2007年8月 7日 (火)

TBS「不二家報道」に関するBPO報告書

(8月7日 午後追記あり)

放送倫理・番組向上機構(BPO)における放送倫理検証委員会が、例の『朝ズバッ!』における不二家報道の件で、委員会としてははじめての決定を出しております。(TBS「みのもんたの朝ズバッ!」不二家関連の2番組に関する見解)5月に不二家の信頼回復対策会議が審理申立を行い、6月8日に審理開始決定が出されておりましたので、約2ヶ月での決定ということになります。この委員会における審理目的が「国家権力による放送の自由侵害から、メディアを守るための自浄的作用を機能させること」や、最終的には一般視聴者が事実誤認に陥ることを防止することを目標としていることなどから、捏造かどうか、といったことへの委員会の見解にはいろいろと意見が分かれるところではないかと思いますが、文章や構成がとても上手ですし、25ページにわたる意見書の内容はたいへん参考になるところが多いと思います。

とりわけ一般企業の法務、コンプライアンス担当の方には、ぜひ一読されることをお勧めいたします。といいますのも、内部告発を受領した企業の対応策について考えさせられるところが大きいと思われます。たとえば内部通報制度に基づいて、企業の窓口が社員より不正事実の申告を受けたとき、その内容が真実であることをどうやって証拠によって担保していくか、証人的立場にある人物からの聞き取りについてはどのようにすればよいのか、窓口から事実認定者まで、中間に介在する人が多い場合、どのような結果になってしまうのか等、内部通報制度自体の運用方法などを考えさせられるところであります。また、今後は逆に、マスコミが内部告発によって察知した事実について、マスコミから真偽に関する意見を求められた場合、企業としてはどう対応したらいいのか、といったクライシスマネジメントのあり方についても示唆に富む内容であります。(参考となる記載がありますのは、11ページから14ページにかけての部分)

ただ、いくら再発防止策の提言がメインではないとしましても、TBSは10年前に坂本弁護士ビデオ問題を契機として「放送のこれからを考える会」を外部有識者を中心として立ち上げ、そこでは再生のための行動指針をうたっております。そこでは報道番組やワイドショーにおける取材ルールを確立したり、品性のある番組作りをこころがけること、放送や報道についての社会の問題提起に対し、説明責任があることを宣言されております。今回の不二家事件において、クレームから謝罪まで3ヶ月もの時間を要した点につきましては、どう説明されるのか、この10年前の行動指針では、今回のような場合にTBSはどのように対応することが要求されており、その要求にしたがって今回も行動されたのかどうか、行動したにもかかわらず、事実解明には合理的な限界があったのかどうか、まず説明をTBS側に求めることが先決ではないかと思うのでありますが、そのあたりについてはなんら触れられておりません。(ちなみに、10年前の坂本弁護士ビデオ事件の際には、坂本弁護士のビデオを事前にオウム幹部に見せた・・・という事実をTBSが認めるまで5ヶ月を要しました。このあたり、とても気になるところであります。)内部告発に基づく報道に不十分さが認められるものの、その不十分さは個人的資質に帰すべき事柄ではなく、番組制作体制そのものが内包する深刻な欠陥である・・・とこのBPO報告書は結論付けておられますが(23ページ)、もしそうであるならば、あれだけ世間を騒がせた不祥事から10年経過した現在、TBSの再発防止策が、このたびの騒動について機能していたのか、いなかったのか、その検証をしなければ「深刻な体制」だったのかどうかも十分把握できないように思われます。

(追記)7日の朝刊は、どこも本件をかなり大きく採り上げているようです。ネットで読めるニュースとしては、産経WEBのこちら や こちら がかなりよくまとまっているように思います。7日「朝ズバッ!」では、あらためてTBS側よりコメントが出されたようですが、本当に国家権力による放送の自由侵害を自らの手で守るのであれば、この程度のコメントではすまなくなると思われますし、不二家ではなく、一般消費者、視聴者の知る権利を第一に考えるのであれば、さらなる独自の調査報告が必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

8月 7, 2007 TBS「不二家報道」に関するBPO報告書 | | コメント (10) | トラックバック (0)