2015年4月10日 (金)

「見える化」が進む会社法上の内部統制システムの基本方針

5月1日の改正会社法の施行(適用開始)を見据えて、そろそろ「内部統制システム基本方針の一部見直し」に関する適時開示が増えてきましたね。このたびの会社法改正(施行規則の改正)では、「行為規範」として内部統制システムの基本方針に関する決議義務(構築義務ではありません)がかなり増えましたので、どこも対応に追われている時期かと思います。上場子会社ともなると、「早く親会社のほうで見直しを決めてもらわないと、うちでも決められないよ」と気をもんでおられる会社もあるのではないかと(まぁ、5月1日以降でも可及的速やかに対処すれば問題ないはずですが・・・)。

各社の見直し後の基本方針を一覧しておりますと、「ひな型」どおり、というものではなく、どこも自社で相当の議論をしたうえで決定している様子がうかがわれます。企業集団としての内部統制、監査役監査の実効性確保のための体制、監査役への報告体制など、かなりバラエティに富んでいますので、各社の管理能力を把握するためには内部統制システムの基本方針をご一読されることをお勧めいたします。

会社法の改正点以外にも、情報管理や保存に関する体制、損失の危険の管理に関する体制などにおいても、マイナンバー制度の施行や不正競争防止法における企業秘密保護の厳格化、BCPの徹底など社会の要請に対応して工夫を凝らしておられる会社も多いようです。コーポレートガバナンス・コードとの関連性を見据えてということかもしれませんが、職務の効率性を確保するための体制として、執行と監督の分離や取締役会の権限委譲に関する条項を付加している会社も増えていますね。

その中で、個人的に一番関心があるのは監査環境の整備です。各社が監査役制度をどれほど重視しているのか(軽視しているのか)、この「見直し」を読むとよくわかりますね。しかし、ここまで監査役さんの監査環境が整備されてきますと(たとえば内部監査部門への指揮命令権、監査に必要な費用はほぼ全面的に監査役の言うとおりに出します等)、今後、粉飾等の不祥事が発生した場合に、監査役の善管注意義務のレベルも上がる(任務懈怠が認められやすくなる)のではないでしょうか?またこの点は別のエントリーで取り上げたいと思います。

少し意外だったのが、システムの運用状況の把握をどのようにするのか、という点に関する記述があまり見受けられない点です。もちろん会社法施行規則では「内部統制システムの運用状況」は事業報告に記載することになっていますので、運用チェックの方法自体が内部統制の整備に関する決議義務の対象とされているわけではありません。しかし、どこの会社もこれだけ立派な体制整備をされているわけですから、その運用状況をどのように把握して、説明されるのか、たいへん関心があります。たとえば東鉄工業さんの内部統制システム基本方針では、第10項において運用状況をチェックする方法(取締役会において定期的に「検証」が行われるそうです。スゴイですね!)が決議されており、このような記載が参考になるのではないでしょうか。

コーポレートガバナンスが「仕組み」だけでなく「運用」にも光があたる時代となり、内部統制も同様に運用状況に関心が向くようになりました。整備された内部統制システムの運用は、どのようにチェックされ、誰が責任をもって評価するのか、そのあたりは事業報告では記載されないことになっていますので、運用状況の概要に関する記述の信用性を高めるためにも、基本方針の中で記述することも一考かと思います。

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2014年3月17日 (月)

誠実な(まじめな)企業に向けられた消費者行政の本気度

すでにご承知の方もいらっしゃると思いますが、先週3月11日、消費者庁は景品表示法等の一部を改正する等の法律案を今国会に提出しています。3月14日には、同法案提出についての森担当大臣の所見が同庁HPにアップされています。以下、企業コンプライアンスとの関連でのみひとことだけ感想を述べておきます。

まずなんといっても、昨年12月26日の当ブログエントリーでも予想しておりましたとおり、景表法の改正では、第7条、第8条が大幅に改訂され、企業の内部統制に光があてられております。事業者には(商品やサービスの)表示等に係る適切な管理体制を整備することが義務つけられ、この体制整備に不備があれば助言・指導が行われ、それでも不備があれば「公表」というペナルティが課せられます。内部統制に問題があり、その結果として消費者に迷惑をかけたかどうかに関わらず、内部統制に不備があればペナルティを課されるとのこと。実際に迷惑をかけた場合には、「やり得は許さない」として課徴金処分が検討されるところですが、これはあと1年かけて検討し、必要な措置を講じる、とされています。

ここで重要なことは、景表法改正法案の中に、企業の自律的行動への期待が盛り込まれたことと同時に、消費者安全法の一部改正に関する法案も同時に提出されていることです。おじいちゃん、おばあちゃんに迷惑をかける不誠実な企業(フトドキ者企業)については情報管理を強化して(情報収集体制を強化して)、被害が現実化する前に徹底した事前規制を促進する、というもの。

つまり誠実な企業の不正については徹底した事後規制で、不誠実な企業の不正については徹底した事前規制で臨むという体制です。ちなみに景表法に基づく排除措置命令の発動権限を都道府県に付与し、また農水Gメンや証券取引等監視委員会も消費者のために動ける体制となるために、事後規制も徹底しています。まさに「消費者庁をなめるな!」体制の実現かと。

