買収防衛策と独禁法コンプライアンス
今週以降、M&A関連の話題として盛り上がりそうなのがヤマダ電機、ビックカメラ、ベスト電器による事業提携話のようであります。(ヤマダ電機の株買い増し、防衛策発動も辞さず・・・ベスト電器 読売新聞ニュース)ビックカメラとの事業提携に邁進しようとするベスト電器社に対して、業界ダントツトップのヤマダ電機社が持分法適用会社(20%超)とした後、事業提携を持ちかける意思のあることを表明されたとのことです。本年5月の株主総会で勧告型決議によって事前警告型買収防衛策を導入(正式には継続)しているベスト電器としましては、今後ヤマダ電機が買い増しを続ければ、防衛策ルールに則った対応を予定しているようであります。
もし独立委員会(社外取締役2名、社外監査役1名の合計3名)による評価手続きが開始されるとなりますと、私的に一番関心がありますのは、ベスト電器の企業価値をき損するかどうかの判断において家電量販店特有の独禁法コンプライアンスといった問題をヤマダ、ベスト双方がどのように考えているのか、明らかになるのではないか、といったあたりのことであります。先日リリースされておりましたTBSの企業価値評価委員会の報告書におきましても、楽天社の企業としてのコンプライアンス問題が判断対象になっておりましたが、とりわけ家電量販店におきましては、平成18年6月発表されました家電量販店ガイドライン(公正取引委員会)にもありますように、地域小売事業者との競争関係確保や、不当廉売(不当表示)、優越的地位の濫用等、コンプライアンス上の問題点が山積している状態ですので、支配権取得までいかなくても、事業提携としても気を遣うところではないでしょうか。
とりわけこの5月にはヤマダ電機社の場合、メーカー社員を無償で派遣労働させていたとして公正取引委員会より調査を受けておりますし、九州地区におけるベスト電器とヤマダ電機との店舗数の比率が極端に違うことから、小売事業者への量販店の及ぼす影響度も違ってくるかもしれません。今後、買収防衛ルールによる事前交渉が行われるならば、そういったコンプライアンス問題について双方の現経営陣がどのような説明を果たすのでしょうか。これまで敵対的買収の話題のなかで、あまり独禁法に関連する論点が出てこなかっただけに(ニッポン放送事件では少しだけ話題になっておりましたし、意見書も出ておりましたが)、コンプライアンス問題と絡めて法的観点からの議論がなされることに期待しております。(とりいそぎ備忘録程度のみ)
(9月26日追記)関西の者にはなじみがありませんが、キムラヤを子会社化するといった話題や、ベスト電器の株式を一気に買い増すなど、M&Aに向けたヤマダ電機の動きが活発化したようであります。ベスト電器の株価もストップ高のようで。
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