2010年11月22日 (月)

とりあえず争う?金融庁による課徴金納付命令への企業の対応

Konnahoumuja001_2 先週土曜日のエントリーに引き続きまして、本日も金融規制におけるエンフォースメントに関するお話であります。先週金曜日に参加いたしました「ふしぎな開示研究会」でも話題になっておりましたのが、「最近、課徴金納付命令の勧告を受けた企業が、審判で争う事例が増えているのではないか?」というもの。たしかに金融庁HP「審判手続状況一覧」によりますと、有価証券報告書虚偽記載事件、インサイダー取引事件等におきまして審判で課徴金処分を争う事例が続いているようであります。しかしながら、近時の審判事件では、味の素インサイダー事件及びビックカメラ元会長虚偽記載事件が多数回の審判手続を経ていたにもかかわらず、このたびの一連の審判事件では、ほぼ1回で終結しているようであります。

私は審判手続の当事者でもございませんので、本当に推測の域を出ませんが、ひょっとすると「とりあえず争っておこう」とお考えになって、審判手続を進行させる企業が増えているのではないでしょうか。この「とりあえず」といいますのは、後日、会社役員に対してなんらかの賠償請求が求められる場合の抗弁をきちんと立てられるように・・・・・、というのがホンネではないか、と(いえ、本当に勝手な推測でございますが・・・)。

今年9月のエントリー「闘うコンプライアンス(課徴金は払うけど)」では、法人としてのビックカメラさんが審判で課徴金納付命令の勧告について何ら争わずに、後日(被告役員のために)補助参加した株主代表訴訟で「課徴金は素直に払ったけれども、虚偽記載であることまで認めたわけではない」といった苦しい主張をしておられることを伝えましたが、上でご紹介しております畑中鐡丸弁護士の「こんな法務じゃ会社がつぶれる-最新ビジネスロー問題を5分で解決」(第一法規952円税別)におきましても、同様の見解が述べられております。(「課徴金納付命令審判手続はとりあえず争っておくべし」115頁以下)この本の中で、畑中先生は、有価証券報告書虚偽記載事件に関連するIHI株主代表訴訟を例に挙げておられ、IHI社が有価証券報告書虚偽記載事件ではなんら争うことなく課徴金を支払ったにもかかわらず、株主から代表訴訟によって厳格な責任追及を受けるや、「たしかに課徴金は払ったけれども、ミスを認めたわけではない」と、苦しい主張を強いられていることをみて、どんなに状況が不利であっても、認めてしまったら後日、株主からの賠償請求訴訟でやられ放題になってしまう、法令違反の事実を不利に援用されてしまえば後の祭り・・・・・と述べておられます。(私は畑中先生は存じ上げておりませんが、この本は多くのブログですでに紹介されております。コンプライアンス問題を中心に、最新のビジネスローに関連する話題なども豊富に掲載されており、私としましては非常に重宝しているものであります・・・)

後日提起されるかもしれない、役員への株主代表訴訟を考えますと、(たとえ負け筋であったとしても)課徴金処分について審判で争う、という事例も、今後ひょっとしたら増えてくるかもしれません。

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2008年12月11日 (木)

金融庁版リーニエンシーは市場の健全化に機能するか?

本日、仕事の打ち合わせのために某証券会社の大阪支店に伺いましたが、窓口は騒然としておりました。タンス株預入期限が迫っているとのことで、特定口座開設について予約制になっているにもかかわらず、ご高齢者の方々や知人付き添い、といった方々がひっきりなしに訪れ、社員の方はみな対応に忙殺されておりました。「騒然」としているのは、高齢者の方々へ窓口担当者の方がみなさん大声で話しておられるからであります。各ブースともテラーの方々が大声でお話になるわけでして、金商法上の説明義務を尽くす・・・というのも、単に丁寧に説明する、というだけでなく、相手が理解しているのを確認しながら説明する、ということなんでしょうね。特定口座開設まで含めますと、タンス株券の受領手続終了まで最短でも約30分を要しますので、これはもうほとんど証券会社の「社会貢献活動」のひとつではないかと思います。約2週間前から、この異常な状況が始まった、とのこと。タンス株のまま特別口座で保管されるものも、おそらくこの状況ですと、ずいぶんと多いのではないでしょうか。

