「経営判断原則」に関するわかりやすいお話
毎週木曜日はお昼から2コマ(合計3時間)、同志社のロースクールにて森田章教授と一緒に3年生の会社法ゼミを担当させていただいております。ゼミの時間はけっこうツッコミを入れさせてもらっておりますが、本日は森田先生がご専門の「株主代表訴訟と経営判断原則」をテーマとした事例研究ということで、私はほとんど聴講生状態でした。(^^;いやいや、アメリカの裁判事情や、取締役とCEO、株主との関係など、日本の株主代表訴訟と比較して非常におもしろいお話が聞けました。(以下、記述をわかりやすくするために、若干デフォルメしております。法律に詳しい方、あまり鋭いツッコミをいれないでくださいね)
紀伊国屋文左衛門の話
江戸でみかんが不足していて、嵐のなかを無事に船で江戸までみかんを運べたら大もうけや。そやけど、みんなは「こんな嵐やったら船がひっくりかえるがな。やめとけ。やめとけ」っていうんや。そやけどやで、無事運べたら、誰も文句はいわへん。船がひっくりかえってしもたら、「ほらみろ、あれだけやめとけいうたのに、無理して出かけたお前が悪いんや。」っていわれるやろ。これが「合理的判断」や。10人中8人くらいが船ででかけるのは無謀と思ったなら、これは合理的判断やから責任ありや。そやけどやで、そんなんでやめとったら商売ならへんがな。10人中8人が「行け!」っていうからいっとったら、そんなもん、もう商売は終わりやで。儲かるわけないんや。10人中ひとりかふたりが「行ける」と思って成功するから商売なんや。これがビジネスジャッジメントルールっちゅうもんやで。わかるか?アメリカでは「合理的判断」とはいわんのや。合目的的判断や。(rational)アメリカではこの合目的的判断が保護されるんやけど、日本の裁判では「合理的判断」でないと取締役は救われへん。そんなアホなことあるかいな。リスクっちゅうもん、わかっとらんのちゃうか?
このへん、日本の会社法も、うまくできかけとったんや。お前ら知っとるか?会社法の条文で削られた条文あったやろ?代表訴訟で、会社の正当な利益が害される場合には代表訴訟は許されへん、ってな条文が最初あったんやけど、あれ、つぶれてもうたんや。アメリカの訴訟委員会みたいなもん、日本にはないから、取締役にとっては災難やで。こんなん弁護士もうけさせるばっかりやで。ホンマのビジネスマンが日本には育たんで。ワシもな、最初は日本には「独立社外取締役」なんて、いらんと思っとったんや。そんなもん、会社経営にはなんの役にも立たんとな。そやけどな、社外取締役が訴訟委員会みたいなもん作って、そこで株主の代表みたいな顔して、「こんな訴訟やったって、取締役からお金をチョロっと取り返したとしても、会社の信用は落ちるは、弁護士報酬が高くつくわで、会社にとってええことない。訴訟はやめなはれ」って言えたら、こりゃええもんですわ。会社と株主との利益調節のためにも、社外取締役は安くつくし、もっと活用したほうがええんとちゃうやろうかな。
最近、6月総会を控えまして、機関投資家による「日本企業における株主利益向上のための議決権行使基準」に関する話題が盛り上がっているようでありますが、米国の機関投資家によるガバナンス改善要求の真意などを知るうえで、やはりアメリカで長年研究されていた学者の先生方の意見を拝聴するのはたいへん有意義だと感じました。なんといいましても、代表訴訟や独立社外取締役制度、執行役と取締役の関係、そして株主によるクラスアクションなどが、それぞれ制度として関連性を有しているわけでして、これらが日本の企業文化のなかでどのように効果的に機能するのか、そのあたりはやはり海外の制度を理解している方のお話を聞いてみるのが一番だなぁと感じております。(できるだけ森田教授の口調に近い雰囲気でご紹介いたしましたが、私はもちろん、尊敬している方であります。失礼がありましたら、この場で謝っておきます。また内容に関する誤りがございましたら、それは私自身の責任です。)
PS そういえば、今日の事例研究(株主代表訴訟における担保供与事件)で、発表担当のスクール生のひとりが「へびのめミシン」「へびのめ不動産」と言い出したのには唖然としました(^^;;「お前そんなんも知らんのか!? 昔は嫁入り道具のひとつやったんやぞ。お前のおかあちゃんも、これ実家から持ってきとるはずやで!今は知らんけど・・・」なる説明をされていた森田教授にも笑わせていただきましたが・・・・・
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