仮説について、これを否定するのであれば、その合理的な理由を示す必要があるように思います(1月に公表された旭化成さんの「親会社による中間調査報告書」では、子会社である旭化成建材さんのデータ偽装を放置してしまったグループ組織としての問題点に真正面から回答する努力をされていましたよね)。もちろん最後はこれらの仮説を否定することも自由ですが、普通の企業不祥事とは思えない今回の事例において特別調査委員会に公正性、中立性が具備されていることを示すためには、どうしてもこのような組織の在り方への切り込みが求められるのではないでしょうか。

5月 3, 2016 独立第三者委員会 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2016年3月30日 (水)

委員の胆力に敬意を表します-OFS第三者委員会報告書

(3月30日午後 追記あり)

すでにご承知の方も多いとは思いますが、3月29日、王将フードサービスさん(OFS社、東証1部)は、反社会的勢力との癒着の有無を主たる調査委嘱としていた「コーポレートガバナンスの評価・検証のための第三者委員会」による報告書を公表しました(東証の適時開示リリースはこちらです)。報告書を読み、委員にも、委員補佐にも、加えてOFS社役員にも(?)、CFE(公認不正検査士)仲間がたくさん登場することを初めて知りました。

会社側は「委員会調査により、反社会的勢力との関係が否定されたことでホッとしています」とのことですが、報告書をお読みになれば重大なポイントはそこだけではないことはすぐにおわかりいただけるかと。委員会の名前のとおり、まさにOFS社のコーポレートガバナンスの脆弱性が浮き彫りとなる「新事実」が報告書で明らかにされています(たとえば朝日新聞ニュースはこちら)。

この第三者委員会は、会社側からは主として「当社が反社会的勢力と関係があるか否か」という点についての調査を諮問されました。そして調査結果としては「関係があるとは認められない」との結論に至っています。しかしながら、当社のコーポレートガバナンスの評価・検証に必要と思われる過去の事実については広く調査範囲に含める、として、これまでOFS社が開示してこなかった「不適切な取引」の存在を公表しています。その結果として「OFSが東証に報告していた内容と事実は異なる」ということも認定しています。

おそらくOFS社としては、このように諮問の対象とはしていなかった重要な事実が調査の対象となり、しかも現時点でも(ガバナンスに影響を及ぼす事実として)大いに問題あり、と公表されることは予想されなかったのではないでしょうか。このたび第三者委員会が認定した事実と(これまで報じられてきた)ほかの関連事実を組み合わせますと、うーーーん。。。一昨日のお話の続きではありませんが、これがまさに会社経営者のためではなく、ステークホルダーのために調査を行う第三者委員会の姿ではないかと思います。

以上は私の感想も含んでおりますが、なによりもこの報告書を詳細にお読みになった方であればおわかりのとおり、この報告書が公表した内容は、今後社会的に大きな影響力を有するものになるかもしれませんね(30日未明に報じられた こちらの毎日新聞ニュースでは、早くも新事実に基づく新たな展開の記事が掲載されています。委員の方々も、どこまで報告書に書くべきか、かなり悩まれたのではないかと)。第三者委員会としての調査の限界に迫った委員及び委員補佐の皆様の胆力に敬意を表すると同時に、私自身も不正調査のプロとして、この報告書を作成した委員の方々の姿勢を見習っていきたいと真摯に思う次第です。

(追記)30日、王将フードサービスさんの株式取引は通常売買が成立せず、昨年来最安値となってしまったそうです。うーーーん、ここまでの影響力を予想しておりませんでした。第三者委員会の役割をあらためて痛感するものです。

3月 30, 2016 独立第三者委員会 | | コメント (8) | トラックバック (0)

2016年3月28日 (月)

企業の有事における「第三者委員会報告書」と「法律意見書」の境界線とは?

別にどの事例を想定して・・・とは申し上げませんが、最近の企業不祥事に関するマスコミ報道や企業側のリリースを読んでおりまして、「これは第三者委員会報告書だろうか?それとも企業側が依頼をした弁護士による(役員責任回避のための)法律意見書だろうか?」と悩むケースがあります。とりわけ著名な法律家の方が委員長として調査に関与して、その法的意見が述べられますと、司法機関による判断を得ぬままに、事実認定や法的評価が正しいものとして一人歩きしているように思える事例も散見されます。

組織の役員の法的責任が問われかねない場面において、「これは法的に問題がありそうだが、かろうじて民事・刑事を問われるほどではない(もしくは責任があるとは断定できない)として、組織としては猛省を促すが、個人的責任は不問に付す・・・といった趣旨が示されている報告書も気になります。一見、企業に厳しい姿勢で社外委員が臨んでいるようにみえて、実は個人の法的責任追及を回避するための巧妙な理屈が活用されているように思われます。まさに安宅の関における弁慶の勧進帳です。

もちろん企業不祥事発覚時における第三者委員会というものは法律上の制度ではありません。したがって「第三者委員会報告書」というものが、「こうでなければならない」といったルールもないわけですが、せめてマスコミが報じる事実認定やステークホルダーが責任認定の根拠として活用できるような有益な報告書かどうかは、区別する必要があるのではないでしょうか。すくなくともステークホルダーへの説明責任を果たすための報告書として作成されたのか、それとも不祥事を発生させた企業の役員の責任回避のため(つまり企業のリスク管理のため)に会社側にとってのみ有用な報告書として作成されたものなのか、明確にしなけば、国民に誤解を生じさせるおそれがあります。

たとえば(当ブログでも何度かご紹介している)第三者委員会報告書を任意に格付けする組織があります。これまでは第三者委員会報告書の出来栄えを絶対評価によって格付けをされていますが、ステークホルダーのための委員会報告書なのか、企業役員のための法律意見書にすぎないのか、そのあたりについて有識者による意見を述べる、ということも必要ではないかと。公式な機関がそのような評価を開示するとなると問題かもしれませんが、複数の有識者による意見ということであれば、マスコミや投資家が、評価対象とされた委員会による認定事実や法的評価について、どの程度信用できるか、といった判断を下すメルクマールにはなり得ると考えます。

私個人の意見としては、企業のリスク管理の一環として、企業側が法律専門家の意見を求めることは何ら問題があるとは思えませんし、役員個人の利益保護のために法律意見書を開示することも当然許容されるものと考えます。しかし、日本取引所から不祥事対応のプリンシプルが公表され、企業の自浄作用の発揮場面として、社会的に第三者委員会報告書の有用性が広く認知されるに至った現在、第三者委員会の独立性や公正性への信頼を逆手に取ってステークホルダーに誤解を生じさせるリスクも高まりつつあるように感じます。これは明らかに消費者や投資家、ひいては国民全体にとって望ましいものではないと思います。社外役員主導型の第三者委員会も形成されるようになり、第三者委員会制度の在り方を考えるにあたり、これは重要な課題だと認識しています。

3月 28, 2016 独立第三者委員会 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年3月 4日 (金)

「第三者委員会制度」に対する期待ギャップを考える

弁護士等の有志による「第三者委員会報告書格付け委員会」は、2月下旬、東洋ゴム工業免震積層ゴムの認定不適合に関する(社外調査チームによる)「調査報告書」(公表版)の格付け結果を公表しました。これに対して、同報告書を作成した社外調査チームの代表者の方から、3月1日付けで反論書が同委員会に届き、その内容も公表されています(委員会に反論書が届くのは初めてですね)。ちなみに同委員会の委員による個別意見は、この調査報告書に対しては評価が分かれていますが、「不合格(F)」評価を下した委員が4名もいらっしゃるという点が特徴です。

私自身は昨年、この格付け委員会活動の一環である「優れた第三者委員会の表彰制度」の事務局を務めておりますので、上記調査報告書への個人的評価をここで行うことは(今後の表彰制度のあり方からみても)適切ではありませんので控えます。ただ、委員の方々の個別評価、また報告書作成責任者の方の反論を読み、企業不祥事が発生した際の第三者委員会報告書の役割について、あらためて考える点は以下のとおりです。

昨年出版された「会社法罰則の検証」(山田泰弘・伊東研祐編 日本評論社)の拙論稿でも詳細に書かせていただきましたが、ステークホルダーに多大な損害を生ぜしめるような企業不祥事への刑事罰適用は、企業の自浄能力の欠如が明確になった場合に初めて発動されるべきであり、少なくともソフトローによって自律的行動が期待できるかぎりにおいては抑止的でなければならないと考えています。これは最近取引所から公表された「上場会社の企業不祥事対応のプリンシプル」も、同様の趣旨で描かれているものと理解しています。

このたびの東洋ゴム工業さんの免震ゴム偽装事件については、その後に発覚した防振ゴム偽装事件とは関係なく、一部取引先団体の告発によって刑事捜査が開始されるようです(たとえば読売新聞ニュースはこちら。先日、告発が受理されたことが報じられています)。地検特捜部は同社の自浄作用の発揮が期待できないことから、もはや組織としての再発防止やガバナンス体制の構築は、国家権力による強制力を行使しなければ解明できないものと判断したのではないでしょうか。仮に調査チーム(第三者委員会型ではなく、あえて調査チーム型と言いますが)の選定過程や人選が公正であり、ごく普通の(つまり専門家ではない)読み手の方々の素朴な疑問に真正面から応えるような原因究明がなされているのであれば、企業側が企業風土改革に自主的に乗り出すインセンティブになりうるはずです。

日弁連作成の第三者委員会ガイドライン(これもソフトローと言えます)に準拠する第三者委員会の設置だけが推奨されるべきとは申しませんが、やはり「どうすれば社会から不祥事への適切な対応を企業が行ったと評価されるのか」という「外から目線」での危機対応には配慮が求められるものと考えます。どのような調査チームで臨むにせよ、「調査報告書」に求められる社会からの期待は公共財的な役割です。一方、これだけ第三者委員会の活動が増えてくると、不祥事を起こした企業側が「調査報告書」に求めるのは企業の信用回復、いや企業ではなく企業経営者の危機管理への期待です。最近ますます社会からの期待と企業からの期待とのギャップが大きくなっていることは深刻な問題です。

たとえば会計不正事件に目を向けると、公共財的な意味を持たない「調査報告書」に何度も監査法人がNOを突き付ける場面が出始めています。粉飾や違法配当の根本原因を見極められない第三者委員会報告書が続出すれば、おそらく「会計基準への適合違反」を司法が積極的に追及する風潮を助長し、会計制度、監査制度に著しい副作用をもたらすことにもなりかねません。「調査チーム」であれ「第三者委員会」であれ、法的枠組みの存在しない中で、いかにして企業と社会との共存を図るのか、不祥事発生の背景事情にまで踏み込まなければ企業が社会からの信頼を失ってしまうことになりかねません(企業活動が不正の発生リスクを抱えつつも、社会にとって有用と認められて活動を許されていることの当然の帰結だと思います)。

このような意見を持つ私にとって、上記格付け委員会のマスコミ代表委員の方の下記意見に、真摯に耳を傾けたいと思います。

むき出しの強欲や功利主義の害を緩和するため、市場経済は様々な自律的な歯止めを設けてきた。お上による規制とは別に、企業が自律的に不祥事の社会的責任を果たす手立てとしての第三者委員会もその一つで、客観性と透明性を捨てて、調査効率だけを求めると、企業にとっては逆効果となりかねない。

もし私が第三者委員会の委員長候補になったとすれば、この委員の方のフレーズを、十分経営者の方にナットクしていただいた上で就任する必要があると痛感するところです。最近のコーポレートガバナンス改革の中でも感じるところですが、結局「企業はなんのために存在するのか」(ガバナンスは目的ではなく手段である)という深遠なテーマと通じるところがあるのかもしれません。

3月 4, 2016 独立第三者委員会 | | コメント (3) | トラックバック (0)

2016年2月18日 (木)

企業不祥事対応プリンシプルの趣旨を反映した第三者委員会報告書が登場

上場してわずか4か月後に過年度決算を訂正、しかも元役員の資産流用事件が原因という、またまた日本取引所を悩ませる会計不祥事が話題になっておりますが、こちらもそんな中小上場会社の不祥事対応の話題です。すでにパブコメ期限が締め切られ、まもなく日本取引所の「考え方」とともに正式版が公表される「上場会社における企業不祥事対応のプリンシプル」ですが、早くもこのプリンシプルの趣旨を取り入れた第三者委員会報告書がリリースされています(2月12日付け ジェイホールディングス社「第三者委員会による調査報告書受領のお知らせ」-報告書本文2頁の下注に記載されていますね)。興味深く読ませていただきました。

本報告書では、会社にとって重要なファイナンスを実行する際の社内手続き違反、適時開示違反が問題とされており、当該事案が発生するに至った原因を内部管理体制上の問題点を中心に掘り下げています。また、類似案件の存否についても熱心に調査が行われ、過去5年以内に数件の同種案件の存在を明らかにしています(これに伴い、会社側は2月12日付けで過去の案件について新たに開示しています)。経営陣(旧経営陣含む)からのヒアリング結果だけをみると、「ビックリするようなガバナンス体制・・・」のようにも感じますが、自ら調査範囲を設定して、内部管理体制を中心に原因究明を行い、説得的な再発防止策を提示しているところは、まさにプリンシプルの趣旨に沿った報告書ではないかと。

「経営者の内部統制無効化リスク」に触れているところも特徴的です。1月27日、東芝事件を受けて日本公認会計士協会の会長通牒「公認会計士監査の信頼回復に向けた監査業務への取組」が公表され、その中で光があてられた(すべての上場会社に存在する)リスクです。職業的懐疑心を発揮して監査に臨むためには、会計監査人の方々もこの「経営者の内部統制無効化リスク」の存否について厳しく評価をしていただきたいと思います。ちなみに私の個人的見解としては、管理担当取締役が存在しない点や上場会社の社外監査役の月額5万円報酬・・・という点において、すでに経営者の内部統制無効化リスクが高いとしか言いようがないような気がします(社外監査役の重要な役割からすれば、「どうか働かないで」といったメッセージだったのでしょうか・・・)。

取締役会、監査役会への厳しい意見が述べられ、このままでは将来的にも同様のガバナンス不全、開示義務違反が起こってしまう、と委員会は警鐘を鳴らしています。「あなたが出席していた取締役会で、もしこの少数の経営陣で決められたことが(付議案件として)上程されていたとすると、あなたは止めることができましたか?」と調査委員から質問され、「いやぁ、私はそれを止める自信はありませんね」と堂々とおっしゃる取締役、監査役の方々がいらっしゃるわけで。。。(^^;)「経営者=企業価値、期待価値」のような中小規模の上場会社のガバナンスって、どうしたらよいものでしょうかね。。。(^^;)

いずれにせよ、不祥事発生時、自浄作用を発揮できない企業は上場すべきではない(上場を維持すべきではない)…という点は、おそらく皆様方の共通認識ではないでしょうか。不祥事対応のプリンシプルは「時間軸」を持つ原則指針なので、ジェイホールディングスさんが「自浄作用を発揮した」といえるためには、今後この報告書を基にどのようなガバナンスを構築していくか、そこが最も重要なポイントです。真に「不祥事対応のプリンシプル」に準拠したといえるためには、これからの同社の地道な内部管理体制の構築が大前提です。お金のかかる「仕組み作り」よりも、気合いを重視する「運用」にこそ光が当たるガバナンス構築が必要ですね。

2月 18, 2016 独立第三者委員会 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月14日 (火)

東芝事件の第三者委員会調査は社内がひとつになってこそ価値がある

先週金曜日のエントリー「東芝社の不適切会計処理問題の原因分析は慎重にすべきである」にはたくさんのコメントをいただき、どうもありがとうございました。皆様方の東芝事件への関心の高さを改めて認識いたしました。有益なコメントが多いので、ぜひともコメント欄をご覧いただければ幸いです。

さて、7月20日過ぎに東芝社の不適切会計処理問題に関する第三者委員会報告書が公表される(予定?)とのことですが、ここ1週間ほどのマスコミ報道では「経営トップが粉飾を指示した模様」とか「●●は辞任は避けられない」「委員会は経営責任を厳しく追及する見通し」等、すでに報告書の内容が漏れているような記事が目につきます。ただ第三者委員会の委員や委員補佐は弁護士や会計士であり厳格な守秘義務が課されていますので、報告書が公表されるまでは関係者にも草案を開示しないものです。したがって、私は東芝関係者の方からのリークではないかと推測しています。

最近のマスコミ報道の中でももっとも気になりましたのが7月10日付けのこちらの読売新聞ニュースです。記事内容を一部引用をいたしますが、

東芝の不適切会計問題で、過去5年で営業利益(本業のもうけ)を過大計上していた金額が、最終的に計1700億円超に膨らむことが分かった。これまでは1500億円超になるとされてきたが、さらに200億円程度増えることになる。・・・(中略)・・東芝では、第三者委の調査と並行する形で、追加の独自調査をしており、そこで新たな利益のかさ上げが見つかったとみられる。

驚いたのが、第三者委員会の調査と並行して「独自の調査」を東芝さんが行っている、という点です。一般的には不祥事発覚時における第三者委員会調査が開始された際には、会社は全面的にこれに協力するため、独自の社内調査は(第三者委員会から委託される等がないかぎり)行わないはずです。しかしながら東芝さんの場合には並行して独自調査を行っているというのですから、その趣旨がよくわかりません(東芝さんの独自調査というものが、第三者委員会が既に把握している1500億円程度の追加の「利益かさ上げ」の事実を否定しているようでもなさそうです)。

「独自調査」で思い出すのが2011年の九州電力さんの「やらせメール事件」における第三者委員会調査と同社の社内調査です。九電経営陣は、第三者委員会による調査結果に納得ができないとして独自の社内調査を行い、「第三者委員会の認定事実のココが誤り!」と指摘した報告書を経産省に提出していました。ご記憶の方もいらっしゃるかとは思いますが、第三者委員会と九電側とが、認定事実の真偽につき真っ向から対立していました。

九電事件における第三者委員会の委員長のもとには、社内から多くの情報提供があり、この情報提供から、第三者委員会の委員長は証拠隠滅の事実を把握し、また「九電には有能な社員が多い」と認識されたようです(たとえばこちらの委員長のつぶやき)。このたびの東芝事件でも、中間報告の際には会社の独自調査の結果、36億円程度の追加の利益かさあげがみつかったとされていましたが、その後2000億円近い利益のかさ上げが委員会調査によって判明したということなので、第三者委員会の下へ多くの内部通報が届いたものと思われます。しかしながら、この通報事実に基づいた第三者委員会による事実認定とは別に、東芝独自の調査が行われているという点は、いまマスコミで報じられているように社内が一枚岩とは言えない状況を示している可能性があります。

これは第三者委員会としても、報告書を公表する際に、本当に東芝さんの独自調査というものが並行して行われていたのか、もし行われていたとすれば、何の目的のために行われていたのか、といった点について明らかにしていただきたいところです。やはり第三者委員会調査は、当該会社の自浄能力の発揮場面であり、企業としてステークホルダーへ説明責任を尽くす機会なので、認定事実や原因分析、再発防止策については信用性の高いものでなければならないはずです。しかし、調査対象となる組織内に支配権紛争等があり一枚岩になれない事情が認められると、第三者委員会への情報提供合戦となり、そもそも第三者委員会の認定事実の信用性にも疑問が呈されることになりかねません。

仮に課徴金処分の必要性があるために、証券取引等監視委員会の調査が開始されるとしても、やはり調査の端緒となるのは今回の第三者委員会報告だと思われます。第三者委員会報告書の信頼性を担保するためにも、ぜひとも東芝さんの社内抗争等が委員会調査には影響がなかった点を合理的な根拠をもって説明していただきたいと思うところです。

7月 14, 2015 独立第三者委員会 | | コメント (1) | トラックバック (0)

2015年5月 7日 (木)

監査部門必読!?-JBR社内調査委員会と「攻めのガバナンス」

トラブル解決を本業とするJBRさん(東証・名証1部)が大きなトラブルになってしまいました。同社の連結子会社における会計不正事件といえば、昨年何度も当ブログで取り上げましたが、4月28日に公表されました同社内部調査委員会報告書を拝読してたいへん驚きました。同内部調査委員会は、過去3度の第三者委員会も認定できなかった「親会社の元取締役管理部長」の不正関与(といいますか不正主導)の事実を認定しています。この元取締役管理部長さんは現在でも自身の関与は否定されているそうですが、社外取締役2名、社外監査役1名で構成される内部調査委員会は、明確にこの元取締役の関与根拠事実を証拠をもって認定しています。ちなみにフォレンジック部隊も(メールの復元等で)活躍されています。