いくら調査活動が強化されたとしても、一般事業会社の商品・サービスの表示の適正性を調査機関が常に巡回して監視する、ということは不可能です。したがいまして、誠実な(まじめな)企業への規制においても(ピンポイントで対象企業を絞り込むための)消費者からの情報提供や消費者どうしの情報交換(SNSや風聞、噂)が活用されます。正確な情報であればあるほど、行政規制の実効性は高まりますので、消費者サイドにおいても商品やサービスを見分ける知見を高めておく必要があります。

森担当大臣の所見によると、今後は合理的な意思決定ができる消費者、市民社会の形成に寄与できる消費者の育成をめざす、とのこと。消費者教育等、消費者の自己責任の徹底を図ると同時に、誠実な企業と不誠実な企業を見分ける知見の向上についても施策が講じられることになりそうです。そうなりますと、誠実な企業の中で、不誠実な企業の仲間入りを果たすかどうかは、レピュテーションリスクを抱えるかどうか、つまり日頃からのコンプライアンス経営の徹底が問題となります。

まさに誠実な企業においては内部統制を整備し、これを運用できる実力が企業に問われるものであり、アベノミクスの成長戦略において、このような企業規制の手法は、金融庁や厚労省等の施策においても採用が目立ってきているのではないでしょうか。誠実な企業から不誠実な企業へと転落しないよう、社会の風を敏感に読みとる努力が必要だと思います。

「どうせ重大な不正に限っての対応でしょ?うちのようにリスク管理に金をかけている会社には関係ないでしょ」というお声が聞こえてきそうですが、安心はできないですよ。「おもてなし」が「偽装」へ、「視聴者への演出」が「やらせ番組」へ、そして適切な会計処理が「粉飾」へと変貌を遂げるのは、どれも競争社会における誠実な企業活動のなせるわざです。このたびの法改正が、名門企業の不祥事に端を発したものであることを肝に銘じておくべきです。知らず知らずのうちに、「気がついたら不祥事企業」になってしまうリスクこそ、経営トップが理解しておかねばならないものと考えています。

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2013年8月29日 (木)

「半沢直樹」から考える金融機関の内部統制(ご参考まで)

本日のエントリーは私が思いついたものではなく、ある方(某メガバンク出身)が某所でつぶやいておられたことを元に書かせていただいていることをご了解ください。すいません、ある方にはご了解をいただいておりませんので、「又聞き」ということでして、もちろん文責は私自身にあります。なお、先日の「破綻-バイオ企業・林原の真実」についても、数名の現役バンカーの方から有益なご意見をメールで頂戴しておりますが、こちらはちょっと公開するのは限界がありそうなので、また私の言葉に言い換えて別の機会にでもご紹介させていただきます。

いや、さすが名前が変わった(?)某メガバンクご出身の方だけあって、高視聴率「半沢直樹」を視ていても、私のようにドラマの展開にハラハラドキドキしている素人とは視方が違います(笑)。まずは半沢直樹を産業中央銀行(半沢が勤務する東京中央銀行は産業中央銀行と東京第一銀行が合併)に入行させてしまったことは旧産業中央銀行の人事部のミスである、とのご意見。

行内で不正を犯す人間の理由の第一位は「自分の人事考課に納得がいかない」というものだそうで、とりわけ銀行では「個人的な恨み」というものは内部統制上、極力回避しなければならないそうです。ドラマをご覧の方ならおわかりのとおり、半沢の父親は町工場を経営していて、融資を引き揚げられたことで父親が自殺をしてしまいます。しかしそうなりますと、その息子は入行させるべきではない、ということであり、父親が産業中央銀行と取引があったとなると、通常の銀行の事実調査からすると、容易にそのようなことはわかるそうです。なるほど。。。

次に、半沢直樹のドラマでは、合併前の産業中央銀行と東京第一銀行との間における派閥争いがとても派手に描かれているのですが、「あれは現実です」とのこと。支店長が産業中央なら副支店長は東京第一、その下の花形融資課長が産業中央なら、個人メインの取引課長は東京第一と、見事にたすき掛けが行われるのが通常であり、人事部はこのパズルを得意としなければやっていけないようです。内部告発を受領したことの行内報告書が第6話に出てきましたが、あの報告書にはたしか副支店長の印鑑がなく、課長と支店長の印鑑だけが押されていましたが、その方曰く「母体行が異なる副支店長には内密にしておきたかったのでは、と感じた」そうです。なるほど・・・さすが、そんなところまでリアルに描かれているとは(^^;;・・・・。派閥争いがないことが内部統制的には良いことなのですが、現実には派閥争いがあることが強烈なけん制機能となっているのが事実であり、「笑えない内部統制だったりする」そうです。

私なんかは、金融庁検査のような一大イベントがあれば、もう少し行内で一致団結するようになって派閥争いなど次第に解消されてしまうのではないか・・・などと考えるわけですが、まったく甘いのでしょうね。そういえば、これは別のある経営者の方からお聴きしたことですが、組織というものは、組織の信用を毀損するような大きな不祥事を隠すためには、誰かに無条件で責任をとらせる(辞めてもらう)といった小さな犠牲もやむをえない、ということで、組織の責任追及まで行く前に個人の責任追及で終わらせる、その際に派閥争いはとても役に立つそうです(こわ~(ToT)/)。最近多くの企業で「コンプライアンス部門」が法務部から切り離されて経営執行部直轄に移行している意味が少しわかってきたような気もします(汗)。

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