さて、株券電子化のお話とは関係ありませんが、いよいよ12月12日より、改正金融商品取引法が施行されますが、金融機関以外の一般の上場企業の皆様にもご留意いただきたいのが「課徴金減算制度の開始」であります。金融商品取引法の改正によりまして、課徴金の金額(水準)が引き上げられたり、適用範囲が広くなる分、もし当局が調査を開始する以前に、自社における違法事実についてSESC(証券取引等監視委員会)に報告した場合には、課徴金が半額になる・・・という制度であります。本日、SESCより違法事実報告手続についての開示がなされておりますので、ご参照ください。不当利得的発想による制度とはいえ、課徴金納付命令が発令される、というのも企業の社会的評価を低下させるものでありますので、企業自身の自主的な報告によって、これをできるだけ防止する意味もありますし、またこういった制度ができることで平時におけるリスク管理体制(内部統制システム)の構築を促進するのではないか・・・といった期待がこめられております。(法人の場合、報告書には代表者の印鑑が必要ですから、内部告発的な報告制度ではないようです)また、インサイダー取引についても、規制範囲が不明確なために「うっかりインサイダー」問題なども議論されているところなので、政令による軽微基準の設定とともに、こういった柔軟な対応が期待されているのではないでしょうか。

ご承知のとおり、独禁法上のリニエンシー(自主申告制度)は、当初の予想に反して(?)、談合、カルテル摘発に大きな成果を上げており、つい最近の17年ぶりのカルテル事件の刑事訴追についてもこの制度が活用されております。(自主申告したJFE鋼板は告発されませんでしたよね)しかしながら、共犯関係の摘発(証拠収集の容易化)が想定されている独禁法の場面と、自身の違反事実だけを申告する金商法の場面とでは、自主申告に対するインセンティブに大きな違いがあると思いますし、そもそも「早く自主申告しないと、ほかのところが申告してしまうのではないか」といった競争状態も予定されておりません。さらに、違反行為を繰り返していた法人について課徴金の減算が適用されるのは「最後の違反行為だけ」という、非常に効果限定的なものであります。ということで、果たしてこういった金商法上のリニエンシーが今後機能するのだろうか、といった素朴な疑問が湧いてきます。

これは単なる私見でありますが、この課徴金減算制度がインサイダー取引や粉飾決算の抑止的効果を発揮するためには、現実問題として二つの前提条件が必要ではないかと思います。ひとつは課徴金処分の「制裁的意味合い」が濃くなることでありまして、これは課徴金の法的性格が「制裁的」なものである、ということだけはなく、違反事実に対する社会的非難の度合いが強いものとなったり、また課徴金処分を受けることで株主より損害賠償請求訴訟を提起される、といった事案が増えるなど、社会的制裁の意味合いが強く、これを回避することが企業のリスク管理として強く要請されるようになることであります。そしてもうひとつは、この違反事実の報告を行うことによって、独禁法リニエンシー同様、刑事処分への影響度がどの程度か?という点であります。自社株売買インサイダーや粉飾決算(有価証券報告書虚偽記載)など、課徴金処分と刑事罰が交錯する場面におきましては、現状として悪質なものは刑事告発、それに至らないものは課徴金(厳密にはいろいろと区別方法には問題はあるでしょうが)といった判断基準によって振り分けられているものと思料いたします。(ここは学問的には異論のあるところだとは思いますが、実務上ではこのように言えると考えます)もちろん、条文のどこにも違反事実を事前に報告した場合には刑事処分を減免する、などといったことが書かれておりませんし、そんなことは当局の方々も一切公言されないと思いますが、現に同様の状況において独禁法リニエンシーでは自主申告した法人(もしくは個人)に対する不起訴(もしくは告発せず)といった事案が出てきております。これと同様、課徴金減算制度のための報告を行ったことにより、法人もしくは個人の刑事訴追に事実上影響を及ぼす(ような気がする?)といった運用がとられるとすれば、それなりに金商法リニエンシーが機能する場面も出てくるのではないか、と思います。