これまで実行者として「会計不正の主導者」とされていたA社員(子会社取締役)が、実は親会社のB元取締役管理部長から具体的な指示を受けて先食い(工事進行基準に基づく不適切な売上先行計上)を行っていたということだそうです。A社員が第三者委員会のヒアリングに嘘をついていたのは、B元取締役管理部長から「真実を話せば当社は上場廃止になってしまう。私も困るし、あなたも困るし、すべての社員が困ってしまう」と説得されたことによるものだそうです。A社員はBから「心配するな、俺が必ずおまえを守る」と言われたそうですが、粉飾を指示された社員をなだめる経営幹部の常とう手段ですね。ちなみに、このA社員は(意を決して)内部監査の手が会計不正工作に及ばないように自ら画策しています。

しかし本件でもっとも驚いた事実は、同社の監査役、内部監査室長がこのB元取締役管理部長の指示を受けて監査役らに届いていた「疑惑ccメール」を自身らの手で消去していたことです。本来、会計不正の主導者である経営幹部の不正を勇気をもって糾弾しなければならない立場にある二人が、このB元取締役から「会社を守るためだ」と言われて自身らに届いていた不正を疑わせるメールの消去に走るというのは・・・・・。このB元取締役管理部長は、自ら社内で「上場屋」と名乗り、会計不正を実行した連結子会社の上場を企図していたということなので、相当に親会社では実力者だったものと推測します。

多くの社員が「会社を守れ」というメッセージのもとで疑惑メールを消去し、証拠隠滅に走ったというのですから、やはり組織力学は恐ろしいなぁと感じます。ちなみに疑惑メールを消去しなかった(消去指示を拒否した)社員がひとり登場します。なんと気骨のある社員だなぁと読みながら感じておりましたが、最後まで読みますと「私は当時、子会社の保険会社に出向しており、金融庁が管轄でした。なので、もしメールを消したことがバれたら厳罰になるのでこわかったのです」とあり、ややガッカリします。

さらに「日弁連第三者委員会ガイドラインに準拠しています」としながら、どうして第三者委員会はここまで突っ込んで事実認定をしなかったのか、と第三者委員会への苦言も呈しています。もちろん第三者委員会設置の時点では金融庁の立入検査が行われていない、関係者が協力して真実を話さない、といった問題はあったものの、今後の第三者委員会の在り方にも一石を投じることになるのではないでしょうか(ちなみに、内部調査委員会がここまで書けるのは、ご自身方が事件の後から社外役員に就任されたから、という面もあることを付言しておきます)。そもそも第三者委員会が半年間で3回も(委員を変えて)設置されるということは異例の事態であり、どうして監査法人が第三者委員会の認定に満足できなかったのだろう・・・と疑問に思っておりましたが、監査法人は同社の監査役さんとの連携がうまくいっていなかったことが想像できます。監査役が監査法人に対して「なぜ第三者委員会を設置せよ、などと偉そうにいうのか、そこまで必要ないではないか」と抗議に出向いたことが記載されています。うーーん、たしかに経営者が関与する不正を糾弾するためには監査役と監査法人の連携は不可欠だと思いますが、これでは機能しないかなぁと。

なお、この報告書を読んで感じたことですが、これはなにもJBRが特別な会社だから、ということではなく、一つ間違えばどこの会社でも起きるのではないか、ということです。会計不正の舞台となった子会社はJBR社が成長戦略の一環としてM&Aで取得した会社です。その会社の社長さんにほれ込んで取得したということのように推測されます(これまでの第三者委員会報告書等を総合しての推測です)。また元取締役管理部長氏は、世間で上場のプロと呼ばれていたようで、この子会社を上場させるという使命に燃えていたようです。JBR社からこの連結子会社に多額の融資が短期間のうちに実行されていますが、これも同業他社に後れを取らないように迅速果断な意思決定が必要だったとか。必要があれば書面決議による実行も行われていたようです。まさに上場会社の成長戦略を推進するための「攻めのガバナンス」の象徴のような場面で発生した会計不正事件です。

世間ではコーポレートガバナンス・コードへの関心が高まっており「攻めのガバナンス」が素晴らしいもののように思われる風潮がありますが、監査部門が機能しない等、ひとつボタンをかけまちがえると恐ろしい粉飾地獄が待ち構えており、まじめな社員が多ければ多いほど「会社を守るためにみんなで粉飾に協力する」という結末を迎えることになってしまいます。JBR社の今後のガバナンスの建て直しに大いに期待したいところですし、他社においても「執行と監督の分離」ということをまじめに考えてみてはいかがでしょうか。

5月 7, 2015 独立第三者委員会 | | コメント (4) | トラックバック (0)

2014年10月30日 (木)

第三者委員会に「三度目の正直」はあるのか?-JBR事例

四半期決算開示真っ最中で、適時開示を巡回するのもたいへんですが、このたびは「迷える会計士さん」から教えていただいたネタです(どうもありがとうございます<m(__)m>)。当ブログでも過去に二度コメントさせていただいたJBR(ジャパン・ベスト・レスキュー)さんですが、またまた内部告発があり、今度は代表取締役の不正に関する疑義が発生、会計監査人とも相談のうえ、第三者委員会設置を決めたそうです(同社HPのリリースはこちらです)。今度は大阪の法律事務所が利害関係のない第三者として登場されています。

本件は、あまりマスコミでも取り上げられていませんが、内部統制報告制度の在り方について考えさせられる事件です(たとえば拙ブログの過去のエントリーなどをご参照ください)。今年に入って、2回も第三者委員会が設置されましたが、またまた内部告発で経営者関与の不正疑惑が持ち上がったとのこと。経営権争いや経営者と監査役会との対立によって2度の第三者委員会が設置された例はありますが、企業不祥事発生をきっかけに第三者委員会が3回も設置されたのは初めてではないでしょうか?(フタバ産業さんの例では、たしか1回目は社内調査委員会だったように記憶しています)。

今回の内部告発と、以前の内部告発が同一の方からのものかどうかはわかりません。しかし、ここまで続くとなりますと、やはり「以前の第三者委員会が『他にも不正はないか』といった視点から調査をしたのだろうか?」との疑念が湧きます。もちろん、会社側から調査対象として依頼を受けた事項のみ調査をしていたから、ということだとは思うのですが、しかし不正の原因を究明したり、有効な再発防止策を検討するにあたっては、同種事案が他部署でも発生していないかどうか、最近はフォレンジック等を活用して調査をするケースが多いと思います。一昨日の椿本興業さんの例でも述べましたが、不正調査の時点で、もっと他にも不正がなかったかどうか、詳細に調査をしていれば、不正の兆候を見つけることができたのではなかろうか、とも考えられます。第三者委員会の設置費用というのも、結構バカにならないと思うので、度重なる第三者委員会の設置は、会社自身の信用問題だけでなく、企業資産の損失にもつながるかもしれません。

ハーバードビジネススクールの経営学の著名教授であるクリステンセン氏の「クリステンセン経営論」の中で、同氏は「限界費用の罠にはまるな」と警鐘を鳴らしています。自身の経験に基づく記述ですが、ルールを守るということに例外を設けて「今回だけは・・」という気持ちでルールを犯してしまうと、その「今回だけは」を許した自分が、容易に例外を許すようになり、今後の人生をダメにしてしまうとして、例外を許さないことの大切さを説いておられます(359頁以下)。私が過去に内部告発の支援をした方々も、同じような考え方でした。たとえ自分が告発をしたとしても、お金になるわけでもない、しかし、ここで会社の不正を糺しておかなければ、「あのとき、会社の不正を許してしまった」という気持ちのまま生きる自分が、これからの自分の人生で汚点になってしまう、といった気持です。内部告発は、こういった社員や元社員の人生観の中で誘発される、ということもあります。

今回のJBRさんの事例が、そういった内部告発者の心情によるものかどうかはわかりません。ただ、ここまで不正追及の告発が続くということは、やはり根の深い事情があるのではないか、と推測してしまうところです。

10月 30, 2014 独立第三者委員会 | | コメント (4) | トラックバック (0)

2014年6月 9日 (月)

第三者委員会報告書格付け委員会は、会社も格付けしている?

企業不祥事が発生(発覚)した際に、独立公正な委員によって構成される第三者委員会が設置され、事実調査、原因究明、再発防止策の提言といった役割を、不祥事企業が同委員会に委ねる実務慣行が定着しています。しかし「独立公正」といっても、どうも報告書の内容は会社寄りであり、到底「第三者」によるものとは言えないようなものも散見されます(ちょっと控えめな表現ですが・・・)。そういった中で、第三者委員会報告書の信用性が揺らいできているのではないか、とのことで、このたび有志の方々による「第三者委員会報告書格付け委員会」が設立され、第1弾として、みずほ銀行の(反社会的勢力癒着問題に関する)特別委員会報告書(公表版)が審査対象となりました。

この「みずほ銀行の特別調査委員会報告書」への格付け委員会委員の皆様の評価がとても厳しいこと(合格ラインギリギリというもの)が、一部の話題になっています。こういった格付け委員会自体への批判的意見や、委員会の運営に対する批判など、(もちろん賛同意見もありますが)そういった意見を拝聴していて、やや格付け委員会が誤解されているところもあるのではないかと思いましたので、(格付け委員会とは何の関係もない立場で)若干コメントさせていただきます。

まず、なによりも、この報告書格付け委員会が発足したのは、委員有志の方々の積極的な意思からではなく、ずいぶんと前から、一部のステークホルダーより、「第三者委員会の報告内容はあまりにも玉石混交である。日弁連で格付けできないか?」といった意見が強く出されていた、という経緯によるもの、と思われます(これは、私も以前から、そのような声が強くなっていることは承知していました。だからこそ大阪弁護士会では、日本公認会計士協会近畿会と合同で「独立第三者委員会委員の推薦名簿登録制度」を発足させました-残念ながらあまり機能していませんが・・・)。こういった要請に対して、(当時)この格付け委員会の委員でもある方は、「ご指摘はもっともだが、弁護士が弁護士を評価するというのは難しい・・・、ましてや弁護士会がそのような評価機関を作るというのは困難・・・」といった意見があったことも事実です。

ただ、第三者委員会制度が(任意の機関であるとはいえ)世間的に認知されるに従い、「日弁連作成の第三者委員会ガイドラインに準拠している」と報告書の中で宣言しつつも、その準拠性に首をかしげたくなるような報告書が目立つようになり、このような報告書が、第三者委員会制度自体の信用を低下させるのではないか、といった危惧感を生むようになりました。このような背景から、今回の格付け委員会が発足した、というのが現実ではないかと認識しています(したがいまして、たしかに格付け委員会の委員の方々の顔ぶれは、タレント揃いと言えそうですが、第三者委員会制度への危機感から発足されたというものであり、決して売名行為や人気とり、世間的な話題提供のための委員会ではありません)。

さらに誤解が多いのは「他人が作成した報告書を評価できるほどの能力があるのか、そもそも格付けできるほどの客観的な評価基準はあるのか、自分たちが委員になった報告書を他人に評価してもらってはどうか」といった意見も聞かれるところです。たしかに委員会報告書の巧拙を、この格付け委員会が評価するのであればこのような意見が当たっているかもしれません。しかし、この委員会は「日弁連ガイドラインへの準拠性」を問題にしており、報告内容の巧拙は問題にされていないようです(もし、報告書の巧拙を問題とするのであれば、たとえば監査に携わる監査法人の会計実務家にも委員として加わってもらうはずです)。したがって、まずこの格付け委員会を批判するのであれば、現行の日弁連「企業不祥事発生時における第三者委員会ガイドライン」の内容を十分理解したうえで、ガイドライン自体が第三者委員会の信用性確保のためのベストプラクティスとして適切ではないことの批判を加えること、又は、ベストプラクティスであることを認めるとしても、その「準拠性」とはどういったものであるのか、持論を展開し、そのうえで個別の委員の意見を批判することが筋ではないかと思います。

ちなみに、「本報告書は日弁連のガイドラインに準拠しているものではない、なぜなら・・」として、日弁連ガイドラインに準拠しない合理的な理由を説明しながらも、その報告書の内容は、ステークホルダーにとっても非常に満足のいく第三者委員会報告書も(ときどき)公表されているわけでして、この格付け委員会も、かならずしも日弁連ガイドラインに準拠しているものだけが素晴らしい報告書というわけではない、ということを認めておられるようです。要は、第三者委員会報告書といいつつ、本当に公正独立な立場が堅持され、報告書の信用性が担保されているのかどうか、そこが格付け委員会の最大の関心事ではないかと思われます。

たしかに格付け委員会が「素晴らしい」と評価をする第三者委員会報告書が、今後も登場することへの期待感はあります。ただ、どんなに素晴らしい委員会報告書を書こうとしても、最終的に、その委員会を設置するのは会社側の経営判断です。自分たちに厳しい意見が出されることが予想されれば、もっとユルい報告書を書きそうな委員候補者を探すことになるかもしれません(いわゆるオピニオンショッピング)。そのようなユルい委員会の報告書によって、企業としては、一時の逆風がやむのを待てばよい・・・という考え方もあるかもしれません。つまり、私個人の考えとしては、厳しい意見を書かれそうなメンバーに、あえて第三者委員会設置を依頼したのか、あるいは一時の逆風をしのぐためだけに、(信用性が十分に担保されていないような)ユルい報告書の作成を第三者に依頼したのか、そのあたりを広く議論することが、この格付け委員会の主たる目的ではないかと思います。所詮、第三者委員会制度はソフトローの世界ですから、その評価はステークホルダーに委ねられます。ただ、委員会報告書の影響力を考えた場合に、これを活用するステークホルダーの方々に有益な前提知識を持っていただくための取り組みは、ソフトローである以上は当然に誰かが行わなければならない、ということだと思います。

6月 9, 2014 独立第三者委員会 | | コメント (1) | トラックバック (0)

2014年4月28日 (月)

グローバル企業の法務担当者必読!日本交通技術・第三者委員会報告書

ドラマ「ルーズベルトゲーム」の第一話(tbs 日曜夜9時)、興味深く視聴しました。「半澤直樹」とそっくり、ということよりも、ドラマ「白い巨塔」を想い出しました(笑)

さて、グローバル企業にとっての海外不正リスクといえば、アンチトラストと並び、海外における不正利益供与リスクが最大の悩みです。リスクの大きさは、日本企業にも、次第に周知されるようになっていますが、そのリスクが当社において、どれほどの確率で発生するものなのか、その不確実性が把握できないところに最大の問題があります(なぜ把握しにくいのかは、また別の機会にでも・・・)。

その、海外不正利益供与リスクの発生確率を把握するうえで、参考になる貴重な報告書がリリースされています。今年に入って、タマホーム事件、リソー教育事件、ノバルティスファーマ論文不正事件等について、秀逸な第三者委員会報告書が出されていますが、この報告書は、さらに特筆すべきものではないかと思います。日本交通技術社の行動を批判する、というよりも、そこで分析されている原因事実は、おそらくグローバル展開をしている企業のすべてにあてはまるのではないでしょうか。

国税庁の指摘により、海外政府機関に対するリベート問題が発覚した日本交通技術社は、4月25日、同社HPにおいて第三者委員会報告書を公表しました(外国政府関係者に対するリベート問題に関する第三者委員会報告書全文はこちらです)。ちなみに、同社はすでに不正競争防止法違反の疑いのある行為として、第三者委員会が認定した事実を、東京地検特捜部に報告したそうです。

同委員会は、日本交通技術社が、ベトナム、インドネシア、ウズベキスタンの3カ国の鉄道建設に関するコンサルタント業務の受注におけるリベートを支払った事実を認定しています。これだけ海外での贈賄行為が厳しく摘発され、重大なペナルティが課される時代であるにもかかわらず、なぜ日本企業は外国政府要員へのリベート支払がやめられないのか、この報告書で認定された事実を読むとよく理解できます。国際業務部門はブラックボックス化され、また相談を持ち掛けられた経理部でさえ、見て見ぬふりをせざるをえない状況に追い込まれてしまいます。私がこの報告書を読んでおそろしいと感じたのは、発端こそ海外案件を受注する営業担当者の行動だとしても、次第に国内の関係部署を巻き込み、決済を行う頃には組織ぐるみの不祥事になってしまう・・・という点です。

本件委員会も、経営トップまでの責任をかなり厳しく判断しているようです(「ようです」と書いたのは、あくまでも私が読んだ印象・・・ということです。)取締役会がリベートを容認していたのではないか・・・という点については、(取締役会構成員全員が、不祥事を公表しないという方針を決定したことについての)平成18年のダスキン事件株主代表訴訟判決の採用した論理が展開されているように思えます。監査役や社外取締役のモニタリング機能がなぜ発揮されなかったのか・・・という点についても触れています。

なぜ国際業務部門がブラックボックス化してしまったのか、なぜ経営者が抜本的な改革をなしえなかったのか、そのあたりの生々しい描写は、「自社でどれほどの贈賄リスクがあるか」その発生確率を考える上で参考になります。とりわけ特筆すべきは、本報告書の71頁以下で示されている、委員が役職員から聴取した発言内容の引用部分です。時間的制約のある第三者委員会の活動として、無理な事実認定を控え、その代わりにヒアリング内容を引用するという方針は、ぜひ他の第三者委員会報告書でも活用してほしいと思いました。長い報告書を読む時間がない方には、せめてここだけでもお読みいただくとたいへん参考になるのではないかと思います。そのうち、76頁で紹介されている役職員の方の発言内容をひとつだけ引用しますと、

・先方担当者からは、3回ほど(リベート提供の)要求を受けたが、3回とも断った。執務スペースだったので周りにも職員がいた。私は、当然日本に帰国することになった。上司から私は、日本に帰って来いという電話を受けた。その際、私を突然日本に帰国させる理由について特に告げられることはなかったが、説明がなくても、業務の提案を全く受け入れられなかったことと、先方担当者からのリベート要求を断ったことが理由だとわかった。私以外にリベートの要求を拒否したというJTC(日本交通技術社)社員の話を聞いたことはない。

なお、この報告書では、再発防止策として、リベート供与問題に対するリスク管理の手法が紹介されています。単に「賄賂を贈らない」という自社完結の精神論ではなく、相手先から要求された場合を想定しており、これは日本交通技術社だけでなく、海外不正リスクに悩むすべての日本企業にも参考になるところではないかと思います。日本の不正競争防止法違反だけでなく、FCPA、英国賄賂防止法など、全世界的に海外腐敗行為防止が喫緊の課題とされるなか、この報告書が日本企業に示すところは「他山の石」として、たいへん参考になるものと思います。

4月 28, 2014 独立第三者委員会 | | コメント (4) | トラックバック (0)

2013年12月13日 (金)

法律家と芸術家の接点を求めて-日展不正審査第三者委員会報告書

第三者からの情報提供をもとに、10月30日の朝日新聞朝刊でスクープされた日展の不正行為疑惑ですが、本日(12月12日)公益社団法人日展のWEB上に日展第三者委員会報告書の全文が公開されました。第41回日展の第5科(書)の篆刻(てんこく-印章による書画)部門における審査において、事前に会派別に入選数が割り当てられており、審査の公正が害されている、との疑惑に関する調査結果です。元最高裁判事でいらっしゃる弁護士の方を委員長として、多くの弁護士や有識者の方々が委員ならびに調査担当者として関与されていたようです。

報告書を読みますと、調査対象事実について、不正疑惑が強く推認されるとのことで(ただし書部門であり、日本画や洋画、彫刻など、他部門では認められなかったそうです)、当初の情報提供された事実がほぼ間違いないとのこと。告発で「天の声」とされた著名な芸術家の方にもヒアリングをされたようですが、その方は強く否認をされたそうですが、結局のところ、組織内部での派閥争いが原因のようです。第三者委員会はヘルプラインは設置しなかったけれども、複数の情報が第三者委員会に寄せられ、その事実についてもほぼ精度の高いものであったことが記載されています。第三者委員会が設置された後も内部告発があった、ということで相当に根深いものがありそうです。

芸術家の世界の社会通念や正義について、法律家がどこまで踏み込めるのか・・・、とても関心を持ちましたが、一般企業における不正行為を認定するのと同じく、比較的淡々と証拠に基づいて事実を認定しているように思えました。また、芸術の世界のこととはいえ、国民の信頼を大きく裏切るような組織運営は許容されないとして、再発防止策の提言にもあえて踏み込んでいます。長年の師弟関係に基づく芸術の世界のしきたりのようなものについても、第三者委員会がどう切り込めばよいのか・・・、かなり悩まれたところもあるのではないでしょうか。そのような悩みが、報告書最後に添付された「委員長所感」や公益社団法人日展第三者委員会規則の掲載などに出ているように思えました。

しかし、芸術の世界においても、内部告発が大きな影響力を持つようになったということでしょうか。組織に大きな支配抗争が生じている場合、内部告発リスクをいうものは、当然に認識しておく必要がありそうです。

