上場企業は社外監査役に何を求めるのか?
10月4日付けで日本監査役協会さんのHPに「社外監査役の活動と監査役スタッフの役割」(関西支部監査役スタッフ研究会)」がリリースされており、以前このブログでも社外監査役と監査役スタッフとの関係について持論を述べさせていただいたこともあり、興味深く拝読させていただきました。ある方のコメントでは、社外監査役の活動「と」の意味が不明とのことでありましたが、私が読ませていただいた限りでは、やはり監査役スタッフ側からの社外監査役制度への提言もあり、単なる並列ではないものと理解いたしました。
常勤監査役の方、そして社外監査役に就任されていらっしゃる方におきましては、数少ない監査役スタッフと社外監査役との関係を協議するための題材としてふさわしいものでありますので、ぜひご一読をお勧めいたします。とりわけ社外監査役を現任されていらっしゃる方にとりましては、すでにこのブログでもご紹介しております「社外監査役(コーポレートガバナンスにおける役割)」とともに参考にされますと、理解が進むものと思われます。(アンケート結果に基づいて、理想ではなく、かなり現実的な社外監査役のあり方を模索されていらっしゃるように読めました。)
このリリースを読んでの私個人の感想でありますが、2点だけ書かせていただきます。ひとつは社外監査役の特質(特長?)にふさわしい社内での活用を考えるべき、ということであります。社外監査役に期待されるものとして「大所高所より意見を述べる」とか「社外の常識を社内に取り入れる」「専門家にふさわしい意見を求める」といったことに多数の意見が集中しているようでありますが、しかし現実には、そういった要請であれば代替できるコンサルタントや専門職の意見を求めることで足り、特別に社外監査役でなければいけない・・・というものでもないように思います。(もしこのあたり、別のご意見をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ご教示よろしくお願いいたします。ここは以前から、私自身かなり懐疑的に感じているところであります)社外監査役の一番の特質はといいますと、「社内の人間ではないけれども、月1回から2回程度、役員会や経営会議に出席することで、ある程度その会社の事情や、経営環境等を知っている」ことがいえそうであります。せっかく、相当の報酬を支払って、社外監査役に就任してもらっておりますので、こういった「独立性はあるけれども社内の事情に詳しい」といった社外監査役の特質に合致した役回りをもっと検討すべきでしょうし、それがもっとも効率的な選択ではないかと考えております。「法律で決まっているから、とりあえず・・・」といったあたりが現実とは思いますが、もうすこし理想に近いところで申し上げれば、常勤監査役、社外監査役相互の関係構築にも特長が生かされるような人選がよろしいかと思います。
そしてもうひとつでありますが、(ひとつめに述べたところとも関連するのでありますが)社外監査役の仕事は「ひな型には乗りにくい」ということであります。常勤監査役の方々のほうが、もうすこし「ひな型」に沿ったお仕事が連想できるところでありますが、社外監査役の業務は「かくあるべき」が具体的に提案しにくいのではないかと思われます。実際、私が複数の会社の社外監査役をやってみて、またリスク管理委員会の委員として、いくつかの企業の社外監査役の方のお仕事を身近に拝見しておりまして、「全社的なリスク管理の一環として社外監査役を活用するのがベストではないか」と思っております。つまり、中小から大きな企業に至るまで、その企業の健全性および効率性監査のポイントは千差万別でありまして、もっともウイークポイントとなるところで社外監査役が活躍できるのが有効ではないかと思います。社長の独断的采配が強い企業であれば社長と直に意思疎通ができるような社外監査役の存在が必要でしょうし、(買収のおそれなどを含めて)株主対策に問題があるような企業でしたら、株主の代弁者たるにふさわしい社外監査役が必要であります。要は、その企業固有の全社的リスクを社外監査役が早期の段階で把握したうえで、そのリスクへの対応にふさわしい形において職務の重点を置く、といった大胆な構想をとりうるのが社外監査役の役割といえるのではないでしょうか。社外監査役の実務指針に関する本を共同で著した人間としては、自己矛盾と非難されるところもあるかもしれませんが、ガバナンスの問題として、社外監査役のベストポジションというものは、年間の監査計画などにおきましても、個々の企業によって大きく異なるものであることを前提として発想したほうがいいのかもしれません。
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