PS:ところでここだけの話ですが、金融商品取引法の著名な学者さん(日本の第一人者)のブログって、あったんですね。。。RSS登録されている方が極端に少ないので、まだあまり知られていないブログじゃないでしょうか。でも、けっこう頻繁に更新されていらっしゃって、とても勉強になります。「商事法務の座談会での発言、まちがってましたァ(^^;」みたいな内容もあったりして。ホントは引用させていただきたいのですが、まだ面識もございませんし、気分を害されたらアレなんで、皆様方、お時間のあるときにでもお探しいただければ・・・・・・と。(しかし、こんな偉い方がブログ書いてて、私なんかが楽しそうに書いてていいのでしょうか?すいません、中途半端な内容で・・・笑)

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2007年11月 9日 (金)

金商法上の課徴金に加算・減免制度導入か?

(せっかくアワードにノミネートされているにもかかわらず、またマニアックなお話で恐縮です。。。)今年の6月に金融商品取引法上の課徴金引き上げに関するエントリー(課徴金引き上げにより法廷闘争勃発? )を記述しておりますが、8日深夜の日経ニュースによりますと、いよいよ金融庁が金商法上の課徴金制度について加算・減免制の導入を検討するようであります。(課徴金に加算・減免制 金融庁検討) 

そもそも金融商品取引法上の課徴金制度とはどういうことかと申しますと、インサイダー取引や、相場操縦、有価証券虚偽記載などの不正な行為が個人もしくは法人に認められる場合、もちろん金商法には刑事罰も用意されているわけでありますが、刑事罰を課すよりも柔軟かつ迅速に行政処分で対応することで監督官庁の限りある資源を有効に活用し、「資本市場の安心、信頼」を確保していこう、といった制度であります。(ちなみに独占禁止法上の課徴金は昭和52年から適用されておりますので、金商法上のものよりも歴史はかなり古いですし、審判手続きによる救済の歴史もあります)ところでこの課徴金は、そもそも刑事罰ではありませんので、「制裁的な意味」で課してしまいますと憲法39条(二重起訴禁止)に反するおそれがある、ということで、①ペナルティというよりも不当な利得分の返還ということで対応する、②行政機関は、要件該当事例には、裁量の幅がない(つまり法で算定根拠を示して、その法律どおりの金額を徴収する)、③だからこそ、虚偽記載やインサイダーについては対象者の故意過失にこだわらない(うっかりミスでインサイダーやっちゃった、とか、まちがって有価証券報告書に虚偽の数字を書いちゃった、のような場合でも課徴金処分の対象となる)ということだったわけであります。平成16年の証券取引法改正によって課徴金制度が導入されて以来、先日のカッパクリエイト社の社員に対する課徴金納付命令勧告で27件目となりましたが、これまで一件も課徴金納付命令に対する反論の答弁書が提出されたことはなく、実質的な審判手続で納付命令が争われる事案というものは見当たりません。(著名なのは、あの日興コーディアルに対する5億円の課徴金納付命令ですよね)証券取引等監視委員会には、専門の部署(課徴金調査・開示課)がありますので、そちらで非常に多数の案件が調査の対象になっております。刑事手続きのように調査に厳格なデュープロセスが要求されませんし、独禁法上の課徴金制度のような実質的証拠法則も適用されませんので、金融庁としては争われても、自主規制機関や証券会社の協力をバンバン促して、証拠はそろえ放題・・・ということにもなりそうであります。

こういった運用がそろそろ見直しの時期に来ておりまして(衆参両議院における改正証券取引法附帯決議)、資本市場の信頼確保のためには課徴金をもっと制裁としての意味で使っていこう、という意見が多数を占めているようであります。したがいまして、こういった「加算・減免」制度の導入も時代の流れではあろうかと思います。(最近のニュースはこちらです。東大や明治大学の著名な刑事法学者の先生方も、憲法39条違反にはあたらない、行政比例原則さえきちんと適合していれば問題はない)とのお考えのようですので、おそらくこのまま加算・減免制度は導入されていくのではないかと思います。また、証券取引関連に詳しい著名な学者の先生方も、市場の公正性、透明性確保のためには、課徴金制度はドンドン使うべし・・・との意見が多いわけですから、こういったユルユルの運用への流れは止められないのが現実ではないかと思います。(そういえば、改正公認会計士法の31条の2におきましても、課徴金は会計士報酬相当額の1.5倍を徴収できるとされておりますので、すでに行政制裁的な発想は金融庁にはあるようです)