12月 13, 2013 独立第三者委員会 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年10月18日 (木)

企業が自浄能力を発揮すれば第三者委員会の性格も変わる

今年も適時開示におきまして、子会社不正事例が目立つようになりました。たいへん興味深い事例として、すでに こちらのエントリーにて、沖電気工業さんの第三者委員会報告書を「必読」とご紹介しましたが、実は最近、もう一社の調査委員会報告書(要旨がおそらく10月末までに提出される予定)が開示されるのを楽しみにしている事例がございます。

自動車ホースメーカーであるニチリン社(大証二部)が、9月28日に「当社連結子会社の不適切な会計処理について」と題する開示を行っております。沖電気工業社と同様、海外子会社のトップが子会社不正に関与していた、というものでありますが、こちらは外国人経営者ではなく、本社の取締役兼務の子会社トップの方(日本人の方)のようです。

このニチリン社の会計不正事件に対する本社の対応は、まさに自浄能力を発揮して不正を開示した例として、ひとつのモデル事案となるのではないかと感じております。子会社による粉飾の疑惑を本社取締役会が、まず子会社作成に係る月次報告書から察知して、調査を子会社管理部門に指示します。さすがに子会社トップの不祥事ということからでしょうか、この子会社管理部門による調査は有効なものにはならなかったようです。

そこで本社が直接経営トップにヒアリングを行い、子会社の棚卸資産の金額に問題があることを突き止めます。そして(不正調査実務ではここが難しいところですが)、本社の内部監査部門が、子会社に対する定例の内部統制監査を実施すると共に、非定例の重点監査(棚卸資産について在庫抜き取り調査を敢行)を行い、その結果、在庫金額の過大計上の事実を把握するに至ります(ここで証拠化されたものと思われます)。

子会社の経営トップが調査に関与しないところで証拠を固め、その後この経営トップに再度ヒアリングをしたところ、粉飾の事実を認め、過年度の決算にも影響が出る可能性があるために調査委員会を立ち上げた、という経過であります。

さて、9月28日の上記開示内容によりますと、この調査委員会は外部専門家に同社経理担当取締役が加わるというもので、第三者委員会に準じるような構成になっています。通常は日弁連の第三者委員会ガイドラインに準拠して・・・と記載されるところでありますが、あえて「日弁連ガイドラインには準拠しません」と明言されています。その理由として縷々述べられているところですが、一言でいえば「自分で見つけて、自分で調査して、自分で事実を確定できる見込みが高まったから」というもの。つまり、社内調査の結果を検証して、第三者の視点でこれを補完すれば足りる、ということであります。

今年、何度もフォレンジック専門会社さんとタイアップをして、社内調査委員会の在り方についてセミナーを開催させていただきましたが、私も、自浄能力を発揮できる企業であれば、あえて日弁連ガイドラインに準拠した第三者委員会を設置しなくても、社内調査委員会に外部第三者が参加するか、あるいは社内調査委員会の調査結果を外部委員会が検証する、という手法でも十分ではないかと述べてきました。まさに、このニチリン社の不正会計事例は、(純粋な社内調査委員会によるものとはいえませんが)こういった自浄能力を発揮した会計不正事例のベストプラクティスに近いものと思われます。もちろん、今後上記委員会によって事実関係が明らかにされ、そこで予想外の事実が出てくる可能性も否定できませんが、自ら不正を発見してこれを公表することのインセンティブが働く一例になることを願っております。

昨年7月より今年6月までの1年間で、会計不正事件を公表して決算訂正に至った上場会社は39社に上ります。会社の公表内容がどうみても信用できない場合には日弁連ガイドラインに準拠した第三者委員会が設置されるべきですが、自浄能力を発揮して公表に至る経過によっては、社内調査委員会主導による報告書でも企業の信用を維持できる場合があることが示されることに期待しています。

10月 18, 2012 独立第三者委員会 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年9月14日 (金)

上場企業の役員必読!沖電気工業社・子会社会計不正事件報告書

昨日のエントリーとは打って変わって、全社的内部統制が機能していなかったために、尋常ではない会計不正事件が発覚してしまった、というお話でございます。あらかじめお断りしておきますが、本エントリーは沖電気工業さんについて、その経営管理の在り方を批判すること、揶揄することを意図するものではなく、あくまでも(どこの企業でも遭遇してしまう)海外子会社の管理のむずかしさを指摘するためのものであることをご了解ください。

すでに8月の時点で海外子会社で不適切な会計処理が行われていることが報じられていた沖電気工業社(東証・大証1部)でありますが(たとえば朝日新聞ニュースはこちら)、一昨日、同社は事実解明、原因分析、再発防止策の提言を目的とした第三者委員会報告書を公表しておられます。四半期報告書は本日(9月14日)開示される見込みとのこと。

影響はかなり大きかったようでして、事実公表に伴い株価は急落し、財務状態の改善が遅れるものとして、投資格付けも2段階ほど下がってしまったそうです。まだざっと一読した限りではありますが、日弁連第三者委員会ガイドラインに則った本報告書は、かなり会社側に厳しい意見が付されており、不適切な会計処理の中身だけでなく、発覚を遅らせてしまった原因事実につきましても、かなり踏み込んだ内容になっております。

私自身が不正調査で経験した海外子会社調査の例を、時々研修や講演等でお話させていただくのですが(もちろん、どこの会社の事例であるかはわからないように配慮しております)、私の講演をお聴きいただいている方からすれば、本報告書をお読みいただくと、「極めて酷似した事例」といった印象をもたれるのではないでしょうか。海外子会社の経営トップ(スペイン人社長)は最後まで会計処理が不適切であることを否定する(弁護士同伴のうえで抵抗)、その経営トップは、これまで親会社の業績に多大なる功績を残し、高い社内の評価を得ている、その海外子会社のトップが開き直ることにビビってしまう親会社役員、事件の処理方法において役員間で意見の対立が発生、調査責任者の度重なる交代、過年度決算修正をしないで済ます方向での意見が強まる、その結果、疑惑から不適切会計処理の調査断行まで1年もかかる、といった内容であります。会計不正の手法につきましては、在庫商品を外部倉庫に移して、実在しない売掛金債権を計上したり、重複ファイナンスによって取引先に対する滞留債権の存在を消し込んだり、ということで比較的わかりやすいものであり、報告書自体は少し長いものではありますが、理解しやすい報告書になっております。

本報告書は、親会社(正確には親会社と統括日本法人)が海外子会社の不正疑惑を知ってから、海外子会社経営トップが(自ら不適切とは認めないけれども)独特の会計処理を長年の慣行として行っていたことを白状するまでの「人間模様」をかなり詳細に記しており、読み物としても、なかなか秀逸な内容であります。有事(一大事)なのか、たいしたことはない平時なのか、親会社役員によって意識に違いが生じており、また危機対応が必要となる有事だと理解したくない(できれば平時処理をしたい)という役員の意識が、さまざまな正当化理由によって形成されていることがわかります。とりわけ親会社である沖電気工業社の経営トップ(社長および経理担当副社長)の有事対応の不適切さについて、この報告書は結構厳しく指摘しております。「監査法人が何も言ってこないのだから、大きな不正など存在しないのではないか」といった甘い考えに(役員が)支配されてしまうわけですが、会計監査は不正を摘発することが主たる目的とは言えないわけでして、これもやはり監査法人に対する「期待ギャップ」の現れではないかと。。。また、少し信じられないのでありますが、疑惑が発生している海外子会社の経営トップが、疑惑発生後に経営報告を出してくるのでありますが、その報告書の中身を信用して、「少し数値が改善しているみたいだから、もう少し様子をみよう」といった安易な経営判断を下してしまっているのであります(^^;;ホンマカイナ・・・。いや、笑えないかもしれません。オオゴトにしたくない、過年度の決算訂正をしたくない・・・という意識が強くなればなるほど、海外子会社のカリスマ社長の報告を信じよう、といったバイアスが親会社役員に働いてしまうものなのかもしれません。これは有事(会社の一大事)に遭遇された方々でないとわからないのかも。。。

さらに驚くべきことは、同社の内部統制基本方針の概要には「社内で不祥事が発覚した場合には、その旨を監査役に報告する」、とあるにもかかわらず、海外子会社の不適切会計処理の具体的な疑惑が現地調査担当者から上がってきてから1年以上も監査役の耳に届いていないことであります(監査役に報告がきたのは、社外に不適切会計処理を公表する直前!?)。これはいったいどういうことなのでしょうか?同社の監査役の皆様は、この海外子会社不正の事実を知って、どういった感想をお持ちになったのでしょうか?(涙)しょせん、どこの会社でも、監査役さんとはこういったものなのでしょうか?監査役と経営執行部とのコミュニケーション術を含め、私は10月に西日本地域を中心に、例年通りに日本監査役協会の研修講師を務めさせていただきますが、その折にでも、ぜひ皆様方のご感想をお聞きしたいと思っております。

国会に提出予定の会社法改正要綱では、これまで会社法施行規則で規定されていました「企業集団内部統制」が、いよいよ会社法条文の中に取り込まれ、いわば「格上げ」される予定であります。子会社管理がますます重要な課題となりつつあるなか、企業不祥事、コンプライアンスに関心のある方々には、ご一読をお勧めする報告書であります。そして、とりわけ上場会社の監査役の皆様には、ぜひともご一読いただき、発奮していただく起爆剤(?)になれば・・・と思い、ご紹介した次第でございます。沖電気工業グループ関係者の皆様、どうかご容赦くださいませ<m(__)m>。

9月 14, 2012 独立第三者委員会 | | コメント (3) | トラックバック (0)

2012年7月17日 (火)

「いじめ問題」と第三者委員会の活用

滋賀県大津市の中学二年生の生徒が自殺した事件については、新しい事実が報じられるたびにつらい気持ちが増すばかりです(最近は「伝えられていることが虚偽であってほしい」と願うほどになってきました)。今朝の朝日新聞社会面には「繰り返す不信 過去にも 専門家『第三者の視点を』との記事が掲載されており、学校の調査や対応が不十分なために親たちが不信感を募らせていることから、「子供の人権オンブズパーソン」のような第三者機関によって数カ月ほどの調査が必要だ、といった有識者の発言が報じられておりました。子供の人権オンブズパーソンというのは、兵庫県川西市での取り組みで、子供の相談を調停する市長直属の第三者機関だそうです。すでに関係者の訴訟は係属しておりますが、実際に大津市側としては調査委員会を設置する方向で動いている、と報じられています。

私自身は子供の人権や教育権について詳しく論じるだけの能力も知識もございませんが、こういった第三者機関による調査といいますと、私たちにも関係の深い「第三者委員会」が存在します。以前、当ブログでもご紹介しましたが、平成22年より、大阪弁護士会と日本公認会計士協会近畿会の共同事業として、第三者委員会委員名簿登録制度を立ち上げました。委員名簿登録者研修を受けた弁護士、会計士が、第三者委員に推薦されるための名簿を作成し、企業や団体からの依頼に応じて委員を派遣する、という制度です。これまでまだ数例しかありませんが、この制度の第一号事例が某大学のいじめ問題でした。

某大学に通学していた留学生が2007年に自殺をしたことについて、いじめとの関連性が問題となり、平成22年、留学生の母親から大阪弁護士会に人権救済申し立てがなされました。そこでの救済申し立ての理由は、学校法人がいじめや自殺を防止できなかったこと、調査をせずに3年間も放置していたことでしたが、この人権救済申し立てにより、NHKと産経新聞が、この事件を大きく取り上げることになりました。そこで学校法人側も、社会的反響の大きさからだったと推測されますが、第三者による事実調査の必要性があるとして、この「第三者委員会名簿登録制度」を活用した、という経緯です。学校法人側からの要請で、弁護士三名を含め合計5名の委員会が設置され、数ヶ月間の調査活動が開始されました。

私は当制度の運営責任者だったので、委員の選任等にも少しだけ関与しましたが、本当に委員の方々の頭が下がる誠実な活動によって、最終意見がとりまとめられ、「本件自殺の原因として、いじめの存在を否定できない」「遺族の依頼が明確でないという理由で、本題学がいじめの有無等について調査しなかったことは問題である」といったいくつかの結論とともに、判断理由や再発防止策も公表しました。なお企業不祥事以上に、関係者のプライバシー保護の必要性が高かったため、報告書の全文公開は避け、マスコミ向けには要旨のみ公表ということになりました。

ブログという媒体では、書いても良い範囲が限定されてしまいますので、抽象的な物言いになりますが、当時の委員の方からお聴きしていることは、客観的かつ冷静に事実を調査することには弁護士による調査は適切と言えるが、それでも少し気を緩めると、組織の人間関係の葛藤の中に巻き込まれるおそれがある、ということでした。組織には様々な派閥力学があります。たとえば私立学校という組織であれば、典型的なのが理事長側と学長側に構成員が分かれる、といった具合です。それぞれが自分の派閥の人たちをかばい合う、相手の派閥の人を悪者扱いにする、といった意識が働き、調査に協力的な人たちの話を聞いていて気がつくと、どちらかの派閥にとって都合のよい報告書が出来上がっていた、という危険がつきまといます。また行政調査や警察による調査が並行している場合には、それらの調査との整合性も問題になります。

また会社内における「パワハラ」と同様、どこまでを「いじめ」と断言できるのか、その線引きが調査委員の中でも統一するのがむずかしい、ということです。よく申し上げるところですが、時間軸と平面軸で「いじめ」か否かを決定していくわけですが、加害少年といわれる者のどういった行動があればいじめと言えるのか、半年前までは「けんか」と思われるところの問題が、ここ数カ月で状況が変わり「いじめ」と思われるものに変わってきたのではないか、など、どの時期のどのような行動が「いじめ」と捉えられるのか、第三者であってもその認定が主観的な評価に左右されかねません。明確に恐喝罪や強要罪に該当するような行為があれば悩むこともないかもしれませんが、このあたりは学校側の対応の是非を判断するにあたっても影響を及ぼすところです。

大学と違い、公立の中学校ということになりますと、なおさら憲法第26条の「教育権」との関係で、学校や地方公共団体の取り組みが求められるところであり、全学的な対処が求められることになると思います。こういった問題は、被害者対学校、被害者対加害者といった構図だけにとらわれますと、真の再発防止策は見えてこないと思います。事件が発生した背景、事件が半年も経過してから社会問題になった背景には、思いもよらなかったような複雑な事実が絡んでいるものと推測いたします。人は自分の名誉や地位やお金を守るためにウソをつこうとすると、事の重大性を目の前にして怖気ずいてしまいますが、大切な人を守るためにウソをつくときは、どんなに社会を敵に回してでも心安らかにウソをつき通せることが多いと思います。目をそむけたくなるような、その複雑な事実に目をそむけない者(目をそむけなくても平気でいられる人)による調査こそ、「第三者機関」に求められるところではないかと思います。おそらく調査委員会が設置されれば、その調査対象はかなり限定したものになるかとは思いますが、マスコミで報じられていないような背景事情にまで踏み込んでいただくことを期待いたします。

7月 17, 2012 独立第三者委員会 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2012年5月21日 (月)

あなたはどちらの第三者委員会を信用しますか?(続報・ベリテ社の件)

いつかはこういった事例が出てくるだろうと思い、私は昨年あたりから有識者の方々にお尋ねしておりました。そもそも疑問が湧いたのは、九電やらせメール事件の際に、当時の第三者委員会の委員長の方が「第三者委員会の認定した事実がおかしいというのであれば、佐賀県(知事)側も第三者委員会を設置して調べれば良いではないか?」と述べておられた際、本当に佐賀県側が第三者委員会を別途設置したらどうなるんだろう・・・と不安がふとよぎったからであります。

「たとえば社内不祥事が発覚したケースにおいて、敵対する大株主と現経営者がいずれも第三者委員会を設置して報告書を提出した場合、もしくは現経営者と監査役会が別々に第三者委員会を設置して報告書を提出した場合、その取り扱いはどうすればよいのでしょうか?」

過去にはフタバ産業さんやカブドットコム証券さんの不適切会計処理、インサイダー事件等において現経営陣と親会社推薦委員による二つの調査委員会の意見が分かれたケースはありましたが、私が懸念していたような事例が出たのは初めてではないかと思います。すでに当ブログでも過去に二度ご紹介している宝飾品製造販売大手のベリテ社(東証二部)において、監査役会が設置した第三者委員会(調査報告書を提出済み)と、取締役会が設置した第三者委員会(こちらは検証報告書を提出済み)との意見が食い違い、取締役会としては監査役会設置にかかる第三者委員会の事実認定は採用しない・・・という判断に至ったようであります(同社5月17日付けリリースはこちらです)。とくに本リリースにおける取締役会の監査役会に対する非難がなかなかスゴイ。。。

「今回、当社監査役会は、まったく独自の判断に基づき、調査委員会の設置と調査委員会による調査実施を決定したものでありますが、当社取締役会といたしましては、その慎重さを欠く拙速な判断により、必要性を欠く調査の実施が決定され、また、その公表により、当社の名誉及び信用が根拠なく著しく傷つけられ、さらには、回復基調にあった当社株価の急落により投資家に甚大な損害を与える結果となったことは、遺憾の極みであります。」

「また、調査委員会から、常勤監査役の増員が提案されているところ、当社取締役会としても監査役会の機能強化を図ることには何らの異論もなく、むしろ、本件に関する手続上の不備等について監査役からの指摘がなかったことや、これまでの監査役の当社のガバナンス及びコンプライアンスへの貢献度の低さに鑑みれば、現在の監査役会の体制で十分であるとは到底評価できないと考えるものであり、第68 期定時株主総会において、常勤監査役を増員いたします。」

とくに後半の記述は取締役会の真摯な対応、というよりも「余計なことをしてくれたもんだ」といった監査役会に対する恨み節に聞こえるのは私だけでしょうか(^^;;。なお、これに対しては近々、同社の監査役会から意見を開示する、ということだそうであります。

私はベリテ社の取締役会にも、監査役会にも与するものではございません。なので単なる野次馬的な立場での考察にすぎませんが、少し取締役会のリリースには素朴な疑問が湧いてきます。これまでの同社リリースを総合しますと、まず同社監査役会は今年2月に外部からの情報提供を受けて「取締役」の不正を調査し、相当の嫌疑ありとして外部の調査委員会の設置を決めました。そして、取締役会が、この調査委員会の報告書を受領した後、監査役会からの要望にもかかわらず、その調査報告書を開示しませんでした(簡単な結論部分のみリリースにて紹介)。この取締役会の決議に監査役会は同意しませんでした。その後、取締役会で検証の必要ありとして別途第三者委員会を設置して、その検証結果に基づいて、元の調査委員会報告書を開示しないと決めたようです(ちなみに元の調査報告書の調査実務は、大手法律事務所の方々が担当されていらっしゃいます)。

しかしそうであるならば、そもそも「不正あり」と嫌疑をかけられている取締役は一体どのような立場なのか、代表取締役なのか、それ以外の取締役なのか、また問題とされている取締役は、上記の一連の取締役会決議に参加しているのかいないのか、そのあたりはリリースにおいて開示しなければならないところかと思われます。これまでの3通のリリースを読み返しましたが、どこにも嫌疑の対象となっている取締役は代表者か否か、また当該取締役は「利害関係者」として取締役会の議事に参加しているのかどうか、ということには触れられておりません。不正に関与したとされる取締役の方が、監査役会と対峙する有事において、当該取締役会に参加しているとすれば、そもそも一連の取締役会の監督機能など全く無視されているものでありまして、リリースが信用されるはずもなく、どうみても監査役会の行動のほうが株主共同利益を図る意味で適切ではないか、と思えます。

このような取締役と監査役との対立が、一体どのような力学の上で演じられているのか、その真相は未だよく把握できないところです。ただ、一連の騒動によって株価が急落し、さらにこのたびの件に関する調査費用は業績下方修正の原因にもなっているそうなので、ベリテ社の役員にとっては本当に有事対応が求められる場面となっております。海外の親会社との関係でも説明責任を果たさねばならないところかと思います。取締役会の行動もさることながら、投資家や一般株主は、こういった場合にどちらの第三者委員会を信用することになるのか、今後の監査役会の対応も含めて注目しておきたい事例です。

5月 21, 2012 独立第三者委員会 | | コメント (6) | トラックバック (0)

2011年12月17日 (土)

ゲオ社の社外調査委員会報告書と同社のガバナンス

本日(12月16日)は、あの「金融庁のLEON風ちょい○オヤジ」こと某S審議官兼PCAAOB事務局長を大阪弁護士会にお迎えして、金融検査と弁護士の役割について熱く語っていただきました。たいへんな時期に、よく大阪まで来ていただきまして、責任者として御礼申し上げます。<m(__)m>

