フジテレビ問題-第三者委員会が調査しやすい環境をまず作りましょう
TBSホールディングスは、本日、ラジオのパーソナリティを長く務めていた著名なフリーアナウンサーの方の降板を発表しました。同社の人権方針に合致しないコンプライアンス違反が認められたため、とのこと。2023年10月に「SMILE-UP(旧ジャニーズ事務所)性加害問題-TBSの調査対応を高く評価する」でも書きましたが、TBSは旧ジャニーズ事務所事件のときも民放キー局のなかで一番厳しい姿勢でした。「問題発生は止められないが、発覚したら自浄作用を発揮する」、おそらくこれがTBSの企業風土の現れだと思うのです。今回のフジテレビの問題は、私から見ると「どこの企業でも起きうる問題」です。コンプライアンス担当者からすれば「コンプライアンス室長は蚊帳の外だった」(社員説明会の発言より)といった事実に悲しくなるかもしれませんが、これが現実です。
さて、本日(1月27日)フジテレビ経営陣による記者会見が行われ(本エントリー作成時、8時間半経過してまだ続いていますが)、一部ではありますが10分遅れのライブ配信を視聴いたしました。これで信頼回復に至ったとは思えませんが、質疑を聴いていて、これだけ世間の注目を浴びる事件の第三者委員会はさぞや仕事がやりにくいだろうなぁとため息が出ました。記者会見が始まって3時間40分が経過したころ、関係者から重大な発言がありました(その後撤回されました)が、そういった内容についても出てしまった以上は第三者委員会の調査対象になるのかもしれず、ホントにたいへんな調査になりそうです。この超ロングラン会見の内容も頭に入れなければならないわけでして。
まず、すでに申し上げておりますが、3月末までに調査を終える・・・というのはかなりむずかしいのではないかと。現場で何が起きていたのか、そこにフジテレビの社員がどのように関与していたのか、といった、いわゆる「一次不祥事」のみであればなんとか3月末までに調査を終えることも可能かもしれませんが、そこに加害者とされる男性タレントの類似案件(別のタレントも出てくるかも?)の調査や、委員補佐ではなく委員自身によるヒアリングが求められる(ガバナンスや内部統制に関する)経営陣へのヒアリングを加えると、おそらく5月の連休明けくらいまでは調査が続くのではないかと思います。委員会のほうから「3月末をめどに」との話が出たということですが、フジテレビ側としても、ステークホルダー側としても、ものすごく3月末終了には期待をしていると思うので、たいへんですね。
つぎにこれだけフジテレビ(及び親会社の)相談役取締役の方の進退問題が話題になっているので、委員会としてもなんらかの(経営責任に関する)提言を出す必要はありそうですね。相談役の方は記者会見に出席はされませんでしたが、せめて「相談役の進退についても、社外役員も含めた我々が(第三者委員会の意見を踏まえて)検討します」との回答は欲しかった。ご自分でなんとか検討されるでしょう・・・では、やはり「ああ、これからも企業風土は変わらないのだな」という印象だけが残ります。相談役の方の経営責任について、どのような結論になろうとも第三者委員会としての理由を述べることが必要ですね。
さて、ここからが大問題ですが、本日の会見では、調査報告を待たずに一定の再発防止策は実践したい、とのこと。たしかに多くのスポンサー企業がCM自粛となっていますので早期の信頼回復のために手を尽くしたい気持ちはわかります。ただ、そうなると第三者委員会の再発防止策提言と、先行する企業の再発防止策との整合性をどうするか。企業主導の再発防止策を評価しつつ、あらためて別途再発防止策を提言するのでしょうか。ここは工夫が必要です。
さらに、こんなに世間の話題になった事件の「日弁連ガイドラインに準拠した第三者委員会」というのは経験があまりないのですが、間違いなく今後も小学館(たとえばポストセブン)、集英社(オンライン)、文藝春秋社(週刊文春)との情報収集合戦に第三者委員会は巻き込まれる可能性があるわけで、そこで第三者委員会は勝てるのか?これは私も経験がないのでわかりません(捜査機関や行政庁との調査協働の経験はありますが)。調査委員会の認定事実が(取材能力に長けた)週刊誌記事でひっくり返るようなことがあれば、第三者委員会の信用性だけでなくフジテレビの信用回復にも影響が出ますね。
いずれにしても、会社側もステークホルダー側も、これから第三者委員会の調査が始まるというのに、それ以外のところでフジテレビの問題点を洗い出したり、関係者の経営責任を追及したり、といったかなり深刻な雰囲気が漂っています(ACジャパンの広告にもあるとおり「決めつけ刑事(デカ)」は避けるべきです)とりあえず、まずは冷静に第三者委員会の調査が(当初の)予定どおりの期限で終了できるよう、万全の環境を作ることが最優先と感じた次第です。どうか関係者の皆様、第三者委員会が日弁連ガイドラインに沿った調査を実践できるよう、協力をしていただけないでしょうか。