しかしこの加算・減免制度といったものが、これまでのように課徴金納付命令の勧告に文句も言わずにしたがうということになりますと、上で述べましたように「ユルユル」の手続きであるがゆえに、運用面において法の支配に背反するおそれを孕んでしまう可能性が出てくるのではないでしょうか。(世間ではあまり心配されていませんけど・・・)行政制裁的な適用がなされるにもかかわらず、対象者の故意過失も厳格に審査されないままにペナルティを課されてしまう・・・というのはいかがなものでしょうか。ましてや、裁判所の判断を仰ぐことなく、行政が情状を酌量して重くしたり、軽くしたり、といった運用は果たして妥当なものと言えるのかどうか、少なくとも加算・減免制導入にあたって、現行の課徴金制度の骨格部分を変えていかなければ不当な行政裁量行為がまかりとおるように思います。また一方におきましては、「減免制」も導入されるということは、審判手続きのなかで、対象者側から減免事由を主張することも可能になってきますので、いままで使われてこなかった審判制度が利用されるインセンティブになるのかもしれません。ホントいままでは、「利益の吐き出し」といった運用であり、かつ行政裁量が否定されるところでの課徴金処分ということでしたので、それほど問題が表面化しなかったわけですが、課徴金納付命令を金融庁に勧告されること自体が、上場企業の社会的評価に大きな影響をもたらすのが日本の現状であるだけに、今後は法律家、自主規制機関、証券会社を含めて、独禁法上の課徴金制度の改革なども検証しながら十分協議していく必要があると考えております。(なお、日本公認会計士協会が、改正公認会計士法で制度化された課徴金制度の算定基準について、その具体化を定めた会計士法施行令のパブコメでおもしろい法解釈を展開しております。財務諸表監査と内部統制監査の報酬金額の合算分を課徴金算定の基礎とすることはけしからん、とのことでありますが、また時間のあるときにでもエントリーのなかで検討してみたいと思います)

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2007年10月27日 (土)

監視委員会事務局長氏の論文

(27日午前 追記あります)

ひさしぶりに素晴しい論文を読ませていただきました。ひとつ前の旬刊商事法務(合併号1812号)冒頭の「金融市場・市場監視当局の現状と今後の課題」であります。この論文の著者でいらっしゃる証券取引等監視委員会事務局長の内藤純一氏という方が、どのような方なのかはまったく存じ上げませんが、「秀逸」のひとことです。自分もこのような文章が書けたらなぁと(もちろん才能的に無理ですが・・・)思いますし、できれば一言一句をすべて暗誦できるようにして、このスタイルを盗みたいとも思うほどであります。論旨明解、長い論文の至るところに個人的意見が述べられているおもしろさ、構成の巧みさ、文章の美しさ、それらの結果から生まれる抜群の説得力・・・・・と、数え上げたらきりがありません。証券取引等監視委員会を取り巻く金融商品市場がどう変わろうとしているのか、そのなかで監視委員会はどういった組織であるべきか、どういった優先順位でなにを守ろうとしているのか、非常にわかりやすく意見が述べられております。私のような法律家が書く文章は他人様からツッコミを入れられてもだいじょうぶなように、「なお」「もっとも」「ただし」といった条件や例外を説明する接頭語のオンパレードとなってしまうことが多いのでありますが、この論文にはそのような「但し書き」が一切ありません。これが読みやすさの第一歩でありますし、著者の意見の説得力の裏づけではないかと思います。

上場企業におけるコンプライアンス経営、内部統制、開示統制などに興味をお持ちの方でしたら、(かなり長い論文ですが)ご一読をお勧めいたします。私も、この論文は何度も読み返すつもりであります。

(27日午前 追記)備忘録のような内容でありますが、NOVAのエントリーのコメント欄にも書かせていただきましたが、やはりJASDACはNOVAのような有償による新株予約権発行についても対応を早急に検討する方向のようであります(27日読売ニュース)。上記事務局長氏の論文でも新興企業向けの市場の対応についてのご意見が記載されており、新興企業自身が持つリスクの問題と、新興企業向けの市場の健全性を確保する問題とは「貯蓄から投資へ」といった観点からは全く別個であり、これを分けて検討する必要がある・・・と述べておられ、強く共感するところであります。金融庁ができること(プロ専用市場の創設も含めて)、取引所ができること、証券会社やVCができること、投資運用業者や助言業者ができること、そして自己責任の基礎になるもの、それぞれをどう分けて考えるか、こういったNOVAのような事案をもとに考えていきたいと思います。

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2007年6月11日 (月)

課徴金引上げにより法廷闘争勃発?