審議官の講演をお聞きになられた方ならおわかりのとおり、本当に当会弁護士の皆様にもウケていました。不良弁護士、不良会計士の話もさることながら、とりわけ金商法と会社法にまたがる重要な問題をふたつほど、レジメではなく、ホワイトボードでご説明いただいた内容が新鮮かつ一番有意義でありました。私がZAITEN誌や当ブログで疑問を呈していたある問題についても、「金融庁の一石三鳥の原則」によって解決が図られるとのことで、なるほど、金融庁の「証券市場の健全性確保に向けた熱意」が予想以上・・・との印象を抱きました(すいません、あまり具体的な内容はちょっと書けませんので、またお会いした方々にコソっと。。。)

さて、今年中に出るのだろうか・・・・・と少し不安に思っておりましたゲオ社の(不正解明のための)社外調査委員会報告書ですが、本日(16日)ついにリリースされました。(当社および当社元関係会社における調査結果のご報告)これもオリンパスに負けず劣らずの分厚い内容で、読み応えのある報告書です。(委員の顔ぶれから、またずいぶんとお金がかかってるのだろうな・・・・と)まだ読んでおりませんが、ぜひじっくりと読ませていただきたいと思います。

そしてゲオ社にとって興味深いのは、先日の株主総会で大幅に役員陣が変更し、社外取締役が過半数を占めるに至った同社取締役会が、この報告書を受け止めてどのような対応をとるか・・・ということであります。10月末にも突然の社長交代劇があり(朝日新聞ニュースはこちら)、なにかと不透明な動きがありますが、本当に経営体制が安定するのかどうか、この後の対応に注目してみたいところです。まだ全く読めておりませんので、備忘録程度で失礼いたします。

12月 17, 2011 独立第三者委員会 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年12月15日 (木)

クラウドゲート社(架空循環取引)のハイレベルな第三者委員会報告書

本日はオリンパス、大王製紙の決算報告の話題でもちきりの一日でした。各社の第三者委員会や特別調査委員会の報告書も話題となりましたが、それらの報告書にも負けない、いや、もしかしたらオリンパス報告書よりも秀逸な第三者委員会報告書が昨日(12月13日)リリースされております。

第三者調査委員会報告書の受領に関するお知らせ(クラウドゲート社)

札幌アンビシャス上場のクラウドゲート社(デジタルコンテンツ製作 旧商号 テラネッツ社)が、経営トップ主導による架空循環取引を繰り返し、約4年にわたり不適切な会計処理を行っていた件につきまして、弁護士委員2名、公認会計士委員1名による調査委員会が調査結果を報告したものであります。これまでの事実経過と当社の内部統制における欠陥の有無について検討することが主たる目的とされています。

まず役員の変遷表。これは多年度にわたり会計不正事件が繰り返されていたときの関係者説明図のイロハであります。つぎに実際に関係者によって行っていたとされる架空循環取引のパターンを図式化し、読み手に経済的合理性のない取引であることを説明。この部分が非常に秀逸。多少の会計知識は必要ですが、複雑な循環取引を手際良くまとめておられ、だれにでも会計不正の内容が理解できるようになっております。整理されたパターンごとに、不正事実が認定できたものと、合理的な疑いが残るものを区別して結論つけているところも参考になります。

そして各循環取引がどのような目的で行われたのか、①上場準備段階で首尾よく上場審査をパスするため、②銀行からお金を借りる場面において、自社の業績を良く見せるため、そして③業績とは関係なく、上場時においてお世話になった人(迷惑をかけた人)たちへの損失補てんのため、と分けて、それぞれに詳細に認定事実を報告するところは調査活動が効率的かつ効果的であったことを物語っております。これまで100を超える調査報告書を読みましたが、おそらくトップクラスではないかと。

「こりゃスゴイ・・・」と思って委員の方々の経歴をみて納得。弁護士委員のおふたりは、つい最近まで証券取引等監視委員会の検査官として会計不正事件の第三者委員会報告書を読んでおられた方々なのですね。また会計士委員の方も、上場サポートをされておられる方で、IPO実務に精通されておられるようです。おそらく開示検査において「もっとこんな風に報告してくれたらいいのに・・・・・」と思いながら審査をされていたものと推測され、そのご経験が結実したのが上記報告書かと。別の味方をすれば、会計不正事件を審査するにあたり、当局はこんなポイントを重視しているのですよ・・・ということを理解するにあたり、とても参考になる報告書であります。

オリンパス甲斐中報告書を少しずつ読み進めておりましたが、ちょっとこっちの報告書も研究の対象としては素晴らしく、日常の仕事には参考になりそうであります。アンビシャス上場会社というと、ちょっと地味かもしれませんが、架空循環取引の内容としては典型的なものであり、経営トップが不正に手を染めていく経過がよくわかります。企業実務家の皆様方にも、ぜひご一読いただきたい報告書であります(でも、この事件に登場する社外取締役の方もオリンパス事件と同様、すこし私を憂鬱な気分にさせてしまうのですよね・・・・・・)。

12月 15, 2011 独立第三者委員会 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年10月28日 (金)

正念場を迎えた「第三者委員会制度」-次のステップへの試練

日弁連の第三者委員会ガイドラインが制定され、すでに1年以上が経過しております。不祥事を発生させた企業に、いわゆる「第三者委員会」が設置され、事実調査、原因究明、再発防止策等を企業のステークホルダーのために説明(報告)するという極めて重大な使命が担われ、実績を重ねてきた結果、相当程度企業社会にも浸透してきたのではないでしょうか。

しかし、皆様ご承知のとおり、世間の話題となっております企業事件について、第三者委員会制度が今後どの程度、社会の期待に応えていけるのか、その試金石になるのではないかと思われる場面がみられます。九電やらせメール事件において、第三者委員会報告書で認定した事実(県知事の発言内容)を企業側が否定し、再度の報告書提出に至ったことはすでにご紹介しましたとおりであります。

しかしそれだけでなく、オリンパス元社長解職事件では、本日(27日)の開示情報を「正しいものと認識している。今後、本件に関して憶測等で市場関係者を誤認させるような発言をした者に対しては法的措置も辞さない」とまで確信しておられる企業の事実関係を、第三者委員会が調査しなければならないわけでして、ここまで言い切っておられる同社が本当に公正かつ独立した第三者委員会を構成できるのかどうか、疑問が呈されるところであります(現に、元社長さんは第三者委員会の報告についてはすでに懐疑的なコメントを述べておられます)。一方で、東証やSESCは「今後設置される第三者委員会の活動を見守っていく」とのことでありまして(ブルームバークニュース)、どのような構成になるにせよ、これは委員にとってたいへんな活動になることは間違いありません。

さらに監査役の関与が悩ましい難問を投げかけている事例もあります。本日ゲオ社のリリースによれば、これまで社内の不祥事について調査を続けていた同社監査役会が、おそらく経営陣の交代劇があったことを原因とすると思われますが、事案が複雑で公正な立場で判断することに困難が生じたようで、すべてを第三者委員会にゆだねる旨、発表をしました。

そして大王製紙元会長解職事件では、本日、元会長側が東証に対して「特別調査委員会の公正性」には問題がある、との意見書を提出されたそうであります(朝日新聞ニュース)。私も本日の報道で初めて知りましたが、大王製紙側の特別調査委員会の委員に、取締役と監査役の方が含まれており、そもそも調査の対象となるべき方が委員に就任される、というのはいかがなものか、との疑念が湧いてまいります。日本監査役協会さんは、第三者委員会に監査役が積極的に関与することを推奨しておられますが、ただ、監査役への責任追及が予想されるような不祥事についての第三者委員会構成には関与すべきではない、との趣旨も含んでおられるのではないか、とも思われます。そうしますと、もし報道されている事実が正しいとするならば、元会長さんの言い分にも説得力があるように思いますが、いかがでしょうか。

ただ、前にも申しました通り、ステークホルダーへ説明責任を尽くすことで、企業の社会的責任を全うさせる趣旨の第三者委員会である以上、下図のように、第三者委員会の活動には悩ましいトレードオフ関係が常につきまとうものであり、このバランスをどうとりながら最終報告に至るのか、ここに社会的使命があるように感じております。

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依頼する企業からのプレッシャー、報告書の内容に期待をする行政当局や監査法人からのプレッシャー、そしてなによりも、企業の社会的信用の変化や株価変動に影響を及ぼす消費者・投資家からのプレッシャーに耐えつつ、上記のような難事件の(とりあえずの)解決に至らしめることが今後できるのかどうか、おそらく年末に向けて、また九電やらせメール事件のようなドラマ(第三者委員会VS企業経営者)がみられるのかもしれません。ただ、社会から批判されることがあっても、委員には上記のような悩ましい関係を模索しながら解決の糸をたぐらねばならないことを、多くの方にご理解いただければ・・・と。私の存じ上げている方も、上記難題事件に関与されることになるかもしれませんので、この話題は今後あまりツッコミを入れることができなったらゴメンナサイ<m(__)m>(けっこう、この話題になるとご異論も出てまいりますが、まぁ、私の立場も察してくださいませ。。。)

10月 28, 2011 独立第三者委員会 | | コメント (13) | トラックバック (0)

2011年9月28日 (水)

九州電力社の「闘うコンプライアンス」にみる「したたかさ」

あらかじめ申し上げておきますが、私は九電さんを批判するものでもなく、またその対応を称賛するものでもなく、企業のコンプライアンス経営の在り方を研究するものとしての関心について、以下にとおり記すものであることを、お断りしておきます(って、最近このフレーズで始まるエントリーが多いような・・・・)

九電のやらせメール事件に絡み、いったん辞任の意向を表明しておられた九電の社長さんが、辞任の意向を撤回して、どうやら続投される見込み、とのニュースが報じられております(読売新聞ニュースはこちら)。他の取締役の方々からも「辞める必要なし」との意見が出ているそうで、つまり今月末にどのような第三者委員会の調査結果が出たとしても(おそらく、すでに内容はある程度判明しているとは思いますが)、そのまま辞任されない雰囲気です。

私は以前のエントリーでも書きましたが、どんなに九電さんが強気であっても、「派閥争い」等の社内力学による「ほころび」をマスコミや第三者委員会に突かれ、そのうちいろんな事実が判明してくるのではないか、そこから社長さんは辞任しなければならないような状況に追い込まれるのではないか、と予想しておりました。しかし、その予想はどうやらはずれてしまったようです。私が予想していたのとは裏腹に、この電力事業会社は相当にしたたか(私の故郷である福岡の大牟田弁でいうところの「やおなか」)な企業ではないか、と。

そもそも九電さんに事態収拾へ向けて経営責任を迫ることができるのは行政当局だと思われますが、その行政当局の関与が次第に明らかになるなかで、行政当局を最後までかばって、「今回の件で悪いのは当社の社風であり、すべての責任は当社にある」と言い張っておられるのでありまして、この対応によって行政からの辞任要求はおそらく出しにくくなっているのではないでしょうか。さらに、本来ならばマスコミの調査能力からみれば、次から次へと「二次不祥事」が出てきそうなものですが、タイムリーに、強固な第三者委員会を招き、その調査協力を全社挙げての最優先課題としました。つまり、第三者委員会による社内調査を尊重する体制をとることで、マスコミによる調査から社内を守ることに専念できたように思います。この企業は、相当に第三者委員会の長所と弱点を研究していたものと思われます。第三者委員会を発足させたにもかかわらず、その調査委員会の調査結果に反論する、弱点を突かれると、その弱点をあえて補強する、という手法も、非常にしたたかさをうかがわせるものであります。

そしてなんといっても驚くべきことは、その「一枚岩の強さ」ではないでしょうか。これだけ世間で騒がれても、内部通報や内部告発というものが出てこない(最初に通報があったのも、たしか関連会社の社員の方であり、社内の人間ではなかったようです)。また、リタイアされた九電OBの方々からも、九電の体質を批判するような声が聞こえてきません。たしか関係書類を廃棄した方々は社内処分を受けたはずであり、普通であれば「俺は九電のためを思ってやったのに、なんだ」といったことで、そこから社内事情が漏れてくるはずでありますが、どうやらそういった「こぼれ話」も聞こえてきません。「いま、この九電の危機を、社内の全員で乗り越えよう」といった気風が、ひょっとすると社員全員に共有されているのではないでしょうか。「どんなに世間から批判されようとも、マスコミや世論の批判は一時的なものだから、なんとか今の逆風を乗り越えよう」といった気概を社員が一丸となって共有しているようにも思えます。そうだとしますと、この組織はとんでもなく内部統制がしっかりしている企業(良い悪いは別として)ではないかと感じるところであります。

先日、セミナーの企画を担当される方からお聞きしましたが、電力会社のなかで、東京でも大阪でも、コンプライアンスに関連するセミナーが開催されると、九電の関係者の方々だけはかならず出席される、たいしたものです、とおっしゃっていました。これは以前からの傾向だそうです。そういえば、先日私が東京で講演した際にも、複数名の九電の方々が参加されていました。おそらくコンプライアンスに関する社内での意識は相当に高いものと思いますし、またコンプライアンス経営の重要性は十分に認識されておられるのではないかと。東電さんと違い、賠償責任を尽くす立場にない以上は、「我々への逆風は一時的なもの。かならずやり過ごすことができる」といったところではないかと。他の電力会社でも、やらせメールに近いことが発覚し、この事態を横目で見ながら「ここで当社の社長が辞任してしまっては、他の電力会社にも混乱を生じさせる」といった理由で辞任撤回の意向を表明するあたりにも、非常にしたたかさを感じます。

さて、もうすぐ第三者委員会による最終報告書が出るわけですが(一部報じられているところでは、社長の責任についても明記される予定とのこと)、第三者委員会は、このしたたかな九電王国にいったい何を残すことができるのか、何を変えることができるのか、報告書の中身とともに、九電さんの報告書への対応についても、非常に関心が高まるところであります。

9月 28, 2011 独立第三者委員会 | | コメント (11) | トラックバック (0)

2011年9月 9日 (金)

九電の内部統制VS第三者委員会(中間報告書の公表)

9月8日に九電さんのHPで公開されました「九州電力第三者委員会中間報告書」及び「第三者委員会中間報告書に関する当社見解について」、いずれも拝見しました。第三者委員会の調査報告書というものは、会社側が事実解明を委託するものでありますので、本来ならばそこで調査判明した事実については会社側が完全に依拠するのが通常であります。しかし、社内調査の確認作業が主な目的とはいえ、今回の九電やらせメールについては、第三者委員会(正確には委員会が事実調査を委託した弁護士チーム)が認定した重要事実について、「それはあくまでも第三者委員会の判断であって、会社としては違うと思います」と真っ向から反論するという事態になっており、非常に珍しいケースであります。早速、第三者委員会委員長は、九電側に抗議の記者会見をされたようです(西日本新聞ニュースはこちら)。

九電側が真っ向から反論しているのは、「九電が悪い」ということを基礎付ける事実ではなく、県知事の要請がやらせメールの発端となった、という事実に関する部分であります。この調査を担当しておられるのは、あのメルシャン架空循環取引事件でメルシャンの第三者委員会委員長を務めておられた方を中心とする12名の弁護士チームであり、あのメルシャン事件の報告書を読んだ者からすれば、九電メール事件の事実解明についても強い期待が寄せられるところです。なお、本件では別チームが、過去の説明会においても「仕込み質問」が動員要請があったかどうかを調査しており、よく考えますと、これらの事実解明も、最終認定には大きな影響を及ぼすものと思われます。

県知事の発言に関する認定は、同報告書5頁に委員会としての中間意見が掲載されており、「発言当時のF知事の意図あるいは真意は措くとして、同知事が懇談の場で同メモ(注-九電佐賀支店長が作成したメモ)の記載と同様ないしは同趣旨の発言を行ったことは否定し難いものと思われる」として、やらせメールを投稿するよう、県知事が発言した可能性が高いとの心証を抱いていることがうかがわれます。ただ、この報告書で認定された事実関係をもとに判断すれば、九電さんの経営トップの方々が、懇談の結果、積極的に「やらせメール」の依頼に動いた様子は判明するとしても、それは経営トップの方々のイニシアチブに基づく可能性もあり、県知事が懇談の場で具体的な依頼をしたことまでは明確にはなっていないと思われます。したがって県知事がこれまで「発言の趣旨が違う」として釈明している内容を切り崩すには少し足りず、同報告書の後半に記載されているように、さらなるメール投稿依頼時の経緯、そして第三者委員会設置以降に関係書類が廃棄され(もしくは廃棄されかけていた)事実関係を調査する必要があると思われます。

マスコミ各社は「県知事の要請がやらせメールの発端になった」と報じていますが、県知事側も、「もっと賛成派の意見が積極的に出てもいいのではないか、経済団体などに広く告知してもよいのでは」と述べたことは認めているのですから、どっちの主張を前提としても「発端」になっていることは当然のことであります。したがって、知事の発言が「発端になった」からといって、それだけではとくに県知事の責任を問えるものではありません。たしかに、6月26日の原発再開説明会に先立つ5月17日の保安院説明会でも、県知事の要請があったかのような事実が紹介されておりますが、これもおそらく伝聞証拠であり、とくに証拠価値が高いようにも思われません。このあたりは、九電側から「当社の見解」が出てくることにも、なんとなく理解できます。県知事の責任を問えるのは、具体的に「やらせメール」を県知事が要請したこと、つまり佐賀支店長の作成したメモが、正確に知事の発言を反映したものであることが証拠から明確にならなければなりません。

唯一ハッとさせられたのが、D管理部長のヒアリング結果であり、経営トップからの要請内容、県知事の発言内容を含め、いろいろと供述しているのではないか・・・と期待したのでありますが、さすがに九電側も、この報告書原案を見てからだとは思いますが、このD管理部長にヒアリングへの回答の趣旨を再確認し、その結果を「当社の見解」において公表しております(ただ、上司が部下である管理部長に発言の真意を問うたとしても、その回答に信用性は乏しいものと思われますが・・・)。

私は前のエントリーにて、いくつかの理由を掲げて「具体的な意見投稿を要請する県知事の発言があった」と考えている、と書きましたが、なんといっても九電側に分が悪いのは「書類の廃棄」です。この件について「当社の見解」でも、ほとんど反論ができておりません。「外部の人に迷惑がかかるから」ということは、会社側が考えるのではなく、第三者委員会が「公表の可否」をもって判断することでして、到底理解できる理由ではありません。むしろ、外部の誰かにも責任があることを自認するかのような主張ではないかと。第三者委員会が「行政の要請」に疑いの目を持っていることが判明した後の「書類の廃棄」というのは、ほとんど目も当てられないほどの失態であり、最終的には第三者委員会の認定事実の信用性を高めることになるのではないでしょうか(なお、証拠を廃棄した者に対して、九電側が素早く社内処分を下したことが報じられておりましたが、その後、この役員にはヒアリングが可能だったのでしょうか?)。

九電さんが、非常に大きな組織でありますので、私は一枚岩ではないと考えております。そこが第三者委員会のつきどころであり、これまで127名ほどの社員等からヒアリングをされたそうですが、そのなかには、第三者委員会に有利な発言をされる方もいらっしゃるのではないかと。仮に、そういった狙いをもってヒアリングをしようとしても、九電さんのほうが一枚岩となって、頑なにその主張に矛盾する証言が聞き出せないとすれば、それはそれで、九電さんの全社的な「火事場の馬鹿力」はものすごいものと思います。社内が一丸となって、ひとつの経営目的に向かってまい進できる、というのは、内部統制という面からみても、相当に強い組織ではないかと。

普通は、企業体質に切り込んだ第三者委員会報告というのは、企業側から一番嫌われるところであるにもかかわらず、九電さんは「本件は九電の企業体質によるものであって、第三者に責任はない」と自ら主張しておられます(これも珍しい・・・)。それほどまでに、九電さんにとって、県知事に迷惑をかけることが屈辱的ということなのでしょうか。「他社をかばうコンプライアンス経営」は意外と根が深いものだと痛感いたしました。

9月 9, 2011 独立第三者委員会 | | コメント (14) | トラックバック (0)

2011年3月 4日 (金)

組織的資金流出事件と社外取締役、監査役らの法的責任

京大入試漏洩事件と偽計業務妨害罪に関するエントリーには多数のアクセスが続いている状況でございますが、私とは反対の有益なご意見もコメントでいただいておりますので、どうかそちらもご参照くださいませ。

さて、市場関係者の方々から、最近たいへんご関心の高い「企業不祥事発生時における第三者委員会制度」でございますが、3月1日fonfun社(JASDAQ)の不正会計事件に関する第三者委員会報告書(要旨)が公表され、同日、大証より監理銘柄に指定されました。(同2日には監査役会の発案によって経営監視委員会が発足する旨のリリースが出されております。)この第三者調査委員会の調査目的は、主に代表取締役を含む、経営陣による不正行為の実態解明および経営陣の法的責任の有無にあるようです。

第三者調査委員会の調査結果のお知らせ(3月1日付)

「経営監視委員会」発足のお知らせ(3月2日付)

fonfun社の経営状況や大株主との関係などは、とくに存じ上げているわけではございませんし、調査委員会の委員の皆様は、たいへんご高名な方々ばかりでありますので、とても私などが偉そうに意見を述べられる立場にはないことは承知のうえでありますが、素朴な疑問が生じましたので、あえて一言だけ読後の感想を述べさせていただきます。

当該調査委員会報告書では、売上約150億の上場会社において、6億ほどの資産が流出しており、社長を含めた3名の社内取締役が不正に加担していることが認定され、これを「組織ぐるみの不正行為」と断定しています。また原因として、同社の内部統制の欠如についても指摘があります。しかしながら同社の社外取締役、監査役らについてはその責任を追及することは困難である、と結論つけておられます。また会計監査人についても法的責任を追及することは困難とのことであります。

責任追及が困難とされる理由について、16名に及ぶヒアリングの結果と思われますので、現時点ではとくに意見を述べるつもりはございませんが、もし社外取締役や監査役の方々が社内取締役らの組織ぐるみの不正を見抜けなかったことについて「無理もない」とのことであれば、それではなぜ社外取締役や監査役の方々に内部統制構築義務違反や、内部統制に関する監査懈怠の責任追及はできないのでしょうか?

たとえ1億円以上の経費支出であっても、それは代表取締役の独断で執行されていたのが常態であり取締役会へ上程されることはなかったとのことでありますが、それ自体が上場会社として異常な状況にあり、とりわけ財務報告の信頼性確保のためのシステムの整備自体に明らかに問題があったのではないかと思うのでありますが、この点について社外取締役や監査役の方々が、これまで何等の指摘もしておられないとすれば、これは法的責任とは無関係なのでしょうか?

もし結論的に、責任追及が困難であるのならば、この点についての詳細な説明が必要であると考えます。そのような説明がないために、その後の「再発防止策」の内容も、なにゆえこのような防止策が効果的なのか、まったく記載内容からは理解できないと思われます。(本当は報告書全文を読むと理解でき、これは要旨なので理解できない、ということも考えられるのでありますが。)

名目的監査役に対して損害賠償責任が認められた判決例などもありますし、今回の事例はすでに会社法や金商法で内部統制に関する厳しい規制が施行された後の不正行為に関するものでありますので、せめて上記のあたりについての解説が最低限度必要なのではないでしょうか。たいへん影響力のある委員の方々が、こういった組織ぐるみの不正行為が発生しているにもかかわらず、監査・監督を行う立場の方々に責任追及が困難、と認定することは同種事案への先例的な意味合いが強いものと思います。ぜひとも、このあたりをどの程度委員の方々が考慮されたのか、是非知りたいところであります。

3月 4, 2011 独立第三者委員会 | | コメント (6) | トラックバック (0)

2011年2月18日 (金)

企業不祥事発生時の「第三者委員会」はなぜ嫌われるのか?

(2月20日 第三者委員会制度に詳しい方から、一部訂正したほうがいいのではないか、とのご指摘を受け、誤解を招いたり、私自身に理解不足の点がございましたので、一部訂正させていただきました。赤字で訂正をしております。また、本日朝日「法と経済のジャーナル」にて、日弁連第三者委員会ガイドライン作成に携わった先生方の詳細なインタビュー記事が掲載されておりますので、そちらをご参考ください。)

1月31日の日経新聞法務インサイトにおきまして、上場会社を対象としたアンケート調査の結果が出ておりました。企業に不祥事が発生した(発覚した)際に、事実調査や原因究明、責任追及を目的とした、いわゆる第三者委員会によって調査してほしい不正行為のトップが「役員が関与している不正」(73%)ということだそうでして、これは事の性質上、当然のことかと思います。

ただ、たいへん興味深かったのが日弁連が昨年7月に公表(12月に改訂)いたしました「第三者委員会ガイドライン」に準拠して調査すべきか?という問いに対しまして、「ガイドラインに準拠すべきである」と回答された企業はわずか10%であり、「参考にはするが、完全に準拠する必要はない」との回答が圧倒的に多かった、ということであります。今回のアンケートは時価総額上位150社ということですから、そもそも社内調査のスキルをきちんとお持ちの企業さんが多かったことも影響しているのかもしれません。ただ、それでも「日弁連のガイドラインには必ずしも準拠しない」と明言されておられるわけですから、どこに問題があるのか少し考えてみる必要がありそうです。

ここのところ会計不正事件が発覚した上場会社の適時開示を閲覧いたしますと、社外調査委員会の設置とともに、当該委員会は日弁連ガイドラインに準拠して報告をいたします、といったことを明記することが増えておりますし、東証の上場会社向け危機管理マニュアルにおきましても、日弁連ガイドラインに準拠した第三者委員会の設置を勧めておられます。したがいまして、日弁連ガイドラインに準拠した第三者委員会が歓迎される向きも多いのではないか、とも思われます。しかし、結果は上記のとおりであります。私は不祥事を起こした会社の信用再生委員に就任したり、内部通報窓口に新たに就任したり、またセミナーに招かれる機会などを通じて、第三者委員会の報告書が出された後の企業担当者の方とお話をすることがありますが、そこで担当役員や職員の方々が受けた「第三者委員会」の印象としましては、かなり批判的な意見が見受けられます。

「なぜ第三者委員会が嫌われるのか」というのは、少しタイトルが大げさではあります(関係者の方々に叱られそうです)が、私がコンプライアンス統括役員や担当社員の方々から見聞きしたところを、私見も交えて概括的にまとめますと、だいたい以下のようなところに不満の種があるように思います。なお、これは日弁連第三者委員会ガイドラインを批判しているわけではなく、今後(自分を含めて)委員に就任する場合に、委員と会社の役職員との認識のズレをすこしでも解消するための前向きな示唆、とお考えいただければ幸いであります。

1完全な独立性の確保

「第三者委員会」という名前のとおり、ガイドラインは委員の独立性を求めています。しかも、独立した委員のみで構成されることが望ましいとされています。たとえば不祥事を起こした会社の顧問弁護士や、社外役員でも、就任を控えるべきだ、とされております。また、事務局に協力する社員には厳しい情報管理が求められます。しかし、時間的制約のなかで事実を解明するにあたり、完全に独立した委員のみで構成される委員会が、どこまで真実にアクセスしうるか・・といいますと、これはかなり限界があるように思います。また、不祥事の原因究明のためには、過去の出来事などのヒアリングも必要となりますが、社内の事情に精通した人間がいなければ、なかなか効果的な調査が進められないようであります。これがまず、役職員の疑心暗鬼を生む要因になっているのではないか、と思われます。

(ご参考まで)

第2.第三者委員会の独立性、中立性についての指針
1.起案権の専属
調査報告書の起案権は第三者委員会に専属する。
2.調査報告書の記載内容
第三者委員会は、調査により判明した事実とその評価を、企業等の現在の経営陣に不利となる場合であっても、調査報告書に記載する。
3.調査報告書の事前非開示
第三者委員会は、調査報告書提出前に、その全部又は一部を企業等に開示しない。

顧問弁護士は、「利害関係を有する者」に該当する。企業等の業務を受任したことがある弁護士や社外役員については、直ちに「利害関係を有する者」に該当するものではなく、ケース・バイ・ケースで判断されることになろう。なお、調査報告書には、委員の企業等との関係性を記載して、ステークホルダーによる評価の対象とすべきであろう。

2自由心証主義・灰色認定・疫学的証明の許容

これもまた、多くの会社で不満要因として聞かれるところであります。不正調査にあたり、認定すべき事実の証明程度は「灰色」にならざるをえない場合があります。また「統計的にみて、こういった傾向が強い」という経験則を活用してもよい、ということになっております。たとえば(ちょっと極端な例で恐縮ですが)、携帯電話のメールの復元によって八百長相撲の事実が発覚した、という報道がなされた後に、疑惑の力士が「形態を壊してしまった」とか「紛失してしまった」という理由で、携帯電話の調査を拒否した場合、八百長相撲をやっていたと認定する、というタイプの事実認定をやってもかまわない、ということであります(ここは修正:「灰色認定」とは、グレーと判断される事情を示してグレーと結論づけるものであります。また、「疫学的認定」とは、調査の過程や結果から得られる統計数字に基づいて組織の問題を浮き彫りにする手法であります。失礼いたしました。)もちろん「灰色という条件付きで」ということを報告書に明記するわけですが、報告書を読むほうからすれば、第三者委員会が認定したのだから間違いないだろう、といった印象を持たれるわけであります。調査を受ける(受ける可能性のある)社員にしてみれば、たとえ灰色でも「あなたは不正を犯した」ということを、不十分な証拠によって断定されるのではないか?という不安にかられるわけでして、これがとても恐怖を感じることになるのであります。

(以下、ご参考)

(2)事実認定に関する指針
①第三者委員会は、各種証拠を十分に吟味して、自由心証により事実認定を行う。
②第三者委員会は、不祥事の実態を明らかにするために、法律上の証明による厳格な事実認定に止まらず、疑いの程度を明示した灰色認定や疫学的認定を行うことができる。

3原因究明・再発防止策重視の調査

相撲協会の特別調査委員会が、全力士へのアンケート調査を行った、という報道に対して、マスコミ各社が「アンケート調査で八百長をやりました、なんて回答するバカな力士がいるわけないだろう」と批判しておられましたが、あのアンケート調査は回答者に不正行為を告白(もしくは告発)してもらうためだけではありません。要はアンケートを通じて、当該組織の持つ企業風土や構造的な欠陥の有無を調査することが主たる目的だと思われます。CSRの発想に基づき、不祥事の発覚によってステークホルダーに現実化した被害を取り除くことが第三者委員会調査の主たる目的である以上、不正事実の調査以上に、不祥事が発生した真の原因はどこにあったのか、同じ不祥事が繰り返されないためにはどのような再発防止策が効果的なのかを徹底的に検討することが要求されるわけでして、いわば再発防止策の検討が重視されることになります。そうしますと、当然のことながら企業風土について踏み込んだ意見を述べたり、先代社長の経営方針の問題点などにも意見を述べることになります。しかし会社の役職員からすれば「昨日今日、この会社にやってきたアンタに、この会社の何がわかるんや」という気持ちになるのは、これまた当然のことでありまして、そこに第三者委員と役職員との信頼関係が失われる要因がございます。

ほかにも、公表するまで報告書の全文を役職員に公開しない、報告書の全文公開を求める(要旨ではなく全文開示が原則)といったことへの不満なども聞かれるところでありますが、おおむね以上の3つの内容に集約されるのではなかろうか、と。

先日、ある証券取引所の審査担当の方とお話ししておりましたら、いまの第三者委員会の調査スピードが遅すぎる、せめて遅いのであれば中間報告くらいはしてほしい、といった要望を語っておられました。委員の側からしますと、迅速性を求められれば求められるほどに、事実認定の証明度が弱くなってしまうわけで、また独立性にも妥協しなければならないものとなります。このあたりの問題に悩みながら調査活動に従事しているのが現実でありますので、明確な正解はないと思いますが、委員と企業の役職員との間で、それぞれ相手の事情をくみ取りながら、その信頼関係を破壊せずに調査を進められることが、最良の結果を残すために必要なのではないかと思います。

2月 18, 2011 独立第三者委員会 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年2月12日 (土)

大相撲八百長疑惑の調査にリーニエンシーは通用するか?

大相撲八百長疑惑事件につきまして、調査委員会の調査もいわゆる「全件調査」(疑惑のある力士だけでなく、疑惑のない力士も含めてすべての十両以上の力士を調査する)の段階に入りましたが、力士たちの協力を得ることが困難で、調査は難航している、といったニュースが報じられております(産経新聞ニュースはこちら)。相撲協会や相撲部屋の組織としての構造的な問題を指摘するのではなく、実際に八百長相撲を過去に行った力士への処分を前提としての調査でありますから、力士たちが調査に非協力的なのは当然のことでありまして、むしろ

「過去の何名かの力士の不正を暴いて処分すれば、構造問題に突っ込まれることも回避できて、それで相撲協会の自浄能力も示すことができるから一件落着」

ということを幹部の方々が目論んでおられるのであれば、結局「正直者が馬鹿をみる世界」ということになりそうであります。調査委員会に強制捜査権限がない以上、いまのままでは調査が難航するのは当然だと思われます。いままでも「八百長ってあるよね」といった雰囲気が漂っていた相撲界において、メールが出てきた力士だけが処分の対象となる、という不公平感のなかでの全件調査はうまくいかないでしょう。力士の方々も、自身や家族の生活がかかっているのでありまして、正直に申告して処分されるくらいなら隠すほうに賭けるのは当然でしょうし、自身の行為を正当化する根拠がありますので「誠実性という名の倫理」が通用する話ではないと思います。

私はむしろ八百長疑惑問題につきまして、だれがやったのか、つまり処分を目的とした調査ではなく、原因究明と再発防止策の提言を目的とした調査を行うべきではないかと思います。相撲協会が存続することがおおむね前提のお話だと思いますので、今後は八百長疑惑が発生しないような組織に生まれ変わるためにはどうすべきなのか、組織や部屋制度の在り方にまでさかのぼって改善策を実行することが、もっともファンの信頼を回復する早道になるのではないかと。何名かの力士を処分することは、それなりに一般予防的な効果はあるでしょうけれど、結局何も組織は変わることはないわけでして、再び八百長相撲が適宜行われることは確実だと思われます。(絶対に八百長はなくなりませんよね)むしろ、八百長相撲は必ず起きることを前提として、①その発生頻度を下げるためにはどうすべきか(予防機能)、②八百長の発生を早期に発見するためにはどうすべきか(発見機能)、③発見した際の文科省への報告・届出や国民への公表に関する判断含め、これに協会としてどう対応すべきか(危機管理)に分けて検討すべきでして、そのための判断資料として、今回の調査結果を活用すべきではないかと考えます。つまり、

「大相撲で八百長は起こしてはいけない」(大相撲の品質管理)から

「大相撲で八百長は許さない」(相撲協会の経営管理)へ

発想を転換する必要があると思います。前者の場合、八百長相撲が再び発生すれば、組織上げて隠ぺいに走るでしょうが、このデジタルフォレンジックが発達した時代、到底隠しきれるわけがないので、今度こそ組織の廃止に関わることになってしまうでしょう。相撲協会は経営管理の一環として「八百長を許さない大相撲」をめざし、だからこそ今後の八百長相撲については、力士たちに厳しい処分を課すことができるのだと思います。

八百長疑惑に関する調査手法については、以下は私の提言です。無責任に思われるものもあるかもしれませんが、「手詰まり状態にある」のであれば、一度検討してみることも有益かもしれません。不謹慎な点がございましたら、どうかご海容ください。

1相撲協会として、過去の八百長事件については、力士の処分をしないことを前提として、調査委員会からの指示に対しては全面的に協力するよう指導する、あるいは(相撲協会と力士の間に労使関係にあるならば)調査への協力義務を課す。そのうえで、調査委員としては、力士が誠実に協力しないことについては処分対象として検討するか、もしくは協力しない力士の対応自身をとらえて「灰色認定」をする(つまり、調査に協力的でないことを力士に不利に援用して、限りなく八百長相撲を行った可能性が高いことを報告する)

2十両以上の力士全員を対象として、リーニエンシー(自主申告による処分減免制度)を適用する。たとえば、相撲協会に対して八百長を行ったことを申告した力士については、先着10名までは処分をしないことにする。もちろんこれは相撲協会が「八百長は絶対に許さない」というコミットメントを発することを条件とするものですが、八百長相撲には相手があるものですから、「ひょっとしてあいつが先にしゃべっちゃったら、自分は処分されるかも・・・」といった不安が該当力士の心の中に芽生えてくると思います。したがって、これは結構有効性のある調査手続きになるのではないか、と思われますがいかがなものでしょうか。

3調査委員会に「内部通報窓口」を設置する。もちろん、匿名性を確保したうえで過去の八百長疑惑に関する通報を受け付ける、というものであります。あまり昔までさかのぼることができないと思いますので、たとえば過去3年分の取組みについて・・・という限定をつけるのが現実的かな、と。(ひょっとしたらすでにこの手法は採用されているかもしれませんね)とりわけ現在は現役力士を対象とした調査が行われているそうでありますが、こういった内部通報窓口へは、すでに廃業した元力士の方々の意見などを受け付けたほうが実効性が高まるように思えます。また通報窓口にかかわらず、廃業された方々に対して、過去にどのような八百長疑惑があったのか、詳細にヒアリングしてみるほうが調査の実効性が上がるかもしれません。

2月 12, 2011 独立第三者委員会 | | コメント (5) | トラックバック (0)

2010年10月18日 (月)

対象企業が選定しない監査法人と第三者委員会

すでに多くのブログ等で話題になっておりますが、EU域内の上場会社においては会計監査人を選定する権限を失い、規制当局が「監査人の起用や報酬、期間」についての決定権限を保有する可能性が浮上してきたそうであります。(ブルームバーグニュースはこちら)日本でも、たしか平成19年公認会計士法改正の機運が高まっていたころには、「監査のねじれ」を解消する選択肢のひとつとして、規制当局が監査人を選定する・・・ということも真剣に語られていたものと記憶しております。

欧州発といえばIFRSの適用問題がございますが、IFRSへのコンバージェンス、アドプションが極めて政治的な意味合いをもって語られるのであれば、日本でも今後同様の議論が出てくるのでしょうかね?ただ不正会計事件で証券取引所が提訴される時代ですから、粉飾決算が発生した場合に、当局による監査人選任責任を問うための国賠請求が(一般株主から)提訴されることは確実なわけでして、私は規制当局が監査人を選定する権限を行使することはないと予想しております。仮にあったとしても、株式会社の監査役固有の権限である「選任同意権」くらいまでではないかと。いま法制審でも議論されているところでありますが、日本独自の「監査役による監査人選任、報酬決定」というあたりの論点とも関連しそうであります。

ただ、監査対象企業が監査法人を選任するよりも、まったく独立した第三者が選任するほうが「監査への信頼」が高まる、というのは一理あるところです。この理につきましては、監査の問題に限らず、企業不祥事が発覚した際に依頼される「第三者委員会」の選任問題についても同様であります。そこで大阪弁護士会と日本公認会計士協会近畿会が共同して登録名簿から委員を選定し、第三者委員会を「不祥事発生企業」に提供する制度(第三者委員会委員登録制度)も、外観的独立性を尊重し、ステークホルダーへ信頼される事実調査と原因究明を行うことを目的として発足いたしました(すでに当ブログでもご紹介しております)。報酬を支払う企業自身が選定する第三者委員会委員がはたして企業に対して不都合な事実を報告したり、本当の不祥事の原因を指摘できるのだろうか・・・という懸念は「外観的な独立性」の問題としては常にあるわけですから、制度発足に関与した者としては、ぜひ企業にも活用いただければ、と思っておりました。

本年3月の制度開始以来、なかなか活用される機会もなかったのでありますが、本日(10月17日)の朝日新聞(大阪版)で報道されておりますとおり、ようやく制度第一号の第三者委員会が活動することになりました。(構成は弁護士3名、会計士2名)要請がありましたのは新聞で報じられているとおり(一般企業ではなく)関西の某学校法人でありますので、金融庁マターの会計不正事件ではございません。しかし「第三者委員会」の活動場面は文科省、総務省、厚労省、国交省等が規制当局となります不祥事にも有益なものでありますし、場合によっては公共団体における問題にも対応しうるものであります。今後は会計不正事件のように(迅速性と正確性と独立性のバランスに配慮しなければならないような)ムズカシイ事案の第三者委員会事例にも耐えうるような体制作りを行っていくためにも、これからの第三者委員会第1号案件の活動に注目をしております。

10月 18, 2010 独立第三者委員会 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2010年10月 7日 (木)

日立工機社海外子会社の不適切会計処理と調査方法の是非

出版記念講演を無事終えることができました。本日はビジネスタイムにもかかわらず、多数お集まりいただき本当にありがとうございました。<m(__)m> また、このような場を設けていただきました経済産業調査会の皆様に厚く御礼申し上げます。拙著で書き足らなかったところ、とりわけ「内部通報に基づく調査活動の適法性を担保するための手法」等お話したことにつきまして、今後の実務のご参考になれば幸いです。同業者の方々も結構お越しいただいておりましたので若干緊張しましたが、法律解釈等、ご不明な点がありましたらメールでお問い合わせください。なお、おかげさまでこのたびの記念講演が好評だったことで、本部(東京)でもほぼ同じ内容の出版記念講演をさせていただくことになりました。日程等正式に決まりましたら、また当ブログでも広報させていただきますので、関東地区の皆様、どうかよろしくお願いいたします。<(_ _)>