企業会計不正の抑止力として期待されている課徴金制度でありますが、来年の通常国会で金融商品取引法の改正を予定しており、そのなかで課徴金納付命令を課す「対象行為」の範囲を拡大し、さらに課徴金の納付額も大幅に引き上げる検討に入ることのようであります。(日経ニュースはこちら)独占禁止法の分野においてもまた、課徴金の引き上げを検討している、とのことでありまして(こちらは読売ニュース)、経済法の分野における行政処分(課徴金)制度の運用において今後いろいろと議論されるところが多くなりそうであります。とりわけ制裁的意味を含めた課徴金の納付額の問題と、課徴金の減免制度を細則化して、悪質な場合には金額を加重し、また軽微もしくは反省がみられる場合には金額を軽減させるといった課徴金制度の運用問題が焦点になるのではないでしょうか。

皆様もご存知のとおり、課徴金制度は原則として「違法な行為によって対象企業が不当に得た利益を返還させる」「見つかったら元に戻す」といった思想に基づいて運用されておりまして、「制裁的な意味合いは薄い」からこそ、刑事処分との二重処罰禁止をうたった憲法に違反しないとされている、と一般的には考えられております。(だからこそ、企業の故意過失を問題にすることなく「うっかり」インサイダー取引にも課徴金は課されるわけであります)しかしながら、現在検討されている課徴金制度の厳格化(虚偽開示などへの制裁的な意味合いをもった高額の課徴金制度)が実現することになりますと、①企業自身が経営者による会計不正によって実質的な損害を被ることになり、株主代表訴訟の対象となりやすくなる、②制裁的意味での課徴金制度ゆえに、処分が確定すると経営者個人の刑事罰が認められやすくなる、という意味で、証券取引等監視委員会や証券取引所における事実調査の内容が、これまで以上に対象企業の経営者にとって民事的にも刑事的にも影響度の高いものになることが推測されます。新たにTOBルール違反などにも課徴金が賦課される、といったことが検討されているようですので、おそらく金商法上もまた、独禁法上においても、課徴金納付命令に対する異議申し立てについては(経営者の保身という動機付けもあって)増加することになるでしょうし、その結果として裁判所において課徴金処分の取消を求める裁判も増えることになるのではないでしょうか。このあたりは、あまり検討されている文献等も見当たりませんが、これも立派なリーガルリスクの一種といえるでしょうし、リスク管理の一環としまして、今後刑事法学者の方々の意見なども交えながら議論されることになるのではと思います。

先日、企業法務における事実認定の困難さ、といったエントリーを立てまして、持論につきましては皆様方よりいろいろとご批判も頂戴いたしましたが、こういった課徴金制度のあり方も企業内における事実認定の問題ともまた、無縁ではないと思われます。経営者や法人に刑事罰が課される「犯罪事実」と課徴金が課されるべき「対象事実」とがいったい同じレベルの事実(認定事実)なのか、違うのか、といったことも問題でありましょうが、とりわけ対象企業のルール違反の悪質性によって課徴金が加重されたり、軽減(免除)されることがあるというわけですから、「悪質性を根拠付ける事実」や「悪質性を排除することを根拠付ける事実」の振り分けこそ、事実のあてはめの問題に属するものでありましても、そもそもそういった根拠事実の有無といったものをどうやって企業内で評価していけばいいのか、やはり考えてみますと意外にムズカシイ領域ではないかと思っております。(いろいろと考えておりますと、本当に課徴金引き上げといった制度改正が、経営者の会計不正を思いとどまらせるために効果的と言えるのか?といった根本的な疑問にも戻ってしまうかもしれませんが・・・)

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