本題でありますが、昨日(10月5日)日立工機さん(東証・大証一部)の海外子会社で、約5年にわたり売上高100億円(営業利益40億円)程度の架空売上が発覚し、当子会社では過大な営業投資による業績悪化を隠ぺいしていた模様である・・・とリリースされております(当社連結子会社の不適切な取引および会計処理について)。実際に株価にも影響が出ている模様であります(ニュースはこちら)。日立工機さんから出向していた社長さんの指示により、粉飾が行われていたようで、10月4日に懲戒解雇、10月5日に全容解明等のため第三者委員会が正式に立ち上げられた、とのこと。今年の不正会計事件の特徴として、本当に企業集団における内部統制に疑問のある事例が多いと感じます。会社の業績が安定しているようにみえることから、長く子会社の経営トップの地位が変わらない・・・ということ、子会社の調査が困難であり(とくに今回のような海外子会社であればなおさら)、いわゆる「異常の兆候」が発見しにくい・・・といったことが原因と思われます。ただし本件につきましては、内部統制基準に基づく評価範囲に含まれている子会社だったのかどうかはわかりませんが・・・・

ところで、本リリースを読みまして、ふと気がついたことがあります。日弁連第三者委員会ガイドラインでは(弁護士資格を有する委員について)独立の第三者が委員として構成することが望ましい、不祥事発生会社の顧問弁護士は「独立の第三者」には該当しない、とされていますが、当社第三者委員会の委員として、(親会社の)顧問弁護士の方が就任されておられます。そして、「なお書き」として「当社と全く利害関係を有しない第三者のみによる調査を行うという形態はとっておりません」と(その理由とともに)記載されております。東証自主規制法人は今年8月に「上場管理業務について-虚偽記載審査の解説-」を公表し、不適切な会計処理が発覚した上場会社においては、日弁連ガイドラインに沿った形で第三者委員会を立ち上げて調査を行うように指導されているようで、すでに日弁連ガイドラインに準拠して調査を行う(行った)と明示するものが3例ほど出ております。しかしながら、すでに何度か当ブログでも述べておりますとおり、事案によってはこういった会社の事情を精通した人が委員として就任する第三者委員会の在り方(社内調査検証型、非完全独立型)も検討されるべきであり、私は肯定的に解しております。

本件のように連結子会社の経営トップの不正を調査するようなケースでは、「経営トップによる号令」が効きません。強制捜査権限を有しない第三者委員の調査活動が短期間で奏功するためには、当該会社の経営トップの「調査協力宣言」が不可欠であります。しかしそのような宣言が得られない状況で実効性のある調査を遂行するためには、社内の事情に精通していたり、調査取引(社員の免責を約束しながら、社長の不正を正直に証言してもらう)に必要な信頼関係が前提となります。そこで、独立性には若干目をつぶってでも、調査の実効性、即効性を重視することも妥当ではないかと思われます。

また、あらかじめ子会社自身における調査が期待できない以上、親会社主導の社内調査により「異常な兆候」とその異常性を裏付ける合理的な証拠を得る必要があります(経営トップを納得させる、もしくは潜行する調査活動の合法性を担保するため)。連結子会社といえども「独立した法人」であるため、親会社と業務委託契約を締結している第三者委員会の新たな調査活動は、デュープロセスの下で行われる必要があります(企業集団の内部統制と人権保障とのチェックアンドバランス)。そのためには、常に社内調査の内容をチェックしながら調査を遂行する必要がありまして、少なくとも社内調査委員もしくは委員補助を担当した者が第三者委員会の活動に関与し、社内調査委員会との連携を図ることは不可欠と思料いたします。

海外子会社となりますと、設立準拠法の適用が優先し、調査活動のリーガルリスクは高まるわけでありますし、なおさら臨機応変な調査活動が要請されるところであります。懲戒処分を優先させて、調査を遂行しやすい状況としたうえでリリース・・・ということで、不祥事の公表のタイミングについても、かなり考慮されているように思われます。また、報告書の提出予定が10月中旬ということで、極めて迅速に調査結果を出される(そのために正式決定以前から活動は一部されている、とのこと)ようで、たいへんビックリしております。日立工機さんのような社内調査委員会、社外調査委員会の構成および役割分担は、企業が自浄能力を示すための調査活動に困難が伴うような事例におけるモデルケースになるのではないでしょうか。

10月 7, 2010 独立第三者委員会 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年8月30日 (月)

上場会社役員必読!メルシャン第三者委員会最終報告書

すでに新聞やニュースでも報じられておりますメルシャン株式会社(2536 東証・大証1部)の不正会計事件の最終報告でありますが、8月27日付けで報告書全文が公開されましたので、一読いたしました。8月12日に公表された社内調査報告及び第三者委員会中間報告と合わせますと、一冊の本になるほどの分量であります。メルシャンさんの株価も上がり、「親会社が体よく100%子会社にする理由になったのでは?」といった評価も多いようですし、また山口三尊さんがコメントで述べておられるとおり、事実上のキャッシュアウトではないか、といった手続きへのご批判もあるようです。ともかくこの最終報告書を第三者委員会からつきつけられた親会社および子会社の社長さんは、どう思われたでしょうか。最初から筋書きがあったのか、なかったのかは、これをお読みいただいたうえで各自判断したほうがよさそうであります。

A4で添付資料合わせ80頁にわたる最終報告書でして、関係者の方々には不謹慎だと怒られそうですが、本当に迫力があり、読み応え十分です(経済小説を読むよりも夢中になりました)。先日の社内調査報告書が「事実認定」(メルシャンに何が起こったのか)を中心としたものでありましたが、今回の第三者委員会最終報告書はメルシャンのガバナンスはこれまでどうだったのか(統制環境、全社的内部統制の把握)という点と、役員らの責任を根拠付ける事実、そして再発防止策に力点が置かれています。とくに後半のほうが読み応えがあります。「私がこの常務さんの立場だったら、たぶん同じことをしていたのかもしれない」と素直に考えてしまうほど、人間模様がリアルであります。

内部監査に携わる方、監査役の皆様には当然のことながら、このたびの最終報告書はぜひとも大きな会社の役員の皆様にお読みいただき、自社のガバナンスの状況を振り返っていただければ・・・と思います。おそらくこのような第三者委員会委員のご意見が出れば、社長さん含め役員の皆様も震え上がるのではないでしょうか。現社長、元社長はじめ「責任は相当に重いと思料する」との結論でありますが、事案の特殊性(親会社であるキリンHDからやってきた現社長に、メルシャン出身の役員や幹部社員が遠慮して何もいえなかった、ということと、キリンから来た人たちもメルシャンが名門企業ゆえに遠慮して文句をいいづらかった、ということ)ゆえの出来事だったのでは?といったあたりに「逃げ道」を探したくなるような内容であります。「遠慮して何も言えなかった」といったあたりの件は、第三者委員会委員の単なる「推測」ではなく、総勢18名の弁護士、会計士集団によるヒアリングの積み重ねが結論とされておりますので、たいへん事実分析にも説得力があります。メルシャンの元専務の方が「僕が(キリンとの提携後の)現在も専務だったら、やっぱり現専務と同様、社長の耳には(不利益な情報を)いれなかったかもしれない」との証言、リアルです。結局、現社長は言葉は悪いですが「裸の王様」だったのでしょうか?結構親会社に対しても厳しい内容になっております。

監査役の皆様は、この報告書をお読みになってどのような感想をお持ちになるでしょうか。この第三者委員会最終報告書では、会社法およびメルシャン社のガバナンス規程を根拠として、メルシャンの常勤監査役の「任務懈怠は明らか」と断言されております。(監査部長も同様、任務懈怠あり、とされております)監査役監査、内部監査とも、定例の監査は十分になされていたのであります。だからこそ2年前には水産飼料事業部における架空循環取引の疑いを発見したのであります。しかし問題はそこからであります。平時対応から有事対応へ切り替えることができなかった。異常な兆候を発見したのでありますが、

「もし報告して、後から間違っていたら親会社含めたいへんなことになる。もう少し架空循環取引である確証を得るまでは報告すべきではない、と思った」(監査部長)

まことにリアルであります。消費者の混乱を招かないよう、リコールの有無を慎重に判断していたら、先に事故情報が広まって、あとで「リコール隠し」と叩かれるパターンに似ているように思われます。おそらく常勤監査役の方も、この監査部長と行動を共にされておられたのですから、同様の考えであったと推測いたします。しかし監査役にとって、社内の異常な兆候を発見した時点から、有事なのであります。「おかしい」と疑惑を抱いた瞬間から、会計監査人、内部監査人、担当取締役と協議をし、また役員会で堂々と疑惑を呈示すべきでありました。(経営会議には監査役さんは出席されていなかったみたいですね。報告書を読みますと、経営会議こそ重要案件を審議する場だったようですから、取締役会はそれほど活発な議論がなされなかったのでしょうか?)業績立て直しに躍起になっておられた社長さんに、後ろ向きの話題を投げかけることに勇気が必要だったのでしょうか?しかし、事が大きくなってしまっては「任務懈怠」と評価されてしまうのでありまして、異常な兆候に遭遇した監査役さんの対応について、大きな教訓を残す事例になってしまったのではないかと思われます。

この報告書の怖さは、一見すべての役員に対して厳しい目が向けられているように思いますが、実はある役員さんには寛大な評価が下されているところであります。その役員さんは不正会計の発生した部署を担当する役員さんですので、普通に考えますと最も重い責任を課されるようにも思われます。しかし、問題発生時におけるその役員さんのメルシャンにおける業務内容を詳細に検討したうえで、たとえば「当時は○○の使命を全うすることが、この役員にとっては社内で最大の仕事であり、そこに没頭していたことは○○の証言からも明らか」「その使命が終了した後に、時期は遅れてしまったが、一応熊本まで行って地元で関係者と協議をしている」「自分ひとりでわからないことは、当該担当役員を巻き込んで、なんとか対応しようとしている」などとつぶさに検討したうえで、「やむをえなかった」と評価されております。こういったところに、この報告書のスゴミがありまして、逆に「責任が重い」とされる方々の評価の説得力を増しているように思えます。

残念なのは社外監査役さんの存在が薄いことであります。おそらく2名以上の社外監査役さんがいらっしゃると思いますが、この報告書では何も触れられておりません。常勤監査役さんが社長さんに対して、もしくは取締役会において「異常な兆候」を言い出せない理由があるのであれば、なぜ代わりに社外監査役さんが言えなかったのか?社外監査役ですから、社長さんと喧嘩して「あんた、やめなはれ」と言われてもいいわけでして、そのための社外監査役ではないのか、と素直に思います。常勤監査役さんは社外監査役の方々と、この不正会計の疑惑発見時にどのような協議をされたのか・・・、とても興味がわくところであります。

もうひとつが社外取締役さんのことです。こちらも(最近は)いらっしゃったようですが、報告書のなかでは社外取締役さんのことについては触れられておりません。担当外の役員さん方が、自分たちの担当のことで精一杯で、水産飼料事業部の過剰在庫のことについて無関心だったことが報告書で指摘されていますが、それであれば非業務執行取締役の役割はどうだったのか?そもそも社外取締役には不正疑惑追及など期待しても無駄、というのが前提なのでしょうか?再発防止策のなかにも全く社外取締役さんのことについては触れておられないので、こちらも少し違和感を持った次第であります。

まだまだ書きたいことが山ほどありますが、もうすこし精読したうえで(もっと発見できることがいっぱいありそうですので)、先日のシニアコミュニケーション同様、別の論稿で詳細に自説を述べてみたいと思っております。

8月 30, 2010 独立第三者委員会 | | コメント (5) | トラックバック (1)

2010年7月 7日 (水)

企業不祥事発生時の第三者委員会は「70点主義」でいいのでは?

「第三者委員会」につきましては、企業価値判断の公正性を確保するために設置されるものと、不祥事発生時の事実認定の客観性を確保するために設置されるものがありますが、本日は後者のお話であります。中央経済社の「ビジネス法務」7月号でも特集が組まれており、昨今ホットな話題となった「不祥事発生時の第三者委員会」でありますが、昨日ある業界団体の会合に招かれまして、「第三者委員会とは?」といった講演を約2時間ほどさせていただきました。

同業者の方もチラホラといらっしゃいましたが、お越しになっておられた方々はほとんどが企業法務関連の方(企業内弁護士含む)でした。私は不祥事発生時の第三者委員の経験はありますが、それよりも第三者委員会の支援業務とか、社内調査委員会の支援業務のほうが貴重な経験をさせていただきましたので、守秘義務に反しない範囲で、そういった委員会活動と企業側サイドとの接点で生じる出来事を中心にお話させていただきました。

講演というよりも、終了後の約3時間に及ぶ酒席のほうで皆さまからの(ホンネの)質問をたくさん受けました。概ね、以下のようなご質問が多かったようです。

「なんで委員の人に不利益な事実を話さないといけないのですか?委員は我々の味方ですか?」

「社内規則には何も書いてないのに、不利益なことを話して会社から処分を受けたら、委員の人は責任とってくれるのですか?」

「さっき『事実認定は委員の自由心証』っておっしゃてましたけど、灰色は『クロ』ということもありうるわけですか?それで処分されたらたまったものではないですよ。それだったら誰もホントのことを言わないですよ。」

マスコミ報道が先行して設置された第三者委員会の場合には、バックに行政調査や(ときには)司法捜査の可能性が控えておりますので、比較的社員の方々はまじめにヒアリングに対応していただけることが多いのでありますが、マスコミ報道以前から設置されている第三者委員会のケースでは、たしかに上記のような反応によって、ヒアリングがうまくいなないケースもあるわけでして、なかなか難問であります。なかにはアメリカ州弁護士の資格をお持ちの方もいらっしゃって、「委員は、社員の味方ではないのだったら、まず『私はあなたの味方ではありません。だから不利益なことは黙秘してもかまわない』と明確に述べるべき。そうでなかったら陳述書の信用性はないのでは?」「社員ヒアリングの際には、会社の費用で、委員とは別の弁護士を雇用して、ヒアリングへの対応を相談させる制度を作るべきではないか」といったご意見も出ておりました。

Cocolog_oekaki_2010_07_06_22_23 そもそも第三者委員会は不祥事を起こした企業のステークホルダーのために説明責任を尽くすことが大きな目的ということでありまして、決して企業に満足のいくような活動がなされるとは限らないわけであります。上図のとおり、第三者委員会は、外観的な独立性を確保しつつも、短時間のうちに、事実の解明や原因究明、再発防止策の提言など、その設置目的を達成しなければならない使命を有しております。しかし、これらの要請はいずれも「あちらを立てれば、こちらが立たず」というトレードオフの関係にあるわけでして、どれも満足させることは困難であります。要はこの3つの要請をいかにバランスよく調和させて、最終結論に至るか・・・というところの決断が必要になってまいります。決定して実行する・・ほどの時間的な余裕はなく、いわば決断して断行する、というプロセスであります。(だからこそ、委員の自由心証は確保される必要があります)

これは個人的な見解でありますが、私がいくつかの報告書をみてきたなかで、「これは素晴らしい委員会報告書だなぁ」と感心したものがございます。後日、そういった会社のコンプライアンス研修にお招きいただき、報告書作成の経緯などをお聞きするのでありますが、その「すばらしい」報告書は、素案の一部を社内のごく一部の方が中心となって作成した、といったケースが見受けられます。「このままでは会社がダメになってしまう」という危機意識を持って、ときどき幹部の方のなかに第三者委員会の活動に協力していただける方がいらっしゃいます。そういった方が、なかなか首尾よく進まない委員会活動に業を煮やして「そんなんじゃダメですよ。本当の原因はこうなんです!」と委員に進言するそうであります。たとえば第三者委員会の委員長からすれば、こういった社員の話に耳を傾け、委員としてのプライドをすこしだけ引っ込めて、この幹部社員の意見を尊重する・・・といったあたりでうまく委員会も機能するのではないでしょうか。(とんでもない!とのご意見もあるかもしれませんが、的外れ、ツッコミ不足の委員会報告書が作成されることも事実なわけでして)

最近の「第三者委員会はかくあるべし」といった論稿などを拝見しておりますと、世間の信頼を確保するためには、委員の活動は100点満点でなければならない・・・といった風潮を感じるのでありますが、(これまたご異論の出るところだとは思いますが)先の図で示したような「委員会活動の宿命」や、良質な委員会報告書が作成される実例などからしますと、私は100点中70点くらいの最低合格点を目指すほうが、ベターなのではなかろうか、と感じるところであります。

7月 7, 2010 独立第三者委員会 | | コメント (5) | トラックバック (0)

2010年4月 9日 (金)

富士通の混乱と日弁連「第三者委員会ガイドライン」

富士通社の元社長の方が、株主代表訴訟(提訴請求)および取締役らに対する損害賠償請求訴訟の準備をされている、との報道が各局からなされております。法廷闘争となる状況のようでありますが、そのなかでご自身が辞任に至る経緯につき、外部委員から構成される第三者委員会で調査するよう、富士通社に要請されたそうであります。(たとえば毎日新聞ニュースはこちら)何も不祥事が発生していなければ問題はないのでありますが、富士通社側としましても、例の不適切な開示がありましたので、たしかにステークホルダーとしては辞任劇に関する更なる情報開示、しかも公正な立場で調査を行った結果についての報告を聞きたい、と考えるところも合理的な理由があるように思えます。

ところで、とも先生のブログでもお書きになっておられますので、私のブログでも少しばかりご紹介いたしますと、このほど日弁連では企業不祥事発生時に構成されます「外部第三者委員会」の指針(第三者委員会ガイドライン)がほぼまとまりまして、日弁連の関係各委員会における意見聴取の段階にまで来ております。昨年来、新聞でも何度か報じられているとおり、弁護士によって構成される「第三者委員会」の報告内容が、本当に独立公正な立場で調査されているのかどうか疑問・・・との声が世情聞かれるところであります。これではせっかく企業が立ち直るために委員会を設置したにもかかわらず、なにやらグレーなイメージだけが残ってしまうことから、本来の第三者委員会のあり方を指針として明示すべきではないか、ということで策定されてきた経緯がございます。私も関係委員会のPT副座長を務めております関係から、今週この「ガイドライン案」が回ってきまして、内容を拝見させていただきました。また来週月曜日にはこのガイドライン案に関する意見とりまとめの関係で日弁連の業務改革委員会における緊急電話会議が開催されます。

ところで、このガイドライン案を拝見しての感想でありますが、とも先生を含め、著名な企業法務弁護士の方々が作成された「ガイドライン」に沿った第三者委員会が、この富士通社の外部第三者委員会として調査にあたったとしたら・・・・・・・・・・なかなかスゴイことになるのではないか、と予想いたします。(^^;  純粋に元社長の方が辞任されるまでの事実経過だけを調査対象とするのであれば特に問題ではないと思いますが、たとえば辞任を迫った原因となるニフティ社売却の関係当事者の件などにも調査が及ぶとなりますと、反社会的勢力に該当する個人もしくは法人が存在したのか、もしくは当該個人または法人が反社会的勢力であると信じるに足りる合理的な理由があるのか、といったあたりまで調査の対象になってしまうのではないでしょうか。もちろん、報告書が誰を対象として開示されるのか、という点は課題として残りそうですが、それでも紛争当事者に調査結果が公表されますと、おそらくどちらかの当事者から結果がマスコミへ流れるでしょうから、やはり影響はかなり大きなものとなるはずであります。ステークホルダーがいったい何を知りたいのか・・・ということを詰めていきますと、やはり今回の富士通の混乱問題では、反社会的勢力の関与の有無、ということになるのではないかと。

まだガイドライン案の内容をここで申し上げるわけにもいきませんが、示されるガイドラインは「ベスト・プラクティス」でありますし、比較的柔軟なものとして公表される予定だそうであります。しかしながら個人的な意見としてはおおいにツッコミドコロ満載でありまして、来週月曜日の電話会議でも、多くの疑問点を指摘させていただきたいと思っております。ただガイドライン案の「前文」に、たいへん興味ある言葉が登場してまいりまして、(たぶん消されることはないと思いますが)弁護士の業務としては初めて「リスク・アプローチ」という表現が用いられ、従来の弁護士業務と異質な面が多いことが指摘されております。これは大いに賛同するところであり、迅速性が要求されるなかでの事実認定の困難さを克服するうえでのメルクマールになるのではないかと考えております。毎度申し上げるところでありますが、独立性や事実認定の正確性をあまりにも強調しますと、迅速性に欠ける結果となり、あまり迅速性ばかりに目を向けますと、報告書の信頼性に疑問が生じるわけでして、このトレードオフの関係についてどこで折り合いをつけるか・・・というあたりがムズカシイ課題ではないかと思います。なによりも「普段の弁護士業務とはかなり異質なもの」であることを正面から認めたうえでのガイドラインであることを高く評価いたします。今後は、このガイドラインに沿った形での第三者委員会を、不祥事を発生させた企業が(社会的な責任として)受け入れる「度胸」に期待したいところであります。

4月 9, 2010 独立第三者委員会 | | コメント (3) | トラックバック (0)

2010年2月27日 (土)

「社外委員会」委員推薦制度が始まります。

本日(2月27日)の日経新聞朝刊記事にありましたように、大阪弁護士会と日本公認会計士協会近畿会は、3月より企業不祥事発覚時や買収防衛策導入時、MBO(マネージメントバイアウト)のTOB賛否表明時等における「第三者委員」候補者を、対象企業に推薦するための名簿作りを開始することとなりました。(会計士協会近畿会会長、大阪弁護士会会長によるリリースがあるまで、ブログでのご紹介は控えておりました。)

私もこの制度の運営責任者でありますが、すでに名簿登録希望者の方々への研修講座も終了し、報道にもありますように、会計士・弁護士合わせて100名近くの名簿登録希望者がいらっしゃいます。(私は運営側の人間ですので、名簿登録はいたしません)ちなみに昨年12月、名簿登録希望者対象の研修講師を務めさせていただきましたが、関西でも企業法務に精通しておられる著名な先生方がたくさんお見えになっておられましたし、すでに何度も社外委員を経験されておられる方もたくさん受講されておりました。したがいまして、(人的な面での)受入体制はほぼ整っております。

完全に独立した「第三者委員会委員」としての要請にも、また社内調査の支援の要請にも応えられるものとして設計しております。不適切な会計処理に関する調査活動、ということであれば、具体的に不正の存否が不明確でな段階でも、その調査活動への派遣ということも可能かと思われます。原則は弁護士・会計士ペア(人数等は事件内容によって検討)ということでありますが、金融庁所管ではない事例、たとえば性能偽装や産地偽装、地方自治体における不正などにつきましては、弁護士だけの派遣ということも考えられます。(逆に会計士委員だけの派遣というのもあるでしょうね)

若干の心配がふたつほどございます。(これはあくまでも、個人的な心配事です)ひとつは、弁護士のスタンスであります。同業者の方からすれば「何をえらそうに言うとんねん」とおしかりを受けそうでありますが、「お金をもらいながら、公正・独立の立場で企業と向き合う」「職業的懐疑心をもって臨む」という経験は、おそらく弁護士には著しく不足しているものと思います。会計士の皆様は、監督官庁のもとで(いろいろと疑問はあるかもしれませんが)独立公正な立場で監査業務を履行しているわけですし(いわゆる「外観的独立性」)、また職業的懐疑心をもって被監査企業と向き合っておられます。また、監査法人内においても、厳しい品質管理というフィルターにもかけられます。おそらく企業経営者との意見対立の場面におけるリスク管理の手法も、これまでの仕事の中から身につけておられることと推察されます。しかし弁護士は企業、経営者の利益のために最善を尽くす・・・という習性が「パブロフの犬」のごとく身にしみついております。「社会正義の実現」というのも、違法行為を勧める場合を除き、依頼者への最大の尽力を通じて寄与するものというのが一般的な認識であります。したがいまして、企業の短期的な利益を超えて、投資者や株主、消費者、地域住民、被害者などのステークホルダーの利益をまず第一に考えるべき「社外委員」としてのスタンスを、どれほど意識できるのか、(私も含めて)不安を感じるところであります。たとえば私自身、性能偽装事件に関する社外委員の経験からすれば、その報告書の中身次第で回収すべき対象製品の範囲が大きく異なるわけでして、大げさではなく、企業の存亡にかかわる場面も想定されます。

そしてもうひとつの心配は、弁護士事務所や監査法人と、委員との関係であります。つまり法律事務所が顧問をしている、監査法人が監査・コンサルタントをしている、という企業からの依頼があった場合(連結グループを含めて)、その法律事務所、監査法人に所属もしくは出身の弁護士・会計士は委員に就任できないか?という点であります。もっというと、過去に多額の報酬をもらったことがある企業への当該法律事務所出身委員の就任をどう考えるべきか、ということであります。(ちなみに法律事務所にはローテーション制度もなく、顧問法律事務所における担当弁護士の交代・・・ということも考えられません)ここで重要なことは、第三者に信頼される報告書意見が書けることでありますから、外観的な独立性については厳格に考えるべきではないか、というのが私見であります。ただ、ここをあまり厳格に考えてしまうと、過去に不正調査や企業価値判断に関与した弁護士の確保が困難となり、企業法務やコンプライアンスに精通した弁護士・会計士の供給源が著しく狭められてしまって、本来の実効性に問題が生じるのではないか、という弊害であります。(このあたりの運用はまた弁護士会、会計士協会のほうで最終決定されるものと思いますが)

さて、こういった不安を払しょくするために、現在日弁連では「第三者委員ガイドライン」の策定が進んでおります。こちらは東京のコンプライアンス法務で有名な先生方が中心となり、弁護士として委員に就任した場合の職務対応のベストプラクティスが描かれているように聞き及んでおります。我々としては、こういったガイドラインに期待しています。アメリカでは第三者委員会報告の信頼性が高く、現実の司法制度のなかでも、認定事実がそのまま活用されるケースもあるようですが、たとえそこまではいかなくても、ステークホルダーや当局に信頼される委員会運営が実現できるよう、制度運営に努めていきたいと思っております。運営上「守秘義務」が絡むため、今後は本ブログで具体的なお話はできませんが、依頼される企業や企業をとりまく利害関係者のための有用な制度として、活用例が増えるように努めていきたいですね。なお、関西の経済団体さんを通して、企業の皆様方にも、こういった制度が開始されることを広報させていただく予定にしております。「うちの会社は無関係」などとおっしゃらずに、クライシス・マネジメントの一環として、法務ご担当者だけでなく、経営トップの方々にもご関心いただけますよう、お願いいたします。

2月 27, 2010 独立第三者委員会 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年12月 1日 (火)

第三者委員会における弁護士と会計士の「意見相違」

IFRSの日本語版が発売される(された?)そうですね。2009年1月1日基準が約11カ月遅れでの発売・・・ということのようですが、売れるでしょうね。しかも原書よりも安い!そうですので、出版社の方々も「これは売れる」と見込んでの値付けなのでしょうか(^^; 以下本題です。

上場会社において会計不正事件が発生した場合に、事実調査や原因究明を目的として社外有識者による第三者委員会が設置されることが最近は多くなりました。拙い経験談ではありますが、不肖私が大阪弁護士会におきまして、来週「第三者委員会の業務」について同業者の方々向けに講演をさせていただくのでありますが、昨年かなり大きな会計不正事件が発生した某会社の第三者委員を務められた会計士の方から(本日)少しばかり参考意見を聞かせていただきました。

会計士の先生曰く

「いや~、やりづらかったです。第三者委員会の委員長は○○弁護士だったんですけど、不正の事実を特定するのに、ちょこっと証拠を集めて『これでよし!』ってことでして。なんでもっといろんな証拠を集めないのだろうか?って、ホントにこれで大丈夫なのかって、ヒヤヒヤしましたよ。弁護士さんて、みなさんあんな感じで心配にならないのでしょうかね?」

最近法律雑誌や会計雑誌で不正リスクマネジメントに関する特集が組まれたりしておりまして、そのなかで必ずこの「第三者委員会の設置・運営」あたりも経験者の方々によるガイダンスが紹介されております。とくに会計士さんの論稿などを拝見しておりますと、この「弁護士委員と会計士委員との意見の食い違いが発生して、迅速な意見形成を阻害する場合がある」と書かれております。ただ、その「食い違い」がどのような問題に関するものなのか、またどうして食い違いが発生するのか、その解消方法はどうするのか、といったあたりに具体的に踏み込んだものは見当たらないようです。

単純に使用される用語の慣用方法の違い(たとえば「調書」という言葉の持つ意味など)に起因するケースもあるかもしれませんが、私の経験からすれば、先の会計士さんの疑問に近いところに原因があるのではないか、と考えております。要は「不正」に対するアプローチの違いによるところが大きいのではないでしょうか。つまり「不正」を事実とみるのか、可能性とみるのか、というところであります。

弁護士は裁判を前提として事実を見る習性をもっており、絶対的真実主義を基礎としております。たとえば準備書面で「真実はこうだった」と主張して、これを証拠によって裏付けて、相手方よりも説得的な訴訟活動を展開しようとします。(刑事も民事も基本的にこれは同じです)したがいまして、「不正」は立証すべき事実であり、仮説を立てて、その仮説が正しいことを証拠によって証明することに尽力します。「不正がないこと」の証明という概念は原則としてありえません。いっぽう会計士は(とくに会計監査に従事する会計士さんは)投資家に対して有用な情報を提供するに足りる程度の真実、つまり相対的真実主義を基礎としております。そこで「不正」を認定するのは事実を確定するためではなく、財務報告に重大な虚偽記載が含まれている可能性を探るためであります。つまり虚偽記載リスクを一定程度に低減するために、不正調査が行われるわけですから、そこでは事実を確定することよりも、不正が行われた可能性が低いことを証憑をもって保証するこそ重要な業務になるものと思われます。したがって「不正がないことの可能性」を探る証明・・・という概念はあり得るはずであります。

そこで両者の思考過程に差が生じることになります。「不正」を事実と捉える弁護士は、その仮説を真実であると説得するだけの証拠が必要になりますから、証拠価値を問題とします。直接証拠や間接証拠、伝聞証拠など、証拠一つ一つの証明力には差がありますので、もし証拠価値の高いものが発見されたり、ヒアリングで入手できた場合には、その証拠をもって「不正」の立証が十分と考えることにも説得力(合理性)があるものと思われます。いっぽう、「不正」を財務報告に重要な虚偽記載のある可能性と捉える会計士は、投資家のために一定レベルの真実性を保証する、という観点から、たとえば「不正がないことの70%の可能性」に執着される傾向があります。その70%の保証レベルに到達するためには「1 ○○がないこと」「2 △△がないこと」「3 ××が存在すること」といったテーマを決めて、この1から3がそろわない限りは「不正がないとは言えない」という結論に導かれます。これは実態監査ではなく、情報監査を前提として監査をされておられる方々の習性ではないでしょうか。打ち消しの積み重ねによって、ある程度の心証を固める思考過程であれば、同じ証拠を弁護士と会計士が評価しても、弁護士にとっては「証拠価値が高いのでこれで足りる」と思われるものでも、会計士にとっては不正がないことに関する心証形成のための一つの証憑にすぎない、といった結果となってしまうように思われます。

弁護士委員が小さいことにこだわるのも、その小さいことが「不正事実」を立証するためには大きな証明力を持つからであります。しかし、重要な虚偽記載の可能性、という視点からすれば、「重要性の原則」に照らせば「小さいこと」は特に問題として採り上げるほどのこともないのかもしれません。ちょっと問題をデフォルメしすぎたきらいもあるかもしれませんが、委員間の意見相違の解決方法は、たとえば弁護士と会計士の「不正」に対するアプローチを認識し、それぞれの思考方法に(なかなか理解し合えない)差があることを真摯に尊重し合うところから見出すことができるのではないか、と考えております。

12月 1, 2009 独立第三者委員会 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年7月29日 (水)

上場会社取締役・監査役必読!(フタバ産業・社外委員会報告書)

(7月29日午前 追記あり)

先日、「第三者委員会VS金融庁なる構図」というエントリーを書きましたが、そこでの議論がふっとんでしまうほどの報告書を目にしました。フタバ産業社の不正会計事件につきまして、責任追及委員会が報告書を提出し、同社のwebページにて公開されております。

7月28日付け責任追及委員会答申について

例のシャルレの社外第三者委員会報告書を拝読したときと同じほどの感動を覚えました。(ただし結論への賛否は別として、でありますが・・・)会計不正に係る内部統制構築義務違反の有無を論じる前提となる事実の認定、そして法的判断・・・。もちろんこの委員会の結論については賛否さまざまだと思いますが、おそらく旧経営陣は、この報告書によって多額の損害賠償請求訴訟を提起されることとなるかもしれません。上場企業の役員(取締役および監査役)の皆様、また法務、経理、総務スタッフの皆様方も是非本答申をご一読いただき、会計不正を防止するための内部統制構築義務とはどのようなものか、それぞれの会社でご議論されてはいかがでしょうか。つい先日出されました日本システム技術最高裁判決なども参考にしながら、また内部統制報告制度の実務の検証などとも関連させながら、検討してみると有益かもしれません。(とりいそぎ、備忘録程度にて失礼します)

PS 本日(7月28日)金融庁よりフタバ産業社に対して1800万円余りの課徴金納付命令が発令されましたが、こうやって課徴金の金額を眺めてみると、東証の上場制度違約金1000万円が大きな数字に見えてきました。(課徴金算定には違約金制度はなんら考慮されないのですね)

(7月29日 追記)朝日新聞ニュースで知りましたが、カブドットコム証券の社外調査委員会の報告書もインサイダー取引防止体制の構築・・という意味で、なかなかスゴイです。まだ全部を読む時間がありませんので、内容についてはコメントできませんが・・・

7月 29, 2009 独立第三者委員会 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2008年3月13日 (木)

買収防衛策を撤廃することの是非

すでに新聞報道されているとおり、私が独立委員会の委員をしております日本オプティカル社は、平成18年より2年間継続しておりました事前警告型買収防衛策(ライツ・プラン)を廃止すること(正確には、3月の株主総会において継続に関する議案を上程しないこと)を決議いたしました。おそらく300社を超える買収防衛策を導入する上場企業のなかでは、平時に廃止決定(非継続決定)するのは初めてではないでしょうか。(きちんと調べたわけではございませんが。なお、廃止に至った理由につきましては、3月10日付の開示情報のとおりであります。→買収防衛策「事前警告型ライツプラン」の非継続に関するお知らせ)(注-ニッセン社のほうが先に非継続を公表しているようですので、はじめてではないようであります 4月21日追記)

決議に至る意思形成過程につきまして、ここで詳細を述べることは控えますが、リリースのとおり、独立委員会としても継続、非継続に関する意見をそれぞれ申し上げ、法務アドバイザー事務所の意見なども参考にして、最終的には日本オプ社の取締役会で判断したような次第であります。「イマドキの独立第三者委員会」シリーズのエントリーにも書きましたように、独立委員会はけっこうマジメに「この会社の企業価値を守ること」の意味を勉強してきましたし、ブルドックソースの最高裁決定が出されたときにも、急遽委員会を招集して、法務アドバイザーの法律事務所も交えて有事の対応策(あくまでも手続のみであります)なども検討しておりました。

事前警告型の買収防衛策の有効性につきましては、ご専門の先生方の見解なども拝聴し、私自身も認めるところであります。うまく活用できれば企業価値を毀損するような非効率な支配権移転を排除できることを否定するものでもございません。しかしながら、以前からもこのブログで申し上げているとおり、買収防衛策の導入(および継続)にあたっては、その二面性については十分な配慮が必要だと(現在でも)考えております。ひとつは、もちろん裁判で勝てる「建て付け」をどうするか、というものでありますが、もうひとつは、株主、一般投資家、ステークホルダーからみて、防衛策を導入していることがどう映るか・・・という開示(説明責任)に関する点であります。

本日の日経ヴェリタスの記事「買収防衛策への冷たい視線」、昨日の日経朝刊「経済教室」におけるU教授のご意見、また先週3月6日の同じく日経「経済教室」のT代表(全国社外取締役ネットワーク)のご意見、そして旬刊商事法務3月5日号「買収防衛策導入の業績情報効果」などを拝見しますと、買収防衛策の見直しが求められたり、過渡的なものであると評価されたり、また防衛策導入が企業パフォーマンスに及ぼす経済的影響度が検証されたりしております。こういった最近の傾向からみても、先の二面性につきましては、バランスよく配慮する必要があると思いますし、企業のおかれた経営環境や経営方針からみれば、「いったん導入はしたものの、その後の経営環境が変わったので廃止した」という選択も経営判断としては十分ありえるのではないか、と考えております。もちろん、今年の株主総会で新たに導入する上場企業もあるでしょうし、その効用は認めるところではありますが、すべての企業にとって、等しく導入の必要性が認められるわけではなく、業界全体の経営環境や、当該企業の成長過程の度合い、将来の収益見込みに及ぼす不確定要素の有無、その他株主構成や資本政策、従業員が防衛策導入をどうみているか、などを十分検討のうえで、導入(継続)の是非を検討するべきではないか、と私個人としては思う次第であります。

※なお、上記エントリーは個別企業の業績予想や新たな重要事実を含むものではなく、あくまでも過去の決定事実に対する管理人の個人的意見を開示したにすぎません。したがいまして、個別企業発行に係る金融商品への投資判断にあたりましては自己責任でお願いいたします。

3月 13, 2008 独立第三者委員会 | | コメント (7) | トラックバック (0)

2008年2月18日 (月)

イマドキの独立第三者委員会(その3)

サッポロHDは、事前警告型買収防衛ルールの改訂版を次回定時総会(3月29日)に提案するとリリースしております。(2月15日付けリリース)最も大きな修正点は、これまでの防衛ルールでは独立委員会(いわゆる独立第三者委員会)が発動の可否など、対応に関する重要な意見を述べた場合には、これを取締役会は最大限尊重したうえで決定する、とされておりました。しかしながら、この改訂版によりますと、来る3月29日の定時株主総会におきまして、社外取締役を一人追加したうえで(つまり社外取締役は合計3名)、本対応方針に係る重要な判断を決定する取締役会決議を行う場合には、出席社外取締役のうち、3分の2以上の可決を要するもの、とされるようであります。つまり防衛策発動を是とする場合も、非とする場合にも、社外取締役の3分の2以上の同意を要することになるわけでして、サッポロHD社の説明によれば「これまで以上に防衛策の透明性を高めたもの」とのこと。(ただし、リリースによれば、すでに大量取得報告書を受領している件については、現行の防衛策ルールが適用される、との附則があるようです。また、これまでどおり、独立委員会の勧告を最大限尊重して決議する、との点も変更はないようです。)

もちろん、こういった防衛策改訂版は、そもそも社外取締役がおそらく3名以上程度は存在しなければ、成り立たない(といいますかリスクが大きい)ように思いますが、いっぽうで社外取締役の存在を、単なる社外の有識者の意見を経営に採り入れる、というだけの意味ではなく、一般株主の代弁者として位置づけているとするならば、3名(社外取締役、社外監査役、有識者)で構成される独立第三者委員会の存在価値はどこにあるのでしょうか?これまでよりも、ずいぶんと独立委員会の位置づけが後退しているようにも思えるのでありますが。アクティビストファンドからの突然の大量買付行為に備えて、当該ファンドが濫用的買収者であるかどうか、といった点だけを独立委員会が判断するのであればまだしも、先日の意見書にもありますように、アクティビストファンドか競業他社かにかかわらず、支配権移転が株主共同利益の向上に資するものかどうか、といった点を判断するのであれば、社外取締役の判断尊重の姿勢だけで十分であると考えられるのでありますが、いかがでしょうか。

また、サッポロHD社の「新経営構想」のなかでは、2008年から2009年へ向けての構想としては以下のとおり記述されております。

b.戦略的提携の実施
事業の競争優位性をスピーディかつ大規模に構築していくために、グループ企業単独での事業運営にこだわらず、当グループが保有する強みの拡大や機能の補完、ノウハウの取得などができる有力なパートナーとの戦略的提携を推進します。

 <3>サッポログループ経営計画2008年-2009年(抜粋)

b. 強みを活かした事業展開と収益基盤の強化
様々な変化の中でも安定的な収益を確保できる、強固な事業基盤を構築します。そのために、収益構造改革をスピードを上げて実施します。

(5)戦略投資の基本的考え方
  経営計画2008-2009では、累計450億円の戦略投資、350億円の金融負債削減を実施いたします。
特に、戦略投資につきましては、各事業での高付加価値化への事業構造改革やM&A、不動産事業での新規物件取得等などで活用し、企業価値の向上を目指します。

ファンドや競業他社から買収を仕掛けられたときには、現経営陣として、これに賛同するかどうか、もしくは反対を表明して代替案を提示するか、ということを判断するために、買収防衛ルールをもって熟慮期間を設ける意味があるとは思うのでありますが、さて、自社が戦略的に他社を買収していく場面において、こういった防衛ルールの存在は足枷にならないのでしょうか?競争力を向上させるためには、どこの企業も戦略的にスピードを上げてM&Aを活用することも検討しているところではないかと思うのですが、他社の支配権を取得する際には、株主共同利益に資するかどうかを慎重に判断したり、他社側にも慎重な熟慮期間を設定したりする必要はないのでしょうか。(もちろん、友好的か敵対的かの違いはあるでしょうけど、必要な情報が揃った時点からでも最大90日間程度は熟慮期間がありますし)もちろん、友好的買収の場合には情報の偏在化もありませんし、他社を買収する場合には、「自社の支配権のあり方に関する基本方針」とは無関係だともいえそうでありますが、最終的には友好的買収であっても、交渉当初は敵対的な買収交渉、ということもありえるわけでして、そのような場合に自社への買収には厳格なルールを用意しながら、他社買収は事前警告型買収防衛ルールがない場合には、力づくで交渉する、ということにはどうも「公正な第三者」たる独立委員会の委員には納得できないようにも思われます。

2月 18, 2008 独立第三者委員会 | | コメント (4) | トラックバック (0)

2008年2月 6日 (水)

イマドキの独立第三者委員会(その2)

(2月6日午前 追記あります)

新聞等でも報道されておりますとおり、SPJSF(スティールパートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンド 以下「SP」といいます)が昨年2月15日に買収提案を行っていた案件につきまして、サッポロHDの特別委員会の意見書が2月4日、サッポロHDの取締役会に提出されたようであります。( 「当社株券等の大規模買付行為への対応方針」に基づく特別委員会からの意見書受領について)ちなみに、この手続は「当社株券等の大規模買付行為への対応方針」に則ったものであります。

この特別委員会の意見書の内容につきましては、いろいろとご議論のあるところでしょうし、そもそも特別委員会がどの程度、防衛策の適法性に影響を及ぼすものであるかは未知数の部分が多いわけでありますが、先のルールによりますと、サッポロHDは取締役会としての対応を決定するにあたり「特別委員会の勧告を最大限尊重したうえで」判断することとなっております。「勧告」というからには、①防衛策を発動すべきである、②防衛策は発動すべきではない、③発動の是非については委員会としては結論が出なかったので、勧告は控える、の3つしか結論はないと考えられます。しかしながら、今回の意見書を読みますと、「(SPによる支配権取得は)株主共同利益を著しく毀損するおそれは大きい」といった意見のみであり、いわゆる「勧告」はどこにも見当たりません。これはなぜなんでしょうか?

以前イマドキの独立第三者委員会(1)でも記載しましたが、私が独立委員を務める会社の委員会(もちろん平時の委員会)が開催された折、独立委員会は「勧告」を行うにあたっては、防衛策が発動された場合の買付株主や既存株主の損害がどの程度か(つまり取締役会は発動にあたって金銭的補償行為を行うのかどうか)、あらかじめ知っておかないと、発動のインパクトがわからないために自分たちの損害賠償リスクが把握できないのではないか、といった議論がありました。独立委員会の活動が法的に意味がある、と考えるのであれば、それは逆に株主等からの損害賠償リスクも背負うということを意味するように思われます。こういったところで思い悩みますと、このサッポロHDの特別委員会のように、勧告はしないけど意見だけは表明するから、あとは取締役会で判断してください・・・と言いたくなるのも理解できそうであります。ただ、私はそもそも独立第三者委員会の正当性は(株主より1年の有効期限を付加されている)事前警告型防衛ルールにしか依拠していない存在でありますので(もちろん、裁判規範という視点からでの判断であり、機関投資家等による株主評価という視点では存在意義はあるものと考えております)、その権限は謙抑的に行使されるべきであり、粛々とルールに則ってその職責をまっとうすべきと考えております。したがって、濫用目的かどうかを判断せよ、というルールであればそのルールのとおり、また「勧告せよ」とあれば明確に勧告を行うのが独立第三者委員会の職務だと認識しております。

委員の方々は、やはり特別委員会がひょっとして背負わなければならないリスクに思いをはせて、「勧告」なる言葉を差し控えられたのでしょうか。でも、そうなりますと、取締役会としては「最大限尊重すべき」前提がなくなってしまうようにも思えますが・・・・・

(PS)こちらのニュースにおける特別委員会の委員長さんの記者会見内容によりますと、「防衛策発動要件については正当性は具備しているが、相当性は防衛策の中身次第だ」といった趣旨の発言をされておられるようです。なるほど、まだ取締役会特別委員会のほうでは、どういった防衛策となるのかは(判明していないので)わからない、ということかもしれませんね。つまり、現段階ではまだ「勧告」はできない、といった判断ではないかと思うのでありますが。(追記;このあたりの記述にはご異論のある方もいらっしゃるようですので、コメント欄をご覧ください)

(2月6日午前;追記)taka-mojitoさん、辰のお年ごさん、katsuさん、コメントありがとうございます。批判されるかもしれませんが、できるだけ冷静かつ客観的な続編をアップしたいと思います。(ただ、このドリームチームの委員会のおひとりは、私が所属している某団体のボスですよね・・・・汗。まぁ、個人的な意見ということでご容赦いただきたく。。coldsweats01 )

また、katsuさんと英国弁護士(英国系事務所の日本の弁護士)のtaka-mojitoさんが、私のエントリーとは比べ物にならないほど(こういうのを無料で読めるのがブログのいいところ 笑)秀逸な関連のエントリーをリリースされておりますので、TBからご覧いただければと。実は私も、この意見書を読みながら、カブドットコム証券の独立委員会意見書を思い起こしておりました。磯崎さんが委員だから・・・というわけではまったくありませんが、(委員会としては賛同も反対の意思も表明しない、でしたっけ?)あれはかなりおもしろかった記憶があります。(時間がなくて、記憶だけに頼った意見です。)

2月 6, 2008 独立第三者委員会 | | コメント (4) | トラックバック (2)

2007年9月21日 (金)

イマドキの独立第三者委員会

9月19日に名古屋の某会社にて、事前警告型買収防衛ルールにおける独立委員会の正式会合に出席してまいりました。社外監査役(某上場企業の役員の方)、東京の会計士資格を有する財務コンサルタント会社の社長さん、そして私の3名構成なんですが、委員会の要請で防衛策を設計した法律事務所の方にもお越しいただきました。会社との委任契約上、委員会での内容はあまり詳しくは書けませんが、やはりみなさん、ブルドック最高裁決定や、原審、原々審の内容など、けっこうよく勉強されていて、独立委員会の位置づけだけでなく、そもそもの防衛策の建てつけについてもご意見をお持ちのようであります。

2時間ばかりの会議だったんですが、「望ましい独立委員会のあり方」というのも、どうやら最低でも3つくらいの視点によって違った形になりますね。ひとつは、そもそも全体の防衛策スキームが違法と判断されないための独立委員会とは?といった視点、ふたつめは機関投資家や議決権行使助言会社からみて望ましいと判断される独立委員会とは?といった視点、そして三つめはといいますと株主や第三者から損害賠償責任を負わないような活動をする独立委員会とは?といった視点であります。とくに三つめにつきましては、そもそも取締役会からの諮問によって活動する委員会であって、どんな結論(勧告)を出したって株主や第三者に責任を負担しないでいいのではないの?といった考え方もあろうかとは思いますが、よく考えてみますと、平時の防衛ルールには有事における取締役会の行動が記載されておりませんので、有事の際、独立委員会はおそらく具体的な取締役会の執行予定(たとえば防衛策発動の場合には、買収者の経済的損失をどの程度補完する予定なのかとか)を聞く場面が出てくると思いますし、発動を勧告する場合には多くの会社資産が流出することを容認するわけですよね。長期的にみれば、これは株主共同利益を守るための手段であるともいえそうですが、短期的にみてこれは損害賠償責任を負担しないでもいい、といった保証はあるのかどうか、ちょっと不明であります。社外監査役さんなんかも、こういった独立委員会の委員として就任されているケースも多いとは思うのですが、これは社外監査役の職務との関係って、どうなんでしょうか?独立委員としての職務は、社外監査役の職務とまったく別個と考えていいのでしょうか、それとも通常の社外監査役の職務のひとつである、と考えるべきなんでしょうか?(独立性といったことからは前者のように考えるのが望ましいとは思うのですが、実質をみれば後者のように思われます)いずれにしましても、この「独立第三者委員会」のあり方については、問題ごとに、先のどの視点からみたらどんな方法が適切なのか、問題意識を共有しながら検討したほうが妥当なように思います。

以前、買収防衛策・独立第三者委員会の役割とは? のエントリーでも書きましたが、ホントこの委員会って、防衛策発動の場面における違法適法の判断といった視点からみた場合、一生懸命職務をまっとうするわりには「司法判断においてはほとんど影響なし」とみなされる存在なのかもしれません。先日ご紹介したとおり、会社法立案担当者のA澤さん曰く

「社外の独立性のある者の判断といったところで、しょせん取締役から依頼を受けた者の判断ですし、株主総会で選任された者でもなく、その者自体、適切な判断をする保証もなく、会社法上の責任を負うものでもないわけですから、そのような者の判断が法的な意味があるわけではありません」(商事法務1807号29ページ)

とまで、軽視(無視?)されてしまっている存在ですから、せめて株主の代弁者といいますか、透明性、公正性にふさわしい人選と活動が要求されてしかるべきなんでしょうね。昨日の独立委員会では、こういったところをけっこうまじめに議論しておりました。(ほかにも課税関係とか、事業価値評価の視点なども検討されましたが)また、防衛策を見直すのかどうかはわかりませんが、今後発動の場面では株主総会にかならず提案するのか、それとも取締役会決議で発動できるものとするかのよっても、独立第三者委員会の活動内容も異なってくるのではないか・・・といった疑問も出ておりました。まぁ、だいたい年間3回程度、こういった委員会を開催する程度がよろしいんじゃないでしょうか。

9月 21, 2007 独立第三者委員会 | | コメント (4) | トラックバック (0)

2007年6月30日 (土)

買収防衛策・独立第三者委員会の役割とは?

日本公認会計士協会近畿会に所属する4名の公認会計士の方々が、大手監査法人に対する懲戒処分を求める文書を金融庁に発送した・・・といったニュースはちょっとビックリですし、かなり関心あるんですけど、内容が内容だけに、おそらく会計士さん方のブログでは話題にならないでしょうね(^^;;

さて、昨日はブルドック新株予約権・仮処分命令事件の東京地裁決定につきまして、速報版をエントリーいたしましたところ、親切な方より「決定書パーフェクト版」を頂戴しまして、その決定の全貌を読ませていただきました。(本当にどうもありがとうございました。ちなみに「会社法であそぼ」の葉玉先生は、すでに昨日時点で全文を熟読されていらっしゃったようですね。葉玉先生の昨日のエントリーは圧巻です。)昨日のエントリーにコメントをつけていただいたnonomuraさんが指摘されているように、この東京地裁鹿子木決定と、即時抗告審における高裁決定(7月4日までに出るんでしょうか、それとも割当確定日までには出るということなんでしょうか)とは、かなり内容が異なる可能性もあると思いますので、M&Aのご専門家の方々の意見は最終決着がついてから・・・ということになるものと思われます。でもやっぱり部外者としては、この鹿子木決定が出るのを楽しみにしておりましたので、ワクワクしながら拝読いたしました。このブログのスタンスに忠実に、社外役員や独立第三者委員会委員の立場からみた地裁決定についての感想だけ述べさせていただきます。

1 グリーンメイラー≠濫用的買収者?

私自身がよく理解していないのかもしれませんが、このたびは「防衛策導入」ではなくて「防衛策発動」といった、世界でもあまり例のない事態における適法性が議論されているわけでありますが、公開買付者がグリーンメイラーであれば、緊急避難的に取締役会決議をもって発動できる、というのが(発動の場面においても)一般的な理論だと思われます。しかしながら、このたびの決定理由では、買付者による経営支配権の取得が対象企業の企業価値ひいては株主共同利益を損なうおそれがある場合の買付者のことを「濫用的買収者」とみなしている、と理解してよろしいのでしょうか?このように二段階で考える理由としましては、後述するとおり、この地裁決定では一般投資家保護の要請からくる「株主のTOBに応じるかどうか選択する機会の確保」と「株主が株主総会において議決権の行使という形で株主の選択権の行使の機会を確保」することを区別しているからであります。つまり、グリーンメイラーほど明確に会社に損害を与える買収者とはいえないけれども、どんな経営をするのか、株主からみて不安になるような買収者であれば、その買収自体にノーと言える判断権が最終的には株主総会にある、ということではないかと思われます。だからこそ、「そもそも特別決議がとれるような総会承認が得られるのであれば、TOBは成立しないはずであるから、防衛策は不要ではないのか」といった疑問も生じるところではありますが、TOBに応じるかどうかの株主の機会確保の要請と、株主共同の利益確保のための株主権行使の機会確保の要請とは違うんだ・・・といった理由で反論可能になってくるのではないでしょうか。こう考えますと、防衛策発動といった場面を前提とした場合には、取締役会で判断すべきグリーンメイラー性判断、株主総会で判断すべき濫用的買収者性判断、そしてTOBで株主個人が判断すべき企業価値判断といった分類が検討されることになるのでしょうかね。

2 「濫用的買収者」の判断について

事前警告型の防衛策を導入している上場企業はたくさんあると思われますし、そのなかでも諮問機関として「独立第三者委員会」を設置している企業も多いはずです。そして、その第三者委員会は公開買付希望者(交渉ルールにしたがって交渉に入った段階)が濫用的買収者に該当するかどうかの意見を求められるパターンが多いのではないでしょうか。(実は私が第三者委員に就任している企業さんもそうであります)この仕組みについては、今後も維持すべきかどうか、一度じっくり考えたほうがよさそうな気がいたします。すくなくとも導入を支援された大手渉外法律事務所さんや、信託銀行さんとご相談されたほうがいいのではないでしょうか。(私も相談してみようと思っております)この東京地裁決定を読んでの感想としましては、「濫用的買収者に該当するかどうか」といったあたりは、防衛策発動の可否が問われる場面において防衛側にとってハードルがかなり高いように思えます。昨年の王子・北越事件におきまして、北越側の第三者委員会が、王子製紙側のルール違反を捉えて濫用的買収者とみなして、発動勧告を決定したことがございましたが、今回の東京地裁決定が、スティールをグリーンメイラーとしては認定できないとしていることからみましても、安易に防衛側企業の判断として「濫用的買収者」であることを主張立証することは困難であって、(たとえ導入時点で株主総会の承認を得た防衛策であったとしましても)第三者委員会の認定に重きを置いて防衛策を発動する・・・といった手法にはリスクがかなりともなうように思いました。そういたしますと、わざわざ独立第三者委員会を設置しても、「濫用的買収者」であるかどうかだけを判断させる・・・という仕組みについては、若干論点がずれているように感じられますし、リスクに対する対応方法としてはイマイチ有効性に乏しいように思えます。たとえば「濫用的買収者」に該当するかどうかでスクリーニングして、該当する場合には即発動、そうでない場合には株主総会にかけて定款変更→発動容認(もしくは発動容認のみ)、といった手法の場合、濫用的買収者該当即発動のパターンにはかなりハイリスクなものを感じます。とくにこのたびの東京地裁決定では、新株予約権の無償割当というスキーム自体が「株主平等原則」の適用ありとされ、差別的行使条件が平等原則違反にならないための要件として「特別決議」の存在が大きくとりあげられておりますので、たとえ独立第三者委員会がどのような意見を述べたとしても、特別決議による発動承認を得るほうがリスクは少ないといえそうであります。

3 独立第三者委員会は不要か?

それでは、独立第三者委員会は不要なんでしょうか?このたびの東京地裁決定における「株主総会特別決議重視」の判断の解釈につきましては、今後M&Aの専門家の方々の意見も分かれるものと思います。また、私自身いろいろな解釈が成り立つような気がします。私がこの東京地裁決定のなかでもっとも重要と思える部分は、先に述べた防衛策のスキームが平等原則違反の例外的要件に該当する基本的ルールを掲示したことと、決定書の28ページから30ページあたりに記載された敵対的買収防衛ルールにおける証券取引法規制と会社法規制の接点の調和に関する考え方にあるのではないかと思います。投資家保護の観点からの情報開示ルール(公開買付届出書の記載事項とか、意見表明報告書とか、対質問回答報告書とか)による株主による公開買付に応じるかどうかといった選択権行使の機会確保と、株主による株主総会における議決権行使という形での選択権行使の機会確保とを、この決定は見事に切り分けて論じております。この地裁判断は合理性の高い見解だと思いました。たとえば事前の情報開示ルールや、企業価値判断に関する信頼性の高い情報提供ルールが整備されているのであれば、一般株主による総会における議決権行使という形での選択機会確保の要請は弱まるでしょうし、逆に整備されていないということであれば議決権行使による選択権確保の要請は高まる(つまり「総会における特別決議重視」となる)のではないかと思われます。そして、どのあたりに調和点を見出すか、ということにつきましては、結局のところ会社法の構造(権限分配論、株主平等原則、特別決議による少数意見の排除など)をどう理解するかとか、日本における株主と取締役との信認関係をどう考えるか、といったあたりの判断者の主観によるところが大きいのではないでしょうか。(このあたり、紛争当事者としましては、裁判所がいったいどのようなところに調和点を見いだそうとしているのか、といったことをきちんと抑えることが肝要ではないかと。)ここからは単なる私見にすぎませんが、究極を「株主による価値判断」に求めるとしましても、その株主の判断には価値判断のための情報アクセスの機会が必要ですし、またその開示情報は「信頼性の高い情報」でなければなりません。(また株主の判断が著しく不公正にならないような手続も必要だと思われます)とりあえず、現状の証券取引法における開示ルールや、事前警告型防衛策の交渉ルールが「単なる企業価値の比較による優劣だけでなく、企業価値を毀損するおそれの有無」まで信頼できる情報を提供できるものではない以上は、やはり公正中立な独立第三者委員会による情報開示が「株主総会における総会決議の妥当性」を担保する重要な要素のひとつにはなりうるのではないかと思います。つまり株主がTOBに応じるかどうかの選択権を行使するための情報提供と、株主総会で株主の総意としてその議決権を行使するための情報提供のいずれにおいても、独立第三者委員会がその助言を行うことで、株主総会における判断の合理性を支える要因になるのではないか、と考えております。(もうすこし具体的な内容はまた追って検討したいと思います。また決定全体まで踏み込んで感想を述べられるほどの実力はございませんので、あしからず)

6月 30, 2007 独立第三者委員会 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年5月31日 (木)

独立第三者委員会の構成

(業務中に備忘録として記載しておりますので、内容がラフな点をお許しください。誤記がありましたら、追って訂正いたします)

(追記)コメントをいただいております「けんけん」さんの訂正箇所にご留意ください。

読売だけが報じているようですが、昨日(5月30日)の企業価値研究会(経済産業省)の会合において、敵対的買収防衛策の発動について判断する「独立第三者委員会」のルール作りについて審議されたようです。(読売新聞ニュースはこちら)そのなかで、判断の中立性を確保するためには社外取締役は構成委員としてはふさわしくない、といった基準が示される可能性のあることが報じられています。そのほかに、検討対象としては、経営者側に近い立場として、社外監査役、取引先、顧問弁護士なども含まれているとのことで、「独立第三者委員会」の委員の属性問題だけでなく、広く企業意思決定に関与する立場の人たちの「利益相反問題への対応」にも突っ込んだ議論に発展する可能性があるのではないでしょうか。(といいますか、私個人がそういった議論の発展に期待している・・・とも言えそうですが)

そういえば、総合メディカル社は、4月中旬に導入したばかりの買収防衛プランについて、昨日(5月30日「独立第三者委員会委員変更のお知らせ」を開示しておられました。導入時の独立第三者委員会委員の構成は、大株主先(おそらく取引先)経営陣から2名、弁護士1名といった構成でしたが、このたびは独立性を配慮して、大株主企業からの2名の方は退かれて、弁護士さんはそのまま留任、新たに公認会計士さん1名ほか、公正性に疑義が出ない企業から現役監査役をされている方1名が就任されたようです。私の記憶では、議決権行使助言会社であるISS社やグラスルイス社などのインタビュー記事(商事法務)では、それほど独立第三者委員会の構成員の属性についてはうるさくおっしゃっていなかったように思いましたので、「たいした問題ではないのかな」と思っていたのですが、企業価値研究会のほうで問題として採り上げられていたんですね。300社以上の防衛策導入企業のうち、85%程度は第三者委員会が構成されている、ということなんで、また今後いろいろな動きがあるかもしれません。(ちなみに、私も某企業において就任しておりますが、完全に独立性のある委員として就任しております・・・(^^; )

5月 31, 2007 独立第三者委員会 | | コメント (5) | トラックバック (0)